映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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『ラ・スクムーン』


ジョゼ・ジョヴァンニ監督、ジャン=ポール・ベルモンドクラウディア・カルディナーレ、ミシェル・コンスタンタン、アラン・モテ、フィリップ・ブリザール、エンリケ・ルセロ、ミシェル・ペイルロン、アルド・ブフィ・ランディほか出演の『ラ・スクムーン』。1972年(日本公開73年)作品。HDリマスター版。

原作はジョゼ・ジョヴァンニの小説「ひとり狼」。

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1930年代、「死神(ラ・スクムーン)」と呼ばれるロベルト(ジャン=ポール・ベルモンド)は殺人の罪を着せられ投獄された友・グザヴィエ(ミシェル・コンスタンタン)を救うために金を集めようと奔走するが、アメリカ人ギャングたちと揉めて負傷、正当防衛を認められずに収監される。塀の中で再会できたものの、ロベルトもグザヴィエもそれぞれ刑期はまだ10年以上もある。戦争でドイツ軍によって海岸に埋められた地雷の撤去に従事すれば早く娑婆に出られることを知った彼らは志願する。


9月2日(金) から始まった「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選3」で上映される7作品の中から1本、『ラ・スクムーン』を鑑賞。


実は僕はフランスの名優で去年のちょうど今日(9月6日)亡くなったジャン=ポール・ベルモンドの映画をほとんど観たことがなくて(彼の若い頃をリアルタイムで知らないので)、90年代にジャン=リュック・ゴダール監督(※ご冥福をお祈りいたします。22.9.13)の『勝手にしやがれ』と『気狂いピエロ』をTV放映やレンタルヴィデオで観たきり(あと、後述するように『ボルサリーノ』やこの『ラ・スクムーン』の存在も知っていた)。恥ずかしながら、これまでに彼の「傑作選」が1、2まであったことすら知りませんでした。

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90年代に『ライオンと呼ばれた男』(1988) が日本でも公開されていたし、『ハーフ・ア・チャンス』(1998) で久々にアラン・ドロンと共演、というのは当時知ってたけれど、作品を観ることはなかった。ずっと縁がなかったんですよね。

どうでもいいけど、湖池屋のスナック菓子「ポリンキー」のCMで、ポリンキーの3兄弟の名前が「ジャン」「ポール」「ベルモン」だったのが懐かしいけど、なんで彼の名前から付けてたのかはわかんなかった。

去年亡くなった時にはニュースで大々的に報じられていましたが、「ジャッキー・チェントム・クルーズの大先輩」みたいな形で、自ら身体を張って多くのスタントアクションをこなしたスター、として紹介されていた。

でも、僕は「アクションスター」としてのジャン=ポール・ベルモンドを知らないわけです。作品をほとんど観ていないんだから。

勝手にしやがれ』と『気狂いピエロ』もちょっと前にリヴァイヴァル上映されてたけど、そちらも観られなかった。

で、たまたま他の映画を観にいったミニシアターで今回の企画の予告を観て、往年の彼の主演映画、それも娯楽作品を観てみたいなぁ、と思って。

これも90年代に、TVで放映された『ボルサリーノ』(1970) とこの『ラ・スクムーン』をエアチェックしたヴィデオを先輩に借りて観たと記憶している。

確か吹替版だったと思うんだけど内容はまったく覚えてなくて、長らく2本の映画が頭の中でゴッチャになっていた。だから、今回あらためて確認してみて、あれ?アラン・ドロンと共演してたのは『ボルサリーノ』の方だっけ、と。そんな初歩的な知識すらなくて申し訳ありませんが。

でも、『ラ・スクムーン』というタイトルと、フランソワ・ド・ルーベによる印象的なテーマ曲は覚えているんですよね。ただ、ストーリーの方は完全に忘れていた。

だから、最初はギャング映画かと思って観ていると、やがて刑務所が舞台になるので、脱獄モノかな?と思っていたら、今度は地雷や爆弾の撤去の話になるという、なんだかジャンルがどんどん替わっていく映画でしたね。

地雷処理の場面では爆発音が怖くてハラハラした。


最初のうちは主人公ロベルトの背景がちゃんと説明されないので、ちょっと状況がよく掴めなくて、でもロベルトの目的がミシェル・コンスタンタン演じる旧友グザヴィエを救うことだとわかると、あとはまぁ、なんとなくストーリーは追えたのでした。

昔の映画って、たまに僕は物語や人物関係を把握するのにちょっと時間がかかったりするんだけど、皆さん、ちゃんとわかってご覧になってるんだろうか。

敵のラスボスかと思ってたヴィラノヴァ(アルド・ブフィ・ランディ)をはじめ、ロベルトを護衛する大道芸人のメキシコ人・ミグリ(エンリケ・ルセロ)までもが途中であっさり殺されてしまったり、隙あらばロベルトを狙っていた「エレガント」と仇名される男(ミシェル・ペイルロン)がロベルトが刑務所に入っている間に彼の店で働いていたファンファン(フィリップ・ブリザール)にいつの間にか殺されていたり、なんていうか、登場人物たちの退場のしかたが実にあっけなくて、ギャング物のカタルシスみたいなのがあまりないんですよね。


72年に公開されたコッポラの『ゴッドファーザー』とはまったく違う。

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監督のジョゼ・ジョヴァンニは彼自身が書いた原作をジャック・ベッケル監督の息子、ジャン・ベッケルの監督で『勝負(かた)をつけろ』として映画化しているけれど、10年経って今度は原作者が自分の作品をリメイクしたんですね。

『勝負をつけろ』も今回上映されてますが、僕はちょっと観る予定がないので最初の映画化作品とこのリメイク版でどう変わっているのか確認はできないけれど、それだけ人気があったってことでしょうか。あるいは、それほど原作者にとって作品に対する強い思い入れがあったのかな。

グザヴィエ役のミシェル・コンスタンタンはジャック・ベッケル監督の『』(1960年作品。日本公開62年)に出ていたし(コンスタンタンの映画デビュー作)、『穴』の原作はジョゼ・ジョヴァンニその人。そういうところで人脈が繋がってるんですね。

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『穴』はこれも90年代にリヴァイヴァル上映で観ましたが(あともう1本『赤い手のグッピー』も)、とても面白かった。例のごとく、内容全然覚えていませんが^_^;

『穴』もまた再上映してくれないかなぁ。

で、『ラ・スクムーン』ですが、なんかラスクとかハネムーンみたいな響きのタイトルだから観る前はもっと軽くて明るい内容なのかと思ってたんだけどw 要するに「フィルム・ノワール」で、悪漢がいろいろ悪いこともやって、でも友情には篤かったり頼りがいはあって、それでも最後には結局自分はこの裏社会から足は洗えないんだ、と悟って武器を手に友の復讐のために去っていく、という映画でした。

そういえば、ラスト近くだったかで若き日のジェラール・ドパルデューがチンピラ役で出てました。


アクション物ではないし、でも暗いわけでもない。娯楽作品であることには違いないし。笑いの要素はないけど、映画の作りがわりとユルいところもある。

勉強不足なので、それが60~70年代特有の現象なのか、それともフランス映画がもともと持っている雰囲気なのかわからないですが。

ベルモンドの、ここぞという時には素早いけれど、いかなる時も熱くならずに涼しそうな表情で飄々としているところとか、彼のちょっとユーモラスな顔立ちと相俟って単純なアクション映画スター、という感じじゃないんだよね。渋さを強調してないし、たとえば80年代のスタローンやシュワちゃんみたいな筋肉を誇示したコワモテでもないし。

寺沢武一の漫画「COBRA」の主人公コブラはベルモンドがモデルと言われているけれど、確かに特に初期のコブラの顔はまんまベルモンドなんですよね。特に鼻の形が。

あとは、「ルパン三世」ですよね。

実写版ルパンと言われる『華麗なる大泥棒』(1971) も、できれば観たいんですが。

『ラ・スクムーン』のヒロイン、ジョルジア役のクラウディア・カルディナーレセルジオ・レオーネ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』にも出てましたね。

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この作品でも綺麗だった(^o^♪


イタリアの人だと思ってたけど、もともとフランス語が母国語だったんだな。吹き替えは小原乃梨子さんがフィックスだったんでしょうか。

なんていうか、僕はこの映画が作られて公開された時代をリアルタイムで知らないから、懐かしい、というのとも違うんだけど、この歳になって惹かれるところはある。かえって新鮮なんですよね。

映画の舞台は第二次大戦前~戦中、戦後なのに、アメリカ人の黒人のギャングたちが思いっきりアフロヘアだったり、街の感じとか女性たちの化粧なんかもどう見ても70年代のそれで、でも、その70年代自体がすでに今からもう半世紀前なんだから、フィルムの粒子とともに刻まれたもはやいつの時代なのかも判然としない映画の中の世界が、僕にはまるで蜃気楼のように思える。

不思議な映像体験でしたね。多分、あの当時にこの映画を観た人たちとも違う感覚だと思う。

ジャン=ポール・ベルモンド傑作選3」は今月30日まで続きますが、さて、あと何本観られるかな。


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