映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『男たちの挽歌』


ジョン・ウー監督、ティ・ロンチョウ・ユンファレスリー・チャンレイ・チーホン、エミリー・チュウ、ケネス・ツァン、ティエン・ファン、シー・イェンズほか出演の『男たちの挽歌』4Kリマスター版。1986年作品。日本公開1987年。R15+。

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香港マフィアの幹部であるホー(ティ・ロン)と相棒マーク(チョウ・ユンファ)は、強い絆で結ばれていた。ホーの弟キット(レスリー・チャン)は兄の仕事を知らないまま警察官となり、ホーは弟のため足を洗うことを決意する。そんな矢先、取引のため台湾へ渡ったホーは相手組織の裏切りにあい、逮捕されてしまう。マークはたったひとりで敵組織に乗り込み復讐を果たすが、自らも足に大怪我を負う。3年後、刑期を終えて出所したホーは、キットから絶縁を言い渡される。堅気として生きることを固く胸に誓うホーだったが、いつしか戦いへと巻き込まれていく。(映画.comより転載)


「午前十時の映画祭14」で鑑賞。

実は僕はこの映画を観るのは初めてです。

ジョン・ウー監督の映画をリアルタイムで観たのって彼がハリウッドに渡った90年代以降なので、僕はこのシリーズを1本も観たことがなくて、またいわゆる「香港ノワール」と呼ばれる作品群もほとんど知りません。

ただ、タイトルも、それから楊枝代わりにマッチをくわえたチョウ・ユンファ(映画観ていて飲み込んじゃわないかハラハラした)ら主要登場人物の三人が映っているこの映画のポスターも当時から知ってはいた。

クエンティン・タランティーノジョン・ウーの映画が好きだとか、『マトリックス』(感想はこちら)の二丁拳銃がやはり彼の映画の影響下にあることなど、知識としては知っていました。

ただ、僕自身はそもそも香港映画をめったに観ることがなかったから、作品自体はずっと観ないまま現在に至ります。

僕がチョウ・ユンファさんの名前を知った時にはすでに彼は「亜州影帝」と呼ばれていたし、『男たちのバッカ野郎』とか『大丈夫日記』、『ゴッド・ギャンブラー』などタイトルに見覚えがある作品も。でも80~90年代は彼の映画を観たことがなくて、2000年の『グリーン・デスティニー』で初めて出演作品を観ました。その後は『パイレーツ・オブ・カリビアン3』ぐらい。

だから、俳優として出演映画を観てきたのではなくて、太平シローに似てたり劇団ひとりがモノマネやってる人、ということでその存在を記憶してきた。

香港でのウー監督の作品をまったく観ていない一方で、ハリウッドで撮った作品はわりと観ていて、ジョン・トラヴォルタクリスチャン・スレイターが共演した『ブロークン・アロー』は迫力あって面白かったし、やはりトラヴォルタがニコラス・ケイジと顔を取り換える『フェイス/オフ』も(珍しく女の子と一緒に!)、それからトム・クルーズ主演の『ミッション:インポッシブル2』、またしてもニコラス・ケイジ主演の戦争映画『ウインドトーカーズ』、フィリップ・K・ディック原作でベン・アフレック主演の『ペイチェック 消された記憶』、最後に観たのは「レッドクリフ」二部作。

結構観てるなぁ、と自分でも感心したほど。

この『男たちの挽歌』はチョウ・ユンファさんを一躍有名にした作品ということだし、世界的に評価も高いので楽しみにしていたんですが。

う~んと、すみません。なんかバカにしたような書き方になってしまうかもしれませんので、この映画のファンのかたは読まれるとお気を悪くされるでしょうからこれ以降はお勧めしません。

──要するに、裏社会の男である主人公が刑務所から釈放されてカタギになろうとするが、もとは組織の後輩だった男が今では成り上がっていて、再び彼を仲間に引き入れようとしてくる。弟は警察官になっていたが兄のせいで出世できず、兄弟間で確執が。

やがて犯罪組織を追う弟がワナにかかり…という展開に。

まず感じたのが、ジョン・ウー監督の映画、というと黒ずくめのグラサンの男たちが銃を撃ちまくる、というイメージだったんだけど、それが描かれるのは映画の序盤だけで、その後は普通の格好になっちゃうし、あとジョン・ウー映画といえば…な白いハトが舞う場面もなかったよーな。

なんかもっとこう、二丁拳銃で斜めに飛んでスローモーションになって、みたいなのを想像していたんだけど、スローモーションはほとんど使われてなかったし、斜め飛びで銃を撃つ、みたいなのもやってなかったような気が。


当時のポスターから思い浮かべたイメージとだいぶ違っていたんですよね。

確かにところどころで激しい銃撃戦は描かれるんだけど、なんていうんだろう、まるで「ジョン・ウー映画」のファンが撮った映画のよう、というか、銃の撃ち合いによるアクションのかっこよさも逆にリアルな生々しさも感じられない、ひたすらモデルガンを撃ち合ってるだけのような、そんな退屈ささえ覚えたのだった。

登場人物たちが、がなってばかりいるのも耳障りだったし。

猪木ボンバイエみたいなメロディがポール・モーリア風な演奏で流れるBGMを聴いてたら笑いそうになってしまった。

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映画を観ながらきっとそうだろうと予想していたけど、エンドクレジットではやはりレスリー・チャンさんが主題歌を唄っていて、あの猪木ボンバイエみたいなメロディもそのまま歌の中にあった。

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音楽はブルース・リーの映画で有名なジョセフ・クー(ホーとキットの父親役は『ドラゴン怒りの鉄拳』にも出演していたティエン・ファン)で、曲だけだと聴き応えのあるBGMなんだけど、映像と重ねられると壮絶に古さを感じずにはいられなかった。

僕が座ってた席の後ろにいたお二人の熟年女性たちも鑑賞後には「ストーリーはいいかもしれないけど、音楽がねぇ…古い」「笑っちゃいけないんだろうけど、音楽聴くと笑いそうになっちゃって」と語り合っていて、心の中で思いっきり同意してしまった。

なぜ彼女たちがこの映画を観ようと思ったのかわかりませんが、今回の「午前十時の映画祭」ではウォン・カーウァイ監督の『花様年華』と続けて上映されているから、その流れで観にこられたのかもしれません。

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あるいは、レスリー・チャンさん目当てだったのかな。

去年観たウォン・カーウァイ監督の『いますぐ抱きしめたい』は1988年の作品だけど、やはり音楽がダサ過ぎて観ていてキツいものがあった。

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でも、2年後の『欲望の翼』は音楽の使い方も撮影も全然雰囲気が違っていたから、あれは監督じゃなくて映画会社の指示だったんでしょうかね。

この『男たちの挽歌』もそうだけど、BGMがまるでジャッキー・チェンの映画みたいなんですよ(ジャッキーの映画の出演者も何人かいたし)。相変わらず人を殴る音がボカッ!とかバキッ!とかやたらとデカいし。

ジャッキーの映画はコミカルな場面もあるし、だからシンセサイザーも使ってベタな音の使い方をしてもそれが映像とぴったり合っているんだけど、『男たちの挽歌』って別にコメディじゃないので、80年代の香港映画特有のあの曲調で劇伴が流れると物凄く安く聴こえるんですよね。

最近は昔の映画をリヴァイヴァル上映で観る機会も増えているし、別に古い映画をなんでもかんでも「古臭い」と腐したいわけではなくて(たとえば70年代に作られた日本の「仁義なき戦い」シリーズや千葉真一主演のアクション映画のまるで琵琶か三味線のようなエレキギターの音なんて、めっちゃかっこいいし)、明らかに今では古臭くなってしまった音楽というものがあって、『いますぐ抱きしめたい』や『男たちの挽歌』の劇中曲は残念ながらそうなんですよ。

映画の頭のほうで、レスリー・チャン演じるキットの恋人のジャッキー(エミリー・チュウ)がドジっ娘として描かれていて、自分のチェロをそこら中にぶつけまくったり、演奏の試験でもドジ踏んだりしていて(そのあとでキットに八つ当たりする)、そういう泥臭い演出自体が「ノワール」にそぐわないし、ではこのジャッキーの楽器のくだりは後半の展開の伏線になっているのかというと全然関係なくて、だからこのチェロの場面自体がいらないんですよね。


キットの隣りでジャッキーの演奏を聴いているのは、製作を担当しているツイ・ハーク

だったら、後半で彼女が参加する演奏会と物語が絡むとか、普通はそういう構成にするんじゃないですか?だけど、ジャッキーは単にキットにくっついてるだけの女性で、ホーとキット兄弟の父親が殺される場面に居合わせたり、その後、自分の誕生日をお祝いしようとしてケーキを用意したりするだけ。『ポリス・ストーリー』(感想はこちら)のマギー・チャンみたいな役割。女優さんの使い方はいかにも当時らしい。


ジョン・ウー監督もホーに目をつけてずっと監視を続ける台湾警察の警部役で出てましたね。ツイ・ハーク監督と同様、なかなか演技が達者でいらっしゃる。

そもそもこの映画、よく「チョウ・ユンファ主演」と紹介されるけど、主演はティ・ロンさんなんですよね。チョウ・ユンファさん演じるマークはティ・ロンさんが演じるホーの後輩で、僕は冒頭の映像からてっきりレスリー・チャンさん演じるキットが最後に殺されてしまうのだと思っていたら、敵の銃撃で死ぬのはマークだった。


続篇ではマークに瓜二つの双子役で出演しているそうで、「Gメン’75」のヤン・スエみたいだな、と(^o^)

黒いコートで撃ち合いまくるのは2作目の方なのかな?

…観終わってだいぶガッカリしてしまった。これは観なくてもよかったかも、とすら思った。

小さな映画館で2本立てとか3本立てで安い料金で観るような(そんな映画館は僕が住んでるところにはもうありませんが)、あるいは深夜にTVをつけたらたまたまやってたみたいなタイプの映画だった。

いや、そういう映画を貶める気はないですが、娯楽作品だろうがアート作品だろうが、観終わったあとにそれなりの満足感を得たいんですよ、僕は。面白かったな、と。

ジャン=ポール・ベルモンドの何本かの古い映画だって、僕は楽しめましたからね。

この映画はちまたでの評価はとても高いけど、正直なところどこがそんなにいいのか僕にはわからない。リチャード・リンクレイター監督の最新作『ヒットマン』(感想はこちら)よりもこの映画の星の数の方が多いというのは、まったく納得がいかない。

香港ノワール」を盛り上げたパイオニアとして敬意を込めて皆さん高評価にしているのか、それともほんとに「面白い」と感じているのか。

2010年に観たジョニー・トー監督の『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』は僕も面白かったですからね。こういうタイプの映画がまったく肌に合わないんじゃなくて、あくまでもストーリーや演出がハマるかどうかが問題で。

それでも、実際に観てみてわかったことはあるから、これも映画史の一部を劇場で目にできた経験の一つとして、記録しておこうと思います。


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