映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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またね!「未来少年コナン」

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5月からNHK総合で日曜深夜に再放送されていた「未来少年コナン」が11月1日で最終回を迎えましたね。

それから、この番組の前に午後11時からやっていたカナダの実写ドラマ「アンという名の少女」も同じく最終回。

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赤毛のアン」といえば高畑勲監督と宮崎駿監督が作ったアニメ版が有名だから、「アン」と「コナン」を続けて観ると「世界名作劇場」のような趣きがありました。

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ei-gataro.hatenablog.jp

超磁力兵器による地殻変動で大陸の大部分が海中に沈み、巨大な工業都市インダストリアと農業を営む人々の住む島ハイハーバーに二分された近未来の世界で、自然児コナンと失われた太陽エネルギーの秘密を握るラオ博士の孫娘ラナ、そしてジムシィら仲間たちがインダストリアの独裁的な行政局長レプカの企みから“残された人々”の明日を救うために奮闘する。


半年近くの放送でしたが、ストーリーがもうちょっと進んだら感想を書こう、などと思っているうちにもう終わってしまった。もっともっとあのコナンの世界に浸っていたかった。

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子どもの頃から民放での再放送やVHS、DVDなどで何度か観ているけれど、久々に全話通して、それも毎週30分ずつというペースで大勢の人々と一緒に観られて嬉しかった。

途中で台風のために放送されない週もあったけれど、少々危惧してもいた、最終回まで放送されずに途中でいきなり終わってしまう、ということもなく無事最後までやってくれたので、なんとも感無量というか、今年はジブリの旧作の劇場での再上映もありましたが、たまにこうやって昔の作品をみんなで観るのもいいよなぁ、とつくづく思いましたね。

そもそもこの再放送は新型コロナウイルス感染症で制作が一時中断されることになった別の新作アニメ番組の代わりに穴埋め的にされたものだったわけですが、「未来少年コナン」という作品自体が一度文明が破壊されて生き残った人々が分断されている未来世界を舞台にしたものだったことも現実の今の世の中とリンクしていて、主人公たちの冒険を描いた娯楽作品でありながらもメッセージ性の強いドラマだったな、という印象が残りました。

このアニメーション作品が作られた1978年当時よりも、むしろ今の方がここで語られていたことの重要さがより観る者に伝わるようにもなっているだろうし。

また、科学技術への過信による環境破壊や利益と効率を求めるあまり人間性を失っていくことへの警鐘など、のちの『風の谷のナウシカ』とも繋がるテーマが扱われてもいる。

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悪役のレプカって、昔はほんとに極端に悪く描かれていると思っていたんだけど、ああいう最後まで自分の身勝手な考えも行ないも変えず反省もしない男は現実の世の中に本当にいるんだということを僕らはもう知ってしまった。「滅ぼすですと?とんでもない、いただくだけです」。

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彼の部下だったモンスリーは途中でコナンに救われて考えを改めるんだけど、彼女もレプカほどではないまでもこれまでに結構酷いことをやってきているんですよね。コナンの育ての親だった“おじい”を死なせたのも彼女の部下だし、その後もコナンたちを何度も殺そうとしていたし。

でも彼女の変化を丁寧に描いているから、自然と受け入れられるようになっているんですね。人は良い方に変われるんだと信じられる。まぁ、モンスリーがやがてダイスに惚れられちゃうような美人さんに描かれているから、ってのも大きいんだけど(原作でモンスリーに相当するキャラクターはもっと年配の女性。宮崎監督によるそちらのヴァージョンのキャラクターデザインもある)(^o^)

昔から感じていたことではあったのだけれど、コナンやラナ、レプカなどのキャラクターとか冒険活劇としても思ってた以上に『天空の城ラピュタ』と似ていることを(『ラピュタ』は「コナン」の続篇の企画を流用したものだから似ていても不思議じゃないのだが)あらためて実感しました。

それから、たとえばハイハーバーの「島の一日」など、もっと長かった印象があったんだけど、こうやって週に1回ずつ観てみると30分なんてあっという間だし、全26話というのは約半年間ほどの放送期間分の話数だから全篇通してもそんなに長大な話じゃないんですよね。

本篇前の主題歌が流れているところで描かれている楽しそうに過ごすコナンとラナの姿が最終話「大団円」のラストの“その後”で、ふたりが駆けている緑の丘や野が彼らが最終話で戻ってきた「新・のこされ島」なんだと気づくと、じわぁ~っと感動が広がってくるし、本当によく練られた見事な作品であることがわかりますね。

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世界名作劇場」もそうだったけど、とても効率よく各エピソードをまとめている。そして一話完結方式じゃなくて続き物だから捨てエピソードみたいなものがなくて、どれもがピースの一部のような機能を果たしていてそれらに登場人物たちについての伏線が張られている。「冒険活劇」であると同時に「人間ドラマ」でもあるんですね。

もともとは自分のために他者を出し抜いて卑怯なことをするのも厭わなかったダイス船長も、それからインダストリアから来てハイハーバーの人々を苦しめる側だったモンスリーも、コナンやラナたちと出会って彼らに感化されて変わっていく。

先ほどの「世界名作劇場」の作品たちを彷彿とさせるのも(言うまでもなく宮崎監督と高畑勲監督、それから「コナン」のスタッフ、声のキャストの多くが「世界名作劇場」にかかわってきた人たちでもあるし)、未来を描いたSF的な世界でありながら大地を耕したり動物を飼って生活する人々が描かれて、そこでの人間関係のもつれの修復だったり少年少女のまったき心への信頼感など、未来に希望を見出していこうという姿勢が貫かれている。

ペシミスティックだった原作小説を反転させていて、そこが今先が見えず大勢の人々が苦しみの中にある世の中で、この作品がとても大きな励ましにもなっていると思うんです。

世の中をネガティヴに捉えることはいくらでもできる。レプカは自分以外誰も信用せず、逆らう者は排除し彼に従う者たちをも平然と使い捨てにする。レプカのものの考え方や行動が正しいと思う者はいないように、人々を支配し使役して自分たちだけで多くを独占しようとする者は正しくない。

ヒトラーだって正しいこともやった」などと言ってるような連中が湧いてきてるようなご時世に、宮崎駿のこの作品は「悪は悪なんだ」とハッキリと言い切る。

もっとも、『ラピュタ』以降、宮崎駿は「勧善懲悪」を描くのをやめて、悪いことしてるような奴らにもいろいろ事情があるんだ、みたいなふうに描くようになってきていて、それを「成熟」というのかもしれないけど、僕はとてもフラストレーションが溜まるんです。 

ラナやコナンがそうだったように、正しいことを行なうこと、間違ったことは間違っていると指摘して従わないこと、今それが本当に必要だと思う。

大好きな『天空の城ラピュタ』と連なる作品であることも、僕が「コナン」を好きな大きな理由の一つだなぁ。『ラピュタ』のロマンと、『ルパン三世 カリオストロの城』(11月20日に「金曜ロードSHOW!」で放送予定)の「漫画映画」の面白さの融合。宮崎アニメのエッセンスが詰まった作品、それがこの「未来少年コナン」なんですよね。

宮崎駿監督の初のTVアニメの演出作品であり、また確か最初から最後までメインの演出を務めたこれまでで唯一の作品じゃなかったっけ。

そういう意味でも貴重な番組だし、これからもずっと観続けられていくでしょう。 

またいつか、NHKで放送してほしいです。それまで、またね!


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