映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』


※以下は、2009年に書いた感想です。


デヴィッド・フィンチャー監督、ブラッド・ピットケイト・ブランシェット出演の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』。2008年作品。日本公開2009年。

原作はF・スコット・フィッツジェラルドの短篇小説。

第81回アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞、美術賞、視覚効果賞受賞。

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1918年、老人のような外見でうまれて施設に引き取られたベンジャミン(ブラッド・ピット)は、やがて少女デイジーエル・ファニング)と出会う。成長していくデイジーと逆に若返っていくベンジャミンは愛し合うようになるが、月日の流れとともにふたりの外見は逆転していく。

以下、ネタバレありです。


この『ベンジャミン~』を観てまず思い浮かぶのが、ロバート・ゼメキス監督、トム・ハンクス主演の『フォレスト・ガンプ』。

全篇がナレーションによって綴られているのも、主人公が“他の人たちと違っている”というのも似てるけど、ヒロインが悲惨な目に遭って主人公の「愛」で救われる、というのも同じ。

フォレスト・ガンプ 一期一会』(1994) 出演:ロビン・ライト ゲイリー・シニーズ サリー・フィールド 予告篇に『ドラゴン ブルース・リー物語』(感想はこちら)のサントラが使われています。
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もっともトム・ハンクスのピュア演技をはじめ全篇に渡ってどこか偽善的な香りが濃厚に漂っていた『ガンプ』(※個人の感想です)に比べると、『ベンジャミン』の方はあからさまに教訓めいたメッセージがあるわけでもなく、ブラピ演じるベンジャミンは外見の変容が他の人とは逆の順序を辿ることを除けば、別に特殊な能力があるわけでもない。セックス方面でもガンプみたいにカマトト振らないで愉しんでるし。

何を考えてるのか最後までよくわからないのは同じだけど。

予告篇でも見られるガキの身体に老けメイクのブラピの顔が乗っかってる、あのまるでヅラかぶったナイナイ岡村みたいな映像は高度な技術を使ってることはわかるけど、かつて『殺し屋1』で塚本晋也がやってた“首から下マッチョ”と原理は同じだよな、と。よく出来てるのでかなり「キモカワ」ですが。


老けメイクといえば、冒頭から登場するケイト・ブランシェットも『母べえ』(感想はこちら)の吉永小百合と同じことやってるけど、喉元のブヨつきがホラーテイストでなかなかショッキングだった吉永さんの特殊メイクに比べると、金のかけ方のせいか技術力の違いなのかわからないけどほとんど違和感がない。


ケイト・ブランシェットより吉永小百合の老けメイクの方が不自然、ってのも考えてみるとスゴい話だけど。

さらに『母べえ』では吉永小百合の娘役が倍賞千恵子だったので観ててとても困った。

どっちが母なんだよ、と(;^_^A

さすがに倍賞さんほどのインパクトはないけど、この『ベンジャミン・バトン』でケイト・ブランシェットの娘を演じているジュリア・オーモンドにもちょっとビックリ。

劇中では1970年生まれと言ってるけど…なんかの間違いではないのか?アラフォーどころかさらに一回り上に見えてしまった。リチャード・ギアショーン・コネリー出演の映画でお姫様演じてたのもそんな大昔ではないはずなのだが、劣化し過ぎでは…?


ところで『ベンジャミン~』と同じアイデア江口寿史が漫画を描いてるんですが(単行本「青少年のための江口寿史入門」収録「岡本綾」)、そちらの方は主人公の祖母が飼い犬とともにだんだん若返っていくという話でした。

でも中身はおばあちゃんのままなので、風呂上がりにおっぱいほっぽり出したまま平気で孫の前に現われたりする。どんどん美少女になっていくおばあちゃん。

やがて胎児になって死んでしまった飼い犬のお墓の前には、主人公のかたわらで幼児になったおばあちゃんがたたずんでいるのだった…。

ドタバタで笑わせながら切ないエンディングだったけど、これ数ページの作品。

一方『ベンジャミン〜』は3時間近い尺…いや、退屈したわけではないのだけれど(特に20代に見えるブラピは女性ファンにはタマらんでしょうが)、予想外の展開があるのでもなく、じょじょに若返ってゆく主人公と反対に年老いていくヒロインならああなるだろう、という結末を迎えるまでスクリーンを見つめ続けるにはやはり長い。

同意してくれる人は少ないかもしれないけど、正直同じデヴィッド・フィンチャーの長尺映画(そーいやブラッド・ピットフィンチャー作品は『セブン』『ファイト・クラブ』に続いてもう三本目なんだな。なんか完璧に忘れていたが)なら前作『ゾディアック』の方が僕は面白かった。

『ゾディアック』(2007) 『ダーティハリー』の犯人スコルピオのモデル。
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観終わったあと、隣の席の女性が「ベンジャミン可哀想…」と繰り返しつぶやきながら泣いてたんで感じ方は人それぞれですが(しかし、自らの運命を受け入れ懸命に生きて天寿を全うした彼ははたして“可哀想”だったのだろうか?)。

なんか批判めいたこと書いてますが、でもまぁ、なかなかユニークな作品だったとは思います。


「老い」といえば上映前にリアル爺さんのクリント・イーストウッド主演・監督作品『グラン・トリノ』の予告篇をやってましたが(同じく監督作『チェンジリング』も)、御大老いてなお骨太。俳優引退なんて言わずにほんと死ぬまでやって欲しいです*1

かなり端折られてますが。ブラピ若返りの秘密も。
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*1:その後、2012年に『人生の特等席』(感想はこちら)に俳優として出演。