「妖怪・特撮映画祭」で上映された『大魔神逆襲』4K修復版を劇場鑑賞。1966年作品。
昨年から「平成ガメラ」もリヴァイヴァル上映されていたし、僕が住んでいる地域では9月中旬から始まって10月8日で終了したこの催しで昭和のガメラや1968年版の『妖怪大戦争』を観るのを楽しみにしていたんですが、あいにく時間が合わず(9~10月には観たい新作映画がたくさんあったこともあって)観られたのはこの『大魔神逆襲』4K修復版1本きりでした。
幼い頃、学校が休みの時期にTVでたまに昭和のガメラが放映されていたけれど映画館では一度も観たことがなかったから(昭和ゴジラは80年代にリヴァイヴァル上映で何本か観てるんだけど)、せめて1本だけでも観たかったんですが。
また、68年版の『妖怪大戦争』の方は90年代にレンタルヴィデオで観ていて、あれ以来観返していないから内容は全然覚えていないけど、こちらも劇場で観られるよい機会だったのでタイミングが合わなかったのはとても残念です。
今回、「妖怪・特撮映画祭」では2005年版の『妖怪大戦争』と2006年に作られた『小さき勇者たち~ガメラ~』も上映されていて、以前、三池崇史監督の他の作品の感想で書きましたが、僕は2005年版『妖怪大戦争』にエキストラとして出たから思い出深くて、『小さき勇者たち』の方は主人公の少年が住んでいるのが三重県の伊勢志摩で、クライマックスの戦いの舞台になる名古屋駅前の“JRセントラルタワーズ”はおなじみの場所だから、これらもせっかくなので映画館で15、6年ぶりに観たかった。
まぁ、いつかまたの機会に。
フィルムしおりをもらいました。
『ザ・スーサイド・スクワッド』のアイツではなくて、『宇宙人東京に現る』のパイラ人。
さて、大魔神の映画も僕は劇場で観るのはこれが初めてなんですが、なるほど、さすが「4K修復版」を謳っているだけあってとても半世紀以上前の映画とは思えないぐらい画質が鮮明で、かつての「特撮映画」の醍醐味をスクリーンで堪能しました。
客席数は100席とちょっとの小さなミニシアターでの上映でしたが、お客さんは新作映画並みに入ってました(もちろん、新型コロナウイルス感染症への対策はちゃんとされていたし、大勢、といっても混雑するほどではなく座席にも余裕があった)。やはりある程度の年齢層以上の世代のかたがたがほとんどでしたが、きっと中には子どもの頃にリアルタイムで観たという人たちもいるのでしょう。
古い映画を映画館で大勢で観るのって、ほんとに楽しいですね。
この『大魔神逆襲』は1966年に作られた「大魔神」シリーズ三部作の3作目で、観る前に他の人のレヴューに「前2作に比べると子ども向け」と書かれていてそれまでの2本よりも評価が低いような印象だったので、どうなんだろう、と思っていたんだけど、やっぱり巨大なミニチュアを使った特撮シーンの迫力を映画館で味わえたのは貴重な経験だったから、満足感がありました。
ほんと、観逃した他の作品も、ぜひまた再上映してほしいなぁ。
それにしても、1作目の『大魔神』と続篇の『大魔神怒る』、そしてこの『大魔神逆襲』の3本を1966年の1年間に順番に公開する、って凄いですね。
現在とは映画の興行のやり方が異なっていたのだろうとはいえ、恐るべき制作体制。現場は大変なことになっていたんだろうなぁ。
大魔神のスーツアクターを務めた橋本力さんは、68年版の『妖怪大戦争』の西洋妖怪“ダイモン”も演じている。また、『ドラゴン怒りの鉄拳』ではやはり悪役としてブルース・リーと闘っている。
今年はNHKのBSプレミアムで「ウルトラQ」と「ウルトラセブン」の4Kリマスター版をやっていて、「ウルトラQ」は先日最終話の「あけてくれ!」が放送されたばかりですが(僕は急にBSが映らなくなって観られなくなっちゃったんだけど)、「ウルトラQ」の最初の放送は1966年。「大魔神」シリーズと同じ年ですね。
また、「大魔神」シリーズの前年の1965年は、これも先日映画館で観たばかりの黒澤明監督の『赤ひげ』(感想はこちら)が公開された年。時代が繋がってる。
どれも4Kで鮮明な画質になったとはいえ、「ウルトラQ」と『赤ひげ』はモノクロで「大魔神」シリーズはカラーだから、それだけでも見た目の印象はずいぶんと異なる。
それから、『大魔神』と『大魔神逆襲』に出演していて、『逆襲』の方では主人公の少年・鶴吉を演じていた子役の二宮秀樹さんは、「ウルトラQ」の次に放映された「ウルトラマン」と同じ時期にやっていた実写ドラマ「マグマ大使」でメインキャストを務めている(番組と映画の撮影がカブったので、TVドラマの方は何話分か代役を立てたのだそうな)。
2021年に1965~67年の映画や特撮番組の4K版を劇場とTVで立て続けに観ている不思議(^o^)
さて『大魔神逆襲』ですが、確かに主役に子どもを据えたことで「子ども向け」という路線はハッキリしていて、大魔神に祈りを捧げるのは若い娘ではなくて少年。
特に子役たちの演技がいかにも「児童劇団」の子役のそれなので、映画が始まってからしばらくはその独特の台詞廻し(思いっきり棒読みの子もいたし)が気になってしょうがなかった。
『赤ひげ』の子役たちの演技も似たような感じで、拙い芝居で大人の脚本家が書いたおよそ子どもが喋りそうもない台詞を読まされてる感バリバリの演技だったんだけど、かつてはああいう子役の演技が「名演技」などと呼ばれていたんだな。
ただまぁ、しばらく観続けているうちにまるであの当時の映画館(僕は知らないけれど)にタイムスリップしたような気分で心地よくなってきたし、少年たちの冒険モノとして結構楽しかった。
時々、実景と見紛うほどリアルに見える鋭い岩山がマットペインティングで合成されていたりして、特撮がとても丁寧。
ロケ撮影もしっかりやっていて、セットで撮影されたショットとうまく組み合わせている。
あの雄大な自然の風景も今では失われてしまったものも多いんだろうなぁ。
北林谷榮さんが老婆役でワンシーンだけ出てるけど、『となりのトトロ』の20年前にもうおばあちゃん役やってたのね(北林さんは30代の頃から老け役を演じていた)w
二宮秀樹さんはちょっと黒島結菜さんを思わせる顔立ちで甲高い声も可愛くて、確かに子役スターとして人気があったというのも頷ける。
ただし、彼は中学入学と同時に俳優業を引退しているので活躍した時期は本当に限られていて、そんなわずかな期間に出演した作品がこうやって半世紀以上経ってから下手すると初公開時よりもクリアな画質で蘇って劇場で多くの人々に観られている、というのは、ご本人はどう感じてらっしゃるんでしょうね。
物語は、隣国の領主に囚われた同じ村の木こりたちを助けるために4人の子どもたちが険しい山を登って「武神像」に祈りを捧げ、村人たちが働かされている地獄谷を目指す。犠牲者を出しながら追っ手から逃げるが、やがて追いつめられて、村人たちにも危機が迫る。その時、武神像が大魔神と化して彼らを苦しめる軍勢を蹴散らし、その総大将にとどめを刺す。
前2作を今回観られなかったのでそれらと比較することはできないんですが、このシリーズは要するに「水戸黄門」などのTV時代劇と同様、悪代官だとか悪い侍に苦しめられている者たちを正義のヒーロー(ここでは神様)“大魔神”が救う、というパターンの繰り返しで、ゆえに物語のヴァリエーションも少なくて、そのため結局3作のみで終わったのも納得ではある。
その中で、この3作目は「雪」を表現した特撮に挑戦していて、手作りである「特撮」だからこそ目に心地よい。前作や前々作もそうだけど、同じことをCGでやっても別に面白くないだろうし感動もないだろうと思う。
大魔神って身長は4.5メートルらしくて、50メートルの昭和ゴジラや60メートルのガメラ、どころか18メートルのガンダムよりも小さい。
だから逆にまわりのミニチュアはラージスケールになって、より本物らしさが感じられる。
実物大で作られた可動式の大魔神も、着ぐるみのそれとショットを組み合わせることで本当にそこにいるリアリティがある。合成だけじゃなくて一つのショットに役者たちと一緒に写っていることで、しかも棒立ちじゃなくて腕を動かしたりしてるからより迫力が増す。
今年の夏には三池崇史監督が2005年版に続いて再度「妖怪大戦争」の新作を撮って(僕は観ていませんが)、そこで大魔神も復活したようだけど、CG製の大魔神にはオリジナル版のあの迫力と臨場感はけっして出せないだろうと思う。
そういう意味でも「ガメラ」と同様、現在では再現不可能な技術で作られている。
ガメラの方はCGの発達に伴ってゴジラと同様に最新VFXで新作を作ることは可能だろうけど、大魔神ってかつてのあの「特撮」技術と大規模なセット、大量のエキストラを動員する人海戦術を駆使してこその作品だと思うので。僕は観られませんでしたが、今回この催しで上映された『釈迦』や『日蓮と蒙古大襲来』のような往年のスペクタクル大作がそうだったように。
ゴジラも大魔神もCGで描かれてしまう今、あえて昔ながらのミニチュア特撮や“スーパーマリオネーション”の手法でサンダーバードを作る贅沢。そう、今だからこそ手作りの「特撮」は貴重なんだよね。
— ei-gataro (@chubow_deppoo) October 7, 2021
映画『サンダーバード55 / GOGO』メイキング映像 https://t.co/7ubzLLefcj @YouTubeより
わずか1本きりの鑑賞は寂しかったですが、でも満足感があったので、ぜひまたこのような機会を作っていただきたいです。