映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『マイ・ボディガード』


※以下は、2011年に書いた感想に一部加筆したものです。


トニー・スコット監督、デンゼル・ワシントンダコタ・ファニング出演の『マイ・ボディガード』。2004年作品。R-15。

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メキシコシティ。ワケありの男クリーシー(デンゼル・ワシントン)は、古くからの友人レイバーン(クリストファー・ウォーケン)の紹介である一家の一人娘ピタ(ダコタ・ファニング)のボディガードを務めることになる。“迷える羊”だったクリーシーは次第にピタと心を通わせるが、ある日、ピアノのレッスンを終えた直後に少女は誘拐されてしまう。

以下、ネタバレあり。


クリムゾン・タイド』につづいてトニー・スコットデンゼル・ワシントンと組んだ作品。

公開当時、けっこう評判になってたと思うんだけど、僕は今回が初見。

どこかで「主人公の拷問のやり方がエグい」という感想を読んだ記憶があるけど、ここんとこグロめの映画をけっこう観てるせいか、それほどでもなかった。


思うに、デンゼル・ワシントンは現在ハリウッドでもっとも信頼できる黒人俳優じゃないだろうか。

まぁほかにもウィル・スミスとか人気の黒人俳優はいるけど、なにより演技力と男でも掘れそう、…いや惚れそうなセクシーさが全身から漂っているのが最大の特徴。

きっとインテリなんだろうな、と思わせる。


トニー・スコットの兄リドリー・スコット監督と撮った『アメリカン・ギャングスター』は映画館で友人たちと観て、共演のラッセル・クロウの“必殺カード投げ”とともにワシントン演じる黒人ギャングの非情さが印象に残った。

90年代にクロウと共演した『バーチュオシティ』では『アメリカン・ギャングスター』とは互いにまったく逆のキャラクターを演じているのが面白い。

バーチュオシティ』(1995) 監督:ブレット・レナード 出演:ケリー・リンチ
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さて、そんなデンゼル・ワシントンから絶賛された「小さな名女優」ダコタ・ファニングは、一見すると汚れを知らない「純真無垢」にも見えるが、しかしどこか大人びて鬱屈を抱えた少女をじつに巧みに演じている。

最近、日本じゃ子役ブームとかで、実際僕も注目している子はいるけれど、でも日本と海外の有名子役の違いはやはりその演技力だ。

以前、朝の番組で日本の子役の女の子が母親とケンカして泣く演技をみせていたが、その演出方法がとにかくおもいっきり泣いて叫ばせるというもので、僕はおおいに疑問をもった。

日本の子役を見ていて不満を感じる点は、とにかく大声でわめくとか泣くとか、そういうわかりやすい演技ばかりしてることだ(これは一部の大人の俳優にもいえる)。

なにかといえば映画やTVドラマで金切り声をあげて泣く。

「泣く」と「笑う」の中間にある微妙で繊細な演技がない。

それは「演技指導」がなってないからだ。

ここはそう断言させていただく。

台詞が棒読みでもオッケー。みんなで「スゴいスゴい」「天才子役」とおだてまくる。

せっかく才能の芽が出ても、演技者としてちゃんと育てようという気がないらしい。

「子役」を一人前の役者ではなくて、金を産む芸達者なペットぐらいにしか考えてないのかもしれないな。

文句があったら、こちらが絶句するぐらいの演技を子役たちから引き出してもらいたい。


ダコタ・ファニングはそういった大雑把な演技をしない。

彼女のかすかな表情の変化、そのひとつひとつに観入ってしまう。

デンゼル・ワシントンとの芝居で彼の演技に拮抗している。

これはおそるべきことだ。

ひと頃は「天才子役」としてもてはやされたが、最近はそれも落ち着いたようで、高校も卒業してティーン女優として活躍をつづけている。

彼女は2012年現在18歳で、すでに身長は166cm。下の乳歯が1本抜けててあーんなチビっ子だったのがもうそんなにおっきくなって。わーい、オジサン軽く背ぇ越されちゃった(^_^;)

妹のエル・ファニングは14歳で172cmというから、ほんとアチラのお嬢さんたちは発育が良い。大きいことはイイことだ。

ダコタは2011年春に日本で公開された『ランナウェイズ』(感想はこちら)では下着姿でステージで歌い踊っていた。

ただ、僕はあの映画で彼女の演技にビビッとくることはなかった。

いや、成長した彼女はキレイだったし、演技もがんばってたのはわかるんだけど。

なんだろう、ちょっと憑き物がおちたみたいに「普通」になってたというか…。

イヤイヤ、「本物」の演技力をもっているこの若き実力派女優には、今後もぜひ主役を張りつづけてほしい。


この『マイ・ボディガード』は、ちょうど『レオン』(感想はこちら)とウォンビン主演の『アジョシ』(感想はこちら)を足して2で割ったような映画だった。

おそらく『アジョシ』の方がこの映画の影響をうけてるんだけど。


映画は、かつては対テロ暗殺部隊に所属していたプロの殺し屋でありながら、現在はアル中で失職中の主人公がメキシコの金持ちの家にボディガードとして雇われるところからはじまる。

その理由はハッキリとは描かれないが、彼は過去に対する慙愧の念から酒に溺れていることがうかがえる。

おそらくかけがえのない存在をうしなったのではないだろうか。

最初は、子どものお守りなどまっぴらだ、という体でピタに距離を置いていたクリーシーだったが、彼女の両親の不在でふたりでともに過ごすうちにやがて彼の心境に変化がおとずれる。

映画は彼らのふれあいを1時間かけて丹念に描く。

だからこそ、その後のクリーシーの“復讐”のすさまじさに観客も感情移入できるのだ。


ちなみに、主人公と誘拐された少女の行く末は原作と映画版とでは異なる。

原作と映画とでは、彼らのたどる運命が互いに逆なのだ。

原作の方がより残酷だともいえる。

また、ラストはまるで実録物のような描かれ方がされているが、原作はA・J・クィネルの「燃える男(Man on Fire)」という小説で、れっきとしたフィクション。

どうせフィクションならラストはもっとカタルシスのある展開にしてもよかったんじゃないかと思ったんだけど。

また、この映画では1発の銃弾が小道具として出てきてそれは後半のある場面で使われるんだけど、ほんとならそれはクライマックスでこそ使われるべきだったんじゃないだろうか。

ピタと水泳用のピストルの銃声のくだりも、伏線になっているようでいまいちつながりがわかりづらい。

誘拐犯の最期もあっけなさすぎる。

あれは主人公が仕留めなきゃダメでしょ。


原作では舞台はイタリアだが、映画ではメキシコ。

メキシコが舞台なのになぜイタリア人の国際警察ローマ支部の前支部長が連邦捜査局(AFI)の局長(ジャンカルロ・ジャンニーニ)なのかちょっと不思議だったんだけど、もともとはイタリアが舞台の作品だったから、ということもあるのかな。

チョイ役でミッキー・ロークが出ていた。

弁護士役だが、あんなゴツくてあやしげな弁護士はいない^_^;

存在感抜群だけどまだ『レスラー』に主演する前だからか、彼の劇中でのあつかいは比較的軽い。

主人公に協力する現地の新聞記者役のレイチェル・ティコティンは、ポール・ヴァーホーヴェン監督のオリジナル版『トータル・リコール』でシャロン・ストーンと殴り合い、シュワちゃんとともに火星を救ってた人。


リドリーとトニーのスコット兄弟は以前は作風がわりとハッキリ分かれてたと思うんだけど、ここ10年ほどはどっちがどの作品を撮ったのかすぐさま判別できないぐらいに似てきたような気がする。

兄リドリーはよりメジャー寄りに、一方の弟トニーは安っぽい表現が影をひそめてよりスタイリッシュに(恒例の“チャカチャカ撮影&編集”はいまだに健在で、彼がお気に入りらしいこの手法は僕は正直苦手なんですが)。

デンゼル・ワシントンの使い方なんて、お互いを補完し合ってるようにも見える。

2011年にトニー・スコットの監督作品『アンストッパブル*1感想はこちら)を観たけど、極力安易なVFXに頼らないその実物優先の姿勢とド迫力のアクションシーンには恐れ入った。

そのかわりストーリー面はずいぶんと雑な映画だったけど。

もしもこのエンターテインメント性と、『マイ・ボディガード』で見せた演出力の融合がかなえばどんな凄い作品になるだろう、と想像するとワクワクする。

そのときはまたデンゼル・ワシントンの出番となるのだろうか。*2


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*1:遺作となった。

*2:12/08/19 トニー・スコット監督死去 ご冥福をお祈りいたします。