映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『七人の侍』4Kデジタル・リマスター版ふたたび


2016年に「午前十時の映画祭」で観た『七人の侍4Kデジタル・リマスター感想はこちら)が再上映されているので観てきました。

『七人の侍』を観ました♪


ストーリーなどについては以前の感想をご参照ください。

格段に鮮明になった映像を2年ぶりに堪能。

映像・音響についてはすでに書いたので、内容に関して今回あらためて感じたことをちょっと述べてみようと思います。

それは、映画評論家の町山智浩さんが解説の中で「この映画で足りないところ」「完璧な映画と言えないところ」と指摘されていた敵の野武士たちのこと。

20:47あたり
www.youtube.com

僕は以前は町山さんの対談相手の春日太一さんが仰っていたように「サスペンスを盛り上げるために」敢えて野武士側のドラマは描かなかったんだと思っていたんですが、それもあるでしょうけど、今回久しぶりに観返してみて、この映画における“野武士”というのは旧日本軍のことじゃないのかと思ったんですよ。

こういうこと書くと「娯楽映画に政治的なことを持ち込むな」と眉をひそめる人もいらっしゃるでしょうけど、町山さんと春日さんも対談の中で語られていたように、戦後わずか9年目に作られたこの映画の随所に太平洋戦争時の記憶が重ねられていることは明白。

だから、あの野武士集団には戦時中に三船敏郎をはじめ出演者やスタッフの多くが経験したであろう軍隊での理不尽さが投影されてるんじゃないかと。

逃亡を図った手下を撃ち殺し、「臆病風吹かせやがった奴は…!」とその死体を鞭打つ人相の悪い野武士の頭目の姿なんて、自国民を大量に犠牲にして無意味な戦争を続けた軍部そのものじゃないか。

前述のお二人は「野武士の動機や目的が不明」と仰ってたけど、いや、食料を奪うことが目的でしょ(;^_^A

現在の価値観や人権意識で戦国時代の人間たちについて判断するわけにはいかないけれど、それでも野武士たちには農民たちと協力し合って共存していく道だってあっただろう。

鉄砲があるんだから動物を狩ることだってできたはずだし。

そうせずに農民の村を襲って略奪する方を選んだのは、かつての日本が他国に対してやってきたこととまったく同じで正当化しようがない。

だからそういう野武士たちにも事情があって…などという描写なんかないのは当然で、なぜならその行為は「」だから。

春日さんがいみじくも語られていたように、野武士というのは「七人の侍にならなかった者たち、ダークサイドに堕ちたサムライ」のことなんだよね。

彼らはもしかしたら勘兵衛たち「七人の侍」がなっていたかもしれない姿なわけで、これは侍たちがそういう自分たちのダークサイドと戦う話なんじゃないか。

野武士たちの人間的な描写とか彼らの悩みとか、そんなものはこの映画では必要ないのだ。だって、それは農民たちが最初に見せた「おのれのことばかり考える」姿勢や落武者狩りをする残酷さ、そして菊千代が語った「そんなケダモノを作りやがったのは一体誰だ。おめぇたちだよ!おめぇたち侍だってんだよ!!」という叫びで語られているんだから。

黒澤監督が実際にどのような思いで野武士たちのキャラクターを造形して演出したのかはわかりません。これはあくまでも僕の“解釈”ですから。

でも必要なことはちゃんと描かれている。僕は町山さんが批判されているようにこの映画の野武士のドラマの欠如が「足りない」とはまったく思わないです。

確かに「いいとこのお坊ちゃん」の出である黒澤明には理想主義的なところがあって、そこに鼻持ちならないものを感じる人たちがいるようなのもわからなくはないんだけど、僕はここで描かれた“百姓”というのは日本人のことで、菊千代が語るその“百姓”の特徴は日本人のそれだよなぁ、といつも思います。

そして“百姓”の出である菊千代も含めた「七人の侍」たちこそが、黒澤明の考える「理想」の日本人の姿ということじゃないだろうか。

映画で理想を描いたって別にいいでしょう。

僕が黒澤明にどこか信頼感のようなものを持つのは、主君に対する忠義とか抽象的な「愛国心」などというものではなくて、ただひたすら「民」のために恩賞にも縁がない戦いに身を投じる者たちを「本当の侍」として描いていることです。

水戸黄門」や「暴れん坊将軍」みたいに権力を後ろ盾にしているわけでもない。権力者は「焼け跡見物に来るのが関の山」「なんの役にも立たねぇ」と皮肉られている。ほんとに無名の侍たちが裸一貫で命を懸けるのだ。

こういう時代劇はあまり目にしたことがない。

最近妙に目につくようになった「愛国心」がどーだの「正しい日本人」がこーだのと抜かしてるかたがたは、この映画を目ん玉よく見開いてじっくりご覧になったらいかがだろうか。


この4Kデジタル・リマスター版は、やはり4K化された『ゴジラ』(1954)(感想はこちら)と同様にいまだにソフト化されておらず劇場でこそ観られる貴重なヴァージョンだから、上映される機会があれば今後も足を運びたい。

2016年の時にはまだ近くのシネコンで「午前十時の映画祭」がやっていなくて、だいぶ遠くまで朝早くから電車乗り継いで観にいったんですが、その後、街の中心のもっと近いところでやってくれるようになったので、かなり余裕を持って行くことができました。

平日の朝だし、お客さんは案の定年配のかたたちが多かったです。学生っぽい若い人たちも何名か見かけましたが。

でもそのお年寄りたちはちゃんと事前に情報をチェックして観にきてるんだよね。たまたま朝の10時頃に映画館に入ったというわけではない。

今の70代ぐらいの人たちって元気だし行動力もあって、興味があることには積極的なんですよね。

さらにはもっと年配の杖をついたおばあちゃんとか、時には車椅子のお年寄りも来てたりする。

駅に近いので、車じゃなくて電車やバスなどの公共交通機関を利用して来る人も(僕もですが)結構いるのでしょう。

今ちょうどカンヌでパルム・ドールを獲った『万引き家族』(感想はこちら)が話題でどこのシネコンにもお客さんが詰めかけてるから、『七人の侍』観終わって午後1時過ぎにロビーに出たらとんでもない人数の老人たちがひしめき合っていた。

おかげでそこの映画館で続いて他の映画を観るのを断念しました。

それでも閑散としてるよりも映画館が繁盛しているのは嬉しい。

七人の侍』は日本映画がもっとも盛んだった頃の映画ですが、老若男女の多くの人たちがやってくるシネコンで今こうやって時代を越えてクリアな画質と音質で最新映画と並んで上映されていることに喜びを感じています。

いい映画は何度も映画館で観たい。

長い年月の重みと映画そのものの面白さ。

同じく4K化された黒澤監督の『用心棒』(感想はこちら)と『椿三十郎』(感想はこちら)も上映されるので、楽しみです。


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