映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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『不思議惑星キン・ザ・ザ』 デジタル・リマスター版

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ゲオルギー・ダネリヤ監督、スタニスラフ・リュブシン、レヴァン・ガブリアゼ、エヴゲーニー・レオノフ、ユーリー・ヤコヴレフほか出演の『不思議惑星キン・ザ・ザ』 デジタル・リマスター版。1986年作品。ソ連映画

技師のマシコフはモスクワの街なかで自称・宇宙人の男が持っていた〈空間移動装置〉を作動させたところ、その場に居合わせた青年ゲデヴァンとともに砂漠に瞬間移動してしまう。やがて釣鐘型の不思議な飛行物体に乗った二人の男たち、ウエフとビーからここが「キン・ザ・ザ星雲のプリュク星」であることを教えられる。マッチ(“カツェ”と呼ばれる)の薬品部分が貴重であるらしいこの星では、人々の会話のほとんどが「クー!」という言葉(罵倒語は「キュー!」)で行なわれていた。


この映画はロシアでは86年の公開時に大ヒットしてカルト映画化しているそうで、日本では80年代の終わり頃に初公開されて、確かにタイトルは僕でも知ってたぐらい有名だし日本でもファンが結構いて劇場公開されるのもこれで4回目とのこと。

僕は90年代の初めにレンタルショップのVHSヴィデオで視聴して以来30年ぶりぐらいに観たわけですが、おっさんたちが奇妙な仕草で「クー!」と挨拶していたことと、釣鐘型の空飛ぶ乗り物が出てきたことぐらいしか覚えてなくて、どんなお話だったのかもすっかり忘れていた。

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それで、今回その映画のデジタル・リマスター版が劇場で上映されるというので、ちょっと懐かしくて観にいってきました。

砂漠の惑星が舞台でそこの住人たちの服装や彼らが使っているテクノロジーの描写(車のリモコン・キーみたいなモノで身分を判定したり、その辺のガラクタみたいな装置が物凄い破壊力を持っていたり、オモチャみたいな星図で星の位置を割り出すところなんかのセンス)は、ちょっと『デューン/砂の惑星』だとかショーン・コネリー主演の『未来惑星ザルドス』などを思わせるようなところがあったり、地球から見知らぬ世界へ瞬間移動するところは『ジョン・カーター』、あるいは風刺なのか哲学的なのか判然としない難解(というか結構冗長)な内容は、やはりその後ヴィデオで観たアンジェイ・ズラウスキー監督の『シルバー・グローブ/銀の惑星』なんかも連想したりして。

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で、どうだったかというと…あぁ、なるほど、これは内容を覚えていないわけだ、と。

どうやらはるか彼方の他所の惑星に来てしまったらしい主人公たちがなんとか地球に戻ろうとする話で、全体的にナンセンスでユーモラスな雰囲気が漂うSFファンタジー映画なんですが、ハリウッド的なさくさく効率的に進んでいく作劇ではなくて、おっさんたちが砂漠をウロウロしながら互いにいがみ合ったりしてるのを延々映しているので(上映時間は135分)、途中で何度かウトウトしてしまった。

これが大ヒットしたソヴィエト連邦には他に娯楽映画がなかったんだろうか^_^; それともこういう映画に夢中になれるぐらいロシアの人々は知的水準が高いのか。

ちょうどゴルバチョフ書記長によってペレストロイカが推し進められていた時期で、だからこの映画のような風刺っぽい内容も検閲を通過できたのだろうし、風刺というよりも意味がよくわかんなかったり特に意味がないような、つまりこういう“ナンセンス”なものを楽しむことができること自体が当時は新鮮だったのでしょう。

だから、ロシアの歴史ともかかわりがあるんだな。

僕はこれまでにソ連とかロシアの映画をそんなに多く観ていないので(タルコフスキーソクーロフ、あとはエイゼンシュテインパラジャーノフの作品ぐらい)、そういう「お勉強」的な部分では興味深いし、単純にこの奇妙で白昼夢のような異世界での冒険譚に身を委ねて観ていればいいんですが、それでもこの作品が世界中でカルト人気があるというのが不思議でしょうがない。そこまで面白いかな?と。

映画に興味を持ち始めてジャンルや国、時代を問わずいろいろと意識的に観始めるようになった頃にこの映画に出会ったのも何かの縁だと思いますが。

監督のゲオルギー・ダネリヤさんはグルジア(現在の名称はジョージア)出身の有名な映画監督さんらしいけど、僕は存じ上げなかったし、この『キン・ザ・ザ』以外の彼の監督作品も観たことがなくて、今回同時に公開されていた同監督のアニメーション映画『クー!キン・ザ・ザ』(2013)も未鑑賞ですが、20年近く経ってからアニメ化されたぐらいだからやはり『キン・ザ・ザ』は人気があるんでしょうね。

途中で眠くなってしまったように、正直なところお話を順番に丁寧に追いながら感想を述べるのもちょっとめんどくさいので、ざっとだけ記しておきますが──映画のためにわざわざセットを組んだというよりは、あり合わせの古びて朽ちた施設や地下の坑道などを利用したようなセットは「マッドマックス」味があって懐かしい未来感溢れていて楽しかったし(マッチが貴重、という設定など、まるで「未来少年コナン」や「21エモン」みたいだし)、何よりもあの釣鐘型の乗り物「ペペラッツ」が空のむこうから飛んできて着陸してドアが開き二人組の男たちが出てくる映像が、昔観た時も印象に残ったんだけど、今回もどんなに目を凝らして見ていてもどうやって撮ってるのかわからなくて(まだCGなどない時代だし)大いに謎だった。特撮にしてはやたらとよく出来てて。もしかしたら本物なのかもしれない。

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マシコフがペペラッツを見て「資本主義国の乗り物だ」と言うのが、いかにも当時のソ連っぽいですな。

星によって支配階級の人種が変わったり、やたらと細かい決まり事があったり、かと思えばその身分制度も脆弱で少人数のちょっとした反乱で瓦解してしまったりと、ここで描かれているプリュク星の滑稽な習慣やシステムは当時のソ連社会を風刺しているようでもあるし、あまり深く作り込まず適当に描いているようでもあるし、ほんとにユルいんですよね。そこがウケてるんでしょうけど。

135分もなくて90分ぐらいだったら僕も集中して観られたかもしれない。お客さんたちはわりと来てたけど、皆さん満足されたのだろうか。僕のように昔観たことがあるかたがたもいらっしゃったようですが。

ウエフとビーを演じたエヴゲーニー・レオノフとユーリー・ヤコヴレフはロシアで有名な俳優さんたちだそうだけど、背が低くて小太りのレオノフはちょっとダニー・デヴィートっぽいし、ヤコヴレフは「モンティ・パイソン」のジョン・クリーズっぽくてそのデコボココンビぶりが愉快。マシコフ役のスタニスラフ・リュブシンは、その華のない顔と真面目そうでちょっと不遜な態度がソ連の役人を彷彿とさせる(って、ソ連の役人のことなんて知りませんがイメージで)。彼らの噛み合わない会話と変な格好した登場人物たちが織り成す奇人変人たちの饗宴に、いつしか日常感覚が失われていく。

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いかにもロシア人といった風貌のリュブシンに対してゲデヴァン役のレヴァン・ガブリアゼはエキゾティックな顔立ちをしているけど、彼も監督同様グルジア(現在の発音はジョージアアメリカのジョージア州とは無関係)出身で、現在は映画監督として活躍中だそうで。監督作品は日本でも公開されているのだとか。

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レオノフさんは1994年、ヤコヴレフさんは2013年、またダネリヤ監督は2019年に亡くなっている。

この映画が作られて30年以上経ちますが、エヴゲーニー・レオノフとユーリー・ヤコヴレフの「クー!」のポーズがこれほど多くの人々に記憶され、この作品がカルト映画として世界中で観続けられるなどと、はたして彼らは撮影当時に想像していたでしょうか。


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