映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

一生にいつも何度でもジブリを。

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「一生に一度は、映画館でジブリを。」というキャッチフレーズで6/26(金)からスタジオジブリの旧作4本(『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『ゲド戦記』)が劇場で再上映されていて、『ナウシカ』と『千と千尋』を観てきました。

ナウシカ』についてはもう一つのブログに感想を書いています。

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宮崎駿監督及びジブリのアニメ作品は日テレの「金曜ロードSHOW!」で定期的に放送されているけれど(今年の夏も8/14に『となりのトトロ』、8/21に『コクリコ坂から』、8/28に『借りぐらしのアリエッティ』を放送予定)、映画館での再上映はきわめて稀なので貴重な機会。

特に僕は『ナウシカ』は劇場では未鑑賞だったから、絶対に観ておきたかった。次はいつ観られるかわからないですし。

で、せっかくだからそれ以外の作品も、と思って『千と千尋』をチョイス。

こちらは2001年の劇場公開時、その後TV放送でも何度か観ていますが、映画館では19年ぶり。時の流れは早いですね。

主人公の小学生・千尋の声を演じていた、当時中学生だった柊瑠美さんは2年前にご結婚されたし、夏木マリさんが演じる“湯婆婆(ゆばーば)”の息子の巨大な赤ちゃん“坊”役だった神木隆之介君のその後の活躍ぶりも皆さんご存知の通り。

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やっぱりTVでやってるのを「ながら観」するのと映画館のスクリーンで観るのとでは集中度が違うし、くどいけどジブリの過去作を劇場で観られる機会はそうそうないので今回わざわざ足を運んだ甲斐はあったんですが、ただ最初の『ナウシカ』は大変感激して観たものの、2本続けて観たせいもあってか次の『千尋』では若干集中力が途切れて、千尋が湯婆婆の姉・銭婆(ぜにーば)の家を訪ねたあたりでちょっとウトウトしてしまった。

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黙ってケーキ食べてるカオナシが可愛い。

観た時間帯もあるのでしょうが、上映会場は『ナウシカ』よりも『千尋』の方がお客さんが入っていて、それも若いカップルが多かった。

きっと子どもの頃に映画館でこの映画を観た人たちなんでしょうね。あるいは、TV放送でのジブリ初視聴がこの作品だったりしたのかも。

僕なんかは世代的にも80年代の『ナウシカ』とか『天空の城ラピュタ』の方に圧倒的に思い入れがあるんだけど、一方ではこの『千と千尋』や『もののけ姫』の方が好きだという人たちも結構いる。そのへんの好みの違いが面白い。

で、19年ぶりに映画館で観て、作品への感じ方に何か変化があったかというと、以前TV放映時に書いた感想とそんなに変わらなかった。

ei-gataro.hatenablog.jp


ナウシカ』については劇場初鑑賞ということもあって熱くなったのが、『千尋』に対しては自分でもちょっと意外なほど淡々と観た、というか、すでにこちらのブログに感想を書いていてさらに書き留めておくことが特にない、ということもありますが、予想していたほど懐かしさとか心が動かされることがなかったんですよね。

初公開当時、千尋がハクにもらったおむすびを食べながら泣くシーンで映画館で涙ぐんじゃったんですが、今回は冷静だった。

多分、僕はもう以前のように千尋の目線でこの映画を観られないのだ。“ブタ”に変えられた彼女の両親のような立場から観ざるを得ない。ブタ目線。

今回『ナウシカ』と続けて観ることで2本の作品の違いがより際立って見えたのだけど、それこそ『ルパン三世 カリオストロの城』から『ラピュタ』ぐらいまでのオーソドックスなドラマの作劇とは明らかに異なっていて、ハクが千尋に台詞で説明したりする決まり事は登場する神様たちや魔法だとかにまつわるこの映画独自のものだから(『となりのトトロ』でのトトロと人間の関係が『もののけ姫』を経てさらに複雑になったような感じ)理屈で理解しづらいんですよね。

宮崎監督も観客が「わかる」ように丁寧に説明することを放棄しているようで。そういうもんなんだからいいんだよ、と。

ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」が、やはり“不思議の国”に迷い込んだアリスがいろんなわけのわからないキャラクターたちや出来事に翻弄されるように、『千尋』の観客もまた映画の中で「迷う」ように仕向けられている。

この映画のファンが多いことやアメリカでオスカーまで獲って海外での評価も高いことが長年不思議だったんですが、この「迷子」になるような感覚が病みつきになるんだろうか。

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また、『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』の感想にもちょっと書いたんですが、日本風の舞台、美術が異国情緒を醸し出してもいるのでしょう(琉球っぽい曲も使われていたし、あちらの民族衣装のようなものを身につけた神様たちも出てくる)。外国の人々にとってファンタスティックな世界なのだろうな、と。

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日本のお客さんたちも同様の楽しみ方をしているのかもしれない。異界を訪れて彷徨うような。

正直なところ、今の僕は10歳の少女に働くことの大変さを教えるような内容にちょっと抵抗があるんですが。なんで千尋が両親を助けるためにあんな労働をしなければならないのか。

アニメって基本的に子どもが観るものだし(そうじゃない作品が数多くあるのは知ってますが、だから“基本的に”と断わっています)、なので子どもが主人公であることも多くて、そうするとその少年少女の主人公たちが現実の子どもは経験しないようなツラいことや大変なことを大人のキャラクターの代わりに経験する、ということはままあるけれど、それでもあえて子どもに労働させる必要があるのか、と思うんですよね(「油屋」には千尋以外にも働く少女たちがいた)。『魔女の宅急便』もそうだけど、映画が作られた当時はともかく、今観ると児童に「肉体労働」させることに過剰な意味を見出してしまうので。


昔は小学生が会社の社長になって巨大ロボットに乗って戦って、敵を殺して「やったー!」とポーズをキメて喜ぶようなアニメが普通に作られてましたが、それは今じゃ無理だと思うし。

世界では、まだ幼い頃から学校にも行けずに生きていくために労働せざるを得ない子どもたちもいますが、それが正しいことだとはまったく思わない。

むしろ『トトロ』のサツキやメイたちのように自然の中で思いっきり遊ぶ子どもたちが見たいんだけど、アニメの絵の中の「自然」で遊ぶ子どもを描くことに宮崎監督は疑問を感じるようになったのだろうか。

崖の上のポニョ』は、主人公の宗介が海の妖精のような存在である“ポニョ”と一緒に自分が住む町が大水に飲まれてファンタスティックな世界に変貌していくのを見つめる映画でした。

千と千尋』はちょっと怖い夢のような映画でしたが、『ポニョ』も幼児には怖いんじゃないかと思える場面がいくつもあった。でも、「ちょっと怖い」のって人は魅せられるんですよね。

大雨による増水で家々が流されたり土砂崩れが起きたりしているような現在、『ポニョ』のような内容を無邪気に楽しむ気にはなれないけれど、でも『ナウシカ』で描かれた悲観的な未来像も『千と千尋』の不思議な町も、そして水に沈む『ポニョ』の町も、どこか現実の世界から離れた、まるで母親のおなかの中で赤ちゃんを包む羊水のようなイメージがある。

千尋が流す大粒の涙は、宮崎駿にとってはハクを救う命の水でもある。

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不思議な町とそこへの入り口を隔てていた水はいつしか引いて、千尋は「あちら側の世界」から両親のいる現世へ戻ってくる。

水は時に恐ろしいが、それが引いた時、何かが変わっている。

20代だった僕がおむすび食べながら泣く千尋にもらい泣きしたように、そしてハクが回復して嬉し涙を見せた千尋に「救い」を感じ取ったように、「子ども」のキャラクターから大人や若者が何かを伝えられ、教えられるということもあるのでしょう。

宮崎駿監督はけっして子どもを見くびらない。子どもなんだから、と過度に甘やかしたりもしない。そしてそのことを映画を観ている子どもたちも感じ取るからこそ、彼の映画は世界中の子どもたちに愛され続けている。

僕が「面白くなかった」と文句を垂れた『もののけ姫』もティーンエイジャーの支持が高いし。

僕たちの幼少期や思春期、青年期とともにあったジブリアニメは、これからもずっと僕たちのそばで輝き続けるのでしょう。

ジブリアニメを観れば僕たちはいつでも「あの頃」に舞い戻って、いっとき夢中になってあちら側の世界の中を旅することができる。そして映画が終わって明るくなった映画館の場内を眺めながら、そこに現実の世界での別れの切なさを重ねる。

そうやって僕たちはジブリアニメを観ながら成長してきた。

宮崎駿監督は現在、最新作の『君たちはどう生きるか』を制作中ですが、完成までまだあと3年ほどかかるそうですね。もうすでに制作開始から3年経ってるんですが。どんだけ~!?^_^;

首を長くして待っていよう。その間に『ラピュタ』も再上映して~(♡ >ω< ♡)


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『君たちはどう生きるか』
『もののけ姫』
『ゲド戦記』
『となりのトトロ』
『コクリコ坂から』
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