映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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『ドラゴンへの道』

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アクションスターのブルース・リー製作・監督・脚本・主演の『ドラゴンへの道』4Kリマスター版を劇場鑑賞(僕が観た劇場では2K上映)。オリジナル版は1972年作品。日本公開1975年。

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イタリアのローマにある中華レストラン「上海」は、現地の地上げ屋に店を売り渡すよう脅されていた。故郷の香港から単身ローマへやってきたタン・ロン(ブルース・リー)は、慣れない外国に戸惑いながらも店に乗り込んできたギャングたちを得意の武術で退けて、女性オーナーのチェン(ノラ・ミャオ)や店員たちと打ち解けていく。だが、ギャングのボス(ジョン・ベン)はおとなしく香港へ帰るようにという彼らの警告を聞き入れないタン・ロンを倒すために、手下のホー(ウェイ・ピンアオ)の手引きで腕利きの用心棒(チャック・ノリス)を呼び寄せる。 


ネタバレを含みますのでご注意ください。

ブルース・リー生誕80周年を記念して「ブルース・リー 4Kリマスター復活祭2020」と題して7/3(金)からブルース・リーの主演映画4本(『ドラゴン危機一発』『ドラゴン怒りの鉄拳』『ドラゴンへの道』『死亡遊戯』)が上映されていて(劇場によって本数や順序はまちまち)、『ドラ道』こと『ドラゴンへの道』を観てきました。

僕が少年期を過ごした1980年代はちょうどジャッキー・チェンの『プロジェクトA』や『スパルタンX』『ポリス・ストーリー』などが次々と公開された彼の全盛期で、主にTVでそれらの映画に親しんでいました(初めて映画館で観たのは『サイクロンZ』)。

一方でそれより遡ること10年ほど前の73年に32歳の若さで亡くなったブルース・リーの映画を僕は80年代当時にTV放映でも観た記憶はなくて、いつどの時点で彼のことを知ったのかも覚えていません。

コロコロコミック」に連載されていたギャグ漫画「あほ拳ジャッキー」に“ブルース・ソー”というキャラがいて、彼がブルース・リーのパロディであることは理解していたので(毎回「リーじゃないよ」と断わり書きがしてあった)、漫画とかあるいは特撮番組などで彼のことを知ったのかもしれない。

もちろん、「北斗の拳」の主人公ケンシロウの「アタタタタタッ!!」や「ホァチャ~!」という雄たけびがブルース・リーからのパクリ引用であることも知っていた。

ただ、彼の主演映画をまともに観たのはかなり遅くて、90年代に入ってジェイソン・スコット・リー主演のブルース・リーの伝記的映画『ドラゴン/ブルース・リー物語』(感想はこちら)を観た頃から。

そのあたりで何度目かのブルース・リー・ブームとなったようで、レンタルショップのVHSヴィデオや90年代の終わり頃にリヴァイヴァル上映などで『ドラゴン危機一発』から『死亡遊戯』までの彼の主演作を観ました。

映画秘宝のムック本「ブルース・リーと101匹ドラゴン大行進!」を買って読んだり、8ミリでクンフー映画の真似っこ自主映画を撮ったりしていた。

2000年代には『死亡遊戯』の未使用映像を加えて構成されたセミドキュメンタリー映画Bruce Lee in G.O.D 死亡的遊戯』を渋谷の小さな映画館まで観にいったし、その後も『怒りの鉄拳』だったか『ドラゴンへの道』だったか忘れちゃったけど、池袋の映画館で観た。

僕は初めてブルース・リーの映画が公開された70年代当時の日本中の熱狂をリアルタイムで知らないし、クンフー映画やリーの映画について詳しくもないのでファンなどとはとても呼べなくて、そのためいろいろ無知ゆえの勘違いがあるかもしれませんから、もし間違いがありましたらご指摘いただけると幸いです。

でもまぁ、前述のように少年時代から彼の映画に触れてきて、つらかった時に彼の映画に励まされたりもしてきました。だから自分なりに愛着はあるつもりです。

一応、そのことをお断わりしたうえで、久しぶりに観た『ドラゴンへの道』の感想はちょっと小バカにしたような言い廻しをするのでもしかしたら不快に感じられるかたもいらっしゃるかもしれませんが、基本的に僕はブルース・リーの映画が好きですから悪意はありません。そのへんはご了承のほどを。 

まず、今回上映されている4本の映画は初公開当時に日本独自の編集が施されたヴァージョンを忠実に再現したものらしいですが、先ほども述べたように僕はこれまでヴィデオやリヴァイヴァル上映でしか観たことがなくて、しかも自分が観たのが英語版なのか広東語版なのか、あるいは北京語版なのかも覚えていないんですよね。

この「復活祭」では上映されていない『燃えよドラゴン』は英語で作られていて、ブルース・リー本人の肉声が使われているのはあの作品だけで、それ以外は別人の吹き替えであることは知ってるけど、だからこそ、どのヴァージョンが世間でよく知られているのかもわかんない。

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『ドラ道』では、ちょっと“おねぇ”っぽい喋り方をする敵の中ボス・ホーの声と笑い声は聞き覚えがあったけど、僕が以前観た時には終盤でブルース・リー演じるタン・ロンの前に立ちはだかる日本人の用心棒という設定の韓国人武道家、ウォン・インシックが「お前はタウロンがー?」とカタコトの日本語で尋ねたり、タン・ロンにシバかれまくったあとの「う~痛…アイタッ…」という呻き声をあげていたのが、今回の上映ヴァージョンではそこは英語だった。

さらに、どうやら日本公開版にしか入っていないらしいマイク・レメディオス(欧米人っぽい名前だけど中国人の歌手)のヴォーカル入りの主題歌は以前通販で買ったサントラCDで聴いたことはあったので、俺が以前観たのは一体何語版だったんだ?とますます混乱。 

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主人公タン・ロンが発するのは明らかにブルース・リー本人ではない声で、しかも撮影時とは異なる言語の英語で吹き替えているのが丸わかりなので映画が始まってしばらくは違和感がハンパなくて、それに前半はコメディタッチなものだからほんとに緊張感がない^_^;

ソフトクリームを舐めてた男の子に謎のジェスチャーで迫って逃げられたり、空港のレストランではメニューの字が読めなくてスープばかり大量に頼んだおかげで、その後やたらとトイレに行くとか、娼婦だと気づかずにイタリア人女性のあとについていったらおっぱい見せられて驚いて逃げるなど、ベタにもほどがあるギャグが続く。

ローマの街や観光スポットを歩く場面では無許可撮影バレバレな不安定なキャメラワークで、撮影は日本人キャメラマンの西本正だけど、空港の男の子の場面が思いっきりピンボケだったのはどうしてだろう。盗み撮りだから?

「4Kリマスター版」とは言っても、そもそもオリジナルの映像の画質がけっして鮮明ではないし、音声もバックに常に「ス~」というノイズが入っている。

中華レストランの店員たちの、最初はタン・ロンのことを見下してたのに彼がクンフーの達人だとわかるとコロッと態度を変える様とか、ギャング(字幕では“マフィア”)のくせにヒョロッとしたいかにも弱そうな白人が出てきたり、チェンの伯父のワン(ウォン・チュンシン)のあまりにわかりやす過ぎる裏切り者演技など、お話の内容も含めてちょうど日本の特撮番組っぽいんだよね。なんというか、セットの作りも全体的に安っぽい。

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ジョセフ・クー作曲の「ウッ!ウッ!」と合いの手の入る勇ましいテーマ曲は好きなんですが、オープニング・タイトルで描かれるドラゴンボートレースみたいなのはまったく出てこなくて、主人公が地上げ屋から店を守るってだけの小さな話(しかも、結局店員たちは全員殺されてしまうので、全然守れてないし)。

だから、ブルース・リーが出てなかったらまず記憶には残らない。でも彼が主演しているからこそ、この映画は今もって愛され続けている。

鏡の前でいちいち半裸になって筋肉を見せつけるし、もちろん、チャック・ノリスとの闘いでも両者とも上半身裸。見れば見るほど実に奇妙だが(笑)、でもカッコイイからいいんだよね。

急に背中から取り出すダブル・ヌンチャクとかどうやって隠してたんだ^_^;

そういうツッコミも、彼の肉体のあの動きの前では無意味になる。

稲中卓球部」を思い出すシーンもw 

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敵の用心棒役の一人、ボブ・ウォール(※ご冥福をお祈りいたします。22.1.30)は『燃えドラ』でもリーと闘って(オハラ役)股間を攻撃されてたけど、今回は完全に金的に拳が入ってるw

コルト(日本語字幕ではなぜか“ゴート”になっていた)役のチャック・ノリスの毛深さ(背中にもびっしりΣ(゚д゚;))とか、胸毛むしられて「ボイ~ン」と鳴るドラムとか、のどかだけどタン・ロンは最後はコルトの息の根を止める。妙な悲壮感がある。

今ではもっともっと派手でスピーディなアクション映画はいっぱいあるから、あらためてブルース・リーの映画を観るとすごく素朴な感じがするんだけど、一方ではあれこれと手を加えていないそのシンプルさが心地よくもある。原点に触れているような。

それ以前には存在しなかったジャンルを生み出したということでは本当に偉大だし、そういう映画史的な知識などとは別に、単純にブルース・リーはカッコイイ。そのキャラの立ち方は誰もが認めるところでしょう。世界中の人々が彼の真似をしたんだから。

外見だけでなく、彼が踏むステップや顔の表情、手足の動き、そのすべてを。

今月の20日ブルース・リーの命日。

今から47年前にわずか32歳でこの世を去った“ドラゴン”は、三船敏郎のサムライやクリント・イーストウッドのガンマン、あるいはゴジラなどと同様に彼自身がポップ・アイコンとなってさまざまな分野の人々やモノたちに影響を与え、その名と彼の遺したイメージは今も世界中に顕在する。ブルース・リーは生きている。

僕も、またこれから何度も彼の映画を観るでしょう。

そのたびにツッコミ入れて笑ったりしながら、同時に胸が熱くもなるのだ。 


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