映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『アンストッパブル』


※以下は、2011年の劇場公開時に書いた感想に一部加筆したものです。


トニー・スコット監督、トニー・スコットとは今回5本目となるおなじみデンゼル・ワシントンと『スター・トレック』で若き日のカーク船長を演じたクリス・パイン主演の『アンストッパブル』。2010年作品。日本公開2011年。

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有毒化学物質を積んだ貨物列車が無人のまま暴走。ヴェテラン運転士と新米の車掌が列車を停めるために奮闘する。


暴走する列車、というとまず思い出すのが、スティーヴン・セガール主演の『暴走特急』。

暴走特急』(1995) 監督:ジョフ・マーフィ 出演:カートウッド・スミス
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沈黙の戦艦』の正式な続篇にもかかわらず(これ以外はどれも本来まったく別の映画)、セガール主演映画ではめずらしくタイトルに『沈黙の~』と付かない作品。

セガールが絶対死なないのは最初からわかってるし、それどころか傷ひとつ負わないんでハラハラするというより最強オヤジの無敵ぶりを笑いながら楽しむ映画だったわけだが、アクションシーンでは合成バリバリだったこの『暴走特急』に比べて、トニー・スコットが贈る『アンストッパブル』は原点回帰というか、喧伝されているようにいかにもなCGや合成画面を極力排して実際に列車を走らせてのスタントアクションを目玉にした映像は、まさに映画館で観てこその作品だと思う。


すでに観ていた友人のお墨付きだったので安心して臨みました。

面白かったです。

と、映画館で観ることの醍醐味を強調しておいて、あとはなんだかゴチャゴチャと難癖じみたこと書きますが、まぁあまり気にしないでください。

映画の粗探しをするなんて簡単なことですから。

スカッとする映画なのはたしかなんで。

以下、知ったらつまんなくなるネタバレはしないつもりだけど、ストーリーについていろいろ書くのでご注意を。


トニー・スコットの映画で初めて観たのはトム・クルーズ主演の『トップガン』。

トップガン』(1986) 出演:トム・クルーズ ケリー・マクギリス アンソニー・エドワーズ ヴァル・キルマー トム・スケリット マイケル・アイアンサイド メグ・ライアン ティム・ロビンス
Danger Zone/ケニー・ロギンス
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Top Gun Anthem/ハロルド・フォルターメイヤー&スティーヴ・スティーヴンス
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以来トニー・スコットというと僕はすぐこの作品とともにマーヴェリックやグース、アイスマンなどのキャラクターを思い浮かべる(続篇を撮るって噂だけどほんとか?)。

その後もこの監督の作品を何本か、タランティーノが脚本書いた『トゥルー・ロマンス』とか、たしかデンゼル・ワシントンとの初コラボ作品だった『クリムゾン・タイド』、ロバート・レッドフォードブラッド・ピットが共演した『スパイ・ゲーム』なんかも観たけれど、なんというか、超駄作がないかわりに「これぞ!」といえる大傑作も思い浮かばない、良くも悪くも「職人監督」というイメージがつきまとう。

クリムゾン・タイド』(1995) 出演:ジーン・ハックマン ライアン・フィリップ
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だから特にこの監督の作品をチェックする、ということもなく、劇場で彼の映画を観るのは先ほどの『スパイ・ゲーム』以来、約10年ぶり(DVDでは『デジャヴ』を鑑賞)。

で、今回はどうだったか。

まず、トニー・スコットにかぎらないけど、ここ何年間かさまざまな映画でずっと使われてる、やたら小刻みに繰り返される無意味な手動ズーム。まだやってんだな。

今までにも再三言ってるんだけど、ほんとに目障りなんで今後は無駄なズームは一切禁止、みたいな取り決めにしてくれないだろうか。

娘の誕生日を忘れそうになってわざわざ職場から電話かけて弁解する父親とか、妻を疑って逆上し家族に接近禁止命令を出された夫、何かにつけてクビをちらつかせて部下たちを信用しない上司など、ハリウッド映画文法にのっとったなんとも図式的なキャラクターたちが繰り広げるパニック・アクション。

たしかにデンゼル・ワシントンクリス・パインも頑張っている。自分の命を投げ出して人々を救うために。


だから彼らの大活躍を見てたらなんとなく流してしまいそうになるんだけど、それでも登場人物たちの描かれ方に釈然としないものを感じたのは僕だけだろうか。

まぎらわしいことしてちゃんと説明もせずに夫に誤解させたあげく、キレた夫を遠ざけて電話にも出ず、休みの日には寝てて人から知らされるまで夫が自分たちを大惨事から守るために頑張ってることに気づきもしない妻。

ワンマンな運行部長が一人で悪者みたいに最後に罰を受けてるけど(彼が責任を問われるのは当然だが)、そもそもすべての元凶はバカがちんたら仕事してたからなわけで。

ラストで呑気に別の職に就いたとか報告されるけど、少なくともコイツのせいで人が一人死んでるんである。

死んだヴェテラン運転士はデンゼル・ワシントンと長いこと一緒に働いてきた仲間だったんでしょ?

完全に無駄死にだよ、あれは。

ハッピーエンドみたいに終わらせてるけど、弔いのシーンぐらい入れてやれよ。

あのデブは転職の前にまずムショ行きでしょーが。

何が怖いって、デブがなまけてたら町一つが吹っ飛ぶ危機を招くという、信じがたいほど脆い安全システム。

ジュラシック・パーク』といい、使えないデブは嫌われてるなぁ(と自分のでっぱった腹をさすりながら思う)。

あれだけ夫を無視し続けてた妻がコロッと態度を変えるのも納得いかなくて。

クリス・パインは劇中で、糸がもつれていろいろうまくいかなくなった、みたいなこと言ってたけど、やっぱりなんか人物造形が大雑把すぎる気がした。

最後にやたらと「イエェ~イ!!」と、映画館の観客よりも盛り上がりまくるギャラリーたち(お前ら何もしてねーじゃねぇかよ!)に若干シラケてしまった自分がいたのだった。


…とまぁ、散々憎まれ口を叩いてしまったけれど、でも過剰な期待をしなければ普通に愉しめるとは思います。

観た人たちの評判はかなりいいようだし。

それにしても、この監督も兄貴のリドリーさんとともに精力的に映画撮ってるよなぁ。

そのパワーには素直に感服いたします。

この映画の成功で、まだまだこれからも快進撃は止まりそうにないですね。*1


追記:
この映画は「実話の映画化」というふれこみだけど、映画の冒頭には「実話に“着想を得た”」と記されているようにかなりの部分に脚色が施されており、たとえば有毒物質を搭載した車両が無人で暴走したのは事実だが、ヘリコプターを使って飛び乗ろうとしたりムチャな作戦でヴェテラン運転士が死亡、などの部分はフィクションらしい(実際にはこの事故での死者はいないとのこと)。それでこの映画の価値が損なわれるわけではないけれど、一応ご参考までに。

CSX8888号暴走事故(CSX 8888 incident, 別名 クレイジーエイツ事故)


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*1:12/08/19 トニー・スコット監督死去 この映画が遺作となった。ご冥福をお祈りいたします。