映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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「近代日本の視覚開化 明治──呼応し合う西洋と日本のイメージ」


愛知県美術館で4月14日(金) から5月31日(水) まで開催されている「近代日本の視覚開化 明治──呼応し合う西洋と日本のイメージ」を観てきました。

www.artagenda.jp


しばらく美術館はご無沙汰だったので、何か興味ある催しをやってないかな、と思って調べたところ、「明治」というキーワードにピンときたので。

いや、別に僕は明治時代に詳しいわけでもなんでもないですが。

明治というと、なんとなく夏目漱石とか愛知県犬山市にある「明治村」などを思い浮かべて、レトロな展示品を想像していたものだから。

で、観にいってみたんですが、ゴールデンウィーク中にもかかわらず場内は結構空いてて、でもまぁ、なんとなく予想はしていたし、空いてる美術館って広くてくつろげるので好きだからゆっくり鑑賞してきました。


「明治展独案内」という配布物に詳しい解説が書かれてあって、なかなか読み応えがありました。担当者のかたがたの力の入れ方が違っている。


観る前は前述の通り、どちらかといえば博物館的な展示(要するにいかにも“明治時代”といった感じの歴史的なモノたち)を想像していたのだけれど、ここで展示されていたのは明治に描かれた絵画だったり、その時代に作られた工芸品、撮られた写真などが主で(※愛知県や名古屋市に深く関係するモノも多数展示されていました)、あの当時は国が率先して美術品や工芸品などの海外への輸出を推し進めていて、多くの職人たちが積極的に西洋の技術を取り入れていったことがわかりました。→展示目録


日本の美術品って、海外では明治よりも以前の江戸時代とかまだ西洋化される前のモノが高く評価されているようなイメージがあるし、事実、今だって外国の人たちが日本文化に期待するのはサムライだとかゲイシャだとかニンジャ、あるいは神社仏閣だったり昔のモノだったりするから、明治以降の──特に絵画など──ってどうなんだろ、って思うんですが、でも、文明開化後にジャポニスム人気でたくさんの工芸品は海外に輸出されてたわけだし、芸術と工芸の違いなど、興味深くはある。

七宝焼の表面の細工など本当に見事で、寄木細工も思わず見惚れてしまう美しさですよね。これもまた芸術だよな、と。


ちょっと前に評論家の山田五郎さんが黒田清輝にからめて日本の美術界に苦言を呈していた動画を観たんですが、ちょうど今回の展示会が扱っている時代と重なる話だし、「日本的」なものとはなんぞや、ということや、明治以降、西洋絵画の技法を学びながらも次第にガラパゴス化していった日本の美術界についてなど、今に繋がる問題を語られていて面白かったです(まぁ、村上隆の評価はともかくとして…)。

www.youtube.com


正直なところ、もともと美術的な素養がないので、今回展示されていた絵画──従来の日本画と西洋の油絵の技法を組み合わせたような作品の良さ、がちゃんと理解できないし、美術品としての価値はよくわかんなかったんですが、歴史的に貴重なものであろうことは理解できた。日本人が一所懸命に西洋文化を吸収してそれを自分たちの作品に取り入れようとしていた、まさにその過程なのだから。


ただ、それは芸術家たちの自発的な試み、新しいものへの挑戦ももちろんあっただろうけれど、「鹿鳴館」に見られるような(今ちょうど朝ドラ「らんまん」でもその辺の時代を描いてますが)多分に「富国強兵」のために国策として為されていたんだ、ということもわかった。

ei-gataro.hatenablog.jp


「和洋折衷」だとか、「明治大正ロマン」みたいなものをぼんやりと想像してレトロな世界に浸れるのを期待していた僕に、この展示会は当時の国や美術界、職人たちがもっと具体的にどのような取り組みをしていたのか教えてくれたのでした。

名古屋市にある「ノリタケ」についても説明や展示があって、明治時代に設立された陶磁器を扱うこの会社も当然「明治」という時代にかかわりがある。

月岡芳年の絵もあって、以前、名古屋市博物館で観た芳年の作品と今回の展示、その時代が繋がっているのがわかって、なるほど、こうやっていろんな芸術家、職人たちが時代とともに結びついていくんだな、と。

ei-gataro.hatenablog.jp


西洋に憧れ、追いつけ追い越せと躍起になって邁進した時代は遠く過ぎて、政府が形だけ推し進めていた「クール・ジャパン」はその空っぽさを呆れられて、文化など理解もしない連中の中抜きの道具にされた「日本文化」は、これからどうなっていくのだろう。

かつてこの国が国民一人ひとりよりも「国家」を優先した結果どうなったか考えると、明治のあの頃を単純に「よかった」などとは言えないし、時代を逆行させるような真似はすべきではありませんが、それでもあの当時はもうちょっと誰もが真面目に西洋文化から学ぼうとしていたのではないか。そして彼らが生み出したものを現代の僕たちは享受している。

いろいろ勘違いや間違いはあったにせよ、先人たちが努力して培ってきたもの、真摯に学んで遺してきたものは大切に守っていきたいですよね。

そこから僕たちが学び取れるものは(反面教師的なものも含めて)たくさんあるでしょうから。


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