ロン・ハワード監督、トム・ハンクス、ケヴィン・ベーコン、ビル・パクストン、キャスリーン・クインラン、ゲイリー・シニーズ、ローレン・ディーン、エド・ハリスほか出演の『アポロ13』。1995年作品。
原作はジム・ラヴェルによるノンフィクション「Lost Moon」。
音楽はジェームズ・ホーナー。
1970年。ジム・ラヴェル船長(トム・ハンクス)、フレッド・ヘイズ(ビル・パクストン)、ケン・マッティングリー(ゲイリー・シニーズ)らアポロ13号の乗組員は史上三度目の月面着陸を目指して訓練を続けていたが、本番三日前に予備チームの一人が風疹に罹り、免疫のないケンは打ち上げメンバーから外される。代わりに予備チームからジャック・スワイガート(ケヴィン・ベーコン)が参加することに。ロケットは無事打ち上げに成功、主任のジーン・クランツ(エド・ハリス)ら大勢の管制官が地上からサポートするが、月を目前にしてトラブルが発生、着陸を断念して月着陸船で地球に帰還することになる。
「午前十時の映画祭12」で鑑賞。
95年の劇場公開時に観ましたが、同じ年にトム・ハンクスが主人公のウッディの声を演じた『トイ・ストーリー』の1作目が作られているし(日本公開は96年)、前年には『フォレスト・ガンプ/一期一会』(日本では95年公開)と、この時期のハンクスは脂が乗りきってましたね。いや、その後もコンスタントに出演し続けてますが。
まもなく出演作の『エルヴィス』(感想はこちら)が公開されるし、これだけ長く一線で活躍されているのは本当に凄いと思います。
すっかり忘れていたけど、日本では『フォレスト・ガンプ』と『アポロ13』はわずか4ヵ月ほどの間隔で続けて公開されたんですね。
『ガンプ』にダン隊長役で出てたゲイリー・シニーズが、こちらではトム・ハンクス演じるジムの同僚だが宇宙船に乗れなかったパイロット(その後、アポロ16号とスペースシャトルに搭乗)を演じていて、僕は今回あちらは観てないけど『ガンプ』もつい最近リヴァイヴァル上映されていたから、続けて観た人は95年にタイムスリップしたような気分になったでしょう。
主任管制官を演じたエド・ハリスは、翌年公開のジェリー・ブラッカイマー製作、マイケル・ベイ監督の『ザ・ロック』ではニコラス・ケイジやショーン・コネリーたちと戦う反乱将校役でした。
『アポロ13』ではヅラをかぶってたので、『ザ・ロック』と続けて観ると着脱両方のイケオジぶりが楽しめますが(笑) 若い頃のエド・ハリスって、ヅラかぶるとミヒャエル・ファスベンダーっぽいな。男前。
『ザ・ロック』も去年の「午前十時の映画祭11」でやってたし、現在公開中でトム・クルーズ主演の『トップガン マーヴェリック』(感想はこちら)にも出演、またやはり「午前十時の映画祭12」でこの次に上映される『ライトスタッフ』でもジョン・グレン役で出てる。もうエド・ハリス三昧(なんか回転寿司っぽい表現だが)。
そういえば、『トップガン マーヴェリック』も『アポロ13』も『ライトスタッフ』も確か日本語字幕は戸田奈津子さんなんだよな。なっち祭りかw
それにしても、出演者が皆さん若いこと。ケヴィン・ベーコンは今もそんなに老けた感じはしませんが。いや、でもみんなそれなりに年は取ってるよね。ビル・パクストンさんは亡くなっちゃったし。
管制官の一人で、クリストファー・リーヴ主演の「スーパーマン」シリーズでジミー・オルセン役だったマーク・マクルーアが出ていた。あと、キーファー・サザーランド主演の「24 -TWENTY FOUR-」シリーズのメイソン役などのザンダー・バークレーの姿も。
ロン・ハワード監督の弟クリント・ハワードもいましたね。*1いろいろと懐かしい。
ビル・パクストンが演じるフレッドの妻メアリーを、トム・ハンクスも監督役で出ていた『プリティ・リーグ』(92) (感想はこちら)で女性野球選手役の一人だったトレイシー・ライナーが演じている。
ジムの妻マリリン役のキャスリーン・クインランは、スピルバーグ製作総指揮の『トワイライトゾーン/超次元の体験』で少年と出会って恐怖体験をする女性教師を演じてた人(98年日本公開の『ブレーキ・ダウン』ではカート・ラッセルの妻役だった)。ちょっとトニ・コレットと顔が似てますね。
この映画のお話自体は、宇宙船が故障して月面に降りることができなくなって地球に還ってくる、というただそれだけなんだけど、そのために命の危機にさらされた三人のパイロットたちを地上にいる多くの関係者たちが知恵を絞って救おうとする、そして三人もそれに応えて見事に全員で生還を果たす、「人の命」について考えさせてくれる内容になっています。
三人の宇宙飛行士たちの無事をみんなが祈り、ラストでは彼らを拍手と歓声で迎える、というのは98年公開の『アルマゲドン』(この映画も今後「午前十時~」で上映予定)を思い出すんだけど、きっと史実を基にしたこの『アポロ13』からいろいろインスピレーションを得ているんだろうな。
映画の冒頭あたりで当時のソヴィエトとの宇宙開発競争とアポロ1号の痛ましい事故について語られる。
このあたりはアポロ11号による人類初の月面到達を描いたデイミアン・チャゼル監督、ライアン・ゴズリング主演の『ファースト・マン』で触れられていたし、あの映画でゴズリングが演じたニール・アームストロング船長と、やはりアポロ11号に搭乗したバズ・オルドリンは『アポロ13』の劇中でジム・ラヴェルの母親(演じていたのはロン・ハワードの母親ジーン・スピーグル・ハワード。コッポラ家並みに身内がいっぱいw)の会話のお相手をしていた。
史実を軸にしていろんな映画が繋がりますね。「マーキュリー計画」にかかわった女性たちを描いた『ドリーム』(感想はこちら)という映画もあった。
マイケル・ベイが無駄に盛り上げまくってた『アルマゲドン』に比べればまだラストもある程度落ち着きのある演出だった『アポロ13』には静かに胸が熱くなったし、たった三人を救うためにあれだけの人々が協力し合う、その姿に考えさせられるものがある。
たった三人どころか、たとえ一人でも命は守られなければならない。
それは疑いようのない事実ではあるが、でも『ファースト・マン』でも地上で黒人の歌手が「〽白人が宇宙に行く」と唄っている場面があったように、あの当時は宇宙飛行士は白人ばかりだったし、それに三人の宇宙飛行士を救うために大勢が動き、また世界各国の人々が固唾を呑んでTVやラジオにかじりついている時、ヴェトナムやカンボジアなどでは多くの兵士や民間人たちが命を落としていた。
軍事開発や宇宙開発によって生み出された最新技術がその後応用されて、僕たちはその恩恵を受けているわけだけど、今では無邪気に宇宙に想いを馳せてそのことに諸手を挙げて賛成できないものがある。
『ファースト・マン』は、そういう大国同士の競争とは距離を置いたところから、人類が月を目指す、という行為を見つめていた。
『アポロ13』では、アポロ11号が月面着陸を成功させた1969年のわずか1年後にもかかわらず、アポロ13号に対して国民は関心を失っていた、と語られる。
現在では、個人や民間企業がロケットを飛ばしたり、人を宇宙に運ぼうとしていたりしますが、私たちは一体なんのために宇宙に、月や火星に行くのか。
そのことをもう一度よく問い直すためにも、この映画を観てみるとよいかもしれませんね。
ロン・ハワード監督の『バックドラフト』も映画館でまた観たいなぁ。
関連記事
『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』
『ラッシュ/プライドと友情』
『バックドラフト』
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』
『ハドソン川の奇跡』
『ブリッジ・オブ・スパイ』
『キャプテン・フィリップス』
*1:娘のブライス・ダラス・ハワードも出てたらしいけど、確認できず。