映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『リバー・ランズ・スルー・イット』


ロバート・レッドフォード監督、クレイグ・シェイファー、ブラッド・ピットトム・スケリット、ブレンダ・ブレッシン、エミリー・ロイド(ノーマンの恋人・ジェシー)、スティーヴン・シェレン(ジェシーの兄・ニール)、ニコール・バーデット(ポールの恋人・メイベル)、スーザン・トレイラー(ローハイド)、ジョセフ・ゴードン=レヴィット(少年時代のノーマン)、エディ・マックラーグ(ジェシーの母)、ロバート・レッドフォード(ナレーター)ほか出演の『リバー・ランズ・スルー・イット』。1992年作品。日本公開93年。

原作はノーマン・マクリーンによる同名の自伝的小説。

第65回アカデミー賞、撮影賞受賞。

日本語字幕は戸田奈津子

www.youtube.com

20世紀初頭のモンタナの壮大な自然を背景に、フライ・フィッシングを通して交流する家族の絆とそれぞれの葛藤を描く。厳格な牧師の家庭で育てられた、真面目な兄ノーマン・マクリーン(クレイグ・シェイファー)と自由奔放な弟ポール(ブラッド・ピット)。牧師の父(トム・スケリット)に習ったフライ・フィッシングで結ばれる2人は、やがてそれぞれの道を歩み始める。(映画.comのあらすじに一部加筆)


「午前十時の映画祭13」で鑑賞。

劇場初公開時に観ましたが、その後はBSで放送されたのを観たかもしれないけれど、それ以降観直していなかったので内容は忘れていました。


多分、僕がブラッド・ピットの出演作品を初めて劇場で観た映画だったと思うし(『テルマ&ルイーズ』→感想はこちら はヴィデオでの視聴)、彼を認識したのもこの作品じゃなかったかな、と。

1996年に『セブン』と『12モンキーズ』(感想はこちら)が立て続けに公開されてどちらも劇場で観たし、これも同年に日本で公開されたトム・ディチロ監督、スティーヴ・ブシェミ主演の『リビング・イン・オブリビオン/悪夢の撮影日誌』ではブラピがモデルとおぼしき人物が出てきて主人公の映画監督を苛立たせていた(ディチロ監督は自身の監督作『ジョニー・スエード』でブラッド・ピットにいろいろ振り回されたらしい)。

もうその頃には、すでにおなじみのスター俳優でしたね。

『リバー・ランズ・スルー・イット』では、主人公のノーマンを演じるのはクレイグ・シェイファーでブラッド・ピットは彼の弟役だったけど、やはり一番印象に残るのはブラピでした。

ロバート・レッドフォードの監督作品はその後も『クイズ・ショウ』(1994年作品。日本公開95年)や『モンタナの風に抱かれて』(1998) などを観ていますが、どれも一度も観返していないので内容はまったく覚えていません。

『モンタナの風に抱かれて』は当時勤めていた職場の人たちに誘われて観たんだけど、彼らは乗馬をする人たちだったから馬についての映画ということで興味を持ったようで。

あの映画には、10代半ばのスカーレット・ヨハンソンも出ていたんですよね。

レッドフォードさんは何かモンタナ州に思い入れがあるのかな。

馬や山や川とか草原など、そういうの好きそうだけど。

レッドフォード監督作品は、僕が観たのはあとは『声をかくす人』(感想はこちら)だけ。なかなかいい映画でしたが。

レッドフォードが出演した映画は、デミ・ムーアと共演したエイドリアン・ライン監督の『幸福の条件』(1993) を何か他の映画と2本立てで観たし、ブラピと共演したトニー・スコット監督の『スパイ・ゲーム』(2001) も観たと思う(すでにうろ覚え)。

その後は、アベンジャーズの映画に出てたのを観たぐらい。

何年か前にTVで『大統領の陰謀』(感想はこちら)を、またリヴァイヴァル上映で『明日に向って撃て!』(感想はこちら)を観ました。

かなり久しぶりに観た『リバー・ランズ・スルー・イット』のブラッド・ピットは確かに若くて美形だったけど、この映画での彼も今でもおなじみのいたずらっ子のような顔つきをしていて、これは彼の癖なのか、それともあえてそういう演技としてやってるのかわかんないんだけど、時々しゃくれ気味な口をポカーンと開けたアホ面を見せるんですよね。ああいう顔、他の映画でもよくやってる気がするけど。

同じ美形でも、ロバート・レッドフォードはあんな崩れた顔はしないからね。


ブラピは30年前からずっとあのままだったんだな、って思いました(笑)

『リバー・ランズ・スルー・イット』って日本語の片仮名タイトルはなんだか風情がないし、なんとなく意味がわかるようでよくわかんないので(人生にはいつも川が流れている、みたいなことらしいけど)、もうちょっとマシなのをつけてもらいたかったですが。

この映画で僕は初めて“フライ・フィッシング”というものを知ったんじゃなかったかな。ちょうど同じ頃に友人たちとキャンプ場で川に鱒を放してもらってフライ・フィッシングを生まれて初めてやったことを思い出した。

楽しい想い出ですが、僕は釣りにハマることはなかったのでフライ・フィッシングをやったのもその時だけ。

『リバー・ランズ・スルー・イット』のストーリーについても全然覚えていなかったけど、再鑑賞してみると小さなエピソードがいくつも描かれるという感じで、何か大きな物語があるわけじゃないので覚えていなかったのも無理はないと思ったし、正直なところ途中でちょっと退屈だな、とも感じてしまった。

いや、1917年から26年ぐらいを描いていて、モンタナ州ミズーラが舞台でノスタルジックな雰囲気だし、レッドフォード自身がマクリーン兄弟の兄・ノーマンのナレーションの声を務めている時点でブラッド・ピット演じる弟のポールはおそらく生きてはいないことがうかがえるので、老いた主人公が過ぎ去りし懐かしき日々を思い出しながら今も釣りを続ける、そういう静かな感動を呼ぶ映画であることはよくわかりましたが。

まるで絵画のような映像がほんとに美しかった。なるほど、オスカーの撮影賞を撮っただけのことはある。

ポールは先住民の娘と付き合っていて、そこがもともと先住民たちの土地であったことがわかる。

しかし、白人たちはあからさまにその女性・メイベル(ニコール・バーデット)を差別していて、バーで彼女がポールにエスコートされて入ってくるとジロジロ見つめるし、注文も取らない。テメェらが先住民の土地を奪ったくせに、まるでパレスチナに対するイスラエルみたいだな。その苛立ちからかメイベルは常に不機嫌そうで酒に酔っている。

ノーマンとポールの父は牧師だし、バプテストだのメソジストだのといかにもキリスト教社会っぽいんだけど、白人たちのこの無自覚さがほんとに不愉快。

ノーマンは独立記念日の祭りで知り合ったジェシー(エミリー・ロイド)と付き合い始めるが、シカゴに行っていた彼女の兄・ニールとほとんど無理やり釣りに一緒に行かされることになって、しかしニールはいけ好かない男で釣りに興味もなく、釣りもせずに密造酒を飲ませる店で知り合った元ミス・ミズーラだったかミス・モンタナだったかの酔いどれ女性“ローハイド”と素っ裸で寝ていて日焼けし過ぎて間抜けな姿を晒したりする。


メイベルにしても、ニールにしても、それぞれのエピソードの中に登場するだけで彼らが1本の大きなストーリーの主要人物になっているわけじゃないので、あぁ、自伝映画だなぁ、と。

主人公が子ども時代を思い出す『スタンド・バイ・ミー』とか、失われた過去の楽しかった時代を振り返る、そういうタイプの映画はけっして嫌いではないんですが。

エミリー・ロイド演じるジェシーは、いかにも当時の若い女性みたいな感じで、ちょっと70年代あたりにレッドフォードが出てた頃の映画を思い出したりも。

日焼けで赤ムケして痛みのために服も着れずに全裸のまま帰ってきた兄を見てノーマンに冷たく「帰って」と言い放ったかと思えば、「車がない」と彼に言われて送っていく。


近道するために線路の通ったトンネルに車で入っていったり、そのまま高くて狭い橋を渡ってノーマンをヒヤヒヤさせたり、おきゃんなところもある人間っぽい女性だけど、のちに妻となる彼女についてはおそらく原作者の自伝的小説ではもっと記述があったんだろうところをだいぶ短めにしているために、もうちょっとジェシーについて知りたかったな、と思った。

この映画は、弟・ポールのことを中心に描いているからしょうがないんですが。

父親役がトム・スケリットで、母親役はブレンダ・ブレッシンだったんですね。

トム・スケリットさんは『エイリアン』や『トップガン』(感想はこちら)などでおなじみだし、ブレンダ・ブレッシンさんは、僕はその後彼女の出演した『嘘と秘密』(1996) や『リトル・ヴォイス』(1999) を観ました。

子どもの頃のノーマンを、子役時代のジョセフ・ゴードン=レヴィットが演じていて、一目で彼だとわかった。成長しても顔立ちが変わってないんだよね。可愛かった。


これは、父と息子の物語でもある。母親もいるけど、いつも息子たちを心配していたり料理を作っている役割で、時代をしのばせますね。

父親は堅いがけっして力ずくで息子たちに言うことを聞かせようとする強権的な男性ではないところは素晴らしいと思ったけど、そんな父も次男の暴走を止めることはできなかった。

賭け事にハマって喧嘩か何かで殺されてしまったポールのあまりにあっけない最期に、どうして幸せな時間はずっと続かないのだろう、と溜め息が出てしまう。

人というのは、誰もがとても危ういバランスでかろうじて生きながらえているのかもしれない。

劇中でノーマンとポールがビールの中にバーボンを入れる「ボイラー・メーカー」を飲んでましたね。旨そうだけど悪酔いしそうだなぁ。

主演のクレイグ・シェイファーさんは、僕はこの映画以外で彼の出演作品を観た記憶がないんだけど、90年代頃ってそういう俳優さんがいっぱいいた気がする。


90年代って僕が意識して映画を観だした頃なので、映画の内容と自分自身の青春期が重なって、こうやって時間を経てあらためて観ると初公開当時とはまた違った感慨があります。

酒に酔ってヒャッハー!と雄たけびを上げて騒ぐ若者たちの姿は、今の僕にはただやかましくてハタ迷惑な連中にしか見えないけれど、自分にだってそうやって友人たちと青春を謳歌していた時代は確かにあったから、それらもまた遠い昔の想い出のようでもある。

30何年かぶりに映画館で観たこの映画で意外にも深い感動に浸ることはなかったけれど、それでもブラッド・ピットの変わらぬやんちゃな笑顔と自然の美しさに少し心が洗われたようでした。


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