名古屋・今池にあったミニシアター「名古屋シネマテーク」が1982年の設立から41年目の今年、7月28日(金) をもって閉館しました。
今年は3月に新栄町の「名演小劇場」も無期限の“休館”となって、1年で一気に2つも地元の老舗のミニシアターが姿を消してしまいました。
例のごとく、僕は熱く語れるほど通いつめていたわけではありませんが、それでも名古屋シネマテークに初めて行ったのは90年代で、名古屋を離れていた時期など間に空白はあるものの、それでもここではこれまで何本もの映画を観てきたし、懐かしい思い出もあります。
最後にここで観たのはジョン・カサヴェテス監督の『ラヴ・ストリームス』(感想はこちら)で、土本典昭監督や小川紳介監督、最終上映作品となった原一男監督のドキュメンタリー映画などは残念ながら観られませんでしたが、せめて閉館前に足を運べてよかった。
一番最初にこの映画館で観た作品がなんだったのかは覚えていませんが、たとえば川村かおりさん主演の1991年の『東京の休日』をここで観たし、「ぴあフィルムフェスティバル」の受賞作品も何本か観たりしました。
女の子と『ムトゥ 踊るマハラジャ』(感想はこちら)も観にきたっけ。ビクトル・エリセやアッバス・キアロスタミの映画もここで観たんじゃなかったかな。
アマチュア自主制作映画の上映会「何でも持って来い!」にも何度か作品を出して上映した。友人たちと同じビル内の居酒屋で飲んだなぁ。
休憩スペースに記帳用のノートがあって自由に感想などを書き込めたんだけど(その後もあったかどうかはわかりませんが)、90年代の終わり頃に観た中野裕之監督の『SF サムライフィクション』について酷評めいたことを書いたら、どこぞの知らん奴にそのあと「『サムライフィクション』はイケてる。お前つまんない奴だろ」とそのノートにレスされたのだった。余計なお世話だタコ。
2000年代は東京にいたので来ていませんが、2008年に帰ってきてからはたまに足を運んでいました。たまに過ぎて何を観たのかよく覚えていないんだけど。
最近ではレミ・シャイエ監督のアニメーション映画『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』(感想はこちら)や『カラミティ』(感想はこちら)、ちょっと前には『ペーパーシティ 東京大空襲の記憶』(感想はこちら)や、五百旗頭幸男監督が上映後に舞台挨拶をされた『裸のムラ』(感想はこちら)もここで。
小中和哉監督が舞台挨拶にいらっしゃった、自主映画を撮る高校生たちを描いた劇映画『Single8』(感想はこちら)も『裸のムラ』同様に満席でした。
なのに閉館なんだなぁ…。
他ではやってない古い映画やマイナー作品、アート系の作品など、多分、ここにタイトルを挙げたもの以外にも観ていると思いますが、どこでどの作品を観たのかちゃんと記録していないので…(;^_^A
でも、映画観終わって、たまにパン屋さんで“あんドーナツ”買ったり、近くのラーメン屋さんで昼食をとったり王将で晩ご飯食べたりして帰ったんだよね。映画館があったからこそ僕はこの駅に地下鉄でやってきていたんだから、名古屋シネマテークがなくなっちゃったら、名演小劇場のあった新栄と同じように今後は足を運ぶこともなくなるでしょう。
そういえば、すぐお隣りの千種駅近くの「ちくさ正文館書店」も今月末で閉店なんだよなぁ。
高校生の頃にあそこで演劇の戯曲集をよく買っていた。
熱心に通ってたわけじゃないのに偉そうなこと言えないんですが、それでも何十年も前からあって懐かしい思い出のある映画館や本屋などがなくなってしまうのは寂しいですね。
これで、名古屋に80年代頃からある古いミニシアターは名駅近くの「シネマスコーレ」1館だけになってしまった。
まぁ、あまり悲観してもしょうがないんだけれど、思い出に浸りたくても特定の映画館のこれまでの上映作品の記録とかってネットで探してもなかなかみつからないので、自分が忘れてしまった時点で消えていってしまうものなんですよね。それはなんとももったいない気が。
ずっとそこにあってくれると思い込んでいたものも、いつかはなくなってしまう。
古いものが今でも残っていること自体が貴重になってしまった。多くのものが失われて今はもうない。
楽しかった思い出を胸に、前を向いて生きていくしかないんだなぁ。
名古屋シネマテークさん、これまでたくさんの映画を上映してくださって、いくつもの思い出をもらえたことを感謝しています。どうもありがとうございました。
スタッフの皆さん、おつかれさまでした。
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追記:
その後、クラウドファンディングで資金を募り、2024年3月16日(土) に同じ場所に新しいミニシアター「ナゴヤキネマ・ノイ」がオープン。