ヤマザキマザック美術館で開催中の「レトロ・モダン・おしゃれ 杉浦非水の世界」(2月25日まで)に行ってきました(※画像はお借りしました)。
これまで恥ずかしながら杉浦非水 (1876~1965) という画家を知らなかったし、僕自身はおしゃれとも無縁ですが、そのレトロでモダンなポスターに惹かれて、ヤマザキマザック美術館に初めて足を運びました。
新栄町の地下鉄の一番出口を出てすぐ右側にあるこの美術館のことは以前から知っていたし、いろいろといい企画をやっている、と聞いてはいたんですが、これまで行く機会がなかった。
それで、去年の3月にミニシアターの「名演小劇場」が休館してから新栄には行ってなかったのが久しぶりに出かけることに。
この展覧会では土曜日に学芸員のかたのガイドがあるということで、朝の10時20分頃に到着。すでに定員の15名は埋まっていましたが、ついて歩いていくのは構わない、ということだったので一緒に行かせていただきました。
杉浦非水さんの経歴についてや、展示されている絵について、その背景を詳しく、またユーモアも交えて解説してくださいました。
1時間ほどの予定が結局12時近くまでのガイドツアーとなって、なかなか聴き応えがありました。
杉浦非水の妻は歌人の杉浦翠子(すぎうら・すいこ)で、彼女は夫とは歳が結構離れていてなかなかエキセントリックな性格だったが彼とは馬が合った、とか、さまざまなエピソードが面白かったです(笑) おふたりはモボ・モガ夫婦だったんですね。
おかげさまで、ただ何も知らずに絵を眺めているだけではなくて、非水さんが活躍された時代や名古屋との繋がり(翠子さんは福澤桃介の妹で、桃介と川上貞奴が暮らした邸宅を移築した「文化のみち二葉館」には非水の原画をもとにしたステンドグラスが使われている)についても知ることができたし、もともと日本画を勉強していながら黒田清輝に師事して洋画の手法も取り入れ、アール・ヌーヴォーやアール・デコの影響を受けたことなど(洋行していたが、関東大震災が起こったために数年間の予定を1年で切り上げたことなども)、とても勉強になりました。
どうもありがとうございました。
勤めていた三越のポスターや広報誌の表紙絵、さまざまな商品(ヤマサ醤油やカルピスなど)や鉄道のポスター、ジャパン・ツーリスト・ビューロー(現JTB、日本交通公社)の機関誌「ツーリスト」、たばこのパッケージなど、多くのデザインを手掛けられていたんですね。
また、杉浦非水のデザインに絡めて、エミール・ガレのガラス工芸品や家具なども飾られていました。
美術展に行くのは去年の9月の「マリー・ローランサンとモード」展以来ですが、杉浦非水とココ・シャネルの服が繋がるのも面白かった。
植物へのこだわり、ということでは、ちょっと前にやっていた朝ドラ「らんまん」の主人公のモデルになった牧野富太郎さんを思い浮かべたりも。
本当にリアルで、しかも美しい植物の木版画を数多く残しているんですね。
「非水百花譜」はまるで手描きのような精巧さですが、非水の原画にあのように見事な色をつけた職人さんたちの腕も素晴らしいですね。
写生が好きで、本当に写実的な絵を描く人だからこそ、デフォルメもできる。
館内で販売されていた500円の解説冊子には今回の出品作品の写真や解説が載っていて、内容の濃さでもお得です。
ヤマザキ マザック美術館で観た「杉浦非水の世界」とても見応えありました。レトロ🔸モダン🔸おしゃれ(^o^) pic.twitter.com/RK6oJKP3fY
— ei-gataro (@chubow_deppoo) January 27, 2024
僕は絵のことは全然わからないけれど、でも時々アルフォンス・ミュシャを思わせる絵(育児記録書「子宝」など)があったり、時代の移り変わりに合わせていろんな絵柄を試されていたんですね。
日本のグラフィックデザインの先駆者、と呼ばれるのもよくわかる気がする。
建物の4階でこの催しをやっていたんですが、ガイドツアーのあとに、今度はヘッドフォンで解説を聴きながら最初からじっくり観返していたら2時間半以上かかってしまって、しかも5階にはロココ時代から現代までの絵画がズラッと展示されていて、ルノワールとかピカソなんかもあるし、さすがに見応えがあり過ぎて全部をちゃんと観ている気力・体力がなかったので、結局3時間ほどいて最後の方ではちょっと駆け足気味に観てまわり、美術館をあとにしました(そのあと、映画『哀れなるものたち』を鑑賞)。
初めてのヤマザキマザック美術館、広くて綺麗で見応えあってなかなかよかったです。
また興味のある催しをやっていたら、ぜひ行きたいです。
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