映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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『ガメラ 大怪獣空中決戦』DOLBY CINEMA版

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金子修介監督、伊原剛志中山忍藤谷文子螢雪次朗小野寺昭本田博太郎長谷川初範ほか出演の『ガメラ 大怪獣空中決戦DOLBY CINEMA版を劇場鑑賞。1995年作品。

特技監督樋口真嗣。音楽は大谷幸

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太平洋上でプルトニウムを積んだ船舶の前に突如姿を現わした巨大な環礁。草薙(小野寺昭)の保険会社が所有する船に海上保安庁の米森(伊原剛志)が同行して調査を開始する。どうやら謎の環礁は生物らしいことがわかる。同じ頃、鳥類学者の長峰中山忍)は恩師が調査に行っていた九州の五島列島の孤島にむかうが、そこで巨大な肉食の怪鳥と遭遇する。やがて3羽の怪鳥が福岡に移動。自衛隊によるドーム球場での捕獲作戦が決行されるが、海で発見された巨大生物もまた福岡ドームを目指していた。 


平成ガメラ」シリーズ(95~99年)の第一弾。

初公開当時、映画館で観ました。

とっても面白くて何度も劇場に足を運んだ覚えがあります。

今回、その作品が25年ぶりに劇場で上映されることを知って、楽しみにしていました。

ただ、DOLBY CINEMAでの上映はわずか1週間で僕が住んでるところの公開館は1館のみ一日1回の上映なので、初日になんとか時間作って観にいってきました。

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入場者プレゼントで予告篇の<フィルムしおり>もらった♪

金曜日の昼間だったけど、お客さんは僕を含めてそのほとんどが冴えない風体のおじさんやおじいさんばかりで、なんか客層の偏りがハンパなかった(;^_^A

何年か前に観た『遊星からの物体X』のことを思い出した。あの時と同様、客席は埋まってるのにほとんど女性がいない。あと若い人もあんまり。

ハリウッド・ゴジラやシンゴジには女性客が詰めかけても、所詮“ガメラ”を観にくる女子はいないんだな、と。

さて、僕はDOLBY CINEMA(ドルビーシネマ)というのは今回が初めてで、通常料金(僕は1200円の株主優待券を使用)+500円で観られるんですが、なるほど、スクリーンもそれなりに大きいし、色や音もよいということで、上映前には特に「黒」の色調が素晴らしいと強調されていた。

正直なところ、映画を観てる最中はそのあたりの凄さはあまりよくわかんなかったんだけど^_^; ただ、DOLBY CINEMA用に新しく調整された音響は迫力あったし、フィルムの映像も鮮明でしたね。

鮮明になった分、合成のエッジがより目立つようになってたのはご愛嬌ですが。

ところどころCGが使用されているものの、まだデジタル化以前の映画で合成も光学によるオプティカル合成のためもあってハリウッド版ゴジラシン・ゴジラVFX(視覚効果)などを見慣れてるとかなり苦しいし温かい目で見守る必要があるんですが(笑)、手作り感溢れるミニチュア撮影は楽しいし、昔ながらの特撮映画とか怪獣映画が好きな人なら愛すべき作品だと思うんですよね。

まぁ、だからおじさんばっかが観にきてるんですが。

特技監督樋口真嗣さんは、それまでは「神の視点」から撮られていた怪獣映画のミニチュア撮影を極力人間の目線で怪獣たちを見上げるような撮り方をすることでリアリティを出しています。それは画期的なことだった。

「平成ゴジラ」のようにステージの中にビルのミニチュアをズラッと並べて引きの画で撮る、というような方法を予算的にとれないこともあって、ホリゾントやライトの代わりに屋外の本物の空と太陽の下で、本物のビル街の景色を借景として取り込みながら手前にはビルの写真のパネルを置いたりして工夫している。

これまで僕たちが「怪獣映画」で観たかったけど観ることができなかった映像を見せてくれたんですね。

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平成ガメラ」シリーズも1作ごとにVFXのクオリティが上がっていってミニチュア撮影とCGの融合も進んでいくんですが、僕はこの第1作目のまだちょっと野暮ったさも残る「特撮」がなんだか愛おしくもあるんですよね。

それは、たとえば同じ金子修介監督が今度はゴジラを撮った『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』ではあまり感じることはできなかった。『GMK』も「ミレニアム」シリーズの繋がりを断ち切って白目の恐ろしいゴジラを登場させたりシノラーを悲惨な目に遭わせたり、故・天本英世さんが渾身の演技を見せてくれたりと、見どころはあるし人気作ではあるんですが。

なんていうか、この『ガメラ 大怪獣空中決戦』では昭和の時代のガメラ映画のおおらかさと90年代の最新技術や特撮センスが融合されていて、そこに僕は惹かれるんです。

平成ガメラ」といえばこの1作目よりもむしろ北海道を舞台に自衛隊の活躍がより多く描かれる2作目『ギオン襲来』の方が世間では人気が高いらしいことは知ってるし、1作目は「王道の怪獣映画」、2作目は『シン・ゴジラ』を彷彿とさせる“非常時”における「災害シミュレーション映画」、3作目は少女の成長を絡めた「ジュヴナイル物」と、三部作すべてを異なる作風で撮り上げたことはヴァラエティに富んでてよかったと思うんですが、個人的な好みでいえば僕は1作目が一番お気に入りだということです。

プルトニウムという物騒なものが登場しはするけど、物語の本筋とは直接かかわらないし(要するにそれをガメラがエネルギー源にしていたってことだろうけど、そのへんはなんとなくボヤッとしか描かれず、ガメラはかすかに船と接触したのみで放射線漏れはなかった、と劇中で語られる)、この怪獣映画は核兵器も戦争も関係ない。

この映画が公開されたあとに阪神淡路大震災があったけど、映画はそれよりも前に作られていてビルが倒壊したり高速道路の高架が落ちる様子などもたまたま現実の災害を連想させる場面だっただけ。

これは巨大怪獣同士がシバき合って勝敗を決める「怪獣プロレス」であって、それ以上の深いテーマがあるわけではない(環境破壊の問題が申し訳程度に付け加えられてはいるけれど、作り手がそれを突きつめて描こうとしていたとは思えない)。

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そういう意味ではギレルモ・デル・トロ監督の『パシフィック・リム』に近い。徹頭徹尾、娯楽の塊。僕が観たい「怪獣映画」ってそういうものだから。

ガメラはこの映画では人類の味方だし、最後は彼の必殺技の一撃で悪玉怪獣ギャオスは爆発炎上する。これぞ俺が子どもの頃から観たかった怪獣映画。

残念ながら、その後、日本製の怪獣映画でこの映画ほどの感動や興奮を覚えたことはない。

あるいは、この1本きりでもう二度と作られることはないタイプの怪獣映画なのかもしれない。

内容についてツッコミを入れようとすればいくらでも入れられるし、怪獣映画ってのはそういうもんなんでいちいち大真面目に論じるつもりもないんですが、まぁ、劇場公開後にはヴィデオなどで何度も観たとても好きな映画だからこそあえて言うと、物語の流れとか登場人物の言動など、かなり無理はある。

赤の他人同士だったはずの草薙と米森がしばらくするともう打ち解けていて、草薙は海保の米森を「お前」呼ばわりしてるし、自衛隊のお偉いさんがガメラは脅威として攻撃しようとするのにギャオスはあくまでも捕獲しようとするのはどう考えてもおかしいし(ガメラのことは「怪獣」と呼ぶのにギャオスのことは誰もがなぜか頑なに「鳥」と呼び続けるのも)、松尾貴史演じるタクシー運転手が藤谷文子演じる少女・浅黄に頼まれてガメラのすぐ近くまで乗せていくんだけど、警官や機動隊が通行止めしてるところを暴走突破して「いっぺんこういうことやってみたかったんだよ」の一言で済ませちゃうのも、もうちょっと自然な成り行きで描けなかったのかと思うし、長峰がギャオスの存在を環境破壊を理由に挙げて「何が起きても不思議じゃない」の一言で済ませちゃうのも、あまりに雑過ぎるだろ、とは思うし。

だけど、怪獣の存在にあれこれ理屈をつけることに時間を割いたり「リアリティ」を突きつめ過ぎるとテンポが悪くなって退屈なんで、これぐらいさくさくお話が進んでくれる方がいい。

この映画は上映時間が95分で、それはかつての昭和のガメラなどの上映時間に近いし、「怪獣映画」ってこれぐらいの長さがちょうどいいんですよね。今だと130分とか140分あるような作品になっちゃいそうだけど、長けりゃいいってもんではない。

何度も観てるから、ってのもあるだろうけど、昔よりも短く感じられて、あっという間にガメラ福岡ドームから飛び立っている。

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あのガメラがギャオスを追って福岡ドームから飛び立つ場面で流れる勇壮な曲(この映画で音楽が果たしている役割はほんとに大きいと思う)は、その後「水曜どうでしょう」でもおなじみになりましたがw 初めて観た時にはアガりまくったもんね。巨大なカメが回転して空飛ぶシーンがこんなにカッコイイとはw

平成ガメラ」シリーズの世界では“亀”という生き物は存在しないことになっていて、だから劇中では誰もガメラを見て「デカい亀だ!」とは言わない。

三部作すべてが主人公が女性で(2作目の主人公は永島敏行演じる自衛官ではあるが、僕は水野美紀演じるヒロインの印象が強いので)、「少女と亀」という組み合わせにエロい妄想が込められるようになっているのは初公開当時から、確か監督ご自身も言及していたと思うんですが、ガメラという怪獣が男性性とか、あるいは父性というものの象徴でもあることは映画を観ていればわかる。

浅黄はガメラの甲羅に埋め込まれていた勾玉を手にして“巫女”となる。

長峰と米森たちだけでも物語は作れそうなのに、なんでそこに浅黄という少女が必要なのかといったら、それは監督がそういう趣味の人だから…と言ったらそれまでだけど(笑)、つまりガメラには彼を見守りともに戦ったり、あるいは逆に彼を憎んで殺そうとする若い娘が不可欠ってことですね。大魔神*1乙女の祈りや彼女の流す涙が必要なように。

興味深いことに、この「平成ガメラ」三部作のあとにシリーズとは別の単独作品として監督もスタッフも変更して撮られた『小さき勇者たち~ガメラ』(2006年)の主人公は“少年”で、またガメラは少年が飼っていた亀が巨大化した、という設定だった。「平成ガメラ」の逆をやったんですね。

だけど、結果として『小さき勇者たち』は「平成ガメラ」ほどヒットはしなかったし、評価もあの三部作に比べるとそんなに高くない。「普通の」子ども向けの怪獣映画だった。

別にそれが悪いわけじゃないんだけど、まるで「平成ガメラ」の“魔力”が解けてしまったようだった。そして、ガメラはその後長い眠りにつく。

「平成ゴジラ」シリーズでも、あるいは「ミレニアム・ゴジラ」シリーズでも女性の主人公、もしくは女性の主要キャラクターが活躍する作品はあるけれど、怪獣と女性、という組み合わせには何か不思議な力があるような気がする。金子監督はそれをわかってらっしゃったんだろうなぁ、と。

『大怪獣空中決戦』は長峰と浅黄のダブル・ヒロイン物で、伊原剛志演じる米森は長峰の相手役のポジション。最初は主人公っぽいキャラとして出てきて、実際出番も多いんだけど、やがて主人公は長峰と浅黄であることがわかってくる(もちろん、ほんとの主人公はガメラですが)。

怪獣映画でこんなにがっつり女性たちが主役を務めることって(少なくともこれ以前は)あまりないんじゃないかと思うんですが。

やはり初公開当時から気になってたのがふたりのヒロインを務める中山忍藤谷文子で、藤谷さんのラストの「来るよ、ガメラはきっと来るよ」の台詞の見事なまでの棒っぷりがいつ観ても微笑ましいんですが、今回久しぶりに観て気になったのはむしろ中山忍さんの方でした。

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長峰って発する言葉がいちいち硬くて説明調なんですよね。「可能かと思われます」とかさ。普通、人はそんな喋り方せんだろう、というような話し方をする。「~なのでは?」とか「~と?」などという、まるで洋画の字幕みたいな言い廻し。

研究者とか専門家って、仲間内ではともかく、それ以外の人たちにものを説明する時って、なるべくわかりやすいように噛み砕いた言い方をすると思うんですよ。わざわざ聴き取りにくい単語を並べて喋らないでしょう。情報が伝わらないと困るから。

これは脚本担当の伊藤和典さんの癖なのか、それとも金子監督がそのようにあえて言わせたのか知りませんが、学者は硬い喋り方をする、といういかにもなテンプレっぽくて(長峰が人気があるのは、ちょうど『シン・ゴジラ』で市川実日子演じる尾頭ヒロミの人気に通じるものがある)僕はちょっと苦手。

他の登場人物たちは長峰のような不自然な喋り方はしないから、わざとなんでしょうけどね。

で、演じる中山さんの台詞廻しがかなり危なっかしいんだ。舌が回ってなくてしばしば単語がちゃんと言えてなかったりする。聴いててハラハラしてしまった^_^; あの台詞の数々はきっと発音しづらかったんだろうなぁ。

中山さんの真面目に一所懸命台詞を喋ってる感じが長峰のキャラクターそのものに見えて、応援したくなる気持ちにさせられはするんですが。

そういう「キャラ付け」みたいなのも、僕はこの映画はぎりぎりだったんですよね。だから、『シン・ゴジラ』まで行っちゃうと耐えられなかった。

螢雪次朗演じる大迫刑事が「偉かねぇ、あの姐(あね)さん」と感心するところは同感だったけどね。

大迫刑事って、てっきりもっと長く出てると思ってたら、後半は一切登場しないんで意外だった。3作とも出てくる(作品ごとに職業が変わってる)狂言廻しのキャラクターだからなんとなくずっと出ずっぱりだったように思い込んでたんだな。螢雪次朗という俳優さんを初めて知ったのもこの作品だった(それ以前に雨宮慶太監督の「ゼイラム」シリーズがあるけど、僕はちゃんと観てない)。

平成ガメラ」シリーズは続篇では次第にシリアスさを増していって、ガメラの造形もどんどん鋭角的で恐ろしげになっていくのだけれど、この1作目の時はまだ頭部も目も大きめでどこか可愛らしさを残している。

ギャオスを倒したあと、下まぶたを少し閉じた表情がまるで浅黄にむかってニッコリ微笑んだようで最高にラヴリーだった。

ガメラ 大怪獣空中決戦』は、古き怪獣映画の楽しさを90年代に甦らせてくれた映画だったのです。怪獣映画を観て思わず涙ぐんじゃったのはあとにも先にもこの1本だけ。

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爆風スランプの主題歌「神話」をカラオケで唄ったなぁ(^o^) 名曲だ。

で、あれからまた25年の歳月を経て今こうして劇場で再見する喜び。

懐古厨のジジイと言われようとも、懐かしの映画を劇場で再び目にできるのは堪(こた)えられないのです(^o^) 

DOLBY CINEMA、なかなか侮れないな。

そういえば、中山忍さんは先日の舞台挨拶で「令和ガメラが見たいです」とリクエストされていたそうですが、もし実現するならその時にはぜひ中山さんと藤谷さんに出演していただきたいです。そして今ガメラの新作撮るなら、それはもうアレしかないでしょ。

ガメラ vs. ゴジラ!!

座頭市と用心棒』みたいな(^o^)

最初は闘っていた両者が悪玉怪獣のガイガンとギロン相手にタッグを組む、タイトルは『4G』でどうですかw

作ったら大ヒットすると思うけどなぁ~。


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ガメラ大怪獣空中決戦

ガメラ大怪獣空中決戦

  • アーティスト:サントラ
  • 発売日: 1995/02/25
  • メディア: CD
 

*1:大魔神ガメラ大映作品。