ロン・ハワード監督、ウィリアム・ボールドウィン、カート・ラッセル、ロバート・デ・ニーロ、ジェニファー・ジェイソン・リー、ジェイソン・ゲドリック、スコット・グレン、レベッカ・デモーネイ、J・T・ウォルシュ、ドナルド・サザーランドほか出演の『バックドラフト』。1991年作品。
殉職した父の後を継いで消防士になろうとシカゴに戻って来たブライアン・マカフレイ(ウィリアム・ボールドウィン)。だが彼が配属されたのは兄のスティーヴン(カート・ラッセル)が隊長を務める第17分隊だった。二人は徹底的に反目し合う。が、おりしもシカゴでは奇妙な爆発放火事件が続発。それは“バックドラフト”と呼ばれる逆気流現象を伴うものだった──。(Yahoo!映画のあらすじに一部加筆)
ネタバレがありますのでご注意ください。
「午前十時の映画祭13」で鑑賞。1991年の初公開当時、劇場で観ました。
「料理の鉄人」でもおなじみだったあのテーマ曲を聞くとアガりますね(^o^)
『アポロ13』もそうだけど、ロン・ハワード監督って90年代頃には何本か彼の映画を観て、どれも手堅い作品だったし、腕の確かな職人というイメージがあった。
メル・ギブソン主演の『身代金』(1996年作品。日本公開97年)もよかったなぁ。
2000年代に入っても、ラッセル・クロウ主演の『ビューティフル・マインド』や『シンデレラマン』を観たし、そして話題作だった『ダ・ヴィンチ・コード』とその続篇はパスしちゃったけど、2013年の『ラッシュ/プライドと友情』もやっぱり面白かった。
まぁ、そう考えると、代打で急遽登板となった『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018) は気の毒だったというか、監督の資質に合った題材ではなかったなぁ、と。
いや、ロン・ハワード監督はかつて剣と魔法のファンタジー映画『ウィロー』(1988) も撮っているけれど、でも、純粋なファンタジー映画とかSFなどよりも、やはり彼は現実社会を描いた“人間ドラマ”が向いてると思うし、そこにアクションだったりVFX映像を加えたリアリスティックな物語こそが得意分野といえるんじゃないだろうか。
もちろん、人間ドラマの中に娯楽性もしっかり入っているから映画が停滞することもない。
最近はNetflixで作品が配信されているようで、評判がよかったらしい去年の『13人の命』も残念ながら観ていないし、しばらくハワード監督の映画はご無沙汰なんですが。
さて、『バックドラフト』は劇場公開時に観て以来、何度かTVの地上波での放送でも観た記憶があるんですが、僕は長らく主人公のブライアンとイイ仲になるジェニファー役はてっきりブリジット・フォンダだとばかり思い込んでいたんだけど、実際にはジェニファー・ジェイソン・リーだった。二人とも当時は結構映画に出演していたし、『ルームメイト』(1992年作品。日本公開93年)ではそっくりな役だったからいつの間にか記憶がごっちゃになっちゃったのかも^_^;
そういえば、カート・ラッセル演じるスティーヴンの元妻・ヘレン役のレベッカ・デモーネイも、90年代には『ゆりかごを揺らす手』やチャーリー・シーンやキーファー・サザーランドと共演して悪女・ミレディを演じた『三銃士』など、TVで放映された映画でよく顔を見た気がする。彼女も最近では劇場でお目にかかる機会がないなぁ。
ブライアン役のウィリアム・ボールドウィンはボールドウィン兄弟の三男で、この映画ではニヤけた笑顔が役柄にぴったりだったし未熟さを残した若者の演技が見事だったけど、この映画以外で僕は彼を観ていないんですよね。
もっといろんな作品に出ていたような気がしていたけれど、ボールドウィン兄弟って何人もいるから、他の兄弟と混ざってしまったのかもしれない(笑)
長兄のアレック・ボールドウィンも『レッド・オクトーバーを追え!』(1990) は好きだったし、最近もいろんな映画でたまに顔を見ていたけれど、残念なことになってしまいましたね。*1
『バックドラフト』って続篇(2019年作品)があってウィリアム・ボールドウィンはそれにも出ているんですね(ロン・ハワードは製作総指揮。ドナルド・サザーランドも出演しているそう。カート・ラッセルは出ていない)。全然知らなかった。
しかし、この映画では若造役だったウィリアム・ボールドウィンが、今では還暦なんだなぁ。しみじみ時の流れの速さを感じる。
カート・ラッセルは、この映画以外でも『トゥームストーン』や『スターゲイト』、『エグゼクティブ・デシジョン』『エスケープ・フロム・L.A.』を劇場やレンタルヴィデオで当時観たし、2000年代以降も『ポセイドン』やタランティーノの『デス・プルーフ in グラインドハウス』、ジェニファー・ジェイソン・リーも出てた『ヘイトフル・エイト』(感想はこちら)、最近は「ワイルド・スピード」シリーズ(感想はこちら)やマーヴェル映画(感想はこちら)に顔出ししてますね。息が長い俳優さんだよなぁ。
『バックドラフト』のカート・ラッセルは髪を刈り込んで、もう男臭さ満載。
80年代もジョン・カーペンターの映画でおなじみだったけど、90年代にはさらに渋さと男の色気が増して、かっこよさと弱さを併せ持つ等身大のヒーロー、といった感じだった。今でもその魅力を保ち続けているのが凄いよね。
劇場公開当時は放火犯罪調査官のリムゲイル役について「なんでこの役をデ・ニーロがやってるんだろう」と思ったりもしたけど(あの当時は、とにかくロバート・デ・ニーロは映画に出まくってたから)、でも、彼の存在がこの映画の中でいい味付けになっているんですよね。カート・ラッセルやウィリアム・ボールドウィンたちとちょうど釣り合うようなバランスで人物配置されていて、しっかりと脇を固めている。
服役中の連続放火犯の役でドナルド・サザーランドが出ていたことを、今回久しぶりに観て「あぁ、そうだった」と思い出した。同じ年に作られた(日本では翌年公開)オリヴァー・ストーン監督、ケヴィン・コスナー主演の『JFK』でも出番は少ないながら、記憶に残る役柄を演じてましたね。『バックドラフト』での役は、ちょっと『羊たちの沈黙』(感想はこちら)のレクター博士(アンソニー・ホプキンス)入ってるのが面白い。2本とも同じ年の映画なんですけどね。
ドナルド・サザーランドって、僕は物凄く長いことお爺ちゃんを演じ続けているような印象があって、『スペース カウボーイ』(2000) で共演したクリント・イーストウッドと同じぐらいの年齢だと思っていたんだけど、今年88歳だからイーストウッドより少しだけ若いんだな。『バックドラフト』に出てた頃は、まだ50代半ばだったのか。
デ・ニーロとサザーランドのわずかなやりとりは名優同士の演技が光っていて、サザーランドと並んで負けない存在感、ということでもデ・ニーロの出演は必然だった。
爆風で吹っ飛ばされながら空中で身体を捻って画面からハケていくデ・ニーロがまたかっこいいんだ(どう見てもあれはスタントマンだが)w
火災の跡で煙草を吸いまくってるのが怖いんだけど^_^; 危険ではないのか?
デ・ニーロに限らず、ほんとに登場人物たちがみんなひっきりなしに煙草吸ってて(しかも火災現場で)、まだそういう時代だったんだなぁ、って。いや、だから危ねぇって。爆発したらどーすんだ。
場面を断片的には覚えていても、こうやってちゃんと映画館で観返すと、あらためて「あぁ、こういう話だったんだ」と。
“マカフレイ (McCaffrey)”という苗字からも、スティーヴンとブライアンはアイルランド系で(演じているカート・ラッセルとウィリアム・ボールドウィンもアイルランド系の血を引く。ちなみにロン・ハワード監督もアイルランド系)、アメリカの消防士や警官にはアイルランド系が多く、だから劇中でバグパイプ隊が出てくるのもそういうことなんですね。
初めて劇場で観た時にはわからなかった、映画の中に描かれているアメリカの歴史が見えてくるのが面白い。ロン・ハワード監督はトム・クルーズ主演の『遥かなる大地へ』(1992) でもアイルランド出身の青年を描いているので(トム・クルーズもアイルランド系の血を引いている)、自分のルーツに対する誇りやこだわりがあるんでしょうね。
まぁ、血気盛んなアイルランド系の兄弟が主役で、だからすぐ殴り合いの喧嘩をする、というのもある意味民族的なステレオタイプではあるんだけれど、自身アイルランド系の血を引くロン・ハワード監督が描いてるわけだから、そんなに間違ってはいないのかも(^o^)
代々消防士として命懸けの仕事をしてきたマカフレイ家の長男・スティーヴンは、弟のブライアンを心配するがゆえに彼の消防士としての適性を厳しく問うが、ブライアンはそれを兄の苛めだと思い込んで反抗する。互いに不器用だからこそ、ぶつかり合う。
この辺、凄くベタなんだけど、カート・ラッセルとウィリアム・ボールドウィンの二人ともいい芝居をしているのでグッとくるんですよね。
不審な爆発により人が殺害される事件が相次ぎ、状況証拠から、妻と別れて幼い息子のことでいろいろと意見の相違もあり荒れ気味の兄・スティーヴンがもしや…と疑うブライアン、というミステリーの要素が加わって、先ほどのデ・ニーロやサザーランドなどの芸達者たちが物語をさらに面白くしていく。
犯人が誰なのか、というオチは覚えていたけれど、その犯行の動機など、今の時代に繋がるものでもある。現場の人間たちの命を軽視して負担を強いる行政。
そのことへの怒りから関係者を爆死させてきた真犯人が、最後にその正体をうやむやにされてしまうのはどうかと思ったが。
…でも、とにかく面白い映画だよなぁ。
おそらく以前TVで観たのもかなり昔だと思うんだけど、30年ちょっと前の映画とは思えないぐらいに画面に力がある。
あの時代のアクション物って、どうしても技術的な問題からVFXの粗が目立ったりしてしまうものだけど、この映画の炎の表現は劇場の大画面で観返しても最近の映画と比べてまったく遜色ないばかりか、むしろその後作られた数々の作品よりもよっぽどリアル。
炎が天井に広がっていく映像で、多分ここはCGなんだろうな、という箇所が一部だけあったけど、それ以外は登場人物たちを襲う炎も、炎に囲まれた彼らの描写も、現場でほんとにやってるようにしか見えない(実際やってるっぽいし)。
カート・ラッセルがスコット・グレン演じるアドコックスの手を握りながら炎の中でぶら下がっているシーンも、合成には見えないんだよね。
ILMのVFXが最強だった頃の映画ですね。映像に説得力があるから、役者陣の演技にもよりリアリティが増す。
同じ日にこのあと某有名アニメ監督の最新作を観たんですが、そちらはブログでめっちゃ酷評してしまった(;^_^A でも、火事を描いた映画としては僕はこの『バックドラフト』の方がよっぽど面白かったし、映画としても好きだ。泣けたし。
ロン・ハワード監督には、ぜひまたこういう素敵な映画を劇場で公開してほしいです。
※ドナルド・サザーランドさんのご冥福をお祈りいたします。24.6.20
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*1:2021年、製作と主演を務める映画の撮影中に実弾入りの小道具用の銃を誤射して撮影監督を死亡させ、監督を負傷させている。