映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『竹取物語』


市川崑監督、沢口靖子中井貴一三船敏郎若尾文子石坂浩二岸田今日子伊東四朗出演の『竹取物語』。1987年作品。

衣裳デザインはワダ・エミ。音楽は谷川賢作

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栄えある第1回東宝「シンデレラ」オーディションのグランプリ、沢口“科捜研の女”靖子初単独主演作品。


映画オリジナルのキャラクターである目の不自由な少女、明野を演じている小高恵美は第2回グランプリ受賞者で、その後「平成ゴジラ」シリーズにレギュラー出演している。

ちなみに東宝「シンデレラ」には2000年に長澤まさみもグランプリにかがやいている。


沢口さんのことは1984年の『ゴジラ』(感想はこちら)ではじめて見てから、フランス人形みたいな女優さんだなぁ、と思ってとても印象に残っていました。

“サイボット靖子”と呼ばれもしたようにお世辞にも演技が巧いとはいえなかったが、あの当時、沢口靖子は超売れっ子で映画にTVドラマにCMと引っ張りだこだった(遠い目)。


刑事物語3 潮騒の詩』(1984)の頃。かわゆす(^ε^)


ゴジラ』のあと、NHK朝の連続ドラマ「澪つくし」のヒロイン役で全国的に顔が知られるようになった。

市川崑もまた、すでにこの映画の前年の『鹿鳴館』と翌87年の『映画女優』(おなじ年に2本の劇場公開長篇映画を監督していた)にも彼女を起用している。

その後、小室哲哉プロデュースで歌まで唄っている。

YouTubeなどでも確認できるが、しかし彼女のこの「歌」があまりに凄まじくて女版ジャイアンといっても過言ではないぐらいの破壊力をもった代物であった。

なんでこの人に歌を唄わせようと思ったのか、いまもって謎。

でも『ゴジラ』で使われたこの曲は例外的によかったと思う。

さよならの恋人 唄:沢口靖子
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で、『竹取物語』である。

公開当時、映画館で観て感動して、仲の良かったクラスメイトを連れて再度観に行ったりもした。

いまでは知る人ぞ知る作品としてすでにご存じないかたも多いだろうからどんな映画か解説すると、つまり竹から生まれた「かぐや姫」のお話…ってそのまんまである。

ただいくつか変更点はあって、原典ではときの帝(みかど)に求愛されてこれを断わり最後に「不老不死の薬」を渡したりするのだが、そこは大幅に改変されていて、姫に結婚を申し込む宮中の貴族たちのなかのひとりで中井貴一が演じる大伴大納言と相思相愛になる。

また「かぐや姫は宇宙人だった」という大胆な解釈(笑)がほどこされていて、月から彼女を迎えにくるのは牛車ではなくて“蓮の花びら”の形をした巨大な宇宙船。

観たことない人にはちょっと想像もできないトンデモ展開かもしれないが、巨匠市川崑はこれを大真面目に映像化したのだった。

かぐや姫の養父母である「竹取の造(たけとりのみやつこ)」と「田吉女(たよしめ)」は、それぞれ三船敏郎若尾文子が演じた。


いまは昔、過ぎ去りし80年代、さまざまな面白映画が作られてその後笑われちゃったりしてますが、僕はこの映画を観るたびにあの時代を思い出します。

たとえば大林宣彦ショパンの「別れの曲」に強い思い入れがあるように、市川崑はどうやらヘンデルの「ラルゴ」がお気に入りらしく、いくつかの映画に流している。

竹取物語』のクライマックスにも女性の合唱で使われてます。

僕は当時この曲を生まれてはじめて聴いて、まさに天上の歌のように感じたのでした。

それからというもの、この曲が流れると聴き入ってしまう。

いまじゃクラシックのなかでは「パッヘルベルのカノン」の次ぐらいに好きです。

最近では中島哲也監督の『告白』(感想はこちら)のエンドロールで使われていました。

Handel 'Largo' - The London Symphony Orchestra 
残念ながらサントラ音源はどこにもUPされてないので。
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さて、いまさらあらすじを記すまでもないんだけど、物語は──月から送られた“かぐや姫”が人間の夫婦に拾われ、“加耶”と名付けられて育てられる。急速に成長して類い稀なる美しさと評判になった加耶は、高貴な身分の者たちの求婚も無理難題を吹っかけて退ける。老夫婦が夜空を見ながら哀しみに暮れる娘にそのわけをたずねると、彼女は自分が月から来た者であること、そして近いうちに迎えがやってくることを告げるのだった。

以下、ネタバレあり。



80年代、日本映画の特撮技術は一時期その歩みが停滞していた。

そのことについては異論のある人もいるかもしれないが、でも70年代後期、日本の映画界はハリウッドの『スターウォーズ』にはじまるSFX技術のめざましい進歩に圧倒的に引き離されていた。

そして80年代に入ってもいろいろ間違えてる『さよならジュピター』(1984)のような珍作がつづいていた。

円谷英二の威光もはるか昔。

たとえばそれは84年の『ゴジラ』と同年公開の『ゴーストバスターズ』や『グレムリン』、あるいは同じ年に作られた『2001年』の続篇『2010年』などとの技術の差を観くらべてみればよくわかる。

具体的なことをいえば合成技術の進化が完全にストップしていた。

ハリウッドではブルーバックとモーション・コントロール・カメラを使った合成が多用されるようになった時代に、『竹取物語』とおなじ年に作られた『首都消失』ではいまだに従来の戦争映画のミニチュア特撮どおり、雲を綿で表現していた(綿製の雲というのは「平成ガメラ」でもやっているが)。

ゴジラ』の3年後に制作されたこの『竹取物語』にも、特撮技術の目立った向上は見られない。

いまはなき東宝大プールに浮かべられた船、それを襲う巨大な竜も操演で表現されている。

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もちろんいまとなってはそういったミニチュア特撮は懐かしいし、CGでなにもかも表現されてしまうようになった現在にくらべれば「味があった」といえるかもしれない。

ただ、あの当時は子どもであった僕にも日本映画の“特撮”は古臭いと感じられるものになりつつあったことはたしかだ。


この『竹取物語』のクライマックスに登場する“宇宙船”が部屋の丸い蛍光灯に見えてしまって、まるで巨大感がなかったことにもガッカリさせられた(蓮の花の形をした宇宙船、というのはちょっとイイなと思ったが)。

その頃はすでにあれがスピルバーグ監督の『未知との遭遇』(感想はこちら)のまるっぽ「猿まね」であることは知っていたので、なおさら本家を超えていないその出来に腹が立った。

10年近くも前の作品にさえかなわないなんて!

ならばヘタにあんなパクリなどやらずに、そのまま月から牛車が飛んでくればよかったのだ。サンタクロースのソリのように(いや、そっちの方がむずかしいか)。

市川監督がこだわったというガラス製の“天女”にもあきれてしまった。

キキララ”かよ!と^_^;

現在ならば、天女たちをこの世ならざる存在としてもっとリアルに描くことも可能だろう。

あの当時は、技術的にも、そして作り手たちの“センス”もまた、ハリウッドからかなりの遅れをとっていたのである。


しかしあの当時にかぎらず、その隔たりはいまだに縮まってはいないのかもしれない。

2年前に公開された『スペースバトルシップなんちゃら』を観たときに「ダメだこりゃ」と思った。

あぁ、まだやってんだ、猿まねを、と。


…と、特撮関連のいちゃもんつけだしたら止まんなくなっちゃうのでこのへんでやめておきますが、まぁそんないろいろと残念な思いをしながらも、しかし僕はこの『竹取物語』という映画を嫌いになるどころか、愛着を感じずにはいられない。

それはひとえに「沢口靖子」の存在によるのだが、しかし劇中でも「美しい美しい」と讃えられる“かぐや姫”の彼女のメイクはなんだかヘンだった。


眉毛が▲型になってて、せっかくの沢口靖子の美貌が台無しになっている。

どうもこのおかしなメイクもこれまた監督のこだわりだったようで、市川崑は91年の『天河伝説殺人事件』でも主人公の浅見光彦榎木孝明)に同様のメイクをほどこしている。

どちらも「この世ならざる者」を表現しようとしたらしいのだが、ハッキリいって意味不明だった。

さすがは吉永小百合主演の『つる -鶴-』でコントみたいな着ぐるみ製の鶴が機織りしてるとこをおもいっきり映すという狂った美的感覚をもった市川崑である。


そして、ひねりもへったくれもないストーリー。

かぐや姫が恋する中井貴一のライヴァルは春風亭“金髪豚野郎”小朝とコント竹田君。

“恋のさや当て”もなにも最初から勝負になっていない。

それに、僕ならかぐや姫の相手は貴族ではなくて平民にするけどなぁ。


竹取物語」の原典では、かぐや姫が「不老不死の薬」を渡して月に帰っていったあと、帝はその薬を山頂で焼く。

だからそこが富士の山と呼ばれるようになった、という話。

なんかロマンティックではないですか。

なんで映画で削っちゃったんだろうな。

「宇宙船」とか「宇宙人」とかが“今風”、という考え自体がダサ過ぎた。

まぁ、科学万博とかあった頃だもんな。コスモ星丸とかさ。

なんかさっきからずっと悪口しかいってませんが。


そんな感じで、昭和もそろそろ終わりにさしかかろうとしていた頃に作られたこの『竹取物語』はだいぶ壊れかけていたのだが、それでも僕はこの映画に強烈に「80年代」を感じて妙な感動をおぼえる。

「人間のまごころ、忘れません」
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調布基地跡地運動広場に建てられたという平安時代の街並みのセットは美しく、風に揺れる竹林の映像は幽玄で、いにしえの時代に僕をいざなってくれる。

エンディング曲「STAY WITH ME」のピーター・セテラの歌声はなんとも切なくて、この曲を聴くと僕はいつも涙ぐんでしまう。

この歌は『竹取物語』のために作曲されたようで、その後タバコのCMなどにも使われていました。

日本の時代劇に英語の主題歌、というのは現在だったら抵抗感があるけど、80年代ってたとえば深作欣二監督の『里見八犬伝』など、一種のファンタジー作品でもある伝奇物には意外とマッチすることもあった。

これは名曲だと思います。

Peter Cetera - Stay With Me
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竹取物語」は円谷英二の念願の企画だったらしい。

それが巡りめぐって市川崑が映画化することになったわけだ。

この映画以降、「竹取物語」は本格的に映像化されていない。

もちろんストレートにそのまま映画にしても面白くはないだろうけど、でも僕はこの悲恋の物語が古臭いとは思わない。

今度は宇宙船じゃなくて大きな蓮の花に乗った天女たちが迎えにくるようにしたらどうだろう。

むりやりSFっぽくしなくても、いまこそ古典的な「月よりの使者」の姿をファンタスティックに描けるんじゃないだろうか。

どなたか撮ってくれませんかね*1


かつて沢口靖子に夢中になった僕は、おこづかいはたいてファンクラブに入ったりNHK大河ドラマ独眼竜政宗」やゴクミと共演した民放のTVドラマ観たり(あまり面白くなかった)したけど、次第に彼女は映画には出演しなくなって、TVドラマはもともとほとんど観ないので、CMでのみ見かけるようになった。

そういえばあの当時、TVで加賀まりこが沢口さんのことを「あぁ、あの笑うと歯ぐきが出る人ね」といってるのを観て「怖ェな、ヴェテラン女優」と思ったっけ。

そのうち僕もファンクラブの会費が払えなくなってやめちゃったりしばらくご無沙汰だったけど、やがてまた2時間ドラマなどでよく見るようになって現在に至る。

この人の息の長さはスゴいなぁと思う。

父親役だった三船さんは亡くなっちゃったけど、母親役の若尾さんはいまもソフトバンクのCMで「お前には、まだ、は・早い」とかいってご健在だし。


かぐや姫は月に帰ったけど、沢口靖子はいまも地球でがんばっている。

僕はいまでも遠くからお慕い申し上げております。


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*1:高畑勲監督によるスタジオジブリのアニメーション映画『かぐや姫の物語』が2013年11月23日に公開。