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「ウルトラセブン」55周年記念4K特別上映


10月1日(土) から13日(木) までやっていたウルトラセブン」55周年記念4K特別上映を観てきました。

ウルトラセブン」の4K版が映画館で観られるということで、楽しみにしていました。

www.youtube.com

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ウルトラセブン」は1967年から68年に放送されたTVの特撮ヒーロー番組で、「ウルトラQ」「ウルトラマン」に続くウルトラシリーズの第3弾。

去年の4月から今年の3月まで毎週日曜の朝にNHKBSプレミアムでも4K版が放送されて、僕も観ていたんですが、諸事情により途中から僕のTVではBSチャンネルが観られなくなって、とても残念な思いをしました。

それが、今年は「ウルトラセブン」の放送から55周年ということで何かイヴェントを考えている、といったアナウンスが円谷プロからされて、やがてTV版の劇場公開だということがわかったのでした。

上映作品は、第7話「宇宙囚人303」、第26話「超兵器R1号」、第37話「盗まれたウルトラ・アイ」、第48話「史上最大の侵略(前編)」、第49話「史上最大の侵略(後編)」の5話。

ラインナップを見た時に、「渋いなぁ」と思いましたね(^o^)

ウルトラセブン」といえば、ファンはまず実相寺昭雄監督のエピソードを思い浮かべるだろうし、それ以外でも強敵のキングジョーが登場する「ウルトラ警備隊西へ」や、やはりガッツ星人がセブンを処刑しようとする「セブン暗殺計画」などスクリーン映えしそうな作品はあるし、あるいはエレキングが登場する「湖のひみつ」のような人気怪獣が出てくる作品は他にもある。

セブンといえば必殺技のワイドショットやアイスラッガーで怪獣や宇宙人を粉砕する迫力満点のエピソードをこそ観たいのだが。

前後篇の最終回「史上最大の侵略」はともかく、よりによって怪獣が出てこない「盗まれたウルトラ・アイ」や、幼児が観たらギャン泣きしそうな“宇宙の通り魔事件”を描いた「宇宙囚人303」をチョイスするとか、どういう狙いなのだろう、と。

いや、個人的にはキュラソ星人の回、大好きですけどね。

ウルトラQ」の一平役の西條康彦さんがガソリンスタンドの店員役で出てましたね。「ウルトラQ」で万城目淳役で西條さんとコンビを組まれていた佐原健二さんが、「セブン」ではタケナカ参謀役で出演してました。


「宇宙囚人303」に出てくるのはキュラソ星人なのか、それとも「キューラソ星人」なのか問題、ってのもありますが(劇中でダンとマナベ参謀が“キューラソ星人”と呼んでいる)w “ベータカプセル”か“ベーターカプセル”か、の違いみたいなもんか(^o^)

ちなみに、今回、上映作品の感想というよりは「ウルトラセブン」にまつわる思い出話になると思いますのでご了承ください。

僕が「セブン」を初めて観たのがいつだったのかもう覚えていませんが、小学生の時、体育の時間に友だちと一緒に赤白帽を使ってアイスラッガーの真似事をやって遊んでいました。

僕がリアルタイムで初めて観たウルトラマンは「ウルトラマン80」で、それ以前の昭和のウルトラシリーズはすべて再放送での視聴。まだヴィデオやDVDもなく、ケイブンシャとか講談社の「図鑑」や「大百科」で過去のシリーズを復習していました。

でも、幼い頃はセブンは怖いからそんなに好きではなくて、カラフルでわりと明るい話の多いタロウの方が好きだった。

確か近所の区役所の上映会か何かでボーグ星人が出てくる第27話「サイボーグ作戦」を観た記憶があって、アイスラッガー首チョンパされたボーグ星人の“切り株”からチューブ糊のように泡がニュルニュルと出てくる場面がなかなかショッキングだった。

16ミリフィルムでの上映だったんでしょうが、おそらくはそのあたりが初めてセブンに触れた時だったんじゃないかと。

その後ずいぶん経ってから、NHKのBS2でセブンやA(エース)などが再放送されて、そこでようやく全話通して観たのでした。

その頃にはウルトラシリーズの中ではセブンが一番好きになっていたし、非常に完成度の高いエピソードが多いことも知っていた。

現在も封印が続いている第12話「遊星より愛をこめて」の存在を知ったのがいつだったのかももはや忘却の彼方ですが、1999~2000年代に劣悪な画質のヴィデオで観たのでした。

実相寺監督による第12話については安藤健二さんの著書「封印作品の謎」を読んで、事情を知った。

安藤さんも著書の中で述べられているように、個人的には傑作の類いとか「ウルトラセブン」の全エピソードの中で特に出来のいい作品ではないと思います。

核開発競争に対する批判なら今回上映された「超兵器R1号」(監督:鈴木俊継、脚本:若槻文三)がストレートに描いているのに対して、「遊星~」の方は「反核」を描いてすらなくてハッキリ言ってかなり軽薄な内容。


ダンの口から「原爆病」などという単語が出てくるとギョッとするし、被爆者を連想させる宇宙人のデザイン、また彼らを吸血鬼扱いするような内容など、脚本の佐々木守氏も監督の実相寺さんも核兵器というものへの見識があまりになさ過ぎたと思う。

この作品の何が問題だったのか、最後まで実相寺監督は理解できなかったようだ。

アンヌ隊員ことひし美ゆり子菱見百合子)さんと「ウルトラQ」の由利ちゃん、「ウルトラマン」のフジ・アキコ隊員こと桜井浩子さんが共演している貴重な回だし、不思議なオプティカル合成の使い方をしていたり、スペル星人のアジトの建物の形が印象深かったり、ホラーっぽい演出もなかなか怖いんで作品としては面白いから封印されてしまっているのは残念ですが。

冒頭か最後に注意書きを入れて、封印を解くことはできないだろうか、と思いますけどね。

何が問題なのか、作品が観られなければ議論もできないし。

セブン12話については僕は監督や脚本家の責任は大きいと思っていますが(でも、直接の封印のきっかけは作品の内容ではなくてメディアでの表現のせい*1なのだが)、実相寺監督の作品には愛着があるし、今から10年以上前に池袋の新文芸坐実相寺昭雄監督の作品を夜通し上映する「実相寺オールナイト」が開催されて(実相寺監督の作品はその後も最近でもわりと特集されているようですが)、友人と一緒に行ったのを思い出します。

帝都物語』やATG作品などと一緒に「ウルトラマン」と「ウルトラセブン」の実相寺作品が上映されました。

ei-gataro.hatenablog.jp


ガマクジラの回とスカイドンの回では、怪獣の倒され方がほぼ一緒で笑った。

セブンだと、メトロン星人との戦い方とスペル星人(もちろん、こちらは上映されてませんが)とのそれがこれまたおなじみの「カシャッ」とカメラのシャッター音とともに画面がストップする演出で、ペロリンガ星人の場合に至ってはもはやどうやって倒されたのかもわからない。手の抜き方がスゴかった。

帝都物語』や『ウルトラQザ・ムービー 星の伝説』*2はたまに無性に観たくなるし、僕はほとんど観ていない平成ウルトラマンも、実相寺監督が撮った回(「ウルトラマンマックス」の「狙われない街」など)はユニークで好きでした。イレギュラーな作品だからこそ、特撮番組のお約束に囚われていない。

今回の4K上映で実相寺監督の作品が1本もないのは意図的なものなのかどうかわかりませんが、実相寺監督によるエピソードはもう充分有名だし観る機会もあるから、むしろそれ以外の作品を選んでくれたことは僕はよかったと思います。

5本のエピソードを並べてみると、第7話と第48、49話の脚本を金城哲夫さんが担当していて、「盗まれたウルトラ・アイ」は市川森一さんの脚本。

最終回の2話の満田かずほ監督を除くと、それ以外の3本の上映作品は鈴木俊継監督作品。

「R1号」は言わずもがなだけど、マゼラン星人マヤが登場して「…こんな狂った星を?見てごらんなさい、こんな星、侵略する価値があると思って?」とダンに言い放つ「盗まれたウルトラ・アイ」では、マヤの母星から地球に向けて惑星間弾道ミサイルが発射される。

なかなかタイムリーな題材ですが。


マヤ役の吉田ゆり(香野百合子)さんは朝ドラの「おしん」で元女郎の佐和を演じていました。ほんとに綺麗な人ですよね。儚げな美しさがある。

利用だけされて故郷から見捨てられたマヤがジュークボックスからの煙に包まれて自ら消滅したあと、ダンの呟く「なぜ、他の星ででも生きようとしなかったんだ…僕だって同じ宇宙人じゃないか」という言葉に、今回の上映に託された送り手のメッセージが込められている。

「史上最大の侵略」は、キリヤマ隊長(中山昭二)がクライマックスに「地球は我々人類自らの手で守り抜かなければならないんだ」と隊員たちに言うのだけれど、それは「ウルトラマン」の最終回でも似たようなことが言われていたし、スーパーヒーロー物の最終回のお約束ではある。

キリヤマ隊長は今回上映されなかった、金城哲夫さん脚本による第42話「ノンマルトの使者」(監督は満田かずほさん)では、もしかしたら地球の先住民族だったかもしれないノンマルトを全滅させたあとで、「我々の勝利だ。海底も我々のものだ。これで再び海底開発の邪魔をするものはいないだろう」と高らかに宣言する。

このエピソードがもしも今回の上映に含まれていたら、完璧だったんですけどね。

現実の今の僕たちのこの国を見渡すと、重なるものがあるじゃないですか。

ウルトラセブン」は、もしかしたら、主人公は侵略者(地球人)の手先として働いているのではないか、という疑問にまで至る、本当に傑出した作品だと思うんですよね。

ヒーロー番組の中でヒーローを否定するようなことを描く。

残念ながら、現在ではこのような素晴らしい作品はなかなか生み出されないでしょう。

今回の上映では、僕が観たのは週末だったこともあって子ども連れのご家族もいて、果たして大丈夫だろうか、と少々心配もしていたんだけど、小さなお友だちもキューラソ星人を観て泣き出すこともなく(笑)時々代わるがわるお父さんやお母さんに連れられてトイレに行くことはあっても、みんな最後まで観てました。

いい体験になったんじゃないかな?(^-^)

最終回の、双頭怪獣パンドンとの戦いはほんとに見応えたっぷりですよね。名作だよなぁ。


セブンの正体がダンだと知ってからは、ウルトラ警備隊の仲間たちはセブンのことを「ダン」と呼ぶ(宇宙ステーションV3のクラタ隊長だけは「モロボシ」。クラタ役の南廣さんはいかにも昭和の男って感じで、今ならちょっとパワハラっぽくもあるんだけど、ほんとに男前だよなぁって思う)。

正体を明かして「びっくりしただろう」と尋ねるダンに、アンヌは「人間であろうと宇宙人であろうとダンはダンに変わりないじゃないの。たとえウルトラセブンでも」と答える。

このことに関しては、M78星雲の恒点観測員340号としてのウルトラセブンではなくて、彼のことをあくまでもダンという人間として見ている、ということで、ふたりの間にはすれ違いがあるのではないか、という意見もある。

ただ、アンヌは「超兵器R1号」の回で大量破壊兵器の開発をなんとか食い止めようとしていたダンのことを覚えているだろうし、また「ノンマルトの使者」でノンマルトをかばい続けた少年・真市との衝撃的なエピソードも経たあとだから、ダン=セブンの境遇についてはきっと想像できたんじゃないだろうか。

前作のウルトラマンは光の国の超人でその存在自体が人間離れしていたし、人間の姿の時のハヤタ隊員(黒部進)もまた、いかにもエリートっぽくて(実相寺監督の回ではベーターカプセルの代わりに間違えてスプーンを掲げてましたがw)彼のキャラクターが深く描かれることはなかった。

その点、モロボシ・ダンはもっと人間っぽいんですよね。

ダン役の森次浩司森次晃嗣)さんには熱さがあったし、その懸命さが自分の故郷以外の他の惑星の者たちのための利他的なものだということがよくわかる、誠実さが伝わる演技でした。

地球人とM78星雲人である自分の間で葛藤する。地球人たちと宇宙人たちとの間で板挟みになる。失敗もするし、お茶目なところもある。

ウルトラセブン」に“泣ける”のは、そういう人間らしさを持った宇宙人の彼のツラさが僕たちに伝わるから。

果たして、ダンはパンドンとの最後の戦いで力を出し切って死んだのか。空に帰っていったあの光はダンの魂なのか。それともフルハシ隊員(石井伊吉、現・毒蝮三太夫)が言っていたように彼はきっと生きているのか。

のちにシリーズ化、ファミリー化されてセブンは帰ってきたウルトラマン(新マン、帰りマン、帰マン、ジャック)を助けたり、レオの師匠になったりしますが、「ウルトラセブン」のこの最終回は、数あるシリーズの中でももっとも美しく、悲壮で、素晴らしい真の「最終回」だと思います。

ウルトラシリーズのみならず、あまたあるヒーロー番組の中の最高傑作ではないだろうか。


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*1:登場する敵の宇宙人を書籍などで「ひばく星人」と表記。

*2:ウルトラQというよりは、どちらかといえばウルトラセブン的な1本だった。