「午前十時の映画祭10」でリュック・ベッソン監督、ジャン・レノ、ナタリー・ポートマン、ゲイリー・オールドマン、ダニー・アイエロほか出演の『レオン 完全版』を鑑賞。1994年作品。
僕は日本では1995年に公開された最初のインターナショナル版も、それから翌年劇場公開されたこの『完全版』もどちらも映画館で観ています。
以前書いた『完全版』の感想はこちら↓
これまでTVでは何度も観ているけど、映画館で観るのは23年ぶりだから楽しみにしていました。
BSなどでたまにやってるのは『ニュー・シネマ・パラダイス』(感想はこちら)と同様に短縮されたインターナショナル版なことが多いので、完全版を観ること自体が以前のDVDでの視聴から数年ぶり。
麻薬の売人たちを次々と始末していく殺し屋の訓練の模様やナタリー・ポートマン演じるマチルダが店で酒に酔って笑いが止まらなくなる場面、彼女がレオンをベッドに“誘う”シーンなどが追加されている。
麻薬の売人を爆殺する時の手榴弾による“リング・トリック”は、クライマックスの伏線になっている。
わずか20分ちょっとの追加だけど、短縮版とこの完全版とではレオンとマチルダの結びつきの印象がかなり違う。ベッソンが『完全版』を「こちらの方こそが本来意図していたヴァージョン」と言うのも納得。
連休中だったこともあるし、やはりこの映画のファンも多いからでしょうが、朝から劇場の会場は結構混んでました。90年代からずいぶん経って久しぶりに映画館で観た『レオン』はやっぱりとてもよかった。
よくいろんな映画について、昔は面白いと感じていたのに今観るとそれほどでもない、みたいなことを言ってる人がいるけど、僕は昔観て好きだった映画が色褪せて感じられることってほとんどなくて、時が経てば経つほど愛着が増す場合の方が多いんですよね。
この『レオン』もまたリアルタイムで過ごした初公開当時のことをいろいろと思い出して懐かしい気持ちになったし、若き日のナタリー・ポートマンの輝き、ジャン・レノとゲイリー・オールドマンの好演ぶりも素晴らしい。
無理に背伸びしてみせるところやあどけない素顔(でもばっちりメイクをすると途端に美女に変身)。当時12歳だったナタリー・ポートマンの特に顔の表情の演技は神がかっている。
ただし、現在のナタリー・ポートマンはこの映画を「自分の子どもに見せたいとは思わない」と語っている。…まぁ、特に『完全版』を観るとそう言いたくなる気持ちもわからなくはないけど。
ちょうど、13歳で『タクシードライバー』に出演したジョディ・フォスターがあの映画に複雑な感情を持っているように(彼女の場合は事件に巻き込まれているからなおさらだが)、ナタリー・ポートマンもまた大人の女性に成長して母となった今では、自分をスターにした映画であっても受け入れられないところがあるんでしょう。
リュック・ベッソンがガチでヤバい人だったことは映画評論家の町山智浩さんが解説で語られていて、なかなかショッキングでした。
ってゆーか、マジでキモいんですけど、ベッソン( ´・д・)
レオンのキャラクター造形にジャン・レノが果たした役割の大きさ(マチルダとの間に極力性的なものを感じさせないように演じた)についても語られていて、とても興味深かった。
町山さんの「ニューヨークの屋外に観葉植物を植えたら寒さで死ぬ」というツッコミには笑いましたがw
最初の公開時には映画雑誌か何かで、ジョン・ウェインやチャップリンなどの引用があまりにベタ過ぎる、とツッコミを入れてる批評を読んだ記憶があるんだけど、町山さんが動画で解説されているようにそれには意味がちゃんとあったんですね(『レオン』はジョン・ウェイン主演の『勇気ある追跡』やチャップリンの『キッド』のプロットを借用している)。
『勇気ある追跡』は僕は未鑑賞ですが(以前BSで観たかもしれないが、よく覚えていない)、その再映画化の『トゥルー・グリット』は観ました。確かに言われてみれば、少女が身内の仇を討つために腕の立つ男を雇おうとする、という部分は似ている。もちろん、このアイディアをただ真似するのではなくて、新しいストーリーの中にしっかりと組み込まれてますが。
ベッソンもそうだったように、ジャン・レノがハリウッドに進出するきっかけとなった映画だし、ゲイリー・オールドマンもこのあとからどんどんメジャー映画に出まくるようになる。
ゲイリー・オールドマンの『レオン』でのあの印象的な怪演がアドリブだらけ、というのにも笑う。彼が演じる悪徳麻薬取締官のスタンスフィールドが「ベートーヴェン好き」という設定すらもオールドマン自身の発案だったとは。さすがw
僕はスタンスフィールドがかじって恍惚の表情を浮かべるあのカプセルにはてっきり麻薬が入ってるんだと思っていたんだけど、町山さんの解説によるとあれは精神安定剤なのだそうで。じゃあ、あの人は普段からナチュラルハイなのかw
ところで、ベートーヴェンといえばちょっと前に観た『時計じかけのオレンジ』(感想はこちら)でとても効果的に使われていたし、あの映画の中で主演のマルコム・マクダウェルは「雨に唄えば」を唄いながら暴力を振るっていた。
映画『雨に唄えば』(感想はこちら)は『レオン』の劇中でレオンのお気に入りの映画だったし、去年「午前十時の映画祭」で僕も観ました。偶然ながらいろいろ繋がりますよね。面白いなぁ。
そういえば、ベッソンの『ニキータ』のハリウッド版リメイク『アサシン 暗・殺・者』も僕は映画館で公開当時観たけど、あの映画で“掃除屋”役だったハーヴェイ・カイテル演じるウルフ(ベッソンのオリジナル版ではジャン・レノ演じるヴィクトル)がそのまんまのキャラでタランティーノの『パルプ・フィクション』(感想はこちら)に登場する、というのは、町山さんの解説で思い出しました。そうだったそうだった。『パルプ・フィクション』も今年「午前十時~」で上映されてましたが。
ジョン・バダムが監督した『アサシン』はあれだけ単体で観れば別につまらなくはなかったんだけど、やはり『ニキータ』の方を先に観ちゃってるとどうしても印象が薄くて、主演のブリジット・フォンダの格好も乙女ちっくなカワイイ雰囲気だったし、映画もほとんど話題にならなかった。あまりにも「普通のアクション映画」になっちゃってたから。でも“掃除屋”の方が別の映画で生き残るとはね。
『ニキータ』は、やっぱりただのアクション映画ではなかったんだよね。『レオン』もそうだったように。
僕は今年観たエル・ファニング主演の『ガルヴェストン』(感想はこちら)にちょっと『レオン』的なものを感じてわりと期待しながら途中まで面白く観たんだけど、残念ながらラストの辺の処理がイマイチでとても惜しかったんですよね。『レオン』になり損ねちゃった映画だったなぁ、と。
以前、韓国でおそらく『レオン』を基にしたのであろう『アジョシ』(感想はこちら)が撮られてなかなかよかったですが、『アジョシ』には少女と男との間に恋愛的な感情が入り込むことはなかったし、やっぱり特殊な作品だったと思いますよ、『レオン』は。少なくともハリウッドのメジャーな映画で今後このような題材が扱われることはないだろう。
この映画は出演者たちによって救われている、という町山さんの解説は、ほんとにその通りだと思います。ただの「気持ち悪い映画」になるかもしれなかったところを俳優たちがそれぞれ役柄を膨らませて観客が好感を持てる映画に変えた。そういうことはたまにあるんですね。
僕は今後リュック・ベッソンの新作映画を劇場で観ることがあるかどうかわかりませんが(『ヴァレリアン』→感想はこちら はDVDで視聴)、『レオン』はこれからも映画館のスクリーンで何度でも観たい。それぐらい魅力がある作品です。
※レストランの店主トニー役のダニー・アイエロさんのご冥福をお祈りいたします。19.12.12
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