映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『瞳の奥の秘密』


※以下は、2011年に書いた感想です。

すみません、10年以上前にDVDで視聴して以来観返していないので内容をまったく覚えていなくて、ソレダ・ビジャミルさんが出演されたビクトル・エリセ監督の最新作『瞳をとじて』の公開に合わせて記録を残しておくために投稿しました。


フアン・ホセ・カンパネラ監督、 リカルド・ダリン、ソレダ・ビジャミルほか出演の『瞳の奥の秘密』。2009年作品。日本公開2010年。アルゼンチン映画(スペインとの合作)。

第82回アカデミー賞外国語映画賞受賞。

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1999年。刑事裁判所を定年退職した主人公ベンハミン(リカルド・ダリン)は、1974年におこった新婚の若い女性の強姦殺人事件についての小説を書こうとしている。当時彼とともに事件にかかわった元上司のイレーネ(ソレダ・ビジャミル)と再会したベンハミンは事件を回想していくが、やがて意外な真相を知ることになる。

以下、ネタバレあり。

アカデミー賞受賞作品ということでタイトルは知ってたけど、劇場では観逃していました。

途中までは、なんでこの映画がアカデミー賞を受賞したのかわからなかった。

なんか普通のサスペンスドラマだなぁ、と。

たしかに映画の3分の2あたりに登場するスタジアムでの超絶的な長廻し(上空からキャメラが降下してくるところやバックの大勢の観客にはCG合成も使用)は見どころではあるが、それでも語り口に斬新なものがあったとか俳優の演技に特別感動をおぼえるとかいったことはなかった(出演者の演技は巧みだったと思うが)。

スタジアムでの驚異的な疑似ワンショット映像のメイキング
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題名の“瞳”については、スペイン語の原題にはさまざまな意味が込められているらしいが、よくわからない。

互いに惹かれ合っているベンハミンとイレーネのまなざし、被害者の夫の眼や写真の中で被害者をみつめる男の目つきなど、“瞳”がキーワードになってはいる。


それでもちょっとピンとこないところがあった。

この映画は過去におこった未解決事件の真相を追う本筋と、主人公ベンハミンのイレーネに対する想い、彼が25年間感じてきた“虚しさ”についての物語が同時に描かれる。

「真の愛」という言葉が出てくるようにそこにはロマンティックな要素も込められていて、ある意味古典的な作劇ともいえるのだが、なんかそこが僕にはしっくりこないのだ。

一度は逃げられたものの、事件の犯人らしき男ゴメスはスタジアムでの追跡劇で捕まる。

しかし終身刑になるはずだった彼は釈放されて大統領のボディガードになる。

なぜそんなことが許されるのか映画では詳しい説明がないので、当時のアルゼンチンでは兇悪な犯罪者でも極右組織のために利用できるなら殺人事件すらもみ消したのだ、と了解するしかない。

で、映画の後半で、はたしてゴメスは本当に犯人だったのか、そして釈放された彼はその後どこへ行ったのかが描かれる。

この映画にはフラッシュバックで描かれている箇所がいくつもあって、たとえば被害者の夫モラレスがゴメスを車のトランクの中で殺す場面と、妻リリアナに乱暴している場面。

映画を観終わった頃にはそれらのフラッシュバックがおそらくはベンハミンの想像だったんだろう、とわかるんだけど、観てる最中はこれがミスリードというか、ハッキリいってストーリーをわかりづらくしている。

夫のモラレスは妻の殺害犯人を捜すために1年間も仕事の帰りに駅で見張っていたぐらいだから、当然ながら彼が妻を殺した犯人であるはずがない。

それでもこの映画をDVDで一度しか観ずに返却してしまったので、事件の真相について自分の理解が正しいのかどうか自信がなくなってしまった。

この映画はアルゼンチンで異例のヒットをしたそうだし、アカデミー賞も獲って日本でもファンはけっこういるみたいだが、さっきからいってるように、陰惨な殺人事件という題材と愛の物語という組み合わせにチグハグな印象を受けてしまって、僕はあまり高い評価ができない。

ベンハミンとイレーネの別離のフラッシュバックが実は小説に書かれたフィクションであり、本当はそんなに劇的なものではなかった、というくだりはとても腑に落ちたけど。

小説ではなくてルポルタージュの方がよかったのではないか?

その中に創作が入っている、というふうにした方が、よりベンハミンのイレーネに対する想いが際立った気がする。

壊れて「A」の字が打てなくなったタイプライターでベンハミンは小説を書くのだが、最後に彼が自分の手書きのメモに1字加えて別の意味の言葉にする場面も、スペイン語がわかれば感動的だったのかもしれないが、心動かされることはなかった。

今回いろんな人のブログを覗いてみてあらためてわかったのは、こういう普段あまり見かけないさまざまな国の映画の熱心な支持者がけっこういるんだな、ということ。

カンパネラ監督はアルゼンチンでは何本も作品を撮っている人らしい。

当たり前なんだけど、世界には僕なんかがその存在すら知らない多くの映画があって、日本人でもそれらを観て語り合っている人たちがいる。

僕に作品の良さを見極める眼がないのか、アルゼンチンについてまったく知識がないこともあってか残念ながら感銘を受けることはできなかったけれど(劇中に流れるピアノの旋律はとても美しかった)、アカデミー賞とかかわりがなかったらまず観なかった作品を目にできたのはよかったと思います。


Reineさんというかたのブログを参考にさせていただきました。
azafran.tea-nifty.com


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