映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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『キング・コング』(1933年版)


メリアン・C・クーパー、アーネスト・B・シュードサック監督、フェイ・レイ、ブルース・キャボット、ロバート・アームストロング、フランク・ライヒャー、ヴィクター・ウォン、ノーブル・ジョンソンほか出演の『キング・コング』。1933年作品。

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映画監督カール・デナム(ロバート・アームストロング)は無名の新人女優アン・ダロウ(フェイ・レイ)を新作の主演に抜擢し、撮影クルーを連れて南海の孤島へやって来る。そこには、島民たちから神と崇められる巨大な怪獣コングがいた。島民たちはコングへの生贄にするためにアンを連れ去り、デナムたちは島の奥へと救出に向かう。(映画.comより転載)


名古屋市名東区の名東文化小劇場での「めいとうシネマvol.63」で上映された『キング・コング』を観てきました。

僕はこの催しに参加するのは初めてだったんですが、1940~50年代の往年のハリウッド映画を定期的に上映しているようで、今回の上映はポスターを見て知って、たまたま時間ができたので足を運んでみました。

観る前からなんとなく予想はしていたけれど、おそらく結構前のブルーレイか何かの映像ソフト(下手すりゃDVD)を投影しているんだろうなぁ、という画質は…最近の映画館でリヴァイヴァル上映されている4Kでデジタルリマスタリングされた作品群を観慣れていると「これで入場料取っていいのかな」と思っちゃうレヴェルではあったんですが(許可とか取ってるんだろうか。いや、地方自治体のイヴェントだから取ってるんでしょうが)、でも観客の大半は高齢者のかたがたで(平日の昼間だからそうだろうけど)、ワンコインで大勢で集まってスクリーンで映画が観られる、というのはやはりいいものですよね。

次回の上映はフレッド・アステア主演の『バンド・ワゴン』(感想はこちら)なのだそうで。

さて、レイ・ハリーハウゼンのお師匠さんであるウィリス・オブライエンストップモーション・アニメを担当した本作品は円谷英二に影響を与えて、その後『ゴジラ』(1954) 制作のお手本になったことでも有名だし、モンスター映画の名作として映画史に残る作品ですが、実は僕は今回この映画を初めて観たんですよね。

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2005年のピーター・ジャクソン監督によるこの映画のリメイク作品は劇場公開時に観たんですが、これもいろいろと話題となった(って、僕はリアルタイムでは知りませんが)『タワーリング・インフェルノ』(感想はこちら)のジョン・ギラーミン監督の1976年の『キングコング』すらも未鑑賞で、特撮シーンを断片的に目にしたことしかなかった。

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それで、ようやく「世界第8の不思議」こと(劇中では第7までは説明されない)元祖キング・コングの映画を観ることに。

今年は『ゴジラvsコング』の続篇『ゴジラxコング 新たなる帝国』が公開されるので、それに合わせたんでしょうかね。めいとうシネマの上映作品を選んでいるかたは意外とその辺のトレンドを読んでらっしゃるんだろうか。観客はそういうことにあまり興味なさそうなご年配のかたがたなんですが^_^;

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お客さんはわりと来ていたし、途中でコングがティラノサウルスと闘ってTレックスの口を引き裂いたあと、その口を手でぷらんぷらんとする場面では笑ってる女性も。

鑑賞後は「面白かったね」とお連れのかたに感想を述べている女性もいた。

コングは獰猛ながらも、最初からユーモラスな雰囲気を漂わせていたんですね。

ストーリーはシンプルだからわかりやすいし、どこか古典的な映画のお勉強をしているような気分にもなれるし。

ゆえに、人間ドラマの部分はほんとに書き割りめいていて、さすがに大真面目に見てられないところもある。

ブルース・キャボット演じる一等航海士のジャック・ドリスコルは、最初のうちは映画監督のカール・デナム(ロバート・アームストロング)に女優として雇われて乗船したアンに面と向かって「迷惑なんだよ」などとなかなか酷い態度をとっているんだけど、あっという間に「どうやら君のことを愛しているようだ。君の方は?」とかホザきだす。なんだこのツンデレ野郎は。


昔の映画では、こういう初めはヒロインに対して冷たく接していた男が実は…みたいな話が無数に作られていたんだろうな。

それで、アンの方も、そんな唐突にコクられるようなトンチキな場面であっちゃり「私も♡」とか答えてキスしちゃったりする。

アンとドリスコルの取ってつけたようなラヴロマンス要素はほんとに余分だった。

このいかにも頭の悪そうな脳筋キャラはピーター・ジャクソン版ではしっかり変えられてましたね(職業を脚本家に変更。演じたのはマッチョなイメージがないエイドリアン・ブロディ)。オタクは嫌いだからね、ああいうジョックス男は。

デナムの食えないペテン師ぶり(こいつが諸悪の根源じゃねーか)はジャック・ブラックが引き継いでましたが。

ピージャク版コングも僕はその後BSだったか民放での地上波放送でだったか忘れましたが、一度ぐらい観返したきりで(何しろ3時間以上あるので)以降は観ていないから、このオリジナル版『キング・コング』の鑑賞後に無性にリメイク版が観たくなったのでした。

1933年のオリジナル版でヒロインのアン・ダロウを演じたフェイ・レイさんはピーター・ジャクソン監督のラヴコールでもしかしたら2005年版のラストの「美女が野獣を殺した」という台詞を言う役でカメオ出演してくれたかもしれなかったのが、惜しくも2004年に亡くなってしまったために果たせなかったのだそうで。

その時にピージャク版コングでアンを演じたナオミ・ワッツはフェイ・レイに会ったんだけど、「ほんとのアン・ダロウは私だけ」と言われたんだとかで。

オリジンとしてのプライドがあったんでしょうね。

この映画でのフェイ・レイは、ちょっと栗山千明にも似た涼しい目をしたビューティで、とにかく悲鳴を上げまくる。それもキャー!!という可愛いものじゃなくてスピーカーの音が割れそうな金切り声に近い。


正直なところ、この彼女の叫び声がなかなか耳障りだった。もうちょっと悲鳴にもヴァリエーションを持たせたらよかったのに、と。

こうやって見ると、ナオミ・ワッツさんはわりとフェイ・レイさんの顔立ちに似てる、というか似せてたな、と思いますけどね。


ピーター・ジャクソン監督はコングとアンの心の交流を丁寧に描いていて、そこではアンはただギャアギャアわめいているだけではなかった。そこんとこは作品としてしっかりアップデートされていたと記憶しています。

ジャクソン監督はコングに対してそれだけ強い思い入れがあったんですよね。彼をただ人間に退治される凶暴なモンスターだけで終わらせたくはなかったんでしょう。

もっとも、1933年版のクライマックスの摩天楼のてっぺんで繰り広げられる複葉機とコングの闘いで、機銃で撃たれたコングが自分の身体から流れる血に触れて何度も見せる戸惑いと憂いを帯びた表情など、ここでも彼はけっして「悪」として描かれているわけではなくて、人間に勝手に都会に連れてこられて見世物にされて、混乱の中で暴れだしやがて倒される怪物の哀しみが表現されていて、この映画が今もって名作とされているのもウィリス・オブライエンの職人技によるあの絶妙なコングの演技があったからでしょう。


見た目も人間に近くて、豊かな顔の表情も見せるキャラクターだからこそ、コングは単なる悪役では終わらないんですね。それはゴジラと共演した映画でも踏襲されている。

古典として楽しめる一方で、いわゆる現在のコンプライアンスに照らし合わせるとアウトな表現もあって、原住民の描き方なんか、コングのために自分たちの村の女性を生贄に捧げるわ、アンに目をつけて彼女をさらって代わりにその生贄にしちゃうわだし、それを演じてるのが明らかにアフリカ系の人たちで、昔からキング・コングというのは黒人の差別的なメタファーではないかと言われてきたけれど、そう誤解されてもしかたがないぐらい人権的な配慮には欠けている。

まぁ、その後作られた東宝の怪獣映画でも原住民の描写はいろいろ問題アリでしたが。


また、ヴィクター・ウォン(『ラストエンペラー』→感想はこちら などに出演していた中国系の同姓同名の俳優とは別人)演じる船のコックのチャーリーは昔の漫画に出てくるラーメン屋の店主みたいな恰好をしていて、彼の喋る台詞が日本語字幕では「サイボーグ009」の張々湖みたいな「~アルヨ」言葉。さすがに「ヲイヲイ」と思ってしまった。いつの日本語訳?


アンがさらわれたのに気づいてみんなに知らせたり、結果的にチャーリーはキャラが立っていたし、続篇の『コングの復讐』にも出ているらしいので、それはそれで映画に貢献してはいたんでしょうが、彼の侮蔑的な描かれ方そのものが当然ながら今では許されないでしょう。

アンの描き方、劇中での扱われ方が酷かったように、このあたりはもうそういう時代だったから、としか言いようがないですが。

その辺の人間ドラマの古めかしさを救っていたのが、繰り返すようにオブライエンのコマ撮り特撮。


草食恐竜がやたらと荒ぶってたり、実物大で作られたコングの頭部がハリボテ感満載だったり微笑ましくもありますが、俳優たちとコマ撮りのコングや恐竜たちの合成がお見事で見応えありました(谷に落ちる人間たちが一人ひとり下の岩に激突するさまをいちいちしつこく撮ってるのが笑えてしょうがなかったですがw もちろん、そこは人形で撮影)。


1954年の『ゴジラ』にも、消防車が横転する場面でコマ撮りが使われていたけれど、『キング・コング』や『原子怪獣現わる』など、ストップモーション・アニメによる特撮へのオマージュだったのかな。

やっぱりここからいろいろ始まったんだ、と思うと、偉大な映画だ。

映画史に残る作品だもんね。

できれば、いつかデジタル修復されたヴァージョンを劇場で観たいですが。

ゴジラxコング』公開に絡めてリヴァイヴァル上映してくれないかな。


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