映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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『帝都物語』

実相寺昭雄監督、嶋田久作原田美枝子石田純一姿晴香高橋幸治桂三枝坂東玉三郎平幹二朗勝新太郎ほか出演の『帝都物語』。1988年作品。

原作は荒俣宏による同名小説。

シネマスコーレにて、35ミリフィルムでの上映。

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明治から昭和初期にかけて東京を舞台に、平将門の怨霊を蘇らせて帝都を滅ぼそうとする魔人・加藤保憲と戦う者たちを描く。


あいにく白石晃士監督や高橋洋監督によるトークショーのやっている日には行けなかったんですが、10何年か前に新文芸坐でやっていた「実相寺オールナイト」以来の劇場での鑑賞。


1988年の初公開時にも劇場で観ました。


すごく好きな映画でもないし、88年当時だってめちゃくちゃ面白かったわけでもないんだけど、80年代の終わり頃に観た楽しい思い出が蘇るので、再び映画館で観られる貴重な機会だったから時間の都合をつけて行ってきました。

映画を35ミリフィルムで観ること自体、もう10年ぶりぐらいかなぁ。

できればデジタルの綺麗な画質でも観たいけど、フィルム上映にはまた味があっていいですね。

前年の87年には『竹取物語』(感想はこちら)、『帝都物語』と同じ88年には実写映画『孔雀王』が公開されたし(そういえば、大好きな『ドグラ・マグラ』も88年だったな)、翌年の89年には『ガンヘッド』や『ゴジラvsビオランテ』が公開されていずれも観にいきましたが、正直作品そのものにも特撮の出来映えにも満足はできなかった。当時の日本の特撮映画に僕はちょっと失望していたんですよね。

そういえば、『vsビオランテ』には『帝都物語』にも出演していた高橋幸治さんや峰岸徹さんも出てましたね。

まだデジタル化以前でCGも使われていなくて、『帝都物語』では鳴り物入りで使用された「ハイビジョン合成」(大林宣彦監督の93年の映画『水の旅人 -侍KIDS-』でも使われていた)は他の場面との画質の違いが甚だしく、観ていて違和感があった。

結局、やがてはデジタル合成に取って代わられて消えていった技術でしたね。CGに対するミニチュア特撮と違って、ハイビジョン合成に関してはなくなってまったく惜しいと思わない。だって映像が綺麗じゃなかったから。

80年代の終わり頃は、まだ技術的なことであれこれ試行錯誤している最中でしたね。

88年当時、確か朝日ソノラマの雑誌「宇宙船」誌上で実相寺監督が『帝都物語』で出演オファーしたが断わられた俳優さんたちに恨みがましい言葉を放っていたっけ。もちろん、名前は挙げてませんでしたが(主演候補だった小林薫さんだろうかw)。

それから、ウォルフガング・ペーターゼン監督の『ネバーエンディング・ストーリー』(感想はこちら)をディスってもいた。僕は『ネバーエンディング・ストーリー』が好きだったので、なんでだよ!って思った。

帝都物語』の脚本は林海象監督で、同監督の佐野史郎主演のモノクロ映画『夢みるように眠りたい』は90年代にBSでだったか民放での放送だったか、あるいはレンタルヴィデオだったか忘れてしまったけれど観て、その幻想的でちょっと小劇場演劇っぽいアングラな雰囲気とかが好きでした。今敏監督のアニメーション映画『千年女優』(感想はこちら)は、あの映画から影響を受けていますよね。

『夢みるように~』もちょっと前にデジタルリマスター版が公開されてたけど、残念ながら観られず。また再映してくれないかなぁ。

その繋がりなのか、『帝都物語』では佐野史郎さんが石田純一さん演じる辰宮洋一郎の友人・鳴滝役で出ていました。出た、丸メガネかけると昭和初期とか大正時代の人になれる人w

佐野史郎さんは『ぼくらの七日間戦争』(同年公開)が公開される前で、まだ冬彦さんで全国区で有名にもなる前だったし、石田純一さんはトレンディ俳優になる直前だったし「不倫は文化」発言でぶっ叩かれるよりもずっと前のことで、この映画を観た当時は僕は彼らのことを知らなかったからTVドラマの特定のイメージもなくて、素直にこの映画での役柄や演技を受け入れることができたんですよね。

僕は荒俣宏さんの原作小説を一切読んでないから(そういえば「夢幻紳士」や「学校怪談」の高橋葉介さんが漫画を描いてたな)、この映画が原作のどの辺をどのようにつまんでるのか知りませんが、原作を読んでなくてもダイジェストっぽいストーリーだなぁとは思いましたね。時代が飛ぶ飛ぶ。

上映時間は135分あるんだけど、それでもストーリーはブツ切れ気味で目方恵子はいつの間にか辰宮と夫婦になっている。群像劇、といえば聞こえはいいけど、各場面ごとにお話があまり繋がっていない。

だけど出演者がほんとに豪華で、ほんのちょっと出てくるだけの有名俳優がいっぱい。今はなき大御所たちも何人も顔を見せている。なんだかそれだけでも贅沢な感覚に浸れる。

飯塚昭三(※ご冥福をお祈りいたします。23.2.15)や大塚芳忠など、何げに声優陣も豪華。

スタッフも当時の重鎮や現在では日本特撮界を代表するヴェテランたち(樋口真嗣原口智生など)、H・R・ギーガー(護法童子のデザイン)までかかわっている。


いろんな作品でパロられてる学天則

原田美枝子さんが本当に美しい。


この映画の感想は、主演の嶋田久作さんご自身の言葉が一番的を射てますね。

大河ドラマぐらい尺を取らないと収まり切れない作品ですよね。ストーリー的には破綻していると思うけど、でもバブルが弾ける直前だった当時の高揚感が、物語の中で描かれた明治から昭和初期までの、伸びやかな時代の野放図さと巧くリンクしていたと思います」


続篇の『帝都大戦』(監督:一瀬隆重)は映画館ではなくてレンタルヴィデオで観たと記憶しているんだけど、女の子の首から下が蟲になるヴィジュアルだとか、「接吻ってしたことある?あたしはまだなんだぁ」とか言ってた直後に機銃掃射で蜂の巣になる看護師役の野沢直子とか、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(感想はこちら)のドクみたいなメカを頭に取り付けて唸りながら火花散らす加藤雅也(当時は加藤昌也)、ヒトラーを呪い殺す丹波哲郎など、なんかいろいろ闇ナベ的なオモシロ要素があったよーな気はするけれど、僕は明治から大正、昭和初期にかけてのどこか江戸情緒を残しながらもモダンな時代へと変貌していく東京を描いた実相寺監督による1作目のあの世界が好きだったから、暗い太平洋戦争の時代を描いた続篇にはあまりそそられなかった。


ってゆーか、『帝都大戦』って1989年だったのね。翌年に早くも続篇公開ってその勢いがスゴいな。さすがバブルの時代。

その後、西村和彦主演で95年に『外伝』が撮られているけど、そちらはもう観たのかどうかさえ覚えがない。

2000年代に入って、三池崇史監督が撮った『妖怪大戦争』では豊川悦司が加藤を演じてて、最後に「マメ?」って言いながら倒されてたっけ。もはや加藤保憲は妖怪と同類なんだな。

嶋田久作は『帝都物語』でスクリーンデビューしたそうですが(劇場パンフで「30歳の大型新人」とかって書かれてたっけ)、その後は不気味で恐ろしげな役もあるけど、『僕らはみんな生きている』(1993) みたいな頼りなさげだったりユーモラスな役柄も結構演じていて、円谷関係だとか実相寺監督も明智小五郎役で彼を起用して2本の江戸川乱歩原作の映画(この2本『屋根裏の散歩者』と『D坂の殺人事件』もリヴァイヴァル上映してほしい。あと、実相寺監督とも嶋田久作さんとも関係ないけど、江戸川乱歩原作、川島透監督の『押繪と旅する男』がまた観たい)を撮ってるし、今や得難い異形のアクターとして重宝されてますよね。

失礼ながら嶋田さんって先頃惜しくも亡くなったアントニオ猪木と同様「受け口」なので、喋るとちょっと声がくぐもって舌っ足らずにも聴こえて怖いというよりも可愛いんだよね。


嶋田久作さんの加藤のヴィジュアルが格闘ゲームの「ストリートファイターII」のキャラクター、ベガに影響を与えた、というのはよく聞きますが、ただ、原作はどうだか知らないけど、映画での加藤保憲って念仏だか呪文だかを唱えてるだけで格闘は一切しないんですよね。まったく肉体派ではない。『僕らはみんな生きている』でもそうだったように、嶋田さんご本人は痩身だし。

今だったらVFXを駆使していろいろとかっこいい技を繰り出せそうだけど。

映画『帝都物語』はいわゆるアクション映画ではないし、同じサイキック物でもたとえばやはり同年劇場公開のアニメ『AKIRA』(感想はこちら)のようなスペクタクル映画、とまではいかなくて、同じキャストで今の映像技術で作れたらどんなに面白くなっただろう、なんて夢想しますが。

でも、原田美枝子演じる恵子が玉三郎演じる泉鏡花と歩いたり(鏡花「そいつをあんまり憎んじゃいけませんよ。憎むってのは、それだけ“情”が動くってことですからね」)、石田純一演じる辰宮と静かに語らう場面など、ところどころにとてもいいシーンがあるんですよね。ちょっと文芸作品を観ているような。おそらく、今のVFXをバンバンに使ったアクション大作ではああいう風情は出せないと思う。いや、最近邦画の大作映画とか全然観てないんでどうなのか知りませんが。

30年ぐらい前の昔の映画って、今観ると技術的な面でキツいものがあるし、演出的にも野暮ったかったり古臭かったりして僕は作品として好きなものって多くはないんですが、*1それでも一定の歳月が経ったことで古びたものも距離をおいて眺められるようになって、劇中で高橋幸治演じる幸田露伴(関係ないけど、この映画を観終わって家に帰ったらTVで「岸辺露伴は動かない」を放送していた。露伴の担当編集者の名前は"泉京香")が神田明神の出店で見た覗きからくりのように、どこか幻めいて、心は少年期の80年代やこの映画で描かれた昭和初期、大正、明治へと遡っていく。

幸田露伴渋沢栄一勝新太郎)に呟いたように、日本は一体これからどこに行くのだろうか。


加藤保憲とは、人々の驕りへの大地の怒りそのもののことではないか。平将門の怨霊というのは、大切なことを忘れた現代人に思い知らせにやってくるゴジラ的な存在なのではなかろうか。劇中では何度も「将門を蘇らせてはならない」と繰り返される。80年代のバブル時代に作られたこの映画で世の中に向けてなされた警告は、果たして今の僕たちに届いているだろうか。


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*1:とはいえ、先日観た『空の大怪獣ラドン』→感想はこちら のミニチュア特撮が目に心地よかったように、この映画でもショットによっては実景か実物大のセットかと思うような映像もあって、そういうのはCGではなくてミニチュアならではの楽しさがありますけどね。