映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』エクステンデッド版

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セルジオ・レオーネ監督、ロバート・デ・ニーロジェームズ・ウッズエリザベス・マクガヴァン、ラリー・ラップ、ジェームズ・ヘイデン、ウィリアム・フォーサイス、エイミー・ライダー、ダーラン・フリューゲル、トリート・ウィリアムズ、チューズデイ・ウェルド、ジョー・ペシバート・ヤングダニー・アイエロジェニファー・コネリー、スコット・ティラー、ラスティ・ジェイコブズ、ブライアン・ブルームほか出演の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』エクステンデッド版(251分)。2014年作品(オリジナル版1984年)。

「午前十時の映画祭9」で鑑賞。

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1920年代、友人の“ファット・モー”の妹デボラにほのかな恋心を抱きながらニューヨークの下町で悪童仲間たちとちんけな犯罪で小金を稼いでいる“ヌードルス”デヴィッドは、ブロンクスから母親と引っ越してきたマックスと知りあい意気投合、 親友となる。地元のチンピラの“バグジー”に目をつけられ痛めつけられて、仲間の一人を殺されて逆襲するヌードルス。やがて成長したヌードルスとマックスはギャングとして本格的な犯罪に手を染めるようになるが、彼らが駅の荷物保管庫に貯めていた金が何者かによって持ち去られる。

 

この映画は20年ぐらいかもっと前に、VHSヴィデオテープだったかDVDだったかもう忘れましたがレンタルで観ました。日本で最初に劇場公開された205分ヴァージョンなのか、それとも229分の「完全版」だったのかちょっと記憶にないですが。

その頃はすでにレオーネ監督の他の作品は何本も観ていたから、有名な映画であることももちろん知っていた。

観る前はロバート・デ・ニーロが主演だし大恐慌時代が描かれたりすることから、フランシス・フォード・コッポラ監督のゴッドファーザー」シリーズのようなギャング映画を想像していました。

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実際、ギャングも出てきて銃による殺人シーンもいくつもあるから似たような雰囲気はあるんだけど、でも何か違うんですよね。

1本の映画の中で主人公“ヌードルス”デヴィッドの少年期と青年期、そして老年期が何度も行き来するんだけど、たとえば、やはり2つの時代を織り交ぜて描く『ゴッドファーザー PART II』(デ・ニーロは、アル・パチーノ演じる主人公マイケルの父ヴィトの若い頃を演じている)のように字幕で年代や場所が細かく説明されないし、時代の行き来も『ワンス~』の方がもっと感覚的かつ恣意的。

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ゴッドファーザー」シリーズはのちに1作目と2作目がTV放送用に年代順に編集し直されたヴァージョンが作られたけど、『ワンス~』の場合はそういう編集はできないような作りになっている(強引に時系列順に並べて編集した短縮ヴァージョンは不評だったそうで)。

1960年代末に初老になったヌードルスが自分に「招待状」を寄こした相手が誰なのか探る、という外枠の中に1920年代や30年代の若かりし日の彼や仲間たちの物語が挟まれるという構成で、ちょうど最近の映画なら『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(感想はこちら)みたいな現在と過去の処理の仕方をしている。

クライマックスで闇の中に消えていくゴミ収集車のテールランプが30年代頃の自動車のヘッドライトに変わり、若い男女が乗ったその車が老いたヌードルスの前を通り過ぎてゆく場面には、ウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ』(感想はこちら)の一場面を思いだした。もしかしたら『ワンス~』が念頭にあったのかもしれませんね。

レオーネ監督は同じイタリア系ということもあってかフランシス・フォード・コッポラ監督を多分に意識(コッポラはアメリカ人でレオーネは生粋のイタリア人だが)、というか『ゴッドファーザー』にはハッキリと対抗心を持っていたようで、レオーネの評伝によれば「『ワンス~』は『ゴッドファーザー』とは違うんだ」と発言している。

それでもデ・ニーロという共通する出演者やノスタルジックなギャング映画というジャンルなど、どうしたって両者を重ねて観てしまうし、そうすると観る側の好みによって優劣をつけてしまいそうにもなる。

僕は「ゴッドファーザー」シリーズ、特に『PART II』は結構お気に入りの映画で定期的に観たくなるんですが、前もってお断わりしておくと、残念ながら最初にこの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(それにしても長ったらしいタイトルだな)を観た時にどうもあまりピンとこなくて、「ゴッドファーザー」級の傑作を期待していたために軽い失望感を味わったのです。

同じような長尺でも「ゴッドファーザー」シリーズみたいに何度も観たい映画ではないな、と。

だけど、今回「午前十時の映画祭」で上映されることを知って、再挑戦のつもりもあったし、レオーネが生前に自らの手で作った229分の“完全版”に、さらにカットされていた場面を加えた251分の「エクステンデッド版」(「午後十時の映画祭」では“ディレクターズ・カット”と表記)ということなので、貴重な鑑賞経験になるだろうからかなり前から楽しみにしていたんですよ。

ここ最近、映画館で作品の鑑賞中にうたた寝しちゃうことが多いので、絶対に眠ってしまわないように気合いを入れて臨みました。

以下、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』と『ゴッドファーザー PART II』の内容に言及しています。未鑑賞のかたはご注意ください。

 

で、どうだったかというと──

…う~ん、と、最初に観た時のピンとこない感じを再び味わったような^_^;

いや、『続・夕陽のガンマン』(感想はこちら)や『エスタン』のトニーノ・デリ・コリの撮影は美しいし、お馴染みエンニオ・モリコーネの曲もノスタルジーを掻きたてはするのだけれど、どうも物語に入り込めなくて。 

僕はギャング映画とかヤクザ映画のファンではなくて、そんなに観てもいないんですが、おそらくそういうジャンルの作品というのはならず者たちが好き勝手やって暴れるのを見て憂さを晴らしたり、はみ出し者の美学みたいなものに酔ったりして楽しむものなんだろう。

この映画に酔えた人たち、この映画に感動した人たちというのも、きっと主人公ヌードルスがたどった何十年にも渡るその裏街道人生に想いを馳せて、淡い恋や友情とその終焉、時の流れの残酷さなどに涙したのだろうけれど、マフィアを描いた『ゴッドファーザー』には酔えたのに僕がこの映画にはイマイチのれなかったのは、ひとえにストーリーテリングの差だと思う。

ゴッドファーザー』もまた犯罪組織を美しく描いていることでは同じなのだが、あのシリーズでは敵対する組織のボスや手下たちとの駆け引きと抗争、命のやりとりを克明に描いていて、また「家族」の物語でもあり、観客が見たいものをしっかりと見せてくれているんですよね。だから観終わったあとに満足感と深い余韻がある。

一方の『ワンス~』は回想が始まってしばらく続く少年期の物語は青春物としてよかったんだけど、青年期になるとただの軽薄な犯罪者になっていくヌードルスやマックスたちに溜飲が下がるというよりも腹立たしさを感じたし(特にジェームズ・ウッズが演じるマックスは、いっぱしのギャングを気取るただのクズにしか見えなかった)、老年期のヌードルスのエピソードも老けメイクをしたデ・ニーロが延々とうろうろしてるだけで退屈だった。

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「招待状」の送り主の正体もあっけなく判明するし、そのことで衝撃を受けることもない。

こちらが見たいのはヌードルスが仲間を警察に売って姿を消した1930年代から68年までの間に彼がどんな人生を歩んできたのか、だったのに、肝腎のその部分は映画では描かれないのだ。

ゴッドファーザー RART II』でも二つの異なる時代が並行して描かれるけど、それは主人公のマイケルが司法当局の追及をかわしながら組織の存亡をかけて裏切り者と戦う物語と、若き日の父ヴィトがマフィアのドンとして成り上がっていく歴史が「子と父の対比」になっていて、それぞれの物語にカタルシスがあったし、同時に哀しみも描かれていた。

『ワンス~』にはそういう構成の妙も感じられないし、上映時間が四時間以上あるにもかかわらず登場人物たちへの愛着も湧かない。

ヌードルス”という主人公の呼び名も麺類みたいで好きになれなかった。

イタリア系のイメージがあまりにも強いロバート・デ・ニーロユダヤ系という設定にも無理を感じたし。

マックスたちに兄のジョーを殺させたジョー・ペシ演じるフランキーがその後どうなったのかもわからず、ダニー・アイエロ(この人も『ゴッドファーザー PART II』に出ている)が演じる警察の悪徳署長も子どもを取り替えられてただ電話口で脅されるだけだし、トリート・ウィリアムズ演じる労働組合のジミーも年を取って若い頃とは正反対の立場にいることがわかっただけで、別に何か制裁を受けるわけでもない。

ヌードルスを殺そうとしていたギャングたちも途中で描かれなくなる。

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何よりも、殺されたと思われていたマックスの死体が実は替え玉で、彼は自分の過去を隠してお偉いさんになっていた、というまるで現実味のないオチには驚きよりもリアリティの無さしか感じられなかった。

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エリザベス・マクガヴァン演じる成人後のデボラも、少女の頃を演じた“清純な小悪魔”といった感じの10代のジェニファー・コネリーの瑞々しさに比べて魅力が欠けていて、ヌードルスが彼女をレイプするシーンは気まずさと怒りしか覚えず、なんでデボラをあのように無残に描いたのかその意図がわからなかった。

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大人になってからのデボラにあまり魅力が感じられないのはマクガヴァンのせいというよりも、デボラの人物像が描き込まれていないから。彼女に限らず、青年期以降の登場人物たちには子どもの頃のような輝きが感じられない。

あの車内でのレイプの場面は、大切な思い出を破壊してその相手であるデボラを傷つけるヌードルスの姿によって男の愚かさを表現したのかもしれないが、僕には彼がただサカってるだけに見えたし(気が収まらないヌードルスはそのあと女を買う)、あれだけのことをしでかしておきながら何十年後かにぬけぬけとデボラの前に姿を現わして相変わらずカッコつけてるヌードルスにもイライラした。

この男は自分に酔ってるだけじゃないか、と。

物語を推進する軸が魅力薄なのだから、最初の少年期が一番よくてあとはどんどんつまらなくなっていくのは当然で、ヌードルスもマックスも彼らがどうなろうとどうでもよくなる。

集中して観ていたおかげで眠らずには済んだけど(それでもインターミッション後の後半でちょっとウトウトしてしまった)、四時間以上かけて描く物語としてはあまりに穴が多過ぎる。

モリコーネの音楽も二つのテーマ曲を何度も何度もくどいぐらい繰り返し流すので、さすがにしつこ過ぎると思った。

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これもお馴染みニーノ・ロータの劇中曲が印象的だった『ゴッドファーザー』とは対照的で、68年の場面で流れる「イエスタデイ」も、まるで邦画や朝ドラの中で終戦直後の日本に「東京ブギウギ」か「リンゴの唄」が流れるぐらい芸がないものに感じられた。

僕は「冗長」とも言われた『ウエスタン』だって、あのゆったりとした展開にモリコーネの曲が流れるとググッときたし、これまで観たレオーネの映画はどれもそれなりに楽しんできたので、この『ワンス~』にピンとこないことがちょっとショックだったんですよね。

女性に対するあまりに乱暴な扱いなどもそうだけど、西部劇の世界なら流して観られたことがつい100~数十年ぐらい前の話となるといろいろと腑に落ちなくなる。

この映画は1984年の作品だけど、それこそ『ゴッドファーザー』とか、やはりデ・ニーロが出ていたベルトルッチの『1900年』などの70年代の映画の匂いが濃厚で、そこに郷愁を感じる部分もあるのだけれど、ハッキリ言って非常に古臭い価値観が漂っていて抵抗を覚えるのです。

みんなの前で恋人に怒鳴り散らして得意げに笑ってるマックスとか、ヌードルスだってけっして善人ではないし、そのわりにはファット・モーがやたらと彼を追っ手から庇ったりしているのも、僕にはレオーネが描く“友情”というのがよくわからなくて共感もできない。だから感動もしない。

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「映画」というのは必ずしも主人公や登場人物たちに共感や感情移入できなければならないということはないし、時にスクリーンに映し出される自分とは激しく異なるタイプの人間の人生や反道徳的、反社会的な行為を見つめるものでもあるのだけれど、少年時代のヌードルスたちが新聞を売っている露店に放火して全焼させてハシャいでる場面にはヒイたし、やっぱりあまりに抵抗感を覚える人物に過度に思い入れを込めて描かれても、観てるこちらは冷めるんだよね。

こんなんだったら、青年時代のエピソードなんていらないから少年時代のエピソードをずっと描いてもらいたかった。その方がよほどノスタルジーに浸れたんではないだろうか。

ところどころ見入ったりセンチメンタルな気持ちにもさせられたけど、禁酒法時代のギャングたちを描くならもっと派手で面白いものにもできたでしょう。

ゴッドファーザー PART II』でデ・ニーロ演じる青年ヴィトが祭りの喧騒に紛れてドン・ファヌッチを撃ち殺す場面や、家族の仇であるドン・チッチオの腹をナイフで切り裂いて殺す場面のような痛快な暴力のエンタメ・ショーも徹底してなくて、中途半端な印象しか残らない。

この映画は僕が見たかったものを見せてくれず、だけどデ・ニーロが過去を振り返り感傷に耽る様子は長々と映し出すんで、レオーネがこの映画に込めたらしいアメリカへの想いと僕が期待した「アメリカ」にまつわる物語との間に遠い隔たりを感じました。 

復元されて新たに加えられたショットは明らかに他の場面よりも画質が格段に劣っていて観づらく、映画への集中を妨げられたし、その付け足された場面のおかげで作品が以前よりも面白くなっていたかというとそれも大いに疑わしくて、この映画のファンの人たちがより完全なヴァージョンを確認するため以上のものには思えなかった。

…なんか思いのほか酷評してしまっているので自分でも慌ててますが、どんなに映画史に残る「名作」とされる作品でも自分には合わないものもあるし、そのよさがわからなかったり疑問のあるものを放置して知ったかぶりをするのはつまらないので、あえて厳しい感想を書きました。

ほんとは僕だってレオーネの遺作であるこの映画の魅力を感じ取りたかったし、好きになりたかったんですけどね。

最後に中国人街の阿片窟で天井に向かってニヤッとあの「デ・ニーロ・スマイル」を見せるヌードルスの顔が静止してエンドタイトルが流れるところは、なんだかよくわかんないけど妙な感慨があったし、この映画を観たこと自体は後悔していませんが、満足感はそんなになかった。

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急いでフォローすると(もう遅いか…^_^;)、四時間の上映時間にダレることはなかったし、観終わって疲労感もなかった。むしろこれは連続ドラマとして作った方がよかったのではないか、と思ったほど。そしたら、ヌードルスも他の登場人物たちももっとじっくり描けただろうし。もっと観たかったんですよ。若い頃のヌードルスたちを。

この映画はさらに長い269分(!)の「レストア版」(2012)というのもあるんだそうで、だったらそれを見せてほしかった。どんなシーンが長くなってるのか知りませんが。

セルジオ・レオーネは、やはりスクリーンの中の西部劇の時代のアメリカを愛した人なのではないか。

ならず者の男たちとそんな男たちに惹かれる女たち。『ウエスタン』でジェイソン・ロバーズ演じるシャイアンがクラウディア・カルディナーレ演じるジルに「男たちに尻を撫でられても知らんぷりしてやれ」と言うように、そういう世界が「美しい」んだ、とする世界観。 

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この映画を観て、あらためて自分が『ゴッドファーザー』は好きでもギャング映画が好きなわけではないことを痛感しました。 

フランキーの兄ジョーをバート・ヤングが演じてて、銃で目を撃ち抜かれていたけど、バート・ヤングは翌年の『ロッキー4/炎の友情』(感想はこちら)ではロッキーの義兄のポーリー役で和ませてくれていた。

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ジョーが飯を食いながらする下品な話を聞いて笑う男たちの姿は、ある種の人々には馴染み深くて、ジョーのようなおっさんも身近な存在なんだろう。

このあたりも実に70年代あたりの残り香がする。

ジミーに労働組合の活動から手を引かせようと彼に暴力を振るうチキン・ジョー役のリチャード・ブライトは、「ゴッドファーザー」シリーズではマイケル・コルレオーネの部下アル・ネリを演じていた。

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顔がちょっとフランク・シナトラに似てるんだよね。笑顔のままキレるリチャード・ブライトの表情がいかにもヤクザ者といった感じで、出番はごくわずかだけどいい味出してました。ずいぶん前に事故で亡くなってるけど、惜しい俳優さんだったなぁ。

そんなわけで、この映画が好きなかたには腹立たしい感想だったかもしれませんし、気合い入れて朝から臨んだわりにはそのありがたみをあまり感じられなくて残念だったんですが、ともかく今後もなかなか観る機会はないだろう作品を劇場で観ておけたのはよかったです。 

 

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