映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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「ブギウギ」を観終えて


4月1日(月) から始まったNHK連続テレビ小説の新作「虎に翼」もすでに3週目に入っていますが、その前に3月29日(金) に最終回を迎えた前作「ブギウギ」について遅ればせながら少々。

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このドラマは、朝から唄ってステージ上で派手にパフォーマンスを繰り広げる(菊地凛子さん演じる“りつ子”さんのように微動だにせずに唄う人もいますが)、なんとも贅沢な作品、という印象でした。

本職の歌手ではない趣里さんが半年間の放送中にこれほどまでに唄い続ける、というのはほんとにスゴいことだし(お母様はご存じ元キャンディーズのかただから、遺伝はあるでしょうが)、スズ子が時々見せる顔をクシャっとしたような笑顔、それから誰かからものを言われてる時のリアクションの表情とか、可愛くてしかたなかった。

いやまぁ、趣里さんが意識的にあの顔の表情を駆使してるってのはわかるんだけど、可愛いからいいや、とw

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観る前は、なぜ今「東京ブギウギ」なのか、どうして笠置シヅ子なのか、と不思議だったんですが、趣里さんの演技から何か理屈を超えた「唄うこと」の大切さだとか切実さを感じたんですよね。

僕はもともと趣里さんが出演された作品をそんなに数多く観ているわけではないですが、底抜けに明るいイメージ、というのはそんなになくて、可愛らしいお人形のようなキャラクターを演じることはあっても、どちらかといえば暗さやシリアスさを感じさせることの多い俳優さんだったような。

で、そういう人があえて笠置シヅ子をモデルにしたコテコテの関西弁を喋る、理屈よりもユーモアや元気さが身上みたいな人物になりきる、というところがとても面白いと思ったし、趣里さんはその大役をしっかり果たされていました。

主人公が明るく元気な女性であっても、舞台となるのは戦前から戦中、そして戦後だから、当然戦争の時代が描かれるわけで、近い時代が描かれた「おちょやん」とどうしても比べたくなるんですが、実は戦争の直接的な描写というのはわりと少なくて、たとえば空襲などでスズ子が身内を亡くしたりすることはないので(それ以前に弟の六郎を戦地で亡くしているが)、戦争がどれほど彼女と彼女の家族に影響を与えたのか、なんとなくぼんやりしているところはあった。

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スズ子自身が歌手なのだから表現者としての葛藤は当然あったわけだし、警察やら軍部やらからやいのやいの言われて非常に不自由な思いをしたのは事実だろうけれど、そのあたりは淡谷のり子さんをモデルにした茨田りつ子が特攻隊の少年兵たちの前で歌を唄えなくなってしまう、淡谷さんご本人の体験をもとにした場面があったり、また空襲で家族を亡くした女性・大野さん(木野花)が家政婦として雇われてスズ子の愛娘・愛子に祖母のように接したり、スズ子以外の複数の登場人物たちによって彼女の人生が物語上で補われていた。

ドラマの終盤は亡き愛助(演:水上恒司。某お笑い芸能事務所の創始者の御曹司がモデル。「わろてんか」よりは史実に近い描かれ方だったが、その人物像は実際のご本人とドラマとではかなり異なるようで)との間の忘れ形見である愛子との親子関係に重点が置かれて、これが「母と娘」の物語であったことを強調する。

ここでも、「おちょやん」がそうだったように、「こうであったらよかった」男女関係だったり、親子関係、仕事仲間同士の関係が紡がれる。

笠置さんとは微妙な関係だった美空ひばりさんがモデルと思われる水城アユミ(吉柳咲良)が実はスズ子の歌劇団時代の先輩の大和礼子(蒼井優)の忘れ形見であったことが判明して…と史実とフィクションが合わさっているんだけど、アユミのモデルはひばりさん以外では江利チエミさんだということなので、アユミの父親がピアニストだったり、母親が病いで亡くなっていることなど、二人の実在の人物の人生をうまい具合にミックスさせているんですね。

このようなドラマと史実との違いなどは、フリーライター田幸和歌子さんのコラムに詳しく書かれていてとても読み応えがあります。

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福来スズ子は架空の人物だけど、実在の人物の人生を参考にして生み出された主人公で、まるでこの半年間、一人のある女性歌手の人生を見つめ続けてきたようなそんな気持ちにさせられました。

今「東京ブギウギ」を取り上げる意味とは。

「新しい戦前」と言われもする現在の日本。

「戦争」そのものはなんとしてでも未然に防がなくてはいけないのだけれど、だからこそ、唄いたい歌を思いっきり唄うことを、元気に身体を動かして踊ることを邪魔するような社会にしてはならない。

前作「らんまん」から時代がちょうど繋がるようにして始まった「ブギウギ」。

「ブギウギ」の中でもスズ子を応援する「街の女」たちが登場したけれど、声を上げる女性たちの姿は、これもスズ子=笠置シヅ子さんと同い年の女性で、日本で初めて女性の弁護士になった三淵嘉子さんをモデルにした主人公を描く「虎に翼」に引き継がれていきます。女性を黙らせようとする世の中を変えていくことの重要性を訴えている。

さて、伊藤沙莉さん主演の「虎に翼」は放送開始から評判も上々で、僕もすでにそちらに頭が切り替わってしまっているので、わずか何週間か前まで観ていた「ブギウギ」がなんだかもう遠い昔のように感じられてしまってますが、一時期は朝ドラを途中で離脱することも珍しくなかったのが、ここ何作かはずっと観続けていられてて、それだけでも嬉しいんですよね。ストレスを感じるどころか、毎朝楽しみにできるものがあるってとてもありがたいことだから。

趣里さん、そして多くのキャストとスタッフの皆さん、長い撮影、本当におつかれさまでした。楽しいドラマをどうもありがとうございました。



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