映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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『ラヴ・ストリームス』


ジョン・カサヴェテス監督・主演、ジーナ・ローランズ、ダイアン・アボットシーモア・カッセル、Risa Blewitt、ジェイコブ・ショウ、マーガレット・アボットほか出演の『ラヴ・ストリームス』。1984年作品。日本公開1987年。

第34回ベルリン国際映画祭金熊賞(最優秀作品賞)受賞。

www.youtube.com

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小説家のロバート(ジョン・カサヴェテス)は愛や孤独を題材にした作品で評判を呼んでいたが、実生活では他人を愛することに不器用で離婚歴もあった。そんな彼の家に、長年連れ添った夫(シーモア・カッセル)と別れた姉サラ(ジーナ・ローランズ)が訪ねてくる。娘(Risa Blewitt)が父親との生活を選んだことに傷ついたサラは、狂気の世界へと足を踏み入れていき──。(映画.comより転載)


ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ リプリーズ」にて鑑賞。

リプリーズ (Reprise)”ということなので、以前にもあった企画なんですね。

ジョン・カサヴェテスの映画は僕は1990年代にヴィデオで何本か観たことがありますが、あれ以来観直していないので内容はまったく覚えていません(いつものことで…)。

当時、映画好きの友人がいろんな映画のレンタルヴィデオをコピーして(違法ですが…)くれたので、それで観られたのですが。

確か『アメリカの影』(1959) と『こわれゆく女』(1974) 『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』(1976) はその時に観た記憶があるんだけれど、『フェイシズ』(1968) や『オープニング・ナイト』(1977) はどうだったか自信がない。『グロリア』(1980) は別の機会に観たかな。カサヴェテス作品としては一般的にも有名だから。『レオン』(感想はこちら)の元ネタになった映画ね。

まぁ、いずれにしても見事なほど何も覚えていないので、ただ「観た」というだけのことだし、残念ながら諸事情により、それらのヴィデオテープはその後処分してしまって、すでにVHSのヴィデオデッキもないからたとえテープが残っててもどっちにしろもう家では観られません。

カサヴェテスの映画って、初監督作品の『アメリカの影』を除くと、どれも結構長いんですよね。記憶力がないので、観た端から忘れていく^_^;

僕が観慣れてきたいわゆるハリウッドのわかりやすい起承転結のある物語ではないので、観てる途中で「これは一体何を描いた映画なのだろう」とわかんなくなってくる。

いや、別に難解な内容ではないし、退屈なわけではないのだけれど、では「面白い」かというと、僕にはよくわからない。

90年代頃には意識していろんな映画を観ていたこともあるし、自主制作映画にも興味を持っていたから、アートっぽい映画、ミニシアター系の映画もたまに観ていた。

カサヴェテス監督は「インディペンデント映画の父」と呼ばれたりもしているから、ジム・ジャームッシュとかアキ・カウリスマキなどと一緒に押さえておきたいと思ってた。

で、『アメリカの影』などは新鮮だったし、ジーナ・ローランズが主演を務めた一連の作品なども、やはり通常自分が目にしているような商業映画とは異なるシナリオ、演技、撮影、編集などが面白かったんですよね。

で、今回、本当に久しぶりにカサヴェテスの映画を観る機会があったものだから、彼の作品を劇場のスクリーンで目にするのはこれが初めてでもあるし、141分という長さに多少緊張しながらも臨んだのです。

…閉館間近の小さなミニシアターだったこともあって客席は満席で、冷房は効いてたけれど途中で汗がタラリと垂れるような上映会場での鑑賞でした。

しかし…う~んと、困ったな。感想をどう書いていいのかわからない(;^_^A

「愛」──特に家族だとか親子などの愛についての物語、なのだろうけれど、こういう映画は俺の手に余るな…と。非常にドメスティックなお話が140分かけて描かれる。

とはいっても、主人公は売れっ子の作家で大きな家に住んでいて、そこには10代後半の女の子たちが何人も同居していて、彼との間の幼い娘がいる女性も滞在していたりと、身近に感じられるような舞台設定でもないので、これまた「俺は一体何を見せられているのだろう」と。

でも、ネットでこの作品の感想を読むと、皆さん、絶賛されている。

自分が子ども過ぎるからでしょうが、そこまで高く評価されてる理由がわからない。

ジョン・カサヴェテスが俳優として出ている映画って、僕はブライアン・デ・パルマ監督の『フューリー』(1978) を観ていて(最初から最後までちゃんと観たのかどうかももはや記憶がさだかではないが)、まぁ、悪役が似合うようなイケオジ、という印象でしたが、あらためて今回彼が主演の映画を観て、ちょっとベン・メンデルソーンに似てるなぁ、と。メンデルソーンをもっと男前にしてセクシーさを増したような。


上目遣いでちょっと口角を上げて、ちょいワルな表情で笑顔を見せたり、煙草を吸ったりグラスで酒を飲んだり、かっこいいおじさまだから、まぁ、モテるのだろうな、というのはわかる。

実際のジョン・カサヴェテスさんがプライヴェートでどういう男性だったのかは知る由もないけれど、彼が演じるロバートはなんていうかいかにも「昭和の男」って風情で、やってることは相当無責任だし、作家だけど文章を書いてる、仕事をしている場面もなくて、なんかとにかくイイ歳こいて調子に乗ってるオヤジの姿をず~っと見せつけられることに。


時々可愛いし、後半になると転がり込んできた姉のサラに振り回されもして、けっして憎めないのだけれども、やっぱり「これは一体何を描いてる映画なのだろう」とボンヤリしながら観ていた。

最後まで一応観たけれど、さすがに終盤あたりで疲れてきて、まぶたが重たくなった。141分は長いよぉ。

ロバートは「老人と子どもが好き」と言うが、老人はともかく、子ども好きには見えなくて、元妻との間の実の息子(ジェイコブ・ショウ)を連れてラスヴェガスのホテルに行くが、部屋に息子を置き去りにして女の子たちと車に乗って遊んでたりする。意味がわからない。

何かというと小切手切って女性たちに渡してるし。それですべて片づけるし、金にも困ってないから人間的に共感を覚えたり同情する部分もない。

なんだろう、これはジョン・カサヴェテスみたいなイケオジになって、金に困らない生活を送っているけれど愛もない、誰も真に愛せない男の哀しさを体験するお話なのだろうか。

だけどこの人、相手にしてくれたり面倒を見てくれる人はまわりにいるんだよね。全然孤独にも見えないし。

また、ロバートの姉のサラは元夫と娘に愛情を注ごうとして両方から拒絶される。

だけど、彼女の「愛」は一方的で自分の価値観を相手に押しつけるものだから、そんなものは本当の愛情だとは言えないし、そのことを自覚できない彼女にもやっぱり共感や同情を覚えるのは難しくて、この姉と弟は何か遺伝的な疾患を抱えているのか、それとも育ってきた家庭環境に問題があったんじゃなかろうか、などと思った。

店の歌い手である女性・スーザン(ダイアン・アボット)と二人で飲んだあと、酔ったまま勝手に彼女の車を運転して事故を起こしたり、階段から転げ落ちて大怪我を負ったり、迷惑千万な男で、おそらくこういうオヤジの「可愛さ」を演出していたのだろうし、あの当時はそれが許されてもいたんでしょう。上映会場でも僕の隣りに座ってたおっさん二人が時々声を上げて笑っていた。何が可笑しいのかよくわからなかったが。

ミニシアターに時々いる、笑いどころがおかしいおっさんは困りものだなぁ。

スーザンはスーザンで何考えてるのかよくわかんないし。車に傷をつけたロバートにキレてたと思ったら、怪我した彼を家に入れて、急に優しくなってたりして。

2023年の今こういう映画を観ていると、まるで男尊女卑とか性差別とか、モラハラパワハラなどが問題視されていることへの反動みたいにさえ思えてくる。

イイ歳こいた男がすがってくる元妻や息子を捨ててバカみたいなことやってたっていいじゃないか、コンプライアンスなど知ったことか、と。

昔の映画を観て溜飲を下げる人たちもいるのだろうか。あの頃はよかった、と。

劇中で、みんな煙草吸いまくりだし。

結局のところ、しばらくロバートの家にいたサラは、ボーリング場で知り合った男性と一緒にロバートから離れていく。弟のために買ってきた何匹もの動物たちを置いて。

愛する相手をみつけたサラには新しい日々がある。もはや近くに姉もいなくなったロバートに果たして新しい朝は来るのだろうか。

「人生は自殺と離婚と子どもを傷つけることの繰り返しだ」。

これは悟りか、居直りか。

サラが(彼女の夢の中で?)元夫と娘に次々と悪戯をして笑わせようとするけど、二人ともニコリともしない場面が妙に可笑しかった。

同じく夢の中で彼らを思いっきり轢き殺してるし。

元夫・ジャックがプールサイドでサラにいろんな嫌がらせをされながらも黙ってじっと堪えている真顔の可笑しさと、元夫と娘の無反応ぶりにもまったく動じることなく笑えないギャグをしつこく繰り出し続けるサラの痛々しさ。

ボーリング場で、投球しようとしたら指が穴から抜けなくなってサラがそのままボールに引っ張られるようにレーンにぶっ倒れるシーンは最高でした。

撮影自体は落ち着いたものだし別に取り立てて変わった手法がとられているのでもないんだけど、途中でワンシーンだけ、娘の今後のことについての話し合いの場面で急にキャメラが手持ち風に激しく動いてて、サラの動揺や狂気を表現していたのかな、と。

サラ役のジーナ・ローランズはやっぱり彼女の演技に見入っちゃうし、ジョン・カサヴェテスとの実の夫婦によるコラボは見応えはありました。

だから観てよかったですが(残念ながら他に上映されていた5作品は都合がつかなくて観られず)、でも、僕にはその面白さ、よさを理解するのが難しい映画というのが世の中にはいっぱいあるんだなぁ、ということを痛感させられもした。

またいつか、機会があったら他の作品も観てみたいです。


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