映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

※2019年の“はてなダイアリー”終了に伴い、2018年9月にブログを移行しました。

『シックス・センス』 耳を傾けること


M・ナイト・シャマラン監督、ブルース・ウィリスハーレイ・ジョエル・オスメントトニ・コレットオリヴィア・ウィリアムズミーシャ・バートン出演の『シックス・センス』。1999年作品。

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フィラデルフィア。小児精神科医のマルコム(ブルース・ウィリス)は9歳の少年コール(ハーレイ・ジョエル・オスメント)を担当するが、どこか彼はマルコムが過去に救えなかった患者ヴィンセント(ドニー・ウォールバーグ)を思わせた。コールは時々奇妙な言動で母(トニ・コレット)を戸惑わせたり、学校のクラスでも異端視されていた。ある日、コールはマルコムに「死んだ人が見えるんだ」と彼の秘密を打ち明ける。


久しぶりにDVDで鑑賞。

今年は一昨年の『ヴィジット』(感想はこちら)に続いてシャマラン監督の最新作『スプリット』(感想はこちら)が公開されて観ました。

まぁ、感想にはいろいろ書きましたが、無性に彼の過去の作品が観たくなったので借りてきた。

映画評論家の町山智浩さんによれば(「シャマラン商法も今度ばかりは年貢の納め時だ」)、劇場公開当時一世を風靡したこの『シックス・センス』やその次の『アンブレイカブル』(感想はこちら)、あるいは『サイン』『ヴィレッジ』などシャマランの映画はその多くが他の監督による昔の作品のアイディアのパクリばかりということなんだそうですが、僕はその元ネタの方を知らないので、とりあえずは独立した1本の映画として感想を述べます。


1999年の劇場公開時以来DVDやTV放映などで何度も観たので、最初にこの映画にどれほどの衝撃を受けたのかはもう憶えていませんが、当時映画とは別にスピンオフみたいな形で映像化はされていない小説版が販売されていて、あいにく手許にないのとタイトルも失念してしまいましたが、映画の鑑賞後に買って読みました。

それぐらい映画もお気に入りだったということでしょう。

そのスピンオフ小説の方は、マルコム医師とコール少年が探偵役になって幽霊がらみの事件を解決する、ミステリー小説みたいな内容だったと思います。

さて、幽霊がらみ、という話題が出てきたところで、以降はネタバレがありますのでまだこの映画をご覧になっていないかたはくれぐれもご注意ください。

公開からもう18年経つので未見の人も結構いらっしゃるかもしれないですね。

何も知らずにこの映画をこれから観られる人がちょっと羨ましい。


この映画のあと、アレハンドロ・アメナーバル監督の『アザーズ』などの似たような「どんでん返し」映画が何本も作られましたが、やはりこの『シックス・センス』はその中でも抜きん出てよく出来ていると思う。

観客がそれまで観てきたものを最後にひっくり返すような、いきなり世界が反転する驚きと面白さ。

そういった感動を味わわせてくれる。

でも僕がこの映画が好きなのは、そこに「人間ドラマ」があるからです。


単にどんでん返しのためのどんでん返しに終わっていないところがいい。

ここで描かれているのは、母と子、いじめや子どもの虐待など、現実の世の中に存在するさまざまな問題、痛みや悲しみを負った人々の物語。

それを幽霊譚、ホラー映画という形式で語るところに惹かれました。

さっきも書いたようにこの映画には元ネタがあるようですが、僕はこういうタイプの映画を観たのは初めてだったから印象に残ったし、世間の評判通りシャマラン作品の中でもっとも完成度が高いと思います。

そういえば、ウェイアンズ兄弟のコメディ映画『最終絶叫計画』(2000)でも黒人のアニキが甲高い声で「死んだ人が見えるんだ」とモノマネやってたっけ。パロディにされるほどメジャーな作品だったってこと。

しばしばM・ナイト・シャマランは『シックス・センス』だけの一発屋、みたいに言われますが、僕はそれ以降の作品もわりと好きだし(『レディ・イン・ザ・ウォーター』以降はしばらく観ていませんでしたが)、俳優の演出も巧みな監督だから単なる一発屋ではないと思ってます。

すべての監督作品を観ているわけじゃないし、観た中にも「…ん?」と首を傾げるものもなくはないけど。

でも今回のように、たまぁにこの人の映画を観たくなるんですよね。


主演はブルース・ウィリスだけど、彼とほぼ同等な役柄でもう一人の主人公ともいえるコールを演じたハーレイ・ジョエル・オスメント君は、その後スピルバーグの『A.I.』の主演もしたり、当時は天才子役として持て囃されていました。

それが今ではあんなになるなんて^_^;

最近また映画に出てるみたいですが。

コールの前でゲロを吐く幽霊少女キラを演じていたミーシャ・バートンはその後人気ティーン女優になったけど、リンジー・ローハンなどと同様に子役上がりのお騒がせセレブと化して現在に至る。


18年経つといろいろありますね。

僕は、劇中のブルース・ウィリスの頭髪が地毛なのかどうか気になってましたが。

だって、その翌年に主演した『アンブレイカブル』では見事に禿げ上がってたから。

ブルース・ウィリスはそれ以前にもスキンヘッドのキャラクターを『パルプ・フィクション』(感想はこちら)や『12モンキーズ』(感想はこちら)などで演じていたから、完全に頭を剃り上げるようになるのはいつ頃ぐらいだったかもう憶えていませんが。

この映画での演技を見ていても、ブルース・ウィリスはけっして筋肉だけのアクション専門俳優じゃなくて、繊細な演技ができる人なのがわかる。

彼の愁いを帯びた表情、無邪気そうな笑顔、どれもが味わい深く、絵になる。

映画の冒頭でマルコムを銃で撃つ男ヴィンセントを演じているのは、その後ローレンス・カスダン監督作品のウンコ映画(何がウンコなのかは観ればわかる)『ドリームキャッチャー』で「ダディッツ!」と唱えていたドニー・ウォールバーグ。マーク・ウォールバーグの兄貴。顔が怖すぎ。


彼が演じたヴィンセントはコールと同じく幽霊が見える人だったが周囲に理解されずに心を病み、マルコム宅に侵入して彼を銃で撃ち自らも頭を撃ち抜いて死ぬ。

「幽霊が見える」と言うコールをマルコムは統合失調症と判断して一度は治療を諦めるが、かつてのヴィンセントの診療時の録音テープに不可解な声が入っているのに気づいて、次第に幽霊の存在とコールの言葉を信じるようになる。

アンブレイカブル』でもそうだったけど、ここでも「心」に不安を抱えた人物が登場する。

この映画では、人には見えないものが見えるために通常の生活に支障をきたしてまわりから疎外され、孤独の中にいる人たち、心を病んだ人々を特殊な能力「第六感(sixth sense)」を持つ者として描いている。

このあたりは次の『アンブレイカブル』でも主人公をあえて似たような設定(主演も同じブルース・ウィリス)にしたために、また同じオチなんじゃないかと思われたりもした。

僕は、病んだ者、疎外された者に対するシャマランの眼差しには深い共感が込められているように感じたし、また心霊ネタやアメコミヒーロー、宇宙人やUMAフェアリーテイルなど、いかにもなB級テイストの題材を用いることも彼の作品に愛着を覚える理由の一つ。

そのバランスが一番うまくいってるのがこの作品なんじゃないだろうか。

超自然的な現象とかホラー的なテイストはもちろん娯楽作品として大切だしそれが売りでもあるんだけれど、その裏に描かれているのは親子や他者とのコミュニケーションについて。

コールは母親のリン(トニ・コレット)との間に愛情はあるがどこか壁がある。母には見えないものが息子には見えるから、時々会話が噛み合わないのだ。

リンは息子が自分に心を閉ざしていると思い込んでいる。

彼女には自分の母親(コールの祖母)との間にわだかまりがあって、母の死によってそれは永遠に埋まらないままになってしまったと感じている。そのことが息子コールとの関係にも彼女自身の中の怖れとなって表われている。


また、コールは幽霊が見えてしまうためにクラスメイトたちや担任の教師とも意思の疎通がうまくいかず、授業中に思わず先生に暴言を吐いてしまうことも。

この映画は、そんなコールがマルコムとの交流を通して他者の気持ちを思いやることを学ぶ過程を描く。

コールがそれまではただひたすら怯えるしかなかった幽霊たちの姿をしっかりと見て、彼らが訴えていることに耳を傾けること。それはまた、生きている人々の声や彼らの気持ちに共感する心を持つことでもある。

母親に食べ物に毒物を盛られて死んでしまった少女の幽霊の無言の訴えで、コールはマルコムとともに少女の家を訪ねて真相を父親に伝える。

こうして幽霊たちの気持ちに寄り添えたコールは、母や先生、クラスメイトたちと心を通わせることができるようになる。


僕自身は幽霊の類い(あるいは天国や地獄等も)は一切信じていないけれど、でも亡くなった人のことを想う、という気持ちはよくわかる。

亡くなった人が生きている者たちを繋げてくれている、ということもある。

トニ・コレット演じるリンは、母親の形見のペンダントが息子のコールの机に入っていたことで彼を問い詰める。コールはペンダントを移したのは自分ではないと言う。

コールは母親が自分を疑っていることがわかっているが、母に嘘はつけない。

映画の終盤に、コールはあのペンダントをコールの机に入れたのは、彼の祖母、つまりリンの母親だったと告げる。“亡くなったおばあちゃん”から直接聞いた母と祖母しか知らない彼女たちの思い出をコールが話すと、リンの目から涙が溢れる。

息子は嘘を言っていなかった。

亡くなった祖母が母と息子を再び結びつけてくれた。

監督がインド出身の人だということもあって、この映画で描かれる死者たちや作品の根底に流れる死生観がどことなく東洋的である、とも言われる。死者たちは恐ろしい存在ではなく、私たちに大切なことを伝えてくれている。


そして、最後にどんでん返しが。

コールを導き彼を救ったマルコムは、実は1年半前に元患者のヴィンセントに撃たれて死亡していた。

彼もまた“幽霊”だったのだ。

「死者は自分が死んでいることに気づいていない」「幽霊たちは互いの姿が見えない」というコールの言葉がヒントだった。

マルコムが仲が冷え切ってしまったと思っていた妻のアンナ(オリヴィア・ウィリアムズ)は、亡くなった夫が忘れられずに“一人きりで”孤独な毎日を送っていた。


コールに教えられた通り、アンナが眠っている横でその耳元に話しかけるマルコム。アンナは夢の中で彼の声を聴きながら笑顔を取り戻す。

コールを救い、また彼に救われたマルコムは天に召されていく。

主人公が愛する人を残して自分の死を受け入れるというラストは、スピルバーグの監督作品でリチャード・ドレイファス主演の『オールウェイズ』のラストをちょっと思い出します(あの映画には天使役でオードリー・ヘプバーンが出演していた)。*1

また、パトリック・スウェイジデミ・ムーアが出演した『ゴースト/ニューヨークの幻』も。

オードリー・ヘプバーンパトリック・スウェイジもすでにこの世にはいませんが、「映画」というものはこうやって亡くなった人たちまでもが僕ら観客にいろんなことを伝えてくれるんですよね。


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*1:ちなみに『シックス・センス』はスピルバーグ作品を多く手がけるフランク・マーシャルキャスリーン・ケネディが製作を担当している。