映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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『パンダコパンダ』『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』


先日の宮崎駿監督による『ルパン三世 カリオストロの城』の2週間限定上映に続いて、高畑勲監督によるアニメーション映画『パンダコパンダ』(1972) と『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』(1973) (2本とも宮崎駿が原案・脚本・場面設定を担当)が二本立てでやはり2週間限定で上映されていて、観てきました。

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おばあさんが法事で出かけていて一人でお留守番をしている女の子・ミミ子(杉山佳寿子)の家に、動物園からパパンダ(熊倉一雄)とパン(太田淑子)のジャイアントパンダの親子がやってくる。ミミ子はパパンダを「お父さん」に、自分を「お母さん」にして、3人で家族になることにする。


この2本のアニメーション映画は1988年に『となりのトトロ』と『火垂るの墓』が公開される時に宮崎駿監督が出席されるイヴェントがあって、そこで特別上映されたのを観ました。

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あれから34年。

以前にも2018年にデジタルリマスター版がやはり二本立てで上映されていたようだけど、その時は観られなかったので、今回久しぶりに劇場で観られて嬉しかった。今回上映されたのは、そのデジタルリマスター版なんでしょうね。

あれからDVDなどで観返したことはなかったので、どんなお話だったのかも忘れてて、1作目のおまわりさんの声をルパン三世山田康雄さんがアテられていたことぐらいしか覚えていませんでした。


パンダコパンダ』の前に高畑勲宮崎駿両氏がかかわっていた「長くつ下のピッピ」のアニメ化の企画が頓挫して、その時の設定やデザインが流用されているのは有名(ミミ子ちゃんのおさげ髪の形や彼女の性格、彼女が住む家、一人暮らし、パンちゃんの馬鹿力など)だけど、ミミ子ちゃんの声を担当している杉山佳寿子さんはのちに「アルプスの少女ハイジ」のハイジ役*1を務めるし、パパンダは大トトロっぽいし、2作目の『雨ふりサーカス』の終盤の町の浸水は『崖の上のポニョ』を思わせる。

ミミ子ちゃんが「素敵!」を連呼するのは、『魔女の宅急便』(感想はこちら)のキキだなぁ、なんて。

その後の「宮崎アニメ」のプロトタイプ的な役割も果たしているんですね。

もちろん、この2本の作品にはそれぞれ独自の魅力があるんですが。

お父さんやお母さんのイメージが古めかし過ぎるというか、今の時代に観ると抵抗があるし、ミミ子ちゃんが何かといえば逆立ちしてパンツを見せまくるのもちょっとどうかとは思う。


まぁ、今から50年前(!)の映画ですからね。さすがにその辺はしかたないのかも。

ただ、観ながら思ったのは、宮崎監督(監督は高畑さんですが、原案や脚本は宮崎さんだから、彼がほぼ生みの親といっていいでしょう)、あんな可愛くて賢い“娘”が欲しかったんだなぁ、って。

すでに息子の吾朗ちゃん(当時5~6歳)がいるにもかかわらず(;^_^A

アニメ作りに没頭する父・駿が家庭を顧みることはなかった。そんで「こんな娘が欲しかった」とかさぁ、ほんとにゴローちゃんが不憫でならない。

その宮崎吾朗さんは、今年の11月に愛知県長久手市にオープンする「ジブリパーク」で建物責任者を務められてますが。尽くすなぁ、父親に。

パンダコパンダ」正続篇って初公開当時も子どもたちに人気があったそうだから、もっと長期シリーズ化されてもよかったのになぁ、と思いますね。TV番組にしても名作になっただろうし。

今回、『パンダコパンダ』は34分で『雨ふりサーカス』は38分と、2本続けて上映してもわずか1時間とちょっとだし、正直なところ、あぁもっと観たいなぁ、これで「おわり」はもったいない、という気持ちになっちゃったんですよね。

声優さんたちもそうだし、スタッフの方も大塚康生さんや小田部羊一さんや近藤喜文さんなど、レジェンドたちがいっぱい。

ミミ子役の杉山佳寿子さんは先ほども述べたようにハイジ役が日本のアニメ史に燦然と輝いているし(だからこそ、番組の内容とは無関係なあの家庭教師のCMは不快だし残念なんですが、あのCMで初めてハイジを知る子どもたちや若い人もいるんだろうな、と思うことにしている)、ここからその後の「世界名作劇場」に繋がっていったんだと考えれば、この2本の作品が遺したものは多いですね。

杉山佳寿子さんは「ガッチャマン」のヒロインでも有名だけど、僕は世代的に「Dr.スランプ アラレちゃん」の“あかね”役の印象が強くて(あと「Gu-Guガンモ」のガンモ)、だから可愛い女の子やパンチラ連発のスーパーヒロイン役など役柄が変幻自在なのがほんとに素晴らしいなぁ、と。あ、「うる星やつら」のテンちゃんもおなじみですよね。

パンダコパンダ」シリーズのオープニング曲を唄っている水森亜土さんは「アラレちゃん」のOPとEDの歌も唄われていて、彼女のあの歌声を聞くと子ども時代に帰ったような気持ちになる。「南の島のハメハメハ大王」も「みんなのうた」でよく聴きました。

「パンダコ」のオープニングの歌はループしていつまででも聴いていられそう…というか、あのアニメ(『トトロ』のOPを思わせますが)と相まって、なんか妙にドラッギーな感じがw

物語自体は、両親がいないミミ子が動物園からやってきたパンダ親子と「家族」になって日常生活を送るが、最後はパンちゃんが川の水門の滝に飲まれそうになっているのをパパンダが錆びついていた水門のハンドルを馬鹿力で回して扉を閉じて危機を回避、一件落着するし、2作目でも暴走した動物たちを乗せた列車があわや建物に激突、というところでやっぱりパパンダが馬鹿力で列車を止めてめでたしめでたし、といった、かなりご都合主義的なものではある。

もうちょっとみんなで協力し合ってとか、物語的に面白い展開にできなかったものだろうか。

ただ、1作目では「お父さんは朝、会社に行くものです」というルールが最後のオチに繋がっていたし、2作目の動物たちを乗せた列車が線路を外れてどんどん進んでいくところは、その無茶苦茶な展開が日常のルールを思いっきり無視して暴走する快感があって、観ていて愉快でしたね。

あれは宮崎駿監督だったらもっとスピードを上げて、それこそ『カリオストロの城』のカーチェイスばりのアクションに仕立てたんじゃないかと思うんだけど、高畑勲監督の演出は、どこか『平成狸合戦ぽんぽこ』の「百鬼夜行」のシーンを思わせる静かなる狂気を感じさせて、観ていた幼児たちも大喜びだったんじゃないだろうか。スピーディー過ぎないところがいいのかもしれない。

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パンちゃん(1作目は太田淑子さんが声を担当、2作目では丸山裕子さんが担当。太田淑子さんは僕は「ヤッターマン」のヤッターマン1号=ガンちゃん役でおなじみだったし、丸山裕子さんは「はじめ人間ギャートルズ」のゴンや「おじゃまんが山田くん」の“みのる”役など*2でよくそのお声を聴いてました)のぬいぐるみぶりはめちゃくちゃ可愛いし、ルパンやイーストウッド以外のキャラクターを演じる山田康雄さんも新鮮でした。

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デジタルのパッキリした映像に慣れている子どもたちや若い人たちがどう感じるかはわからないけれど、昔の「フィルム」による作品が映像や音質がクリアになることで手描きや手作りの味わいを楽しむことができるようになったのは僕はほんとにありがたいなぁ、と思います。全然古臭くも画面が汚くもないんだから。

だって、半世紀前の映画を僕たちは今、劇場で子どもたちと一緒に観ているんだよ?それって物凄いことでしょう。これまでだったら考えられなかったよね。

これからも、次々と懐かしい作品がレストアされたりデジタルリマスターで上映されるんでしょうね。

ネット配信もいいですが、僕はやっぱり映画館派だなぁ。


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*1:ハイジ役のイメージが強いのであちらが先のような気がしてしまうけど、「ハイジ」は74年作品。「パンダコパンダ」での声の演技が決め手となって抜擢されている。

*2:『トトロ』では出番はわずかだけど、カンタの母親を演じられてました。