映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『ビデオドローム 4K ディレクターズカット版』


デヴィッド・クローネンバーグ監督、ジェームズ・ウッズ、デボラ・ハリー、ソーニャ・スミッツ、ピーター・ドゥヴォルスキー、レスリー・カールソン、ジュリー・カーナー、リン・ゴーマン、ジャック・クレリーほか出演の『ビデオドローム 4K ディレクターズカット版』。1982年作品。R18+。

www.youtube.com

暴力やポルノが売り物のケーブルテレビ局を経営するマックスは、ある日、部下が偶然に傍受した電波から「ビデオドローム」という番組の存在を知る。その番組には、拷問や殺人といった過激な場面が生々しく映し出されていた。やがて「ビデオドローム」は見た者の脳に腫瘍を生じさせ、幻覚を見せるものであることがわかり、「ビデオドローム」に支配されたマックスの世界も均衡を失っていく。(映画.comより転載)


テアトル・クラシックス ACT.3」で鑑賞。

しかし、それにしても、

「テアトル・クラシックス ACT.1 愛しのミュージカル映画たち」
ei-gataro.hatenablog.jp

「テアトル・クラシックス ACT.2 名優ポール・ニューマン 碧い瞳の反逆児」
ei-gataro.hatenablog.jp

──に続いて、なんで今度はクローネンバーグなんだかその基準がさっぱりわからない^_^;

8月にはやはりテアトル系で開催中の「12ヶ月のシネマリレー」で同じくクローネンバーグ監督の『裸のランチ』が上映されるし(東京では7/7より上映開始)、何、このクローネンバーグ祭りw

8月に去年撮った『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』が公開されるから、その一環なのかな。ちょっと僕は観る予定ないですが。

www.youtube.com


ビデオドローム』はアメリカでの公開から今年で40周年ということだし、『裸のランチ』も本当は30周年の去年にレストア版が公開されるはずが今夏まで長引いてしまったようで、でもまぁ、ファンにとってはこうやって過去作が続けて上映されるんだからよかったのかもしれないですね。

僕はクローネンバーグのファンでは全然ないし、最近は彼の新作映画はまったく観ていないんですが、80年代にTVで放映された『ザ・フライ』で初めてクローネンバーグ作品に触れて以来、90年代には先ほどの『裸のランチ』や『イグジステンズ』を劇場で観たし(『クラッシュ』はヴィデオだったかで観た)、2000年代に入っても『スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする』や『ヒストリー・オブ・バイオレンス』を公開時に観ました。

『ヒストリー~』は友人と観て、「暴力の歴史」なんて大仰なタイトルだから暴力にまつわる壮大な歴史の映画なのかと思ってたら、ヴィゴ・モーテンセンが大暴れする映画だった。鑑賞後に友人と飲みながら「面白かったなぁ」って語り合ったっけ。

その次の『イースタン・プロミス』は観逃しちゃって、フルチンで暴れるモーテンセンは見られず。

キーラ・ナイトレイが変顔する『危険なメソッド』にも興味をそそられたんだけど、これも観逃してしまった。

これまでに結構面白い映画を撮ってる監督という感じだったんだけど、とはいえ誰にでもお薦めできるようなタイプの映画を作る人ではないし、僕も『裸のランチ』観終わって「なーそれ」って呆然としたし(笑)、大満足して映画館を出た記憶はそんなにない。

ホラー系から始めた人だから(って、僕はクローネンバーグの初期の作品はほとんど観てないが)特殊メイクなどのSFX(特殊撮影)流行りだった80年代にジャンル映画の監督として知名度が上がったけど、最初に観た『ザ・フライ』が一番メジャー寄りで、その後はどっちかというとアート系の怪しげな映画を撮る人、という印象が強くなった。まぁ、そもそもそういう人だったんだろうけど。

この『ビデオドローム』を撮った監督に『ザ・フライ』を撮らせようとした人はめちゃくちゃ見る目があったんだね。

ただですね…僕は今回初めてこの映画を観たんですが、なんてゆーか、困ってしまったな(;^_^A 映画が終わってエンドクレジットが流れ始めると、何人かのお客さんたちがざっと席を立って出ていった。明るくなっても困惑気味な表情を浮かべて納得いかないような様子の人も。そうだよなぁ。『裸のランチ』の時の反応再びw

かと思えば、ある二人連れの女性たちが帰り際に「わからないのを楽しめばいい」と笑ってたりも。

裸のランチ』はドラッグ中毒者が見た妄想、ということでなんとなく流し見したんですが、今回はそれがヴィデオ映像に置き換わってる。

とにかく飛躍が激し過ぎて、ちょっとついていけなかった。

スナッフ映像に魅せられた主人公・マックスがそれを手に入れるためにオブリビアン教授(ジャック・クレリー)なる人物に会いにいくが、オブリビアンはすでに死んでいて映像の中にいた。TV番組で知り合った女性・ニッキー(デボラ・ハリー)も同様に、謎の映像“ビデオドローム”への出演を求めてピッツバーグに向かったまま行方知れずとなり、再び会った時には映像の中にいてオブリビアン同様に首を絞められる。

そんで、レスリー・カールソン演じるなんかよくわからんおっさんがマックスを翻弄するんだけど、“ビデオドローム”に入れ込むうちにいつしか現実と空想の区別がつかなくなったマックスは、やがて腹に大きな割れ目が生じて、そこにピストルを突っ込んだところ、自分の手と融合、「ビデオドロームに死を!」と叫びながら相手の腕に手榴弾をくっつけて殺したり、最後には自分自身を腕の銃で撃ち抜く。

…意味がわからん(;^_^A

この作品はよく「難解」と言われてるけど、難しいというよりも、必要なことをちゃんと描いてないからわからないんだよね。上映時間はわずか89分だし。

観る人が劇中でのさまざまなイメージに各自意味づけして「こういうことなのかしら」と感じればいい、という作り。現代アートか。

リック・ベイカーによる特殊メイク、というのか、TVのブラウン管がミョ~ンと伸びてピストルを突き出したような形になったり、マックスが顔を埋めたり、TVの本体がまるで生きているように波打ったり、爆発して中から内臓が飛び出したり、マックスのおなかに空いた大きな割れ目はもちろん女性器のメタファー(メタファーっつーかそのまんま)で、そこに銃を突っ込むのも大変わかりやすいし、お話の方はよくわかんなくても映像イメージは面白いから、そこんとこを楽しめばいいんでしょうね。


裸のランチ』だって、まぁ、そういう映画だったし。

無機物と肉体が融合する、というのは『ザ・フライ』でもやってたし、『イグジステンズ』もそういうイメージに溢れていたと記憶している。同じ年に作られた『マトリックス』(感想はこちら)とちょっとカブってるところもあったもんね(日本公開は『イグジステンズ』の方が1年もあと)。『マトリックス』ではなくて『イグジステンズ』が大ヒットして続篇が作られていく世界というのも想像すると面白いかもしれない。

マックスに撃ちまくられたコンヴェックスが悶えながら身体が崩壊していく様子は、ロブ・ボッティンが特殊メイクを担当した『遊星からの物体X』(1982)(感想はこちら)とか『トータル・リコール』(1990)(感想はこちら)なんかを思い出すんだけど、正直、同時期に公開されたリック・ベイカーによるこの『ビデオドローム』の特撮よりもボッティンの『物体X』のグロシーンの方が出来が上に思えたし、同じようにメディアの恐ろしさについて別の方法で描いていたジョン・カーペンターの『ゼイリブ』(1988)(感想はこちら)の方が僕は映画としては面白かった。

腕をグレネードと融合されてしまった(どうやってやったのかは不明)マックスの会社の技術者・ハーレン(ピーター・ドゥヴォルスキー)が爆発する寸前にカットが変わって煙だけになって後ろの壁が崩れる場面なんか、モンティ・パイソンのコントかと思うほど安っぽい映像だったし。…そういう部分も笑いながら楽しめばいいんですけどね。


この映画の映倫の指定理由の欄には「極めて刺激の強い性愛描写がみられ」とあるけれど…すみません、どの辺が?^_^; 18禁はグロ描写とか、なんか別の理由なんじゃないの?

これまでのヴァージョンではカットされていた、日本で作られたという設定のエロヴィデオの映像が今回の「ディレクターズカット版」で追加されたということだけど、ペニスそのまんまな形のこけしが出てくるとか、日本髪の女の人が脱いでたりだとかその程度で、特に露出度が高いとか映ってたらマズいものが映ってるとかいうことはなかった。

SM描写とか、あるいはスナッフフィルムっぽい暴力描写が問題なのだろうか(あ、もしかして、ジェームズ・ウッズの腹に開いたデカい割れ目のせい?いや、どっからどう見ても作り物ですがな^_^;)。

…ともかく、1980年代当時はどうだったのか知らないけれど、今観てこの映画に何か「映像的な過激さ」とか「刺激」を感じるのは難しい。

でも、なんだか妙にちまたでの評価が高いんだよね、この映画。

デボラ・ハリーはなんでこの映画に出ようと思ったんだろう。

自分の胸にタバコの火を押し当てて恍惚としたり、変態さんの役なんだけど、最初はラジオで人生相談みたいなことやってて精神的に不安定なリスナーにアドヴァイスしたりしていたのが、マックスと出会ってあっという間にいい仲になって、気がつくとブラウン管のあちら側の人になっている。どんな人物だったのか皆目わからない。

素敵な裸体は見せてくれるけれど、もちろん見せてはいけないものは何一つ見せません。


デボラ・ハリーってちょっと顔の作りがミシェル・ファイファーに似てますよね。口許とかも。上目遣いで笑ってるだけでエロい。なんかあの時代だなぁ、って思う。

若い頃のジェームズ・ウッズって…どうも生々しいというかギッシュな感じで生理的に無理^_^; 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(感想はこちら)の彼も好きになれなかった。あんなあばた面しててアソコはめっちゃ長いそうだからなぁ(関係ねーだろ)。


現在の彼は白髪頭で素敵なおじさまですけどね。年取ってからカッコよくなるタイプの人だよな。

…はっきり言い切ってしまうと、これは僕は観なくてもいっこうに構わない映画でした。R18のありがたみも一切なかったし。

世間での高評価ぶりがほんとにわからない。

でも、懲りずに8月には『裸のランチ』を観ますよ(^o^)


関連記事
『裸のランチ 4Kレストア版』
『ホワイトハウス・ダウン』

ブログランキング・にほんブログ村へ にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

f:id:ei-gataro:20191213033115j:plain
↑もう一つのブログで最新映画の感想を書いています♪