映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『トップガン』『トップガン マーヴェリック』連続上映


9月16日(金) より始まった、トニー・スコット監督、トム・クルーズ主演の『トップガン』(1986)、そして今年公開されたジョセフ・コシンスキー監督によるその続篇『トップガン マーヴェリック』の連続上映を観てきました。『トップガン』は4Kニューマスター版。

連続上映の告知を見ててっきりIMAXでの上映だと早合点していたんですが、当日劇場に行ってみたらIMAXシアターでは海賊のアニメをやってて「あれぇ~?」となって、なーんだ、通常のスクリーンでの上映か、と。

料金は2本合わせて一律¥3000なので、まぁ、そうなるかな。

でも、普通のスクリーンでも充分楽しめました。

僕は『トップガン』の1作目は劇場で観るのはこれが初めてで、これまでにTV放映やDVDでは観てますが、以前「午前十時の映画祭」で上映された際にも観られなかったので、いつか映画館で、という念願がようやくかなった。

これまでに何度も観ているからあらすじは知っていたけど、こうやって続けて映画館で観ることで物語の細かい繋がりや、何よりも36年の歳月の流れを実感することができたのでした。

一日1回ずつの上映だからどれぐらい混むんだろうと思っていたけど、平日ということもあってかまぁまぁの入りで、といっても空っき空きというほどでもなくほどよく席は埋まってて、そこのシネコンの会員だからゆったりとしたエグゼクティヴ・シートに座ることができて、1作目の上映時間は110分で2時間未満、2作目も131分だから2本合わせても長過ぎることもなく、10分の休憩を挟んで約4時間ほどを同じ席で過ごしました。

日本語字幕は2本とも戸田“なっち”奈津子。

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アメリカ海軍のピート・“マーヴェリック”・ミッチェル大尉(トム・クルーズ)は、相棒のニック・“グース”・ブラッドショーアンソニー・エドワーズ)とともにパイロットの精鋭たちを訓練する学校“トップガン”に入り、トム・“アイスマン”・カザンスキー(ヴァル・キルマー)らライヴァルたちと戦闘機の操縦の腕を競い合うことになる。民間の教官であるシャーロット・“チャーリー”・ブラックウッド(ケリー・マクギリス)と惹かれ合うようになったマーヴェリックだったが、訓練中に重大な事故が起こる。


続篇の『マーヴェリック』はほんとはもっと早く公開されるはずだったのがコロナ禍で散々延期されたものだから、新作公開に合わせてTVで1作目が再放送されたのもずいぶん前のことで、だからあらためてこうやって映画館で観ることができたのはかえってよかったかな。待った甲斐がありました。

トップガン マーヴェリック』の感想はすでにもう一つの方のブログに書いているので、こちらでは主に1作目について述べます。

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トップガン』にもともと特に強い思い入れはなかったんだけど、ちょうど少年期を過ごした時代に作られた映画だし、それから良くも悪くも80年代当時のハリウッドのエンタメ映画を象徴するような作品ですよね。その後の90年代もブイブイ言わせたジェリー・ブラッカイマー製作だし。トニー・スコットもまた『トゥルー・ロマンス』や『クリムゾン・タイド』など、記憶に残る作品を撮っている。

今年はシルヴェスター・スタローンが『ロッキー4』を再編集して作り上げた『ロッキーVSドラゴ』も公開されたし、それからトム・クルーズダスティン・ホフマンと共演した『レインマン』も「午前十時の映画祭」でついこの間観たばかり。

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『マーヴェリック』で現在のトム・クルーズを観てから『トップガン』や『レインマン』(1988年作品。日本公開89年)で80年代の彼を観る。

完全にトム・クルーズ・イヤーだね(おまけに“なっち”イヤーでもある。こんなに多くの映画で戸田奈津子さんの日本語字幕を“読んだ”年もこれまでにないんじゃないだろうか)(^o^)

トップガン マーヴェリック』で、クライマックスの峡谷でのミッションがそのまんま『スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望』(感想はこちら)のデス・スターのバトルだなぁ、と思ったんだけど、1作目の時点ですでにスター・ウォーズは参照されていて、亡き父のあとを追ってパイロットになった主人公が大切な存在を失って挫折を経験しながらも、最後には勝利を手にする物語だった。

『ロッキー』も『スター・ウォーズ』も70年代のアメリカン・ニュー・シネマの終わりを告げる映画で、『トップガン』もそれに連なる作品だということ(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』→感想はこちら も)。

超体育会系のノリで(まぁ、トップガンは軍隊なんだから体育会系なのは当たり前でしょうが)、主人公は「女をモノにする」。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で主人公のマーティ(マイケル・J・フォックス)も同じようなことを言っていた。

空母でマーヴェリックに出撃を命じる上官は、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズでマーティの通う学校の先生を演じていたジェームズ・トールカン。


彼が演じる“スティンガー”がマーヴェリックの素行を咎めて「司令官の令嬢を…」と言うと、グースが「ペニーのことか?」とマーヴェリックに尋ねる。

36年越しに、続篇でそのペニーが登場したわけですね。まさかその“令嬢”がジェニファー・コネリーだったとは(笑)

トップガンでマーヴェリックたちを指導する“ジェスター”役のマイケル・アイアンサイドポール・ヴァーホーヴェン監督の『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年作品。日本公開98年)でも教官を演じていた(同じヴァーホーヴェン監督の『トータル・リコール』→感想はこちら ではシュワちゃんを追う悪役)。


かつてヴェトナム戦争でマーヴェリックの父親とともにパイロットとして戦ったトップガンの司令官“ヴァイパー”役のトム・スケリットトニー・スコット監督の兄リドリー・スコット監督の『エイリアン』(1979) でエイリアンに大変な目に遭わされていた。


メグ・ライアンはあれからロマコメで売れて、いろいろあって最近はご無沙汰ですが、でも『トップガン』の時の彼女はまだほとんど無名だったにもかかわらず、いい演技を見せてくれてましたね。とてもキュートで。続篇では亡くなったことになってたのが残念ですが。


それから、映画の序盤でクーガーと一緒にF-14に乗っていて、グースが死んでしまったあと敵のミグとドッグファイトする時にマーヴェリックと組んでいたのはティム・ロビンスでしたね。


映画だと顔出ししてる場面がごくわずかだから、ずっと気づいてなかった。

終盤に無事任務を終えて着艦したあとのマーヴェリックの後ろでニコニコしてます。他の出演者たちよりも頭一個分ぐらい背が高いので、実際にはコックピットにちゃんと身体が収まらなかったらしいw

ティム・ロビンス主演の『ショーシャンクの空に』も今年リヴァイヴァル上映で久しぶりに劇場で観た。

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皆さん、今でもお元気だろうか。

『マーヴェリック』で初登場したペニーは、キャラクターとしてはチャーリーの役割をそのまま引き継いでいて、クビにされそうなマーヴェリックを励まし奮い立たせる。

そのあたり、女性の登場人物としてチャーリーもペニーも昔ながらの「男性主人公を支えるヒロイン像」からほとんど出ていないのは不満ですが*1、でもケリー・マクギリスもジェニファー・コネリーも魅力的な女優さんだから作品に馴染んでいたし、トム・クルーズともお似合いだった。

子どもの頃、学校でヴィデオでこの映画をクラスのみんなと観て、“Take My Breath Away(愛は吐息のように~TOP GUN LOVE THEME)”がかかってマーヴェリックとチャーリーのラヴシーンが始まると「エロいなぁ」と思ったのでした。

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それ以来、あの曲は「エロい曲」だと思っていたw 今聴くとちょっと笑っちゃいそうになるんだけど。いや、別にベルリンのあの曲自体は何もおかしくはないんだけど。

当時はあちらのエンタメ映画でよくあの手のラヴシーンが挟まれてたけど、なんか「エロい」ことやってるっぽいのは子どもながらにわかるんだけど、下半身は映されないから何をやってるのか意味不明で、なんで男がいつも身体を揺らしてるんだか(しかもスローモーションで)不思議だった。

当時は恥ずかしかったしラヴシーンも長めだと思ってたけど、久しぶりに観たらそんなに長くもなくて、当たり前だけどたいしてエロくもなかった。

ああいうシーンにドギマギしていた頃が懐かしいですね。

正直なところ、今観ると、出会ってクドいてキスしてベッドイン、なマーヴェリックとチャーリーの関係は「年上の美人教官」と知り合って恋をする、男の妄想というか「おっさんドリーム」そのまんまだし、逆にトム・クルーズのような若くてイケメンマッチョとのイチャコラを夢想する「おばちゃんドリーム」でもある。安い。


ケリー・マクギリスは、その後、集団レイプ事件を描いたジョディ・フォスター主演の『告発の行方』(1988年作品。日本公開89年)で頼りがいのある地方検事補を演じていて、フェミニスティックな女優さんというイメージがあるし、中には『トップガン』の前年に出演したハリソン・フォード主演の『刑事ジョン・ブック 目撃者』での彼女が好きだったから、男性に都合のいいようなチャーリーの役柄にがっかりした、という人もいるようで。

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僕は、続篇の『マーヴェリック』で“チャーリー”ことシャーロットの存在がまるでなかったかのように扱われていることに不満を感じてその旨を感想に書いたんですが、『マーヴェリック』で“マーヴェリック”こと主人公ピートが付き合う女性ペニー(ジェニファー・コネリー)が営むバーでの若手パイロットたちとのやりとりや、翌日にピートが教官だったことを知って気まずそうな顔をする彼らの様子などから、1作目を知っている観客はシャーロットのことを否が応でも思い出すし、作り手も意識して演出しているのがわかる。

ケリー・マクギリスは現在は俳優業とはある程度距離をとっているようだし、もしかしたらいろいろと映画業界に失望を味わってきたのかもしれませんね。

今回、こうやって劇場で1作目を、しかも今年公開されたばかりの続篇と続けて観ることができて、懐かしさとともにこの30数年の世の中の変化も大いに感じたのだった。

続篇の『マーヴェリック』については感想であれこれ文句も言いましたが、それでも僕はあの映画をこれまでに劇場で4回観ていて、今回で5回目。好きでなければそんなに観ない。

だから、丁寧に作られた続篇だと思いますよ。

トップガン』は大ヒットしたんだし、それこそ続篇を作ろうと思えばどんどん作ることもできただろうけど、トム・クルーズはこの映画の権利を自分で買ってまでして続篇の粗製乱造を阻止して、36年後に満を持してようやく2作目を世に送り出した。

自分を世に知らしめた映画を本当に大切にしていたんだなぁ、と思います。

トップガン』を冷戦の末期に作られた「アメリカ万歳映画」のように思っている人もいるだろうし、実際、この映画の公開後にアメリカ海軍への入隊希望者が増えたとか、日本でもモノマネ映画みたいな織田裕二主演の『BEST GUY』が作られたりしたし、今回の『マーヴェリック』の大ヒットに浅ましくも自衛隊が便乗しようとしていたりしますが、『トップガン』はちまたで言われるほど好戦的な映画でもなければ愛国心を鼓舞するような映画でもない。前にもどっかに書いたけど、戦闘機をレーシングカーに代えても成立する話。事実、のちにトニー・スコットは再びトム・クルーズ主演で自動車レースを描いた『デイズ・オブ・サンダー』を撮っている。

先ほどの『ロッキー』や『スター・ウォーズ』との関係とも絡めて『トップガン』を「ヴェトナム戦争で傷ついたアメリカの復活を告げる映画」として語っているレヴュー動画も観ましたが、確かに“ミグ”が相手だし時代が時代だけに当然冷戦は背景にあるんだけれども、国と国との戦い、みたいなことにはほとんど言及されない。ピート“マーヴェリック”が戦うのは、愛する人のためとか、この国のためとか正義のためにとか、そういう勇ましくて胡散臭いことではなくて、亡き父と同じ道を歩むためなんだよね。

“グース”ことニックと妻のキャロル、息子のブラッドリーたち、夫婦とか家族の繋がり、そして友情について描いている。それは続篇でも踏襲されていた。

ここでの国籍不明機とか某国とか“ミグ”というのは、主人公が成長していくうえでの障害の役割を担っているのであって、だからこの映画は「戦争映画」ではない。『スター・ウォーズ』が「戦争映画」ではなかったのと同様に。

『マーヴェリック』のメイキング映像でトム・クルーズが「海軍の一員であることを誇りに思う(戦闘機には軍のパイロット以外は乗れないので、海軍の一員という名目で乗っている)」と語っていたり、撮影に協力した米海軍や現役軍人たちがフィーチャーされていてまるで軍隊のプロモーション映像みたいだったけど、『マーヴェリック』の映画本篇もまた1作目と同様に「アメリカ万歳映画」にはなっていない(アメリカ軍はかっこよく描かれているから、そういう映画と受け取る人もいるだろうけれど)。

「戦争映画」というのは、たとえばトム・クルーズが89年に主演したオリヴァー・ストーン監督の『7月4日に生まれて』(日本公開90年)のような映画のことでしょう。

トップガン』と『トップガン マーヴェリック』を続けて観ると、この2本の映画たちが主演のトム・クルーズの人生を反映していることがわかる。この36年間の彼自身の軌跡が重ねられている。2本併せて観ることで、それはより一層強く感じられました。

1作目で若くて無謀だった青年は、無謀なのは変わっていないが今では若者たちの命を預かる立場にいる。かつての自分を見るような気持ちで亡き友の忘れ形見“ルースター”ことブラッドリー(マイルズ・テラー)を見ている。

父の背中を追っていた青年は、いつしかその背中で若者たちに自らの人生を語るようになっていた。

『マーヴェリック』で“アイスマン”=ヴァル・キルマーが再登場するのは感動的ですが、『トップガン』の1作目の撮影時にはヴァル・キルマーは嫉妬から主演のトム・クルーズを苛めていたんだそうだけど、そんな彼をこうやって続篇に呼ぶというのは凄いですよね。


トップガン』で訓練中にジェット後流が起こったのはアイスマンがモタモタしていたせいだと思うんだけど、なんでニックの死に自分は無関係みたいな顔してんだ?と思ってたのが、『マーヴェリック』で海軍大将になった彼があのジェット後流のために脱出する際に事故で亡くなったニックの息子ブラッドリーのことをピートに託そうと尽力するのが泣かせましたね。

ちょうどスタローンが『ロッキー4』の続篇として『クリード 炎の宿敵』(感想はこちら)を作って、そこでドラゴの物語にちゃんと決着をつけたように、『マーヴェリック』によってアイスマンの物語もしっかりと締めくくられたように思います。

ちなみに、戦闘機からの脱出の時にキャノピーに頭がぶつかって死ぬ、というような事故はほとんど起こることはないらしいですね。『クヒオ大佐』(感想はこちら)でネタにされてましたw

6月に公開が始まった『トップガン マーヴェリック』は現在も映画館で上映が続いていますが、今年は映画で80~90年代を振り返る、そして「現在」をあらためて見つめ直すような機会に恵まれていて、まるで1年間に渡る長い長いイヴェントに参加しているような気がしています。

トップガン』と『トップガン マーヴェリック』の連続上映を観終えて、今年もあと残すところ三ヵ月ちょっと。そろそろ熱い(暑い)夏が終わろうとしています。


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*1:パイロットの中の“紅一点”──ほんとは他にも女性パイロットはいるが、ほぼモブ扱い──モニカ・バルバロ演じるフェニックスがペニーとは異なる役割を果たすが、まだ途上、といった感じではある。フェニックスも印象深いキャラクターでしたが。