スティーヴン・スピルバーグ監督、ジェフ・ゴールドブラム、ジュリアン・ムーア、ヴィンス・ヴォーン、ヴァネッサ・リー・チェスター、リチャード・シフ、アーリス・ハワード、ピート・ポスルスウェイト、ピーター・ストーメア、リチャード・アッテンボローほか出演の『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』。1997年作品。
ジュラシック・パークでの悲劇から4年。イアン・マルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)はインジェン社の会長ハモンド(リチャード・アッテンボロー)に呼び出され、ジュラシック・パークに恐竜を供給するための遺伝子工場「サイトB」がイスラ・ソルナ島にあることを知らされる。閉鎖されたまま放置された島では、恐竜たちが繁殖・野生化しているという。ハモンドから島の調査を依頼されたイアンは危険であることを理由に断ろうとするが、恋人である古生物学者サラ(ジュリアン・ムーア)が既に現地入りしていることを知り、彼女を助けに行くことに。しかしハモンドの甥ルドロー(アーリス・ハワード)はパークの再建を企てており、島に恐竜ハンターたちを送り込んでいた。(映画.comより転載)
「午前十時の映画祭13」で前作『ジュラシック・パーク』の翌週に鑑賞。
1作目に続いてリチャード・アッテンボロー演じるジョン・ハモンドの孫姉弟・レックス役のアリアナ・リチャーズとティム役のジョセフ・マゼロが冒頭の一場面に再登場。
前作から4年経っているので、二人とも外見が4年分成長していて、なんだか不思議な感じ。
主役は前作のアラン・グラントからジェフ・ゴールドブラム演じるイアン・マルコムに移って、彼の現在の恋人・サラ(ジュリアン・ムーア)と、マルコムの前妻との間の娘・ケリー(ヴァネッサ・リー・チェスター)が初登場。
それ以外にも、ヴィンス・ヴォーン演じる調査隊の一員・ニックや同じく調査隊のエディ(リチャード・シフ)など、マルコム以外の主要キャストは一新。
他にも、ピート・ポスルスウェイトやピーター・ストーメアなど実力派が結集。
ピート・ポスルスウェイトとピーター・ストーメアって一時期、90年代から2000年代にかけてよく顔を見た気がするんだけど、ポスルスウェイトさんは惜しくも2011年に亡くなられたし、ストーメアさんはご健在だけど最近僕はあまり見ない。ちょっと前にTVで『アルマゲドン』やってて、相変わらずロシア語訛りで怒鳴ってたな(笑)
この映画って、1作目よりもこっちの方が好き!って人たちがたまにいて興味深いんだけど、僕個人は前作の感想でも申し上げたようにイマイチ記憶に残らない作品で、何度観てもすぐに内容を忘れる。1作目のように名場面がパッと浮かばないんですよね。
VFXは前作よりもさらに進歩して見応えがあるし、ティラノサウルスは2頭に増えて(さらに赤ちゃんティラノも登場)、シリーズの最重要恐竜でもあるヴェロキラプトルとの闘いも激しさを増し、さらに頭突きが得意なパキケファロサウルスやステゴサウルス、それから最後にプテラノドンと、前作には登場しなかった恐竜たちが出てきて目を楽しませてくれる。
だから、純粋に恐竜を見たい人にとっては文句のつけようがない作品かもしれないですね。
ピーター・ストーメア演じる恐竜ハンターの一人、ディーターが電気ショックで虐めたためにあとで集団で襲われる小型恐竜のコンプソグナトゥス・トリアシクスって、とてもインパクトがあってCGの出来がスゴいなぁ、と今でも感心するんだけど、あの凶暴さはフィクションなんですね(本当は昆虫を食べていたんだそうな)。
よくツッコまれてるように、ジュリアン・ムーア演じるサラとヴィンス・ヴォーン演じる実は環境テロリストだったニックが捕らわれた恐竜たちを逃がしたりティラノサウルスの子どもを助けようとしたために恐竜ハンターたちのキャンプが破壊されて、結果的にサラたちの仲間だったエディがTレックスの夫婦に食いちぎられて死ぬ羽目になったのだし、なんだか主人公たちを応援しにくいところがあって、それがこの映画の世間での評価が1作目ほどではない理由の一つでもあると思う。
1作目でローラ・ダーンが演じたエリー・サトラー博士はけっして観客からその行動を非難されることなんかなかったのに、この続篇でのサラや次の3作目でティア・レオーニが演じた女性は結構叩かれているんですよね。彼女たちの無責任な行動が惨事を呼んだのだ、と。まぁ、責任は彼女たちだけにあるわけじゃないとは思いますが。
ピート・ポスルスウェイト演じる恐竜ハンターのリーダーのローランドは、昔からの仲間を失って、途中でなんかかっこつけて退場するけど、もとをただせばこのおっさんがティラノの赤ちゃんを傷つけたからで、すべての元凶はこいつじゃないかと思うんだが。
逆に、ディーターは小型恐竜に八つ裂きにされ(直接画面には映し出されないが、ローランドがそう語っている)なければならないほど酷いことはしていないんですよね。
ディーターが道に迷って呼んでるのにヘッドホンで音楽聴いてたせいで彼が死ぬ羽目になったカーター(トーマス・ロサレス・Jr.)は、その後、しっかりティラノに踏み潰されてましたが。ざまぁ。
最後にジョン・ハモンドに代わってインジェン社の社長になっていた甥のルドローがティラノ親子に殺されるんだけど、この人だって彼自身は別に特別非道だったり誰かを殺したとかいうわけじゃないのに、なぜかスピルバーグは容赦ない。なんか登場人物の劇中での扱われ方のバランスがイビツなんだよね。最近の彼ならああいう描き分けはしないと思う。
エディの殺され方なんてスピルバーグの悪趣味が全開だったし。悪い奴らだけじゃなくて、別に悪人ではない人までも殺される、というのは1作目でもやってましたが。
でも、エディ、めっちゃ頑張ってサラたちを助けてたのに。その結果があの最期かと思うとほんとに不憫でならない^_^;
まぁ、それが現実というものかもしれませんが。報われない人はとことん報われない。
恐竜ハンターの存在は『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(感想はこちら)でも踏襲されていたし(2頭の恐竜に人が食いちぎられる場面も、シルエットではあったがやっていた)、頭突き恐竜も出てましたよね。
恐竜たちが街に出現する、というのは最終作の『新たなる支配者』(感想はこちら)でやってたし。
2015年から始まった「ジュラシック・ワールド」三部作は、劇中で元祖「ジュラシック・パーク」シリーズのさまざまな場面を“再演”してみせていて、だからこの「ジュラパ」三部作を観返してから、あらためて「ジュラワ」三部作を観たら、またいろいろ気づくところがあるかもしれませんね。
この『ロスト・ワールド』は、ゴジラ映画を多分に意識していたんじゃないだろうか。
ティラノサウルスが街なかで暴れる場面は、あれはスピルバーグにとってのゴジラへのオマージュ、彼なりの「怪獣映画」だったんだろうなぁ。*1
日本人らしきビジネスマンたちが慌てふためいて逃げる姿が映ってたし、「巨大なイグアナかと思った」という台詞まである。エメリッヒに対する嫌味かw
エメゴジ(ローランド・エメリッヒ監督の『ジラ』『GODZILLA』)の公開は翌年の98年でしたが。
確か当時、スピルバーグは「エメリッヒのイグアナ映画は観ない」と言っていた。
乗っていたトレーラーが2頭のティラノに崖から落とされそうになってサラが落下してフロントガラスに激突、ガラスにどんどんヒビが入っていくところとか、恐竜の姿はなかなか出てこないまま、やたらとサスペンス場面が続くんだよな。
あと、1作目に比べて急に登場人物たちの超人度が上がって、マルコムもサラも何度も窓ガラスを突き破って外に転がり落ちたり、マルコムの娘のケリーに至っては得意の体操の鉄棒の技を使ってラプトルに蹴りを入れて吹っ飛ばし、串刺しにして殺すほど(恐竜を串刺しに、というのもやはり『炎の王国』でやってた)。
「ジュラシック・ワールド」の感想でクリス・プラット演じる主人公のオーウェンが超人過ぎる、と文句を言ったけど、この『ロスト・ワールド』のサラたちだって充分超人だよなぁ。
マルコムも「足を怪我した」とか言ってたのに、そのあと平気な顔して走ってたし。途中からはずっと負傷したままだった前作とは大違いの回復力。
そのあたりの、生身の人間っぽさが映画の中で突然失われてしまったような作劇、演出が、まだその辺のリアリティをちゃんと保っていた前作と比べてこの2作目を「イマイチ」と感じさせてしまった原因かもしれない。いや、人が殺される場面はいちいちリアルなんだけどね(;^_^A
恐竜の赤ちゃんに演出中のスピルバーグ監督(^o^)
この2作目を最後に、次回作以降は別の監督にバトンタッチ。スピルバーグは「ジュラシック」シリーズの演出からは離れる。
ある意味、この2本で描くことは全部描いた、ということかもしれない。
主役であるはずのマルコム博士、確かに活躍はするんだけど、1作目での彼は「カオス理論」の説明をしながらサトラー博士の手をとったりしてちょっと軽いノリで、それはサム・ニール演じるグラント博士とあえて対照的なキャラにしたかったからだろうけど(そして、それがとても効果的だった)、この『ロスト・ワールド』では家庭的な人物へとキャラ変されていて*2、確かに離婚していることにはなっていたが、娘のことは大事にしているし、1作目のあのちょっと軽薄っぽいキャラ(でも生き物の命を弄ぶことに反発したりしていて、根本的な性格は変わっていないが)が僕は懐かしいんですよね。
『ロスト・ワールド』でもたまに軽口は叩いてたけど、今回はグラントさんがいないから彼が頑張らなくちゃいけなくて、かなり真面目な人物になっている。
僕はジュラシック・パークの恐竜たちって全部メスだと思っていたんだけど、今回はオスのティラノサウルスも登場するし、恐竜を人工的に繁殖させていた「サイトB」ではパークの崩壊後に恐竜たちは自分たちで繁殖していたと説明される。
1作目でクローンとして復活させた恐竜たちのDNAの欠如した部分にカエルのDNAを組み込んだ、と解説していたから、そのカエルのDNAによってメスがオスに変化したんですね(まぁ、そうでないと繁殖できないわけですから)。
だから「生き物は自ら生存する道を見出す」というマルコム博士の主張は正しかったってこと。
すみません、これまでこのシリーズをあまりじっくりと観てなかったので、いろいろと勘違いしていたところがありました。
それから、僕はてっきり「ジュラシック」シリーズ全6作品はすべて字幕翻訳は戸田奈津子さんが担当されていると思っていたんだけど、『ロスト・ワールド』と次の『ジュラシック・パークIII』は菊地浩司さんが担当されていたんですね。失礼いたしました。
さて、次はついに「ジュラシック・パーク」三部作のトリを務める『ジュラシック・パークIII』。
『ジュラシック・パークIII』ではグラント博士が「サイトB」を訪れることになる。
また、『ロスト・ワールド』の最後に姿を見せたプテラノドンが大暴れもする(トリだけに)。一応、シリーズとして繋がってはいるんですね。
いろいろ評価も分かれる作品だし、悪いけれど僕もけっして傑作だとは思わない。
でも、グラント博士がまた戻ってきて(サトラー博士もちょっとだけ出てる)、大人気のスピノサウルスも登場するし、あの衛星電話の音はみんなよく覚えてるよねw
『ロスト・ワールド』からは26年、『ジュラシック・パークIII』からも、すでに22年。
もうそんなに経ったんだよなぁ。
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*1:もちろん、それ以前にウィリス・オブライエンによる元祖『ロスト・ワールド』(1925) へのオマージュでしょうが。
*2:ハモンドは映画の冒頭で、4年前のパークの事故のあとにサラがマルコムに会いにきた、と言っていたが、そうするとマルコムはすでにあの時サラと付き合ってたことになる。じゃあ、エリー・サトラーに気があるような素振りを見せていたのはなんだったの?ということ。