映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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「はね駒」を観終えて

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4月より毎朝7:15からアンコール放送されていたNHK連続テレビ小説はね駒(こんま)」(初放送1986年)が半年間の放送を終えて19日(土)に終了しました。

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福島で家族と暮らしていた橘りん(斉藤由貴)は、松浪先生(沢田研二)との出会いや女学校への進学、家族全員での上京、小野寺源造(渡辺謙)との結婚を経て、やがて家庭をやりくりしながら新聞記者として働くことになる。


スケバン刑事」にも主演して売れっ子アイドルだった斉藤由貴さんの歌「卒業」は当時卒業式の定番ソングだったし、このドラマのことも「おしん」と同様に初放送時に作品自体は知ってましたが、当時は観ていなかったので今回ほぼ初めての視聴。

これまで通りTwitterで呟きながら観ていましたが、初めの頃にはタイムラインで「お話がなかなか先に進まない」という不満を目にしたりも。

でも、やがて僕も含めて多くの視聴者が主人公の“おりん”と彼女の夫になる源造、おりんの両親たち(小林稔侍、樹木希林)家族──橘家と小野寺家の人々の物語にしっかりと入り込むことに。

これは斉藤さん演じる“おりん”の物語であると同時に、終わってみれば結局のところ戊辰戦争の生き残りである父・弘次郎の物語でもあり、そして橘家の物語でもあった。

おしん」が明治から大正、そして昭和末期までの80年近い主人公・おしんの一代記を一年間かけて描いたのに対して、この「はね駒」は舞台となるのは明治23年から45年(1890~1912年)までの22年間。

おりん役の子役は登場せず、第1話から斉藤さんが演じていました。

日露戦争に従軍した俊作あんちゃんとの出会いや戦争景気、関東大震災に太平洋戦争など、物語の随所に大きな歴史的事件や災害などが挟まれて、時代の荒波にもまれながらたくましく生きていくヒロインを描いた「おしん」と比べると、やはり日清・日露戦争の時代が舞台で、主人公のおりんも大切な家族を失う悲劇に見舞われはするものの、「はね駒」で描かれるのはもう少し穏やかな世界。

男女雇用機会均等法が施行されたのが1986年で、そういう世相も反映されていました。

ほぼ男性が占める新聞社に勤める女性を描いたわけですが、おりんが新聞記者になるのは終盤で、しかも直接彼女が記者として現場で働いている場面はほとんど映し出されることはありませんでした。

ある意味、やっとスタートラインに立ったばかりのところでドラマは終わってしまう。

観始めた頃に僕が想像していた、外での仕事と家庭での仕事をガンガンこなす明治時代のキャリアウーマンを描く物語、ではなかったんですよね。

でも、逆にとても考えさせられるところもあって、では、このドラマの舞台となった時代から100年以上経った、そしてドラマが作られた1980年代半ばからもすでに34年経つ現在どれだけこの国は進歩したのだろうか。

女性たちは男性と同じように就職の機会を得られていて、同等の収入を得られているだろうか。答えるまでもないですが。

先ほど発足した菅内閣での女性閣僚は、わずか2名。「女性活躍」が笑わせる人数。

つまり、「はね駒」で提示された日本社会における課題は今なお解決も達成もされていない。

ドラマを観ながら現実を振り返ってガックリくることも。

一方で、このドラマでは、おりんとその家族の日常が丹念に描かれていて、まるで実在する家族を見ているようで、それが毎朝の楽しみでもあった。

あくまでも地に足の着いた登場人物たちの日々の生活を通して、時折“時代”が顔を覗かせるような作劇でした。

樹木希林さんの演技も堪能できましたねぇ。いまだに彼女がすでにこの世にはいらっしゃらないことが信じられません。

主演の斉藤由貴さんは、たとえば「おしん」の田中裕子さんのようなスーパーヒロインではなくて、おっちょこちょいだったり、ほわん、とした雰囲気を醸し出していて、そこに僕は共感を覚えたり応援したくなる気持ちにさせられたんですよね。Twitterで大勢の視聴者の皆さんからちょいちょいおりんへツッコミが入れられてるのが可笑しかった。

視聴者それぞれの家族観や夫婦観、仕事に対する考えなどもうかがえてとても面白かった。

これはキュートで天性のコメディエンヌの素質がある(まるでビートたけしのようにコケる演技に思わず吹いてしまったw)斉藤さんご本人の性格やご気性なども大きく影響していると思うんですが、シリアスな展開もあるのだけれどどこかユーモラスで、それがこのドラマを深刻なものにせずに、それでも誠実に綴られる橘家の人々の生活ぶりに視聴者は心温まったりじんわりと涙したり、まさしく王道の朝ドラを楽しんできたんですよね。

ヒロインに口癖があるのって「あまちゃん」の「じぇじぇじぇ」からだと思ってたら、この頃からやってたんですね。ウッター!(^o^)

こうやって半年間ドラマを追い続けることができて、本当によかった。

さて、もう1本、コロナ禍で収録が一時中断したためにすでに放送済みのエピソードを再放送していた「エール」の放送が約二ヵ月半ぶりに再開されましたが、こちらの方は11月末まで放送が続きます。

福島の呉服店の長男として生まれた古山裕一(窪田正孝)は、独学で作曲の能力を身につけ才能を開花させていく。やがて愛知県の豊橋に住む声楽を勉強している関内音(二階堂ふみ)と出会い、惹かれ合う。結婚して東京に居を構えた彼らは手を取り合って音楽の道で活躍するが、やがて日本は戦争へと突き進んでいく。


主人公・古山裕一は作曲家の古関裕而さんをモデルにしていて、古関さんは「モスラの歌」を作った人でもあるので、その方面で興味をそそられていたし、また戦前戦中は軍歌も手がけて軍部に協力して、戦後はそのことへの深い自責の念からも平和を祈る歌をいくつも作曲したことなど、とても劇的な生涯であるとともに、やはり現在のこの国のさまざまな状況を省みるうえでも重要な人物だと思うので、こちらも「はね駒」同様楽しみにしていたのです。

「はね駒」は明治の最後の年(大正元年)で終わるんですが、「エール」の方は裕一が生まれた明治42年(1909年)から始まって、太平洋戦争後、平和となった時代まで描かれる予定で、だから2本のドラマはちょうど「おしん」が1本の作品の中でやったような「明治・大正・昭和」の近現代史を走り抜けるような感じになるわけですね。2本とも主人公は実在の人物をモデルにしていて、どちらも福島出身という共通点もある。

ところが、なぜか「エール」はドラマではなくて裕一の妻・音の亡くなった父親(光石研)が死に装束姿の幽霊になって再登場するようなふざけきったコント(だが笑えない)として作られて、登場人物たちと時代との接点も描かれず、誰が誰を好きだとか、誰が誰に勝ったとかそんなどーでもいいエピソードが延々続くだけで、なんだか面白くないのでほとんどまともに観なくなってしまった。

目ン玉ひん剥いて大声上げたりするような大雑把な演技の連続が堪え難くて。

コメディだろうとコントだろうと、それが笑えるんなら別にいいんだけど、笑えもしないし、朝っぱらからデリカシーのないドタバタを見せられても。下品だなぁ、と思う。

作曲家や声楽家へのリスペクトも感じられない。

なつぞら」をちょっと思い出しました。あれもAK(NHK放送センター)制作でしたが、またかよー(>_<)と。いや、「はね駒」だってAKの作品だったんですが。

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正直言って、11月末まで続くのが苦痛にすら感じています。もうとっとと次の新作ドラマ始めてしまえばいいのに。

…いや、今後挽回してくれる可能性が皆無ではないかもしれないし、出演者は普通に豪華なんだからなんとか持ち直してくれたらそれに越したことはないんですが。


「はね駒」の次に次週9/21(月)から始まるアンコール放送は、1985年の「澪つくし」。主演は沢口靖子さん。

僕はこの前年の『ゴジラ』(1984年版)で初めて沢口さんを見て、その後、「澪つくし」や大河ドラマの「独眼竜政宗」(脚本は「澪つくし」と同様、ジェームス三木)などで彼女の活躍を見ていました。

ただ、朝ドラは当時は朝の8:15と昼にやってたから、観られるのは土曜の昼だけで、だから「おしん」や「はね駒」がそうだったように全話通しては観てなかったのでどんな物語なのかは知らないんですよね。

まだ新人だった沢口靖子さんの演技は結構危なっかしかったと記憶している^_^;

でも、本当に当時の沢口さんは人形のように綺麗だったですね。今もお綺麗ですが。

もう、これから毎朝リッツルヴァンパーティよ♪

澪つくし」は「はね駒」の前年に放送されたんだけど、お話は大正時代最後の年、そして昭和元年(1926年)から始まるということで、ちょうど「はね駒」のあとの時代が描かれていくんですね。

ロミオとジュリエット」のような“純愛”モノなんだそうですが、なんか80年代のあの頃っぽいよなw

35年ぶりに観る「澪つくし」、楽しみです(^o^)

 

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