映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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第96回アカデミー賞


日本時間の3月11日(月) に第96回アカデミー賞授賞式が行なわれました。

例年のように僕はリアルタイムでもその後も通して放送は観られないので、昼過ぎあたりから受賞結果をチェックしつつ、夜になって関連記事やSNSなどで断片的な映像を観ることに。

日本からは3作品がノミネートされていて(ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演の『PERFECT DAYS』も日本映画として出品)、あとの2本はなんとなく受賞の予感がしていたし、こちらも大方の予想通り、本命の『オッペンハイマー』(13部門ノミネート)と、そして『哀れなるものたち』(11部門ノミネート)のほぼ一騎打ちとなりました。

で、主要部門は『オッペンハイマー』(7部門受賞)が獲って、『哀れなるものたち』も主演女優賞と美術賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、衣裳デザイン賞を受賞。

受賞者と受賞作品の関係者の皆さん、おめでとうございます(以下、一部を除いて文中敬称略)。


■作品賞
オッペンハイマー』(感想はこちら

■主演女優賞
エマ・ストーン哀れなるものたち』(感想はこちら

■主演男優賞
キリアン・マーフィオッペンハイマー

助演女優賞
ダヴァイン・ジョイ・ランドルフホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ

助演男優賞
ロバート・ダウニー・Jr. 『オッペンハイマー

■監督賞
クリストファー・ノーランオッペンハイマー

脚本賞
ジュスティーヌ・トリエ、アルチュール・アラリ落下の解剖学』(感想はこちら

■脚色賞
コード・ジェファーソン 『アメリカン・フィクション

■長編アニメーション賞
君たちはどう生きるか』(感想はこちら

■短編アニメーション賞
WAR IS OVER! Inspired by the Music of John and Yoko(原題)

■国際長編映画
関心領域』(アメリカ・イギリス・ポーランド

長編ドキュメンタリー賞
実録 マリウポリ20日

■短編ドキュメンタリー賞
ラスト・リペア・ショップ

■短編実写映画賞
ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語

■作曲賞
ルドウィグ・ゴランソン 『オッペンハイマー

■歌曲賞
「What Was I Made For?」『バービー』(感想はこちら

■音響賞
Tarn Willers, Johnnie Burn 『関心領域』

美術賞
ジェームズ・プライス、ショーナ・ヒース 『哀れなるものたち』

■撮影賞
ホイテ・ヴァン・ホイテマオッペンハイマー

■メイクアップ&ヘアスタイリング賞
ナディア・ステイシー、マーク・クーリエ、ジョシュ・ウェストン 『哀れなるものたち』

■衣裳デザイン賞
ホリー・ワディントン 『哀れなるものたち』

編集賞
ジェニファー・レイム 『オッペンハイマー

■視覚効果賞
山崎貴、渋谷紀世子、高橋正紀、野島達司 『ゴジラ-1.0』(感想はこちら


僕は先日観たフランス映画『落下の解剖学』が脚本賞を獲り、宮﨑駿監督の『君たちはどう生きるか』と山崎貴監督の『ゴジラ-1.0』がそれぞれ受賞。

日本の多くの皆さんの期待通りの結果だっただろうし、会場の客席の俳優が司会者をビンタするようなこともなく無事終了したと思っていたんですが、Twitter(自称・X)で流れてくる呟きの中に授賞の時に起こったある出来事に対して問題提起をするものがいくつか見られて、確認してみたところ、ジョン・シナが全裸!…はいいとして^_^;www.esquire.com


安心してください、穿いてましたよ!(つーか前貼りやんw)

受賞者のロバート・ダウニー・Jr.とエマ・ストーンがトロフィーを受け取る際に前年の受賞者であるミシェル・ヨーさんとキー・ホイ・クァンさんを無視したのではないか、と炎上した件。

僕もエキサイトしていくつも怒りのツイートをしたけれど、一日経ってミシェル・ヨーさんが事情を説明して、一応鎮火(そのあたりのことは上↑の記事に載っています)。

ei-gataro.hatenablog.jp


一方で、ロバート・ダウニー・Jr.は受賞後にキー・ホイ・クァンさんとバックステージで一緒に写真を撮ったりして、「実は仲がいい」アピール。


一件落着したように見えるけど、モヤモヤを残すことに。

ミシェル・ヨーさんは去年の受賞者なわけで、本来ならば彼女が一人でトロフィーを渡すところをあとの4人のプレゼンターの一人でエマ・ストーンの親友のジェニファー・ローレンスがしゃしゃり出てきてその役割を奪うような形に。


前に出過ぎてミシェル・ヨーを隠してしまったジェニファー・ローレンスサリー・フィールドが後ろに下がらせようとしている。

きっと、親友の受賞の感激で舞い上がっているジェニファー・ローレンスに気を遣っておとなの対応としてミシェル・ヨーさんはあえて自分は前に出なかったのだろうけれど、結果的にそれが「アジア系を透明化」することに繋がって白人女性に自らの栄誉を譲ることになった。

だけど、エマ・ストーンは『ラ・ラ・ランド』(感想はこちら)に続いて二度目のオスカー受賞なんだし、ミシェル・ヨーさんが過剰に彼女に配慮する必要なんかなかったんじゃないか。

ミシェル・ヨーさんには彼女一人でトロフィーを手渡してもらいたかった。彼女こそはリスペクトされるべき人なのだから。


一方のダウニー・Jr.は、トロフィーを手渡しておそらくは握手なりハグなりをして互いに敬意を表し合おうとしていたキー・ホイ・クァンさんから片手でトロフィーを受け取って彼とは目も合わせずに別の白人の俳優たちと握手やグータッチ。

キー・ホイ・クァンさんに対しては、あとで思い出したように「指さし確認」したのみ(同時に、プレゼンターの1人である黒人俳優のマハーシャラ・アリのことも完全に無視している)。

ジェニファー・ローレンスだって子どもじゃないんだし、エマ・ストーン同様に30代半ばのそれなりにイイ年したおとなだ。ましてやダウニー・Jr.は還暦も近いヴェテランにもかかわらず、この態度の悪さはなんだろうか。

ほんとに「仲がいい」んなら、バックステージで抱き合ってないで舞台の上でみんなの前で抱き合えばいいだろう。

「彼は昔からああだった」「RDJは誰に対しても失礼(笑)」と擁護してる向きもあるけれど、いや、昔がどうだったかなんて関係ないし、誰に対しても失礼なんだからオッケーなんてことはなくて、こんな晴れ舞台で大勢の前で相手に恥をかかせるようなしぐさをする人物を笑いながら許容しちゃうような神経の持ち主が信じられない。

そうやってなんでも笑って済ましてきたからアジア系は舐められてるんだろ!

ロバート・ダウニー・Jr.が明確な差別的意図をもってキー・ホイ・クァンさんにあのような振る舞いをしたのかどうかはわからないし、ジェニファー・ローレンスエマ・ストーンがそうだったように「無意識」にアジア系の相手を見ていない、目に入っていない状態だったのかもしれない。それこそ『落下の解剖学』同様、真相はわからない(上手く言ったつもりじゃなくて、ほんとにその通りだから)。


でも、ほんとは仲良しなんです、とか、相手の方が譲ってくれたんです、とか、そんな理由はこの一連の不快な「パフォーマンス」の免罪にはならないですよ。

多くのアジア系(当然ながら我々日本人だって含まれる)の人々があの場面を見て違和や嫌悪を感じたのだし、そこにいるのにいないように扱われる──白人に「無視」された屈辱の経験がフラッシュバックした人もいた。

その時点でアウトなんだよ。

彼らは、自分たちが特権的な立場にいることにあまりに無自覚過ぎた。

だからあれほど“ナチュラル”に前年のオスカーの受賞者を無視できたのだ。

ミシェル・ヨーさんやキー・ホイ・クァンさんは笑顔でやり過ごすしかなかっただろう。彼らはアメリカでもハリウッドにおいても圧倒的なマイノリティなのだから。

仲間や取り巻きが多いほどデカい顔してレッドカーペットを歩ける。

白人俳優たちのあの意識しないままアジア系の俳優たちを「いないもの」としてスルーした行為は、黒人のスター俳優が同じ黒人の司会者のほっぺたをひっぱたいたことなんかよりもはるかに深刻な問題を露呈させてしまった。

何を大袈裟な…と言われるかもしれないけれど、僕は今後、あの3人の俳優たちをこれまでのように普通の目で見ることはできないし、進んで彼らの出演作品を観る気にもなれない。

まぁ、ロバート・ダウニー・Jr.が出た『オッペンハイマー』は観ますけどね。

この件で一気にアカデミー賞を見放すつもりはないけど、でも、自分が思っていたよりも、もっとずっとそれ以上にあちらのかたがたは人としてダメなんだな、と失望しました。スター俳優があれでは、その辺の一般の人たちのことなど想像したくもない。

「映画」だけに限らない、アメリカが内包する(そして、僕たち日本人だって無意識のうちに抱えている)すごく大きな課題を提示してみせた年でした。今後の改善が期待できればいいのだけれど。

そもそも事態が混乱したのは、プレゼンターが5人もいたからで。必要ないだろ、5人も。視聴率を上げるためだったようだけど、センスがズレまくり。今回のオスカーの授賞式はすべてが悪い方向に向いていた気がする。2年前のウィル・スミスの一件の頃から、このイヴェントはほんとにいろいろと間違えている。

「所詮、白人様のイヴェント」「(ガザでの)虐殺をやめない国の祭り」という冷めた意見もあるし、僕もこれから関係者が反省も学習もする気がないのなら、こんな催しにはとっととサヨナラするつもりです(別に俺が観なくたって誰も困らないが)。年々ありがたみも減ってるし、映画はアメリカのもの以外だってたくさんありますから。


第44回ゴールデンラズベリー賞ラジー賞)は以下の通り。


□最低映画賞
プー あくまのくまさん

□最低主演男優賞
ジョン・ボイトマーシー

□最低主演女優賞
ミーガン・フォックスJohnny & Clyde

□最低助演男優賞
シルヴェスター・スタローンエクスペンダブルズ ニューブラッド』(感想はこちら

□最低助演女優賞
ミーガン・フォックス 『エクスペンダブルズ ニューブラッド』

□最低スクリーンコンボ賞
血に飢えた切り裂き魔/殺人鬼としてのプー&ピグレット 『プー あくまのくまさん』

□最低監督賞
ライズ・フレイク=ウォーターフィールド 『プー あくまのくまさん』

□最低前日譚・リメイク・盗作・続編賞
『プー あくまのくまさん』

□最低脚本賞
『プー あくまのくまさん』

□名誉挽回賞
フラン・ドレシャー(彼女は1998年に最低主演女優賞にノミネートされたが、SAG-AFTRA会長として組合を導き、長期間に及ぶ2023年のストライキを成功裏に終結させた)


ミーガン・フォックスがお見事二冠(^o^)

そして仲良くスタローンと『エクスペ4』で最低助演賞も。

スタローンさんはおなじみですね。アゲられたり、またサゲられたり、お約束で。

このラジー賞はあくまでもシャレ、ジョークなわけだけど、これだって受賞者の中には本気で不快に感じてる人もいるようだし(トム・ク○ーズとか)、なかなか難しいですね。イジメみたいになっても困るし。

スタローンには賞を贈る側も安心感があるのかな。笑って受け入れてくれそうで。

5月24日公開の『関心領域』を楽しみにしているし(題材的に愉快な内容ではないことはわかってますが)、『オッペンハイマー』もいろいろと不安はありつつも、ちゃんと観るつもりでいます。

今月末から来月にかけても新作や旧作の公開が目白押し。

イイ映画とイイ俳優を観たいです。


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