映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

※2019年の“はてなダイアリー”終了に伴い、2018年9月にブログを移行しました。

『プロヴァンス物語 マルセルの夏』4Kデジタル・リマスター版


イヴ・ロベール監督、ジュリアン・シアマーカ、フィリップ・コーベール、ナタリー・ルーセルほか出演の『プロヴァンス物語 マルセルの夏』4Kデジタル・リマスター版を鑑賞。2017年(オリジナル版1990年)作品。

小説家で劇作家、映画監督のマルセル・パニョルの少年時代の回想録の映画化。

www.youtube.com

以前感想を書いていますので、内容についてはそちらをご参照ください。以降は一応、ストーリーのネタバレがあります。


1990年代に劇場で観た「プロヴァンス物語」二部作が4Kのデジタル・リマスターで夏に上映されることを知ってずっと楽しみにしていました。まさかこの名作を再び映画館のスクリーンで観られるとは思っていなかったから本当に嬉しくて。

日本語字幕は初公開時と同じ松浦美奈。ところどころ新しく訳し直しているということだけど、僕には違いがわかりませんでした。松浦さんの訳が好きだったので(以前観たBS放送版は違う訳だった)、また彼女の翻訳で観られてよかった。

東京では7月からだったけど、全国順次公開なのでこちらでは8月の後半になってようやく始まったばかり。しかも2本で二週間の限定公開、それも一日に1回だけの上映というもの。

う〜ん、27年ぶりの再上映なのにちょっともったいなさ過ぎ。だってこの4K版は世界初公開だそうですよ?もっと上映されてもいいのになぁ(東京ではもっと長く上映が続いてるようですが。しかも2本続けてとか。いいなぁ)。

今回観にきていたのも年配のかたが多くて若い人はほとんどいなかった。一般にはあまり知られていないんでしょうか。

でもSNSでこの二部作が好きだったという人たちの文章や呟きを目にすることは結構あるから、待ち望んでいた人は多いんじゃないかな。人気作だからこそ4Kでデジタル・リマスタリングされて劇場であらためて公開されるわけで。

あれからレンタルヴィデオ(まだDVDが普及する前だったので)で借りたりBSで放送されたり何度か観る機会はあったけれど、映画館で観るのは初公開時以来。時間が一気に20数年前に戻って懐かしい気持ちになりました。

夏にこの『マルセルの夏』を観るのは今回が初めて。僕は続篇の『マルセルのお城』の公開時に一緒に観たので。

目に映る風景は美しく、ウラジミール・コスマによる音楽はいつ聴いても耳に心地よい。

90年代に観てかつてはVHSヴィデオで普通にレンタルもされていたのに、その後DVD化されなかったり、されてもすでに廃盤になってたりして気軽に観ることができなくなった映画は多い。この映画もその一つかもしれない。

だからこそ貴重な機会。現在公開中だったりこれから公開される地域のかたは、ぜひ劇場に足を運んでいただきたいです。『マルセルの夏』と『マルセルのお城』二部作を順番にご覧になれば、最後にはなんともいえない余韻と感傷に浸ることになるでしょう。


4Kで傷も埃もないクリアな映像になっているけど、35ミリフィルムの粒子が時代を感じさせるし、映画の舞台は19世紀末から20世紀初頭「ベル・エポック」のフランスなので画面に映るものすべてがノスタルジック。マルセイユのような街なかでも馬車などまだ19世紀の名残りがあるものがいっぱい。

蝉の声が鳴り響く南フランスはプロヴァンス地方。そこに住む人々の飾らず素朴なたたずまい。

少年時代の喜びに満ちて何もかもが美しく輝いていた(それはもしかしたら記憶の中だけにある風景かもしれないが)、陽光に照らされたまるで宝石のような日々。


映画館の暗闇の中で至福の時間を過ごすことができました。

最近の映画は映画館のスクリーンに映すと洋画だと上下に黒い帯がついたりすることが多いですが、この映画は画面アスペクト比が1.85:1のビスタサイズだったのがちょっと新鮮でした。映画館のスクリーンにちょうどピッタリで。もともとどのサイズで撮影されたのか知りませんが。


最初の劇場公開から30年近く経ったということで、あの頃は主人公のマルセルの視点で観ていたのに、今ではもう自分が彼の両親の方に年齢が近いことに溜め息が出てきます。

マルセルの伯母のローズが劇中で自分の歳を「26歳よ」と言ってるのはさすがに無理を感じたけど(最初冗談なのかと思った)、でも演じているテレーズ・リオタールについては、当時はるか年上の大人だと思っていた彼女が今の自分よりも若かったことを知って震える。現在の僕はディディエ・パンが演じたジュール伯父さんとほとんど年齢が変わらないし(体型も^_^;)。


映画の中の登場人物はそれ以上歳を取らないが、映画を観ている者の方は年々歳を取っていくのだ。

マルセルの父ジョゼフ役のフィリップ・コーベールも母オーギュスティーヌ役のナタリー・ルーセルも日本で公開された出演作はほとんどないらしく二人ともこの二部作以外で僕は見たことがないんですが、今も活躍されているようで。


ナタリー・ルーセルはまさに「優しくて美しい母」の代名詞のようで、わずか2本の映画だけでその存在は強く印象に残っています。


マルセルの夏』と続篇の『マルセルのお城』の原題は『父の栄光』『母のお城』で、作品自体がそれぞれマルセルの父と母に捧げるような構成になっている。


ジョゼフとオーギュスティーヌは、マルセルの想い出の中でアルバムの中の大切な写真のようにいつまでも色褪せない輝きを放っている。

主人公のマルセル役のジュリアン・シアマーカは調べてもこの「プロヴァンス物語」以外に出演作が見当たらないので、もしかしたらこの2作に出演したのみで役者の道には進まなかったのかも。

その美少年ぶりがいつまでも記憶に残るけれど、ほんとに少年時代の一番美しい時期が切り取られている。

子どもたちの成長は早いので二部作はまとめて撮られて、ちょうど撮影が終了した頃にマルセルの弟ポール役のヴィクトリアン・ドラマールの乳歯が抜けたんだとか。

ユーモラスで感情表現豊かなポールがしばしば兄に対抗しようとするところなど、いかにも次男っぽいなぁ、と。


雨に濡れたマルセルとリリが裸になって二階に上がっていく姿を見て「バラの尻だな」と言うジョゼフと、嬉しそうに「バラの尻?」と繰り返すポール。

ポールはマルセルの少年期の想い出に欠かせない存在となっている。かけがえのない弟だからこそ、続篇の最後にその後の彼のことを知って切なくなる。

マルセルが自分の父に肩入れして伯父のことをたびたび悪く言うのが可笑しいが、確かに男の子ってそういうところがある。実の父には他の誰よりも立派であってほしい、という願い。


ジョゼフとジュールは互いに正反対の人たちで、毎週妻のローズとともに教会の礼拝に行くジュールに対してジョゼフは信仰そのものを拒否して神父にすら反感を抱くほどの無神論者。

酒好きで明るい性格のジュールと酒を飲まず真面目な性格のジョゼフ。一方で、ジョゼフは新世紀の科学の進歩を歓迎しているが、ジュールは普及し始めた電話も「人を呼び出すやかましい機械」と言って興味を示さない。

ジュールがちょっとでもキリスト教的なことを口にすると不機嫌になるジョゼフ。

そんな時、ローズとオーギュスティーヌの姉妹がやんわりと間に入って事なきを得る。

このまったく異なるのに妙に気が合う二人の大人の男性たちのやりとりがなんとも可笑しくてカワイイ。ヴァカンスは子どもたちだけでなく、大の大人も無邪気で可愛い存在にする。


この二部作のマルセルは2作目の『マルセルのお城』では女の子に恋をしたりもするけれど、彼自身はまだ思春期前の子どもで、だから兄弟でフルチンになって水浴びしたりするし、ジョゼフとジュールに狩りに一緒に連れていってもらえないとわかると泣いて駄々をこねたりもする。

まだ幼い頃のマルセルが、ジュールが公園の持ち主ではないとわかって、大人が平気で嘘をつくことを知ってガッカリするくだりがあるけれど、あれはのちにプロヴァンスの別荘で父と伯父が彼に嘘をついてこっそり二人だけで狩りに出かけようとしていたエピソードの伏線でもあったんですね。

なんでジュールたちがマルセルに嘘をついてまで彼を置いていこうとしたのか不思議なんですが。マルセルが「犬の代わりをやる」とまで言って頼んでるんだから、連れてってやればいいのに。

だって、この時のようにマルセルが内緒でついていくほうがかえって危険じゃないですか。迷子になったり、誤って銃で撃たれてしまう可能性だってある。

まぁ、その結果、マルセルはジョゼフが撃った獲物を偶然見つけられたんだけど。

やがて親友になる「ベロンのリリ」と出会えたのも、彼が大人たちと離れて一人きりで冒険したおかげ。

ジョゼフたちを見失ったマルセルは「死」すら意識する。

少年が成長していくうえでのある種の通過儀礼を描いてもいるんですね。

普段住んでる街とは違う、もう一つの大切な場所。

特に『マルセルの夏』でのマルセルは、ただもう純粋にプロヴァンスの地に魅せられている。

ちょうど、『となりのトトロ』(感想はこちら)でサツキとメイが目にするものがとにかく新鮮で身のまわりのもの何もかもが魅力に溢れていたように。

この映画で煮込み料理に使う香草のタイムやウイキョウの名前を知りました。

今回、ジョゼフの台詞の中に「ジビエ」という言葉があったことに初めて気づいた。以前はジビエが野生の動物を狩った獲物のことだとは知らなかったから。

ジョゼフが見事に二羽も仕留めたヤマウズラの王“バルタヴェル”に、みんなで「ん〜ん♪」と舌鼓を打つ様子が実においしそうで。

一度も行ったことがないフランスはプロヴァンスが懐かしい故郷のように感じられる映画です。



今週末からは『マルセルのお城』の上映。来週観る予定♪


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