テリー・ギリアム監督、ジェフ・ブリッジス、ロビン・ウィリアムズ、マーセデス・ルール、アマンダ・プラマー、マイケル・ジェッター、キャシー・ナジミー、トム・ウェイツほか出演の『フィッシャー・キング』。1991年作品。日本公開1992年。
第64回アカデミー賞助演女優賞(マーセデス・ルール)、第48回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)受賞(※銀獅子賞は『ギターはもう聞こえない』のフィリップ・ガレル、『紅夢』のチャン・イーモウと同時受賞)。
過激なトークで人気を集める売れっ子DJジャック(ジェフ・ブリッジス)。ある日、彼の発言がきっかけで銃乱射事件が起き、地位も名誉も失ってしまう。3年後、すっかり落ちぶれたジャックは、暴漢に襲われたところをホームレスのパリー(ロビン・ウィリアムズ)に助けられる。パリーが3年前の事件で妻を亡くしたことを知ったジャックは彼の力になりたいと考え、2人は奇妙な友情で結ばれていく。(映画.comより転載)
「午前十時の映画祭12」にて、『レナードの朝』に続いてロビン・ウィリアムズ主演作品。
テリー・ギリアム監督作品は去年の12月に『ジャバーウォッキー』(1977) を観たばかり。
2021年に「午前十時の映画祭11」で『未来世紀ブラジル』(1985) を観ています。
『フィッシャー・キング』は1992年の初公開当時に劇場で観ていて、面白かったし、ジェフ・ブリッジスとロビン・ウィリアムズが主演だったこと、ヒロイン役が『パルプ・フィクション』(感想はこちら)の“ハニー・バニー”役で記憶しているアマンダ・プラマーだったことも覚えていたけれど、あれ以来ちゃんと観返していなかったので内容はあまり覚えていなくて、だからあらためて映画館で観られることを楽しみにしていました。
今さらだけど、アマンダ・プラマーってクリストファー・プラマーの娘だったのね。お父さんは『12モンキーズ』と、同じくギリアムの『Dr.パルナサスの鏡』に出てますが。
それにこの『フィッシャー・キング』は『パルプ~』より前に観てるはずだから、この映画で彼女のことを知ったんだな。
それから、確認してみると、同じ年に彼女が尼さん役で出演していたエミリオ・エステベス主演の『フリージャック』も観ていた。『パルプ・フィクション』の時点で知ってる俳優さんだったんですねぇ。長らくご無沙汰なのでそんなことも忘れていた。
『フィッシャー・キング』って、『レナードの朝』の翌年の作品だったんですね。
そーいや、同じ年にスピルバーグの『フック』も観たんだよな。『フック』も内容をからきし覚えていませんが。
80年代後半から90年代にかけて、ロビン・ウィリアムズをよく見ていた。逆に2000年代以降は、覚えているのは『インソムニア』で笑顔で人をぶん殴る凶悪犯役ぐらい(あとは『A.I.)の声の出演)。
『レナード~』ではロバート・デ・ニーロ演じるレナードを治療しようとする医師を演じていたロビン・ウィリアムズが、その次の作品では自分が治療される側を演じているというのがまた(^o^)
ロバート・デ・ニーロは『ブラジル』に神出鬼没なダクト修理屋役で出ていたし、『パルプ・フィクション』に出ていたブルース・ウィリスはギリアムが当初『ブラジル』に出演を希望していたのが果たせず、この『フィッシャー・キング』でもオファーしたが断わられて、『12モンキーズ』(感想はこちら)でようやく彼の主演がかなったという因縁があったりと、あの界隈は人脈が広いようでずいぶんと狭いんだな^_^;
『12モンキーズ』はお気に入りなのでずっとリヴァイヴァルをラヴコールしてるんだけど、なかなかかないませんね。
そういえば、ジェフ・ブリッジス演じるジャックの恋人アン役のマーセデス・ルールも90年代に何本かの映画で見たんだよなぁ。『ビッグ』(感想はこちら)でも、それから『ラスト・アクション・ヒーロー』でもお母さん役だった。
それが『フィッシャー・キング』での彼女は自分からジャックに迫っていく肉食系女子を演じていて、アカデミー賞まで獲っているのに今回久しぶりに観返すまで忘れていた。
でも、多分、彼女がアカデミー賞を受賞したことがきっかけで観ようと思ったんだよな。
忘れてたけど、でもマーセデス・ルールさんの演技はさすがオスカーを獲得しただけあって、今回の再鑑賞で一番印象に残ったし素敵でした。
1990年代の初めに作られたこの映画は、今ならいろいろと引っかかる「男らしさ」的なものをチラつかせてもいるし(ジェフ・ブリッジス演じるジャックがアンから求められているものや、ロビン・ウィリアムズ演じる騎士気取りのパリーがアンに対して行なうセクハラ的言動など。あと、殺されたパリーの妻がやたらと「美人だったのに」と容姿を強調されるのも、なんだかなぁ、と)、アンも彼女自身が言ってるように「古風な女」ではあるんだけれど、それでも魅力的な女性なんだよね。ああいう人はいそうだと思わせる。
散々アンに世話になって、やることもやってるのに「私を愛してる?」と尋ねられて「わからない」と答えてブチギレられるジャックのバカさ加減、クズっぷりには身に覚えがあるだけに心が痛い^_^;
アマンダ・プラマー演じるリディアの極端なドジっ娘ぶりは今の目で見るとあざと過ぎるけど、ロビン・ウィリアムズがあんな感じ(笑)なのでちょうどいいカップルではある。
そういえば、この映画観たあと「餃子の王将」で昼食をとりました。ギョーザは落とさなかったけどw
心を病んだパリーだけに見える、炎を吐きながら迫ってくる“赤騎士”の絶望感をもたらすような圧倒的なまでの迫力と巨大感が素晴らしい。
ラストの解決はあれでいいんだろうか、という疑問もなくはないし上映時間は138分あるけど長さを感じさせない面白さがあったし、映画の冒頭でジャックがラジオ番組で無責任に放った暴言が大惨事を巻き起こすのは、まるで現在の社会をそのまま映し出しているようにも感じられる。
トム・ウェイツがカメオ出演していて、なかなか深いことも言う。
ヴィデオを借りにきてジャックにお薦め作品を尋ねたらポルノを渡されちゃう女性客を演じてた女優さんに見覚えがあると思ったら、ちょっと前に金曜ロードショーで放送されていた『天使にラブ・ソングを…』で尼さん役だったキャシー・ナジミーでした。そっか、劇場公開されたのあの頃だっけ。
それ以外でこの映画で印象的だったのが、マイケル・ジェッター演じるホームレスのキャバレー歌手。
見かけはハゲたヒゲのおじさんなのに歌声は女性、というなかなかインパクトのあるキャラクターで、彼女のおかげでパリーはリディアをアンのヴィデオレンタルショップに呼ぶことができたのだし、陰の功労者ですよね。妙に可愛いんだよなぁ。
愛すべき「オカマ」キャラというのはこれ以前にもいろんな映画に登場しているのだろうけれど、彼女の描き方にはテリー・ギリアムなりの愛を感じたのでした。
自分を助けるために水を汲んで差し出された盃こそが探し求めていた“聖杯”だった、というわかりやすい寓話だったけれど、バブルが弾けた時代に作られたこの映画には2023年の今に通じるものが大いにある。忘れていたものをもう一度見つめる必要がある、という教訓でもある。
テリー・ギリアム監督には、またこういう現代の大人のおとぎ話みたいな映画を撮ってもらいたいなぁ。
残念ながら、4月から始まる「午前十時の映画祭13」のラインナップの中に『12モンキーズ』は入っていませんでしたが、またの機会に。
この次は1958年版の『無法松の一生』(感想はこちら)を観ようと思います。
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