映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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『少林寺 4Kリマスター版』


チャン・シン・イエン監督、リー・リンチェイジェット・リー)、ユエ・ハイ、ティン・ナン、フー・チェン・チァン、ユエ・チェンウェイ、チー・チュアン・ホワ、ファン・クァン・チュアン、チャン・ジェンウェン、イェン・ディホアほか出演の『少林寺 4Kリマスター版』を鑑賞。1982年作品。

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中国・隋朝末期、父親を残忍なワン将軍に殺されたショウホは少林寺に逃げ延びて、そこで武術を習得するため修行僧となる。やがて、ショウホや敵対する唐のリー将軍をかくまったということでワン将軍が少林寺を捜索しにやってくる。


リー・リンチェイジェット・リー)映画デビュー作にして初主演作品。

公開40周年ということで4Kリマスター版での上映。

実は僕はリー・リンチェイの映画って80年当時はほぼ観たことがなくて、おそらくこの『少林寺』も初見。

おそらく、というのは続く『少林寺2』(物語や設定はまったく繋がっていないらしいが)は深夜かなんかにTVで放映されたのを観た記憶があるから。でも1作目は観てなかった。

確か、2作目ではインド人のようなターバンをして変装した敵が出てこなかったっけ?で、最後には敵が股間を血で染めて吹っ飛んでたよーな(全然違ってたらゴメンナサイ)。あと、女性のキャラクターが『マトリックス リローデット』でキャリー=アン・モスがやってたような身体を反らせて片足を後ろから自分の頭越しに振り上げて前方の敵を蹴る攻撃をしてました。あれ、なんていう名前の技なんだろう。

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80年代頃って僕はリー・リンチェイの映画とは無縁だったんだけど、彼のことは知っていたし、“少林寺”というお寺があって、めっちゃ強いお坊さんたちがそこで修行しているらしいことや世間でもリー・リンチェイの名前と坊主頭のあのヴィジュアルは浸透していた(“ハッ!ハッ!ハッ!ハハッ!!”のあの掛け声も)。

少林寺』という映画がなければ、「ドラゴンボール」のクリリンも存在しなかっただろうし、チャウ・シンチーの『少林サッカー』だって作られなかっただろうし。


中学の頃、一時期坊主頭にしていたら(今ではずっとそうですが)、部活の先輩から「リー・リンチェイ」をもじって「リーリン」って渾名を付けられてそう呼ばれてたぐらいでw

少林寺”を描いた映画はこれ以前にもジャッキー・チェン主演の『少林寺木人拳』(1976年作品。日本公開1981年)や、その後タランティーノの「キル・ビル」シリーズにも出演したリュー・チャーフィー主演の『少林寺三十六房』(1978年作品。日本公開1983年)とか、日本でも千葉真一少林寺拳法の使い手を演じた(中国の少林拳と日本の少林寺拳法は別物だが、『少林寺』の冒頭で両者の関係について解説が入る)カラテ映画もすでにあった。

ブルース・リー主演の『燃えよドラゴン』(感想はこちら)だって、主人公は少林寺の弟子という設定だったし。少林寺というお寺自体は知られていたんですよね。

少林寺』は1982年作品(スピルバーグの『E.T.』→感想はこちら と同じ年)だから、そのものズバリなタイトルの映画がそれまでなかったのは意外でした。

だけど、この映画であらためて世間で“少林寺”が注目されることになったのは確かなんだろうな。

あの当時、漫画で少林寺っぽい設定の作品をよく目にした覚えがあるもの。

僕がリー・リンチェイの映画を映画館で観るようになったのって「ジェット・リー」と名乗ってリチャード・ドナー監督、メル・ギブソン主演の『リーサル・ウェポン4』に出て以降だし、それ以前には90年代に彼が実在の武術家ウォン・フェイホン黄飛鴻)を演じた有名な「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズもドニー・イェンと共演した『天地大乱』1本だけを、またブルース・リー主演の『ドラゴン怒りの鉄拳』(感想はこちら)の再映画化で倉田保昭と共演した『フィスト・オブ・レジェンド』、それからこれもブルース・リーがかつて「グリーン・ホーネット」で演じたケイトーっぽい格好の『ブラック・マスク』などをヴィデオで観たぐらい。

2000年代はわりと劇場で彼の主演映画を何本も観ています。

そんなジェット・リー以前の“リー・リンチェイ”の若かりし日の作品なわけですが、お話自体は昔ながらの仇討ちモノで、主人公が助けるリー将軍や悪役のワン将軍は実在の人物だけど、もちろんストーリーの中身はフィクション。ちょうど『暴れん坊将軍』などのTV時代劇みたいなわかりやすい勧善懲悪モノで、ところどころベタなギャグが入る。全体的に古めかしくはあるのだけれど、「少林~少林~♪」ってのどかな主題歌がなんだかなごみました(^o^)

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一方では、死体のはらわたを掴み出したり、剣で刺されたところから血が勢いよく吹き出したり、明らかに生きたヒツジを虐待している描写(ほんとに殺しているのかも)もあって、特に動物虐待については82年当時ってまだまだ前時代的な意識だったんだな、と。映画の冒頭で「現在では不適切な表現がありますが、作品の歴史的価値を考えてそのまま上映します」と字幕が出てくるので、何か差別的な表現でもあるのかと思ったら、動物虐待だったとは。たかが映画のためになんとも野蛮ですな。あのヒツジたちやカエルは、そのあとちゃんとスタッフがおいしくいただいたんでしょうな?

いや、日本だって『南○物語』だとか『子○物語』だとかで撮影のために思いっきり動物を虐待してたから偉そうなこと言えないんですが。

誤って殺した犬を埋めるのが惜しいから丸焼きにして食っちゃうとか、ギャグとしてももはや笑えないし。ブルース・リーも『怒りの鉄拳』で犬の丸焼き食ってたけど、犬はあちらの人たちにとっては日常的な食料だったのかな。

主演のリー・リンチェイをはじめ、出演者たちの多くが実際に武術の実力者とあって、アクションシーンでの彼らの身体の動きが滑らかでそこは見応えがありました。


この映画の10年ほど前のブルース・リーの映画だと、ブルースと対戦相手役の武術の心得のある俳優以外の脇の出演者たちが見るからにアクションやクンフー功夫)の素人で、闘いの場面で迫力不足だったり動きがもっさりしていたのが、さすがにそのあたりは進化してますね。

ただ、アクションの撮り方はあくまでもセオリー通りというかずっと同じテンポで続くので、凄い動きをしているんだけど観ているうちに単調に感じられてきて、途中でちょっと飽きてきてしまった。

つくづくジャッキー・チェンの映画は画期的でしたね。コミカルなギャグを交えたクンフーバトルに超絶的なスタント場面を加えて観客を飽きさせないから。

ジェット・リーの方も、その後の「ワンス・アポン~」シリーズなどではワイヤーアクションを駆使して人間離れした体技を披露していたし工夫の跡が見られますが、逆に『少林寺』ではあくまでも生身のアクションで闘いが表現されていて、ジャッキーの映画では結構多用されていたフィルムの早廻しもほとんど使われず、映画的なトリックに頼らない技の数々は今となっては貴重な映像ではある。

物語はほんとにご都合主義で、少林寺の修行僧たちは肉食や飲酒を禁じられているにもかかわらず、なんだかんだと言い訳してあっさり肉や酒を口にするし、それ以外でも自分たちに都合よくルールを解釈して全然禁欲的ではない。ストーリーに対するツッコミどころは無数にある。

ハッキリ言って、この映画を褒めているのは主にあの当時に映画館で観た世代の人たちだろうし、そういう意味では思い入れのある世代とそうでない人たちとでは評価もかなり変わるんではないかと。僕は個人的にこの映画に思い入れがないから、一部の人々のようにその出来を持て囃す気にはなれないけれど、その後、映画に限らずさまざまな分野に影響を与えたということでは、文化的には重要な作品といえるかもしれませんね。

映画『少林寺』が作られた当時には少林寺の武術というのはほとんど廃れてしまっていたそうだから、映画で描かれているのはあくまでも近代や現代になってから作られた中国武術で、まぁ、映画が現実の歴史に影響を与えた一つの例ですね。

ジェット・リーの『ワンス・アポン~』や『SPIRIT』がまた観たくなってきたけど、そのうちジャッキー・チェンの『プロジェクトA』や『スパルタンX』『ポリス・ストーリー』『サイクロンZ』あたりも映画館でリヴァイヴァル上映してくれないかなぁ。


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