映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『用心棒』4Kデジタル・リマスター版


「午前十時の映画祭9」で『用心棒』4Kデジタル・リマスター版を鑑賞。

オリジナル版の公開は1961年。

監督:黒澤明、出演:三船敏郎仲代達矢東野英治郎加東大介河津清三郎山茶花究山田五十鈴、沢村いき雄、司葉子、土屋嘉男、西村晃、加東武夏木陽介渡辺篤、藤田進、羅生門綱五郎、藤原釜足志村喬ほか。

第22回ヴェネツィア国際映画祭主演男優賞(三船敏郎)受賞。

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とある寂れた宿場町にやってきた素浪人は、互いに対立する馬目の清兵衛と新田の丑寅の両親分の二つの組を戦わせて共倒れを画策する。


これまでにヴィデオやTV放映で観ていますが、映画館で観るのはこれが初めて。しかも4Kデジタル・リマスター版だから現在発売中のDVDやブルーレイよりも画質も音質も鮮明。


しかし、相変わらず時々何を言ってるのか聴き取れない箇所(冒頭の農家の親父さんの台詞からすでに^_^;)がいくつもある。

まぁ、黒澤映画はそういうもんだと思って観てますが。音声はハッキリしてるのに何言ってるのかわかんない、ってスゴい話ですけどw

あらためて思うに、シンプルで娯楽作品の要素がギュッと詰まった映画ですよね。難しいテーマとかそういうのは一切ない。


その証拠に早くも3年後の1964年にイタリアでセルジオ・レオーネ監督によってクリント・イーストウッド主演で『荒野の用心棒』(英題:A Fistful of Dollars)としてリメイクされた(ただし無許可だったために東宝に訴えられている)のは有名ですが、観比べてみるとほんとにほぼ同じ話なんだよね。

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ただ、ところどころに西部劇ならではのアイディア(最後の決闘の場面など)が盛り込んであって、オリジナル版とのちょっとした違いが面白い。僕はどちらも好きです。

また、三船敏郎演じる桑畑三十郎が最初から人を斬りたくてうずうずしている様子だったり、自分の方から東野英治郎演じる居酒屋の親父に人懐っこく話しかけたりと結構表情豊かなのに対して、『荒野の用心棒』のイーストウッドは寡黙で必要以上に喋らないし笑わない。

侍とガンマンじゃ普通は逆のイメージなんだけど、イーストウッド自身からの提案もあって(脚本の主人公の台詞をガンガン削っていった)あのような謎めいたキャラになったようで。

『用心棒』と『荒野の用心棒』を続けて観ると、時代劇から西部劇への変換ぶりが楽しいです。まぁ、もともと西部劇を意識して作られたんだから相性がよくても不思議ではないんだろうけど。

ちなみに、黒澤明は1910年生まれで三船敏郎1920年生まれ、クリント・イーストウッドは1930年生まれ。ぴったり10歳ずつの年の差でわかりやすいw

『用心棒』では砂埃を巻き上げて風が吹きまくってるけど、あれは大型の送風機を使っていたんだそうで、撮影中に出演者は目を開けているのも大変だったらしい。

後年、海外の撮影隊が日本に来て「クロサワの『用心棒』で使われた、からっ風の強いロケ地」を希望したが見つからなかった、という話も。普段からあんな強烈な風が吹いてる地域は日本にはないw


ダシール・ハメットの小説『血の収穫』を原案にした『用心棒』は黒澤作品の中でもその娯楽度はピカイチだけど、ストーリーについてはツッコミを入れられなくはないところもある。

たとえば、三十郎は町役人殺しの下手人である浪人二人組(西村晃加藤武)を捕らえて清兵衛のところに連れていくが、下手人を清兵衛に売ったのが三十郎だと丑寅側にバレたら彼の目論みが露見して双方の組から疑われて一巻の終わりなのに、それは両者の間では一切言及されないんですよね。

人質を交換する時に、誰が下手人を売ったのか尋ねるような展開になってもおかしくないのに。三十郎にまんまと騙されるヤクザ側があまりに人が良過ぎるというか。

だいたい、町人がほとんどいないあんなゴーストタウンみたいな町を牛耳ったところで商売成り立つんだろうか。


あとは、終盤に三十郎はあんなにボッコボコにされてたのに顔が元に戻るの早過ぎだろ、とか^_^;

あの顔の変形は『荒野の~』でも踏襲されてますが。

三十郎をしたたかに殴りつけるあのひときわ目立つ巨漢の“かんぬき”を演じる羅生門綱五郎は元プロレスラーで、映画やTVドラマに何本も出てるそうだけど、最初観た時はてっきりジャイアント馬場だと思い込んでいた。


実際には馬場さんは映画にはほとんど出ていないそうだから、昔の映画に馬場みたいなデカい人が出てたら羅生門綱五郎だと思っておけばいいw

司葉子の出番は夫役の土屋嘉男と同様に本当にわずかなんだけど、血生臭い映画の中で司さんの美しさが際立っている。他に登場する女性たちのご面相がアレなので^_^;


山田五十鈴演じる清兵衛の妻に髪の毛を引っ掴まれる場面では、山田五十鈴が力一杯引っ張るから司さんはめちゃくちゃ痛かったんだそうな。あの形相はほんとに痛みをこらえてたのね。怖ぇな、ヴェテラン女優。

また、殺陣のシーンでは三船敏郎は撮影用の模擬刀を相手の身体にほんとに当てるので(しかも必ず二回斬る)、斬られ役はこれまた痛いから逃げると追っかけてきて叩き斬られてミミズ腫れだらけになったという話。

冒頭で犬がくわえてくる人の手首とか、三十郎に斬り落とされるヤクザ者の腕など、特殊造形も今見てもリアル。

ジェリー藤尾演じるヤクザ者が三十郎に腕を叩き斬られる場面は、ジョージ・ルーカスによって『スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望』(感想はこちら)のカンティーナでルークに因縁をつけた男がオビ=ワンに腕を斬り落とされる場面として引用されている。

アレック・ギネスが演じたオビ=ワン役は、最初は三船敏郎にオファーされていたのは有名な話。

その後のTV時代劇などでエスカレートしていく人の身体を斬る音もこの作品が最初と言われるけどまだ控えめで、だからこそ逆に本物っぽく聴こえる。

そういえば、この映画にはその後TVで水戸黄門を演じる俳優が2人出てるんだよね。一代目の東野英治郎と二代目の西村晃東野英治郎は『七人の侍』では赤ちゃんを人質にとる盗人役で、志村喬に斬られてスローモーションで倒れたあとに三船敏郎に踏んづけられてましたが。


おじいちゃんが~^_^;


黒澤映画ではのちの二代目黄門様も斬られ役。


当時、若手で売り出していた夏木陽介も百姓が嫌でヤクザ者になるがみんな最後に三十郎に叩き斬られて「おふくろのところへ帰ぇれ」と言われ泣き叫びながら逃げていく、という情けないにもほどがある若者を演じている。ご本人も後年ちょっと苦笑いされながらこの時のことを語っていた。

七人の侍』で百姓の一人、万造役だった藤原釜足が清兵衛側の後見人の名主の多左衛門を演じていて、最後には完全に狂ってまばたきもせずに団扇太鼓を叩きながら志村喬演じる造酒屋の徳右衛門を斬り殺す。

七人の侍』で頼れるリーダーの勘兵衛を演じていた志村喬が人妻の司葉子に入れあげるヒヒ爺役で、『七人の侍』のあとに観るとそのギャップがなかなかショッキングだったりする。


志村さんは続篇の『椿三十郎』でも悪役の家老を演じている。

ショッキングといえば、やはり『七人の侍』で勘兵衛の“古女房”七郎次役で活躍していた加東大介が眉毛が繋がってて前歯が1本抜けてる見るからに「足りない」亥之吉を演じていて、これまた役柄のギャップに驚かされる。

僕はこの人を最初に見たのが『七人の侍』だったから真面目で力強いイメージがあったんだけど、小津安二郎成瀬巳喜男など他の映画では結構軽いノリの役柄が多いのが意外でしたね。

そして頭が切れる卯之助役の仲代達矢は顔がツルッツルで、ちょっと可愛い男前。


仲代さんはその後も黒澤映画では『椿三十郎』『天国と地獄』『影武者』『乱』に出演していて重厚な演技を見せているけど、この映画では顔も声も若々しくて色気を感じさせる。

土屋嘉男は『七人の侍』に続いて侍にペコペコする百姓役。しかもここでも女房を奪われている^_^; ご本人も黒澤作品では真面目で暗めの役ばかり振られていた、とインタヴューで語ってますが。

土屋さんは続く『椿三十郎』にも出演して若侍の一人を演じています。仲代達矢は引き続き貫禄たっぷりに三十郎の相手役を務めているけど、実は土屋さんは仲代さんよりも年上なんだよね。

土屋嘉男さんといえば東宝特撮映画の印象も強いので(なんたってX星人ですからw)僕は子どもの頃からお馴染みだったし、黒澤作品に多く出演していて監督とも公私ともに親しかった氏は黒澤監督との想い出を綴った著書もあって、黒澤明についての特集番組ではよく監督とのエピソードを話されてましたね。

2016年の『七人の侍』の4K版の公開時にメディアに出ていらっしゃらなかったので、ご高齢だしお体の具合がよくないのかな、と思っていたんだけど、2017年に亡くなったことを知って、やはりそうだったのか、と。

黒澤映画の出演者がまた一人、天に召されたことはとても寂しいです(加藤武さんも夏木陽介さんも亡くなられました。皆さんのご冥福をお祈りします)。

1991年に『七人の侍』がリヴァイヴァル上映、その後、黒澤作品がVHSヴィデオでまとめてソフト化されて、たしかその時に僕は他の何本かの作品とともに『用心棒』も観たんですが、あれからさらに時を経ていっそうクリアな画質と音質で劇場で観られるようになるとは当時は思ってもみませんでした。

何度見ても面白い!黒澤明監督の傑作時代劇三作品、『七人の侍』、『用心棒』、『椿三十郎』を最も完全な形で現代に復元する


僕は技術的なことには明るくないですが、それでもデジタル技術を駆使して高度な方法で劇場初公開時の画質と音質が復元されていることはわかります。

現在までに多くの往年の名作が修復・復元されていますが、60年近く前に作られた日本映画が劇場の大画面でこれほどまでに高画質で観られることってやっぱり非常に驚きだし、貴重な機会だと思うんですよね。当然かなりの費用がかかるので、回収の見込みがない作品は4K化できないわけだから。

そもそも劇場初公開時の時点で、1954年の『七人の侍』の七年後にはもうシネスコのこんな鮮明な映画が撮られている、というのも着実な技術の進歩を感じさせる。

61年にはすでにカラー映画は制作されてましたが、黒澤監督がモノクロにこだわったのは正解だったと思います。

あの当時のカラー技術で果たしてこれほどまでのシャープな映像が可能だっただろうか。モノクロームの限られた色の中に、血と埃の鮮烈なイメージが定着されている。

佐藤勝作曲のあのマンボ調のテーマ曲はずっと耳に残る。

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それにしても上映される場所や期間がほんとに限られてるのがもったいないですね。もっといろんなところでやればいいのになぁ。


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