映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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「澪つくし」を観終えて

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NHKBSプレミアムでアンコール放送中だった朝の連続テレビ小説澪つくし」が3/27(土)に最終回を迎えました。

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最終回までの一週間は毎朝7時から2話分を放送ということで、ちょっと意表を突かれたんですが、てっきり僕は4/3に終了するとばかり思っていたのが一週間前に終わるということで調整したんですね。

さて、3月に入ってドラマ内では戦時色がいよいよ強まり、軍人の夫を追って満州に渡る律子、生還した惣吉とかをるの仲を勘繰って荒れる梅木、外川を離れる惣吉、召集令状が来て出征する英一郎…と物語は怒涛のような速さで進んでいって、入兆も外川でも誰もが戦争に翻弄される。

1941年 (昭和16年) 太平洋戦争勃発、その2年後、梅木はフィリピンに醤油工場を建設するために軍属として現地に派遣される。

1945年、久兵衛認知症の兆候が表われ、戦地の英一郎の居場所を家人に尋ねたり日本軍の神風特別攻撃隊に狂喜したり、異様な言動を見せ始める。同年、食料の買い出し中にアメリカ軍の機銃掃射に遭ったかをるは、南方から一時帰国していた惣吉に助けられる。

そして惣吉は再び南方へ。

7月、醤油の仕込み蔵に焼夷弾が落ちて建物が炎上、駆け寄った久兵衛と夫を連れ戻そうとしたかをるの母・るいが爆発に巻き込まれて重傷を負う。

手当ての甲斐もなく、久兵衛は長女・律子の名を呼びつつ、かをるが頼まれた煙草を手に入れている間に絶命。るいも命を落とす。

終戦後、満州から戻った律子は互いに複雑な想いを抱きながらも心の中では愛し合っていた父との再会を果たせぬまま、母・千代と同じ結核で亡くなる。

戦地から帰還した英一郎は、足を撃たれておそらく生涯治らない傷を負っていた。

アミの弟・栄二から夫・梅木の戦死を告げられる、かをる。

そして、南方より生きて還ってきた惣吉。


ほぼこのひと月は戦争の時代が描かれたわけですが、特に後半の二週間ほどは太平洋戦争の開戦から終戦、最終回まで本当に慌ただしくて主要登場人物がどんどん死んでいくまるで富野由悠季のロボットアニメの終盤のような急展開。

この最終週は2話ずつ観てきたこともあって、かなり性急な印象を受けたんですが、半年間の総決算としてのラストスパートだった、と捉えたい。

毎日とても楽しく観ていましたが、一方で後半は前半のような自己主張もなくなって夫に従うだけになり、やがて病気で死んでしまう律子の扱いは残念だったし、結局最後までかつての律子のように「自分」というものを前に出すこともないまま最終回を迎えることになった主人公・かをるに対しても不満が残ることに。

確かに、かをるのような奥ゆかしくて控えめな女性はあの当時に実際にいたかもしれないですが、それでもこのドラマの中で彼女がどれだけ人間として成長したのかを見たかったから、まだ女学生だった頃からかをるの内面やその行動原理がほとんど変わらず、言い方は悪いけどお行儀の良いお人形のような存在のままだったのは僕は納得いかなかったです。

かをる役の沢口靖子さんの演技力に不安があって複雑な演技がさせられなかった、といった事情もあるかもしれませんが、85年当時だってかをるの女性像はずいぶんと古めかしく感じられたのではないだろうか。

沢口靖子さんは本当に綺麗で、彼女が涙ぐむ顔には美しさと儚さが漂っていたし、時々とても巧みな台詞廻しもあったんですが(それにしても、主演女優の演技にハラハラしながら観るなんて他の朝ドラ作品ではなかなかないことだよなぁ^_^;)、基本的に彼女は全篇通じて棒読み気味だったし息子役の双子の子役もそれに輪をかけて棒演技だったので、最終回では親子で棒合戦の様相を呈することに。 

沢口さんの美しさは毎朝目の保養でしたが、その一方でその美しさが常に他者に見られ、愛されるだけの受け身なものにとどまっていたのは、やはり今日の目で見ると疑問を持たざるを得ない。

かをるはしばしば「私の身にもなってください」と訴えるのだけれど、相手が彼女の身になってくれようがくれまいが、「私」はこうしたいのだ、だからそれを貫く、という姿勢がかをるにはイマイチ欠けていた。

運命とか他の者たちの思惑に振り回されっぱなしで、彼女が気にするのは外聞や他者の彼女に対する反応でしかなくて、「自分」というものがなかった。

惣吉に出会って彼に見初められ、かをるも同時に一目惚れのような状態だったから、それは相思相愛ということだけど、その惣吉との結婚でも自分の気持ちを強く押し出すことはなくて律子や英一郎などまわりに応援されて、という形だったし、ようやく結婚できたものの、惣吉が遭難して行方不明になると、今度はなぜか外川の漁師たちから疎まれる、という、これまた外側からの圧力で実家に戻って今度は梅木と結婚する。

あまりに付和雷同過ぎではないか。

僕は、そういう流されっぱなしのヒロインが最後の最後に自分の意志を貫き通して終わるんだと思っていたのだけれど、なんと、最終回でもかをるに未練タラタラの惣吉は、梅木が戦死したことをこれ幸いに(かをるの幸せを願って、などと言い訳してるけど、要するに邪魔者が消えたからでしょ)これからも彼女に再婚を申し込み続けることを宣言する。

そんで、かをるの方もそんな前夫に「ふざけんな」と怒るのかと思いきや、英一郎が一人前になったら(ほとぼりが冷めたら)その時にあらためてプロポーズ待ってます♪みたいな、これまた気を持たせるようなふざけきった返答をする。

…酷くないですかね(;^_^A 梅木、草葉の陰で泣いてんじゃないか。 

あれだけ「自分は梅木のことを愛しているのだから、もうこれ以上煩わせないでほしい」と言っていたのが、その舌の根も乾かないうちに。

人は言葉と心の内が必ずしも一致しないし、これは「メロドラマ」なんだから、主人公の女性が男たちの間でよろめきまくるのは当然だということかもしれないし、イケメン二人に愛され求められ続けるヒロインの気持ちになって楽しむ、という見方もできるかもしれませんが、まぁ、ツッコミどころは満載でしたね。

これの前にアンコール放送されていた「はね駒」では主人公に対するこんな疑問は湧かなかったから、やっぱりこれは男性の脚本家による理想の女性像をめぐる男たちのマウンティング大会のような胡散臭さがあって(たびたび女性をモノのように見做す視点がうかがえたし、セクハラ行為をギャグめかして演出してもいた)、そこは時代的な限界なのかなぁ、とも思いますが。

その一方で、あれほど思い入れを込めて描いてきたかをるの父・久兵衛を戦争で狂わせて無残な最期を遂げさせたり(久兵衛の度を越した狂信的な言動は、演じた津川雅彦氏ご本人の晩年のそれを連想させて複雑な気持ちになるが)、たとえば柴田恭兵さんを梅木という役にキャスティングするなど、とてもユニークな試みもしていて見応えのあるものでした。

妻や子どもたちを愛し、ユーモラスなところもある反面、旧弊な価値観を捨てられず、海外への侵略行為を支持するような久兵衛の多面性は、とても人間臭かった。

かつては「戦争になれば儲かる」とほくそ笑んでいた久兵衛のその後の姿から、ドラマの作り手の戦争に対する考えがわかる。

また、恭兵さん演じる梅木はその後の“セクシー大下”や大河ドラマでの渋い役柄とは違って、一見仕事では有能ながら心の中に劣等感や猜疑心を隠し持っていて、メンタルが非常に不安定なところがある。そういう人物を柴田恭兵という役者さんが演じているのがとても新鮮だったし、彼の俳優としてのキャリアの中でも結構珍しいパターンじゃないだろうか。 

川野太郎さんが演じた惣吉は裏表のない男の中の男、みたいに描かれているし、皆からも慕われる役柄で最後にはやはり「かをるが待つべき男」として扱われていたけど、彼があれほど「いい男」に見えたのは、彼に嫉妬して自ら男を下げるような醜態をさらけ出した梅木がいたからでもある。 

そういう意味では惣吉は得なキャラクターだったし、けっしてかをるを諦めないしぶとさと強さは見ていて小気味よくもあるのだけれど、個人的には梅木のあの人としての弱さが味わい深かった。 

本当は、そういう人間としての面白さ、興味深さを主人公のかをるに感じたかったですが。主演女優たちの演技に魅せられた「おしん」や「はね駒」のあとだから、余計惜しい。 

初放映の時にはとても視聴率が高かったそうだけど、当時の視聴者はどう感じていたんだろう。

こちらも一年間アンコール放送されていた91年の大河ドラマ太平記」も終了したし、毎日ずっと続いてきた“リッツルヴァンパーティ”が終わってしまって、早くも「靖子ロス」状態(そういう皆さんは9/3(金)公開予定の『科捜研の女 -劇場版-』を(^o^))。

natalie.mu


3/29(月)からは、早速1997年初放映の田中美里さん主演の「あぐり」が始まります。 

85年の「澪つくし」から一気に10年以上飛んでしまいますが、もうちょっと80年代の朝ドラを観たかったなぁ。「ロマンス」とか「心はいつもラムネ色」「はっさい先生」なんかも。 

でも、「あぐり」には「澪つくし」に続いて草笛光子さんが出演されてるし(^o^)90年代の朝ドラって僕はまったく観ていなかったから、どんな作品なのか楽しみです。 


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