映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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『アメリ』

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ジャン=ピエール・ジュネ監督、オドレイ・トトゥマチュー・カソヴィッツ、セルジュ・メルラン、イザベル・ナンティ、ジャメル・ドゥブーズ、ユルパン・カンセリエ、ドミニク・ピノン、クロティルド・モレ、フローラ・ギエ、リュファス、ヨランド・モローほか出演の『アメリ』。2001年作品。

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パリ・モンマルトルのカフェで働くアメリオドレイ・トトゥ)は、人と親密なコミュニケーションをとるのが苦手。そんな彼女はアパートでみつけた古い缶箱の中の他人の思い出の品を持ち主に密かに返して喜ばれたのをきっかけに、人々にお節介な親切を始める。ある日、顔写真を撮る機械の前で出会った青年ニノ(マチュー・カソヴィッツ)にアメリは恋をするが、自分の気持ちを直接相手に伝えられない彼女は、いつもの手でなんとかニノに気づいてもらおうとする。


ジャン=ピエール・ジュネ監督作品の中ではもっとも有名だし日本でも大ヒットした作品ですが、僕はタイミングを逃してこれまで一度も観てなくてDVDやTV放映でさえも未視聴でした。

それがちょうど大須シネマで上映中だったので鑑賞。

同じ映画館でギレルモ・デル・トロ監督の『パンズ・ラビリンス』もやってましたが、そちらは以前DVDで観たので今回は見送りました。

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デル・トロ監督の作品はジャン=ピエール・ジュネ監督の作品と作風が似ているところがあるから、『パンズ・ラビリンス』と『アメリ』を続けて上映してたのは意図的なプログラムなんでしょうね(『アメリ』が日本で初公開されたのは2001年の11月17日なので、今年でちょうど20周年)。

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ちなみに、ジュネ監督はデル・トロ監督のオスカー受賞作品『シェイプ・オブ・ウォーター』が自分の作品と雰囲気が似過ぎていることを指摘しています。周囲からは鼻で笑われちゃったみたいだけど。でも、僕も『シェイプ~』以前から二人の監督の作風に共通するものを感じてましたが。

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“真似”かどうかはともかく、互いに通じるものがあるのは確かで。

僕はジュネ監督の長篇第1作目(マルク・キャロとの共同監督)の『デリカテッセン』も劇場公開時に観てますが、ようやく『アメリ』を観たことで日本では2010年公開の『ミック・マック』を除く彼の監督作品をほとんど観たことに。

もっとも、2005年日本公開の『ロング・エンゲージメント』は確かDVDで観たんだけど、第一次世界大戦が描かれていたのとジョディ・フォスターが出演していて(主演は『アメリ』に続きオドレイ・トトゥ)流暢なフランス語を喋っていたことぐらいしか覚えていないので、もはや「観た」と言っていいのかどうか悩むところですが。

アメリ』は劇場公開時にとても話題になって今でもファンの多い映画だし、遅まきながら初公開から20年目にしてようやく観られたわけですが、『デリカテッセン』を彷彿とさせるものがあって、あぁ、ジャン=ピエール・ジュネの映画を観てる、って感じがしました(^o^) 『デリカテッセン』を多少お上品にしたよーな。

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なんてゆーか、観る前はもっとキラキラでメルヘンちっくなカマトトぶった映画を想像していたんですよね。まぁ、そう感じる人もいるようだけど。

でも、エロさは皆無ではあるものの、この映画にはセックス場面もあるし性愛というものを隠していない。マチュー・カソヴィッツ演じるニノが勤めているのはポルノショップだし。

人間の性的欲求も含んだうえで、「好きになった人」にその想いをいかにして伝えるのか右往左往する女子の滑稽さと見方によっては不気味さ(この映画を“ストーカーが主人公のホラー映画”と評する人もいらっしゃるようで)、まわりのユニークな人間模様も交えて「おとぎ話」風に仕上げてある。

女性たちから「可愛らしくてお洒落な映画」と評価されるのも頷けるし、毒っぽさやグロテスクさはある程度抑えて、でもところどころで風変わりなアメリの特徴も加えて面白く味付けしてある。

店の店員を小馬鹿にする青果店の店主(ユルパン・カンセリエ)へのアメリの執拗な仕返しはなかなかおっかないし、女の子の怖さもさらっと描いている。アメリは、ただノーテンキで世間知らずな娘ではない。

可愛らしい映画ではあるのだけれど、登場人物たちはけっしてただの記号的なモブになってなくて、アメリが思い出の品を返してあげた男性ブルトドー(モーリス・ベニシュー)がコニャックを飲みながら語る台詞には情感がこもっていたし、アメリにいろいろアドヴァイスしてくれる隣の家の老人レイモン(セルジュ・メルラン)も彼の語る言葉の一つ一つに味わいがある。

店主に小突かれたり笑われながら働く隻腕の青年リュシアン(ジャメル・ドゥブーズ)と彼のエピソードにも監督の愛が感じられる。

全篇カラフルでノスタルジックな映像なんだけど、どこか『マトリックス』を思わせる緑がかった色彩はドギツさがなくて目にうるさくないし、僕が苦手とするウェス・アンダーソンの映画みたいにドールハウスに閉じ込められたような窮屈さはない。

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ジュネ作品の常連俳優ドミニク・ピノンが別れた元恋人にストーキングするカフェの客役で出ている。

彼は『天才スピヴェット』にも主人公の少年にアドヴァイスする老人役で出演してましたが、なんかこの俳優さんを見るとホッとします。ちょっと徳井優さんを思わせるんですが。

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やはり『デリカテッセン』や『ロスト・チルドレン』などのジュネ作品や『プロヴァンス物語 マルセルのお城』など、90年代や2000年代にフランス映画でよく見かけたティッキー・オルガドが証明写真の中からニノに語りかける男の役で出演している(彼は『ロング・エンゲージメント』出演後、2004年に死去)。

主演のオドレイ・トトゥは、『ロング・エンゲージメント』でも主演を務めていたし、2006年の『ダ・ヴィンチ・コード』でトム・ハンクスとも共演しているけれど、僕はここんところ彼女の出演作品を観ていない。今もお綺麗なかたですね。

アメリ』でのトトゥの大きな瞳と後ろを刈り上げたフランス版ワカメちゃんカットみたいなヘアスタイルはとても印象的で、映画を観ていなかった僕でさえも彼女の顔とあの髪型だけはよく覚えていた。

時々彼女が見せる鼻の下を伸ばした状態の笑顔がなかなかキモ可愛いw

観る前はもっとエキセントリックでコミュ障気味な不思議ちゃんキャラかと思っていたんだけれど、アメリは普通に他人とお喋りするし、そんな彼女が人と深くかかわるのが苦手というのがよくわからなかったんですが。いや、あなた結構かかわってますよ、と(^_^;

表面的に人と接するのは大丈夫だけど、個人的に「好き」になったり、その人と深くお付き合いするのが苦手ってことだろうか。

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アメリはまわりの知人や顔見知り、時にはまったく見ず知らずの人に親切を振り撒く(それは余計なお世話っぽくもあるのだが)けれど、自分のことになると物凄く臆病になる。ってゆーか、めっちゃまわりくどいやり方でニノに接触を試みる。

いや、もうそんなにめんどくさいことするぐらいならとっとと自分の気持ちを直接彼に伝えろよ、と思うんだけど、それができない、ってことなんだな。わかるよーな、わからんよーな。

この映画はもう、主演のオドレイ・トトゥや脇役の役者陣の魅力でもってる作品で、ちょっと説明が難しいんだけど、フランス映画っぽさというかジュネ映画っぽさというか、奇妙な人々の群像劇の中から「生きることはまんざらではないし、人を愛することは素敵だ」と思わせてくれるような楽天性がある。映像面でどこか作風が似ていても、ギレルモ・デル・トロの映画はもっと悲劇性が濃いような気がする。

この映画を初めて観てメチャクチャ好きになったとか名作だと感じたわけではないけれど、世知辛い今の世の中、いろいろ不愉快なことも多い中で、ふと誰かとかかわってみたり、誰かを好きになるのも悪くはないな、と思わせてくれる、そんなささやかながらもほんの少し明るい気持ちにさせてくれる映画でした。


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