映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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『ブリット』


ピーター・イェーツ監督、スティーヴ・マックィーンジャクリーン・ビセットロバート・ヴォーンドン・ゴードン(デルゲッティ刑事部長)、パット・レネラ(ロス/レニック)、ロバート・デュヴァル、ジョーグ・スタンフォード・ブラウン(ウィラード医師)、ノーマン・フェル(ベイカー警部)、カール・ラインデル(スタントン刑事)、ポール・ゲンゲ(殺し屋)、ビル・ヒックマン(殺し屋の運転手)、サイモン・オークランドほか出演の『ブリット』。1968年作品。

原作はロバート・L・パイクの小説「Mute Witness」。

音楽はラロ・シフリン

第41回アカデミー賞編集賞(フランク・P・ケラー)受賞。

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チャルマース上院議員ロバート・ヴォーン)からギャング組織壊滅のための証人の保護を任された刑事・ブリット(スティーヴ・マックィーン)。だが証人のロス(パット・レネラ)はブリットが恋人のキャシー(ジャクリーン・ビセット)と会っていた隙に襲撃され死亡してしまう。失態を責めるチャルマースの態度に不審なものを感じたブリットはある行動に出る。(Filmarksのあらすじに加筆)


1月に観た『ダーティハリー』に続いて、ミッドランドスクエアシネマで上映されている「ワーナー・ブラザース 35ミリ・フィルム・セッションズ」作品の中の1本。

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これまで僕はスティーヴ・マックィーンが出演している映画って数えるほどしか観ていなくて、この映画は有名だし、あの急な坂でのカーチェイスも観たことはあったけど、それは昔やってた「ダウトをさがせ!」的なTVのヴァラエティ番組の中で「映画の中の間違い」みたいなネタの一つとして、劇中で主人公・ブリットが運転するマスタングGT390と殺し屋たちの乗るダッジ・チャージャーが何度も同じ緑色のフォルクスワーゲン・ビートルを追い越すショットを見たことがあっただけで、映画そのものは未鑑賞でした。

ダーティハリー』は面白いし好きだから、作られた年が近いこの映画にも興味があった。

スティーヴ・マックィーンって、イーストウッドと同じ年の生まれなんですよね。生きてたら今年で94歳。二人には直接的な交流や接点はあったんだろうか。

マックィーンはブルース・リーに武術を教わっていて、そのブルース・リー主演の『燃えよドラゴン』(1973) で音楽を担当したラロ・シフリンがこの『ブリット』の音楽も担当しているけれど、『ダーティハリー』の音楽もシフリンだし、ほんとイイ仕事してますよね。どれも似た旋律が流れるけれど、3本の中ではこの『ブリット』が一番早いわけだし。

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マックィーンはロバート・ヴォーンとは『荒野の七人』(1960年作品。日本公開61年)や『タワーリング・インフェルノ』でも共演してますが、『タワーリング~』ではイイ政治家役だったのが、今回はなんか嫌な感じの政治家役で、いろいろ演じ分けてますね。

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彼の演じるチャルマース上院議員は、なんかほんとにこういう人いるよな、と思わせるリアリティがある。巧いよなぁ。腹に一物あるというか、でもわかりやすい悪人でもない、みたいな。何を企んでいるのか、本人の口から直接聞くまでは信用できないような。いそうじゃん、日本にもああいう感じのお偉いさん。

ロバート・ヴォーンって貫禄ある顔つきだけど、でもマックィーンの方が2歳年上なんですね。


クライマックス前で、以前サイモン・オークランド演じるベネット警部に誘惑するような口調で脅しを入れたように、ブリットも懐柔しようとするんだけど、そんなチャルマースにブリットは落ち着いた声で、でもはっきりと「やかましい。失せやがれ」と返す。黙って立ち去るチャルマース。

世の中のクソ政治家どもに一度は言ってやりたい言葉。

サイモン・オークランドは『ウエスト・サイド物語』(感想はこちら)では信用ならない刑事を演じてたけど、この映画では部下思いのイイ上司役。いかにも「警察関係者」って雰囲気の人だもんね。

ブリットを補佐するデルゲッティを演じるドン・ゴードンも、伊吹吾郎みたいな男臭い顔でなんとも言えずイイ。

ロバート・デュヴァルがタクシーの運転手役で出ていて、またあとで出てくるんだろうと思っていたら、タクシーで走り去ってそのまま二度と出てこなかった。えっ、あんだけ?

いやまぁ、『ゴッドファーザー』(感想はこちら)の4年も前の映画ですしね。それにしてもささやか過ぎる出演。

フィルムでの上映ということなんだけど、前述の『ダーティハリー』の映像が結構クリアに見えたのに対して、この『ブリット』はそこまで鮮明じゃないというか、あぁフィルムを見ている、って感じの画質でしたね。

傷やホコリはないプリントだけど、そんなに綺麗だとは思わなかった。

それでも、やっぱり面白かったなー。

正直なところ、まず疑問に感じたのは、マフィアの一員で司法取引で組織の秘密をバラそうとしたロス(パット・レネラ)が命を狙われるんだけど、殺し屋たち、殺し損ねてんじゃん、と。

だからわざわざもう一度殺しにくるわけで、全然腕が良くないよね。

だけど、この殺し屋を演じている俳優さん(ポール・ゲンゲ)がイイ顔してるもんだから、見入っちゃうんだよな。

ダーティハリー』の敵役はキャラが立ってたけど、こちらの敵というか犯人はそんな目立つ顔立ちでもないし、地味と言えば地味で、でもそこがなんだかいいんですよ。


ジーン・ハックマン主演の『フレンチ・コネクション』(1971年作品。日本公開72年)も殺し屋は地味だったけど、黒幕のシャルニエ(フェルナンド・レイ)にはそれなりに華があった。

『ブリット』では悪の親玉は出てこないし、またブリットが銃を撃つのは最後の最後だけで、ロス(実はレニック)が撃ち殺される序盤とカーチェイスシーンでの敵からの銃撃以外では銃を撃つシーンもない。すごく抑制が効いてる演出。


あの急な坂でのカーチェイスと終盤の空港で旅客機が移動している中での追跡シーンが見せ場になっている。

僕はあの時代のハリウッド映画やこのジャンルに詳しいわけじゃないからよくわからないんですが、でもそれ以前のアメリカの映画ってスクリーン・プロセスだとか合成を使ってカーチェイスを描いていて(007映画なんてそうだったもんね)、まぁかなりチープな印象だったんだけど、この映画ではそういう視覚効果は一切使っていなくて、全部ほんとに現場で撮影しているんですね。だからこそ時代を超えた迫力がある。

同じ頃にフランスにはベルモンドがいたんですね。

この映画については映画評論家の町山智浩さんが詳しく書かれています(フォルクスワーゲンのことも)。

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殺されたロスが実は偽者で、その正体は本物のロスが海外旅行を餌に影武者を演じさせた男だった、とわかるあたりからだんだんお話がよくわかんなくなってきて、殺されたレニックの顔は手術を受けた跡がある、みたいなことを言ってたから、彼は整形手術でロスと同じ顔にしたということだろうか。たかだかヨーロッパ旅行のためになんでそんなことまでするのか、ちょっと理解できなかったんですが。

町山さんも指摘されていたけれど、結局はブリットは空港で反撃してきた本物のロスを殺してしまうわけで、それじゃ任務を果たしてないよね。思いっきりマフィアの狙い通りになってんじゃん。事件が解決せずに映画が終わってしまう。

だから確かにお話には無理があるんだけど、でも迫力あるからなんか観ちゃうんですよね。

ジャクリーン・ビセット演じるブリットの恋人・キャシーが、この手の映画によくある主人公の男にとってただのアクセサリー的な便利なヒロインとして描かれてる、っていう不満はあるんだけど、でもキャシーはブリットが自前の車をカーチェイスで破損させてしまって警察の車も出払っているために足代わりに彼女の車を使われて、現場で殺害された女性の遺体を見てしまい、その横で淡々と仕事をするブリットに怒りをぶつける。


その気持はわかるし、「男の仕事だ」と言いつつもキャシーの不満を黙って聞いているブリットの顔なんかも、いいなぁ~って思うんですよね。

イーストウッドがいつも眩しそうに目を細めるのに対して、マックィーンは大きな瞳を見開けたままジッと相手の顔を見つめる。

病院で看護師に手渡されたサンドイッチを頬張っている時とか、絶対に『ボディガー』(1992) のケヴィン・コスナーは彼の真似をしてたよなぁ、って。

亡くなったのは1980年。早過ぎたよなぁ。

40年以上も前に亡くなった映画スターに、こうやって劇場で出会える喜び。

今はもういないあの人の遺した「フィルム」を観ている、その不思議。

こういうことが、これからも続いていくんだろう。

ゲッタウェイ』(1972年作品。日本公開73年)も観たいなぁ。



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