10月の初めに大須シネマで『ルパン三世 カリオストロの城』を鑑賞。
これまで何度か記事にしているので、感想はそちらをお読みいただければ。
とりあえず、「また映画館で観た」という記録のために。
同じ日に『熊は、いない』というイラン映画を観たんですが、イランといえばパレスチナのイスラム組織ハマスとツルんでるんじゃないかとか言われてるし、大変きな臭い状態が続いていて、映画の方も国外に出たくても出られない人々、そして愛し合う二人が結ばれることが許されない世界の話だったりして、観終わったあとにちょっとヘコんじゃったんですよね。
まぁ、ただそれは鑑賞前からある程度予測していたので、宮崎駿改め“宮﨑駿”監督の大傑作冒険活劇アニメで明るい気分を取り戻そうと前もって時間を合わせていて、続けて観たのでした。
『ルパン三世 カリオストロの城』を映画館で観るのは僕はこれで三度目ですが(1988年に16ミリフィルム上映会で観たのも合わせれば四度目)、自分でも「何度目だ」と呟きながらも、いや、もう何度だって観るよ、と。
今回、同監督の最新作『君たちはどう生きるか』が公開されたあとだということもあって、なおさら自分にとってこの映画がいかに大切な存在なのか痛感したのだった。
お好きなかたには大変申し訳ありませんが、僕は『君たち~』はほんとに受けつけなくて。あぁ~…って溜め息が出ちゃうぐらいに。
なので、『君たちはどう生きるか』ファンのかたはお読みにならない方がいいかもしれません。気を悪くされるでしょうから。
休日ということもあって小さな映画館はわりと人が入っていました。
小学生か中学生ぐらいの男子数人が観にきていて、最前列に座っていた。
上映中、彼らも、それから他のお客さんたちもギャグシーンでもクスリとも笑わず、全篇ほぼノーリアクションだった。
おそらく僕と同じく、他の皆さんもこれまでにこの映画を何度も繰り返し観ていて内容は知っていたんでしょうね。でも劇場でやってたら観たくなってしまう、とw
『カリオストロの城』はちょうど去年の今頃にも観たんですが(その少し前に次元大介役の小林清志さんの訃報があった。地上波の金曜ロードショーでもやりましたよね)、もうアホみたいに何度繰り返し観てもこの映画が大好きなことは変わらないし、それは何十年経とうが自分にとって大事な映画の存在はコロコロ変化しないものだ、ということを今回も実感したのでした。
『君たちはどう生きるか』について、僕のような批判的な意見に対して「『カリオストロ』や『ラピュタ』みたいな映画を期待する方が間違い」と鼻で嗤う向きもありますが、だけどさぁ、たとえ黒澤明や宮﨑駿が年を取って作風が変化していった、といっても誰もがそうなるとは限らないじゃないですか。
たとえばリドリー・スコットなんか、宮﨑駿よりも4つ年上だけど、まだ『ナポレオン』(感想はこちら)とか撮ってるでしょ。全然枯れてもいないし、アート(という名の物語放棄)に逃げることなく相変わらずスペクタクル映画を作り続けている。
しかも同じことを繰り返しているのではなく、進化し続けている。
僕は、かつては痛快娯楽作品を作り続けていた宮﨑監督が難解、というか独りよがりで自分だけを見つめた作品の方に行っちゃったことに本気で失望しているんですよね。
観客を楽しませることをやめちゃって、自分が作りたいものを作るようになった。
でも、それは僕が観たいものではなかった。
「俺を見てくれ!」っていう作品じゃなくて、子どもたちが無邪気に楽しめて、おとなでも童心に返れるようなワクワクする映画を作ってほしかった。
それはもう求めてもしかたがないというのは、ずっと前からわかってたことですが。
今年は僕はわりとアニメ作品を観る機会があって、そのどれもが見応えあって面白かったし、これから公開されるディズニーの『ウィッシュ』も楽しみにしています。
以上はすべて海外作品ですが(マリオの映画も一応あちらの映画扱い)。
日本製のアニメは『君たち~』1本しか観ていなくて、その1本に満足できなかったのは、僕が古い価値観の人間だからとか関係なく単に日本のアニメは僕の好みではない、ということ。アリストテレスがなんちゃら、みたいなタイトルのアニメの予告篇なんて、ほんとに不快だったもの。病んでる。
あ、片渕須直監督の最新作『つるばみ色のなぎ子たち』は楽しみです。
いつ完成するのかまだ全然わかんないけど。
片渕監督の『この世界の片隅に』が好きだから、期待しています。
観終わったあとにボンヤリしてしまうのではなくて、満足感を得たいんですよね。
昔の作品のことばかり言ってると老害扱いされますが、でも何度観ても飽きないし好きでい続けられる作品というのは、やっぱり強いと思う。
黒澤監督の映画だって、晩年の映画も高く評価する人たちはいるけれど、でも『七人の侍』や『用心棒』の人気にはかなわないでしょう。
全盛期の作品を晩年の作品と比べちゃいけないと言われるけど、監督が自ら世に放った傑作と比べられるのはしかたがない。
『カリオストロの城』も『ラピュタ』も時代を超えた大傑作だし、娯楽作品のエッセンスが詰まってるんだよね。そのことはどんなに疎ましがられようとも今後もしつこく言い続けていこうと思う。
僕が観たいのは、複雑で難しいことがいっぱいある現実の世の中で、それでもシンプルに「面白かった!」と笑顔で劇場を出られる映画だ。
「何が言いたかったのかわからなかった」と首を傾げながら会場をあとにするようなアート映画じゃない。
これからも僕は『カリオストロの城』を観続けるし、『ラピュタ』の再上映を希望し続けます。それが気に入らないなら、どうかこの2本を超えるような素晴らしい娯楽作品を作ってくれ。
日本のアニメの作り手たちに切に願います。