映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』

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リュック・ベッソン監督、デイン・デハーン、カーラ・デルヴィーニュ、クライヴ・オーウェンエリザベス・デビッキ (声の出演)、バーバラ・ウェバー・スカフ (声の出演)、サム・スプウェル、クリス・ウー、リアーナ、ジョン・グッドマン (声の出演)、イーサン・ホークハービー・ハンコックルトガー・ハウアーほか出演の『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』。2017年作品。日本公開2018年。

原作はピエール・クリスタンとジャン=クロード・メジエールによるバンド・デシネ(フランス版コミック)「ヴァレリアンとローレリーヌ」。

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西暦2740年。連邦捜査官のヴァレリアン(デイン・デハーン)とローレリーヌ(カーラ・デルヴィーニュ)は、銀河中の星の多くの種族が集まる「千の惑星の都市」から惑星キリアンに向かい貴重な「ミュール変換機」を入手する任務についていたが、やがて30年前に消滅した惑星に関する重大な秘密を知ることになる。

ネタバレがありますのでご注意ください。

 

1997年の『フィフス・エレメント』に続いてリュック・ベッソンが送るバンド・デシネの世界。

フィフス・エレメント』 出演:ブルース・ウィリス ミラ・ジョヴォヴィッチ ゲイリー・オールドマン クリス・タッカー
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こういうタイプのSFアクション物は映画館の大きなスクリーンで観てこそ、というのはわかっているので劇場公開時に結構迷って、でもアメリカでは大コケしたという情報が伝わっていたし、すでに鑑賞済みの人たちの評価もビミョーなものが多くて、また他に優先的に観たい作品もあったので結局DVDまで待つことに。

…まぁ、実際に観てみたらDVDで正解だったな、と。

公開時には誰が言い出したんだか「シャブをキメたスター・ウォーズ」「これを見るとガーディアンズ・オブ・ギャラクシー小津映画に見えてくる」とかなかなかナイスな表現をされていたんで、どんだけぶっとんだ映画なんだろうと興味をそそられたし、中にはそのカラフルな映像と異世界アドヴェンチャーにハマった人もいるようだけど、DVD借りて最初に観た日に猛烈な眠気に襲われて途中で中断、後日あらためて最後まで視聴。

これはもしも映画館で観ていたらよく眠れただろうなぁ^_^;

いや、「つまらない」というほどつまらなくはないし、実は想像していたような「バカヘ(゚∀゚*)ノ映画」でもなくて、「ガーディアンズ~」が例に挙げられているように全篇非常に色鮮やかなVFXに彩られていてクリーチャーたちもいっぱい出てくるしアクションもてんこ盛りなので、この映画のことをお気に入りの人がいたって別に不思議ではないと思う。

下手したら、僕も『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(感想はこちら)よりは楽しめたかもしれない。

大変心地よかったんですよね。よく眠れそう、と言ったのはそういった理由からなんですが。DVDだから料金も安く済んでるし、だから本気でdisるつもりもありません。繰り返すけど、レンタル代と俺の時間を返してほしくなるほどつまらなくはなかった(過去にはそういう邦画もあった)。

観る前からだいたい予想してた通り、ほぼ2020年代の「フィフス・エレメント」といった感じで、20年経っても作風がまったくブレないリュック・ベッソンには呆れるのを通り越してむしろ尊敬の念すら抱きますが、ただ、僕が個人的に好きなのは『フィフス・エレメント』ではなくて『ニキータ』や『レオン』の頃のベッソンなので、キラキラなVFXにも特にときめくこともなく。

ei-gataro.hatenablog.jp

フランス映画史上最高の予算で撮られたそうだけど、そういうありがたみはあまり感じなかった。スケールはデカいんですけどね。かつての『フィフス・エレメント』がそうだったように。

ただ、なんていうんだろう、すでにどっかで観たことがあるようなイメージのコピーを寄せ集めた二番煎じ感が強くて。

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この映画の原作は「スター・ウォーズ」よりも以前に描かれたそうだから、真似ではなくてこっちの方がオリジナルだ、という言い分もあるかもしれないけど、それはちょうどディズニーが鳴り物入りで作ったにもかかわらず失敗作の烙印を押されて今では一般の人たちにはその存在自体を忘れられてる『ジョン・カーター』(感想はこちら)の時と似ていて、原作がどんなに昔に書かれていようが映画の方は最新のものなんだから、それは“「スター・ウォーズ」を超える”という高いハードルが課せられてしまうのはしかたがないところはある。

あとVFXの精度についても、ハリウッドの最新VFX技術で作られた大作映画は観慣れているから、逆にそれに比べてちょっとでも劣って見えてしまうとすぐ違和感を覚える。

この映画はフランスや中国など複数の国の共同製作による作品で(『フィフス・エレメント』と同様に台詞は英語だし、出演者の多くは英語圏の俳優)、そういう映画は今では珍しくはないけれど、なんていうか、出来上がった映像のクオリティが微妙に「最新」の技術からは遅れているように見える。

VFXを担当しているのはILMやWETAなどハリウッド映画でお馴染みの有名スタジオだから技術的に劣っているとかいうことではなくて、本当に最新の技術が使われているのかどうか、ちょっと疑問なんですよね(リアーナが演じたタコ型エイリアンの造形は、あれはよいのだろうか、あの出来で)。

これはたとえばやはり海外の有名なスタジオにVFXを依頼することが少なくない韓国映画にもいえることだけど、やっぱりどこか見劣りするんだよね、本場のハリウッドの大作映画よりも。

複数の会社がVFXを分担してるんだけど、僕の気のせいかもしれませんが、場面によってVFXのクオリティにバラつきがあるようにも感じられて。

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リュック・ベッソンジェームズ・キャメロンの『アバター』(2009)の成功によってこの映画の制作も可能になると確信したようなんだけど、では『ヴァレリアン』に『アバター』を超える映像的な驚きがあったかというと、それはどうだろう。だったらもっと話題になってもいいはずだけど。

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アバター』の原住民“ナヴィ”っぽいパール人たち

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どっかのジャバ・ザ・ハットっぽい悪の組織のボス

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冒頭の宇宙人たちは『フィフス~』のセルフ・オマージュっぽい

ei-gataro.hatenablog.jp

フィフス・エレメント』の頃から特にCGでの映像表現は格段に進歩しているし、『アバター』からももう10年近い歳月が経っている。

それでも僕はこの映画の映像に『アバター』と同等か、それを超えるほどの臨場感とか興奮を覚えることはなかった。

いや、まぁ、この映画だってIMAX3Dで観たら迫力あるかもしれませんが。

ハッキリ言って、CGなど存在しなかった時代に作られたヨーロッパ映画でこの『ヴァレリアン』よりもよっぽど迫力がある大作映画はあるから(デヴィッド・リーンの映画とか、サイレント時代のアベル・ガンスの『ナポレオン』など)、これを「フランス映画史上最高の予算で撮られた映画(2度目)」と豪語されても、素直に「スゲェ!」って感心できないのだ。

それは『フィフス・エレメント』の時にも感じたことなんだけど(あの映画も当時はフランス映画としての破格の予算が喧伝されていた)。

もっとも、僕は先ほどの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(感想はこちら)だって多くの人たちが大絶賛してるほど夢中にはならなかったので、自分の評価が他のかたがたの参考になるかどうか心許ないんですが。

で、こうやって散々文句みたいなことを言っときながら、個人的に『ジョン・カーター』が嫌いじゃないように、僕はこの映画が嫌いではないんです。

何かほんとにどーでもいい内容の、途中で眠ってしまってもあまり惜しくないような、そういうユルさを感じさせる。全然褒めてないけど^_^; 

ローレリーヌ役のカーラ・デルヴィーニュは本職はモデルで、変顔が面白過ぎることでも有名(笑)だけど、『スーサイド・スクワッド』(感想はこちら)では凄い目ヂカラの魔女役で踊ってましたね。『ヴァレリアン』の見どころはやはり彼女かなぁ。

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変顔に対する意気込みが尋常ではないカーラ姐さん

僕には彼女が、眼光の迫力がさらに増した土屋アンナに見えてしかたないんですが(お二人とも好きです)w

カーラ・デルヴィーニュのクルクル変わる表情やまるで『インクレディブル・ファミリー』(感想はこちら)の伸縮自在な“イラスティガール”みたいに異常に細長いその手足で走ったり跳んだりする姿をひたすら楽しむ、という、これはそういう映画なんだと思えばすべてが許せる気にもなるし、カーラを見るためにもう一度この映画を観直してもいい、とさえ思う。

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この映画のカーラ・デルヴィーニュを見ていると、実はこの人はかなり演技力があることがわかる。表情一つで観る者に異世界の存在を信じさせる説得力がある。

たとえば、実際の撮影現場にはいないはずのクリーチャーを手に乗せながらの演技も、彼女のかすかな反応、その微妙な表情の変化によって僕たちはCGで描かれた生き物があたかもそこにいるのが当然で、なんの不思議もないように錯覚する。

普段の大胆なヌード写真とか不敵な面構え、変顔などのインパクトのおかげでなんとなくエキセントリックで押しの強い女性、というイメージを抱きがちだし、実際そういう人なのかもしれないけれど、映画では彼女はとても繊細な演技をしている。

ヴァレリアンとのやりとりなども、ツンデレでユーモアもあり、戦っても強い、というヲタクの夢みたいなヒロインを、それこそアニメキャラみたいな体型の彼女が演じているので、これはあのヘンタイ宇宙人の皇帝じゃなくても彼女をドレスで着飾らせたくなるでしょう。

ってゆーか、あれはリュック・ベッソンの趣味なわけだけど。熊さんみたいなおじさんのくせに。

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ローレリーヌは劇中で何着か衣服を着替えるけど、そこでしっかりと彼女にああいうフリフリな服を着せるところがわかってるな、と思いますね(^o^) 

逆に、同じくフランス人の監督ロジェ・バディムジェーン・フォンダ主演で撮った『バーバレラ』みたいなエロティックな描写はローレリーヌには一切ない。

そこは主題歌も担当しているリアーナが受け持っている。彼女が見せるポールダンスとか曲芸並みに柔らかい身体が本人のものなのかボディダブルとの合成なのかわかりませんでしたが。

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ローレリーヌには「エロ」の要素がほとんどないので、少年のようなデイン・デハーン演じるヴァレリアンとやはりこの映画では少女のようなカーラ・デルヴィーニュ演じるローレリーヌが見た目はとても幼く感じられる。

ヴァレリアンは少佐でローレリーヌは軍曹、ふたりとも腕利きの捜査官という設定だし実際彼らは優秀なんだけど、まるで藤子・F・不二雄の「T・Pぼん(タイムパトロールぼん)」みたいなジュヴナイルっぽい雰囲気があるんですよね。

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ヴァレリアンはローレリーヌに最後にプロポーズするんだけど、彼らがまるで未成年みたいなので、どこかそれは「おままごと」というか、「ごっこ遊び」っぽさがある。

この映画は特にヴァレリアン役のデイン・デハーンがミスキャスト、というような意見もあるようだけど(原作は知らないので、映画についてだけ述べますが)、僕はヴァレリアンを敢えてああいう少年っぽいキャラクターにしたのは意図的なものだと思うんですよね。

彼はイケメンで自信過剰気味のチャラ男(ちょっと前髪クネ男っぽいし)という設定だけど、誰だってそれには違和感を持つでしょう。それこそそういう役柄は『ガーディアンズ~』のクリス・プラットとか、あるいはチャニング・テイタムみたいなマッチョなアニキの方がしっくりくる。

だけど、そうせずにこれまで『クロニクル』(感想はこちら)で『AKIRA』(感想はこちら)の“デコ助野郎”鉄雄みたいに超能力使って暴れ回ってた童貞や、『アメイジングスパイダーマン2』(感想はこちら)で大企業の創業者の御曹司役にもかかわらず、やっぱりイキり童貞っぽかったデイン・デハーン*1をわざわざここでキャスティングしているのは、これが全世界のヒョロいヲタクたちの夢を具現化した映画だからじゃないのか。

デイン・デハーンとカーラ・デルヴィーニュは恋人未満の大人の男女というよりもまるで学校のクラスメイトか兄妹みたいで、そのやりとりもほんとにたわいない。捜査官としては優秀だけど、こと恋愛に関しては彼らはずいぶんと子どもっぽい。最後は「愛」ですべて片づいちゃうし。

このまるで少年少女のような主人公ふたりが、探偵のように過去の惑星消滅と司令官の拉致の真相を解いていく。

また、SFアドヴェンチャーでありながら、故郷を破壊されたパール人たちを現実の世界で他国の起こした戦争に巻き込まれた「難民」を思わせるように描いていたり、やはり明らかに移民問題を連想させる多様な種族たちなど、おそらくベッソンは大真面目にこの映画を作ったんだろうことがうかがえる。

物語としては、主人公が異郷の救世主になる、というおめでたい「白人酋長物」だった『アバター』よりはよっぽどマシなのではないかとも思います。「千の惑星の救世主」という勇ましい邦題とは異なって、ヴァレリアンの望みはローレリーヌの心を射止めること。そのたわいなさこそがベッソンが求めるハッピーエンドなんでしょう。終わり方が『フィフス・エレメント』とほぼ同じだし^_^; アメリカ人のように映画の中ですぐに征服したり支配したりしないんだよね。

ただし、ストーリーはかなり適当で、先ほどのリアーナ演じる変幻自在の異星人バブルは主人公たちとともに敵と戦うのかと思ってたら、ひとしきりダンスを踊って(この辺も『フィフス~』のセルフ・パロディっぽい)ふたりを逃がしたら体よくお役目御免みたいに死んでしまうし、彼女を奴隷のように働かせていた客引きジョリー(イーサン・ホーク)も出番はワンシーンのみ。世界連邦大統領を演じたルトガー・ハウアーなんて、観終った時には出てたことすら忘れていた。*2

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敢えてのハリウッド俳優の無駄遣い


ハリウッドの有名俳優たちがちょこっとだけ顔出して、あとはもう二度と出てこない。

これを「豪華な出演陣」と捉えるか、それとも拘束時間が恐ろしく短い手っ取り早いバイトと見るか。

この辺は、「フランス映画史上最高の予算(3度目)」をかけたとはとても思えないほど安っぽい。

この映画の悪役であるフィリット司令官役のクライヴ・オーウェンさえも、出てくるのは中盤からだし、彼がパール人に捕らわれてしばらくは出番がない。 

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そして再び出てきたかと思うと、ほとんど活躍することもなく、最後はヴァレリアンによって逮捕される。

これまでアクション映画で主役から悪役までさまざまな作品に出てきたクライヴ・オーウェンの、この映画での華のなさはちょっとビックリするほど。ただのおっさんになってしまっている。

ジョン・グッドマンが声を演じる悪の組織のボス・サイラスは最後まで倒されないし、なんか続篇にまた登場させようという魂胆が見え見えだった。『ヴァレリアン』は大赤字だそうだから、残念ながら続篇の制作は難しいでしょうが。

この映画は、あの迷作『フラッシュ・ゴードン』 の香りがそこはかとなく、というかわりとプンプンするんですよね。アメリカの国旗の柄の服とか出てくる「なんでもあり感」なんかも。

ガーディアンズ~』にも似てるけど、ヴァレリアンやローレリーヌはマーヴェルヒーローたちほど超人ではなくて、どちらかといえばインディ・ジョーンズに近い。わりと簡単に敵に捕まっちゃうし、頻繁に危機にも陥る。でもそこがぎり生身のキャラっぽくもあっていいんですよね。

これは『フィフス・エレメント』がそうだったように、きっとリュック・ベッソンの「俺が観たかったスター・ウォーズ」なんだろう。

確かに映像はスター・ウォーズよりも色のヴァリエーションが多くて鮮やかだったし、クリーチャーたちへの愛情は『最後のジェダイ』よりも感じましたよ。

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フィフス・エレメント』のあの未来的な街の景観は、その後ジョージ・ルーカスによるスター・ウォーズのエピソード1~3に影響を与えているのかもしれないから、もしかしたらこの『ヴァレリアン』だってこれから撮られるSWのヴィジュアルになにがしかの影響を与えないとも限らない。

そうしたら、今はまだ「バカ映画」扱いされてるこの映画の評価も変わってくるかもしれませんね。 

 

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*1:実際のデイン・デハーンはモテモテですが。

*2:ルトガー・ハウアーさんのご冥福をお祈りいたします。19.7.19