ポール・ヴァーホーヴェン監督、ピーター・ウェラー、ナンシー・アレン、カートウッド・スミス、ロニー・コックス、ミゲル・フェラー、ロバート・ドクィ、ダニエル・オハーリーほか出演の『ロボコップ ディレクターズ・カット4K版*1』を鑑賞。R15+。
オリジナルの劇場公開版は1987年作品(日本公開88年)。
正規の予告篇ではありませんが(本物の予告はターミネーターの音楽が使われている)。
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近未来のデトロイト。民営化された警察は大企業のオムニ社によって管理されることとなり、もっとも危険な西署に異動になった警察官のアレックス・マーフィ(ピーター・ウェラー)は、早速同僚のアン・ルイス巡査(ナンシー・アレン)とコンビを組んで警官殺しのクラレンス一味(カートウッド・スミスほか)を追う。オムニ社の若手の野心家ボブ・モートン(ミゲル・フェラー)は、副社長のディック・ジョーンズ(ロニー・コックス)による犯罪撲滅のための警備ロボット“ED-209”の配備計画に対抗して、殉職した警官に機械の手足をつけて無敵の警察官を作るために手を回していた。
内容についてのネタバレがありますので、ご注意ください。
最初の劇場公開以来、TV放映やDVDなどで何度も観ていますが、有志のかたがたがクラウドファンディングでお金を集めて今回のこの「ディレクターズ・カット版」の劇場公開にこぎつけたことを知って、東京だけでかな~、と思っていたところ、僕が住んでる地域でも上映されることがわかって、あいにく僕はクラウドファンディングに参加はしていませんが、せっかく映画館で上映されるならぜひ観たいと思っていた。
僕が観たのはスクリーンがとても小さいミニシアターで、しかも4Kではなくて2Kでの上映でしたが、それでも31年ぶりに映画館で観る『ロボコップ』はやはり最高でしたね。
ちなみに、今回は「R15+」(15歳未満は鑑賞不可)ですが、最初の劇場公開の時は年齢制限はなかった記憶が(勘違いだったらごめんなさい)。
こういう映画をかつて日本では残酷シーンをほとんどカットすることなく地上波で夜の9時とかに放映してたんだもんなぁ。ユルかったんだよなぁ^_^;
そういえば、『スターシップ・トゥルーパーズ』でも女性の兵士が男性たちと同じシャワールーム使ってたけど、この『ロボコップ』でも女性警官が男性と同じ更衣室でおっぱい丸出しで着替えていた。
『トータル・リコール』でもおっぱいが3つあるおねえさんが登場してたし(もちろん特殊メイクですが)、ヴァーホーヴェンといえば「おっぱい」なのかw これも昔は普通にTVで流されてました。CMとかドリフのコントなんかで思いっきり女の人の裸が出てても見逃されてた時代だから。
今回上映された「ディレクターズ・カット版」は、劇場公開時にカットされたショットを復活させたヴァージョン。DVDでも発売されている。*2
わかりやすいのは、主人公のマーフィがクラレンスにショットガンで頭を撃たれる場面で、マーフィ役のピーター・ウェラーの苦悶するダミー人形の顔が映って、キャメラが回り込んで後頭部が吹き飛ぶまでをワンカットに収めている。*3
他にも何箇所か残酷ショットが増えてる。R指定の理由はそのわずかに増えたショットのせいだろうか。
確かにこの映画の残酷シーンは子ども心になかなかショッキングだったんで、大人になった今ではこれを小中学生に見せるのは躊躇ってしまいそうだけど。
さて、この映画については2014年のリブート版の感想の中で比較してその魅力について結構書いてしまったので、さらに付け加えることはあまりないんですが^_^;
何よりもまず、主演のピーター・ウェラーを日本に招いたりもして(その時に撮影された、ヴィデオカメラにむかってウェラーが挨拶する映像が今回の上映前に流されていた)こうやって初公開以来再び映画館での上映を実現させたかたたちの尽力に感謝したいです。
『遊星からの物体X』(感想はこちら)の再上映の時にも感じたことだけど、子どもの頃に観て好きだった映画をずっと大切にしていてそれを未来に残していこうとしている人々の活動には本当に頭が下がります。おかげで僕もこうやって懐かしい気持ちや、DVDなどとは違って映画館で昔の面白い映画を観ることの楽しさをあらためて味わえたのだから。
「映画」を映画館で観ることが好きな人のことを揶揄するような物言いをたまに見かけますが、余計なお世話だと思う。
「どうせ映画館なんてそのうちなくなるんだから、映画館で観ることにこだわるなんてバカバカしい」などとドヤ顔でせせら笑ってるような奴らは、エミールみたいに廃液に突っ込んでそのまま車に轢かれりゃいいんだ。「映画館がそのうちなくなる」かどうかは知らないけど、映画はやっぱり映画館で観てこそですよ(もちろんさまざまな事情で映画館での鑑賞が難しい人もいるでしょうが、だからって別に映画館で観ること自体を否定する必要はない)。
同じ作品でもTVで観るのと映画館のスクリーンとじゃ迫力や臨場感が段違いですから。
この映画にはまだ映画が「野蛮」だった頃の残り香があって、その野蛮さは現在では再現不能なので、映画館で観ることでその荒々しさがさらに実感できる。
ホラーとかアクション映画を映画館で観るべきなのは、それらが人間が抱く原初的な恐怖なり高揚感を得られやすいジャンルだからだし。
80年代頃の映画ってまだデジタルが普及する前だし、CGでいろいろあとから手を加えたりすることもできなかったから、現場でのアナログな手作りの肌触りがあって、そこが魅力なんですよね。「再現不能」というのも、そういうことを今やろうとしたらかえって手間やお金がかかってしまって、しかもわざわざローテクで作品を作る必然性もないから。
『物体X』でも腕を振るったロブ・ボッティンの特殊メイクの見事なまでのグロさやかっこよさ(ロボの銃をしまう腿のギミックも彼が考案した)、そして「スター・ウォーズ」シリーズなどの重鎮フィル・ティペットによる人形を一コマずつ動かして撮るストップモーション・アニメの発展系であるゴーモーション・アニメ(動くED-209や最後にビルから落ちていくジョーンズなど)。
メイク中のエミールさん
動きが可愛いED-209
腕が長過ぎなジョーンズさん
芸術的ともいえる仕事ですよね。技術的な制限があるからこそ、その中でいかに工夫するかを考える。その知恵の結晶を目にする楽しさ。
そして以前にも評したように、この映画を第一級のSFアクション映画に仕上げている無駄のないシナリオと演出(ずっと耳に残るあの素晴らしい音楽も)。
上映時間103分の中に必要なものは全部詰まっている(逆に不要なものは入っていない)。
残念ながらというか予想通りというか、リブート版はオリジナル版にはまったく歯が立たなかった。特にシナリオと演出面では完全に敗北していた。
下手にリメイクするぐらいなら、こうやってオリジナル版を再上映した方がよっぽどいい。
20分後に味方の応援が来るのにマーフィたちが勇み足でたった二人で犯罪者たちのアジトに乗り込んだのは致命的な判断ミスで、マーフィがクラレンスたちに無残に殺されてしまった大きな原因の一つは相棒のルイスが一味の一人のポコチンに気を取られてたせいだし、なんでED-209のデモンストレーションの時に実弾入れておくんだよ、とか、劇中で悪党やコンビニの店主などおっさんたちが特に面白くもない「1ドルで楽しむべ」のCM にやたらとウケてる意味がわかんないとか、終盤でロボコップがヘルメットを取るとなぜか顎の部分の黒いパーツまでが消えてる、などなど、無理やりツッコもうとすればできなくはないけど、物語に澱みがないから気にならずに観てしまう。
あと、ちょうど今、瀧さんところのピエール氏の一件で話題になってるコカインですが、モートン君がおねえさんはべらせながら吸いまくってましたね。1ドルで楽しむべ~w
胸の谷間に粉を振って吸うとか、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(感想はこちら)(あの映画もバブル時代が舞台)っぽくてほんとに頭が悪い感じ。
モートン役のミゲル・フェラーは、その後、デヴィッド・リンチの「ツイン・ピークス」に出たり、チャーリー・シーン主演の『ホット・ショット2』で大真面目な顔してギャグをカマしたりしてましたが、惜しくも2017年に死去。
オムニ社のオールドマン社長役のダニエル・オハーリーもすでに亡く(2005年死去。この人も「ツイン・ピークス」に出ている)、リード巡査部長役のロバート・ドクィも2008年に死去。あれから月日は確実に過ぎている。
クラレンス役のカートウッド・スミスはあの凶悪そうな面構えと声が最高だったけど、その後は他の映画で威厳のあるお偉いさんとか優しそうな人物も演じていて、ほんとに俳優って凄いな、と思います。
一味の中の一人でアジア系のカルヴァン・ジャングは、その後、メル・ギブソン主演の『リーサル・ウェポン4』で刑事を演じていた。
ロボコップの股間を蹴るが効果がなくて逆に足を痛めてそのまま髪をつかまれて引きずられていったり、廃工場でロボを鉄骨の下敷きにするも、その直後にルイスの撃ったコブラ砲でクレーンごと爆殺されるレオン役のレイ・ワイズは、この人も「ツイン・ピークス」 のローラ・パーマーの父親役で顔が知られましたね。
この映画は今観ても内容が古びていないどころか、企業倫理や人間の尊厳などについて考えさせられるし、オムニ社の非人道的な行為はそのまま現在の企業だったりあるいは政府の横暴に重なる部分もある。
ヒーローが悪を倒す勧善懲悪物でありながら、そこで描かれる物語は今作られているスーパーヒーローたちが活躍するどんな映画よりもリアリティを感じさせる。
この映画は大ヒットして続篇も作られたけど、2作目(90年)や3作目(93年)は監督が代わり(3作目はピーター・ウェラーがデヴィッド・クローネンバーグの『裸のランチ』に出演するために降板。ロバート・ジョン・バークがマーフィを演じた)、ストーリーや設定もどんどん荒唐無稽度が高まっていって、結局3作目のあとに映画は2014年のリブート版まで作られることがなかった。
2作目は名作『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』のアーヴィン・カーシュナーが監督して、敵の“ロボ・ケイン(ロボコップ2号)”はわりとファンが多いようですが、僕は1作目に思い入れがあって期待していただけに、映画館で観た続篇の出来には正直ガッカリしました。
今観るとゴーモーションで動くロボ・ケインは和むしそれなりに楽しいんだけど、やっぱり1作目の手堅さには程遠くて。
敵のガキンチョが憎たらしいくせに最後はなんだかしんみりと終わるのもカタルシスに欠けていたし、脳みそ取り出されて機能停止するロボ・ケインも肩すかし気味だった。
続く3作目の時にはすでにあまり期待しなくなってたから、ニンジャ・ロボとか空飛ぶロボコップなど、もう半笑いで観てました。大阪の映画館で観たんだけど、客席に西川のりおさんがいた。
ある場面に敵のリハッブ隊の隊員でトム・クルーズそっくりの俳優が出てきて一瞬「おや?」と思うんだけど、ロボに「よせ!」と一喝されて退散してました。なんか紛らわしかった。
最後にロボコップにマコ岩松が深々とお辞儀して、リップ・トーン演じるオムニ社の新しい社長が「名前はマーフィだったか?」と尋ねると、マーフィが「友はそう呼ぶ。お前たちはロボコップと呼べ」と答えるのは1作目のラストの変奏で、だからいろいろツッコミどころは多いけど一応三部作の完結篇としてはそれなりにまとまっていたのではないかと。かなり無理やり終わらせた感もあるけど。
まぁ、続篇はロボコップに愛着があるなら観てみればいいんじゃないか、といった程度。1作目だけで映画はしっかりとまとまっているので、この1本だけでも充分。
ロボコップは『第9地区』(感想はこちら)や『エリジウム』(感想はこちら)『チャッピー』(感想はこちら)のニール・ブロムカンプが続篇を撮るとかいう話があって、ピーター・ウェラーも出演するようなことを言ってたけど、その企画はどうなったんだろう。
2014年のリブート版はあまり評判が良くなかったし、今後オリジナル版の続篇が実現するかどうかもわかりませんが、いずれにしろかつてヴァーホーヴェンが放ったこのオリジナル版はいつまでも色褪せることなく、これからも僕たちを楽しませてくれることでしょう。
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