テレンス・ヤング監督、ショーン・コネリー、ウルスラ・アンドレス、ジョセフ・ワイズマン、ジャック・ロード(フェリックス・ライター)、ジョン・キッツミラー(クウォレル)、アンソニー・ドーソン(デント教授)、ゼナ・マーシャル(ミス・ターロ)、ユーニス・ゲイソン(シルヴィア・トレンチ)、マルグリット・ルワース(フォトグラファーのアナベル・チャン)、ロイス・マクスウェル、バーナード・リーほか出演の『007/ドクター・ノオ』。1962年作品。日本公開1963年。
日本での初公開時のタイトルは『007は殺しの番号』。
ロケットを妨害する怪電波を調査していたイギリスの諜報員ストラングウェルズ(ティモシー・モクソン)が、ジャマイカで何者かに殺害された。捜査のため現地へ派遣された007/ジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)は、殺された諜報員が科学者ノオ博士(ジョセフ・ワイズマン)について調べていた事実を突き止め、ノオ博士が所有する島“クラブ・キー”へ向かう。(映画.comより転載)
「BOND60 007 10作品 4Kレストア版」第二弾。
11/17(金) から、
リビング・デイライツ
スカイフォール(劇場初公開時の感想はこちら)
ノー・タイム・トゥ・ダイ(劇場初公開時の感想はこちら)
サンダーボール作戦
ドクター・ノオ
以上の5本が上映中。
残念ながら、今のところスケジュール的にこの『ドクター・ノオ』1本しか観ることができないので、とりあえず感想をあげておきます。来週以降で他の作品を観る機会があればよいのですが、ちょっとどうなのかタイムテーブルが出るまでわからない。せっかくならショーン・コネリー主演の『サンダーボール作戦』は観たかったんだがなぁ。
さて、日本での初公開から60周年を迎えたシリーズ第1作目である本作品は、以前DVDで観ているはずなんですが、いつものごとくまったく内容を覚えていなくて、だからほぼ初鑑賞といった感じでした。映画館で観るのは無論これが初めて。
なんかプール型原子炉のシーンだけ覚えている。あとはドクター・ノオが義手で置物を握り潰す場面。
ドクター・ノオ役のジョセフ・ワイズマンは、中国系ドイツ人という設定からか、まぶたの部分に特殊メイクを施して目を小さく見せている。
現在なら問題視されるでしょうが、あの当時はああやって白人の俳優がツリ目や一重まぶたを模した特殊メイクでアジア人を演じることはあったし、ハリウッドでは結構最近までそういうことをやっていた。
劇中でボンドがドクター・ノオの部屋に飾ってあった絵画を見て怪訝な顔をする理由がわからなかったんですが、どうやらあの絵は1961年にロンドンのナショナル・ギャラリーから盗まれたゴヤの「ウェリントン公爵の肖像」なのだそうで、あいにく僕は観ていませんが実際にあの絵を盗んだケンプトン・バントンを描いた映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』も公開されてましたね。
この『ドクター・ノオ』で初お目見えしたジェームズ・ボンド、ショーン・コネリーは全篇男の色気に溢れてますが、実際には撮影現場では緊張し過ぎて初登場シーンの「ボンド、ジェームズ・ボンド」という台詞をトチって「ショーン・ボンド」と名乗ってしまって気分転換に監督に飲みに連れていかれたり、相手役のユーニス・ゲイソンは用意されたゴールドの衣裳とカジノの装飾の色がカブってしまったために急遽赤い衣裳を用意して撮影に臨んだ、というエピソードが面白いですよね。全然そんなふうには見えない。さすが皆さん、プロですね。
ユーニス・ゲイソンはショーン・コネリー主演の007映画での最初のボンドガールだけど、ボンドがジャマイカに発つ直前にベッドをともにしてからはまったく出てこなくなるので驚いた。
ゲイソンが演じたシルヴィア・トレンチは第2作目の『ロシアより愛をこめて』にも出てきていたので、やっぱり公開順に観たかったなぁ。存在を忘れてたよ^_^;
ボンドが到着したキングストンの空港で彼をカメラで撮影したり、その後もつきまとっていてクウォレル(ジョン・キッツミラー)に腕を捩じ上げられて最後は憎まれ口を叩きながら退散した女性アナベル(マルグリット・ルワース)も、以降は一切出てこない。美人さんだったから、出番が少ないのがほんとに残念。
彼女は1961年のミス・ジャマイカだったんだそうで、そういう「キレイどころ」をみつけてきては出演させていたんだな、このシリーズでは。
ドクター・ノオの部下で、ボンドを篭絡させてその隙にやはり仲間であるデント教授に彼を殺させようとするミス・ターロ(ゼナ・マーシャル)も、その魂胆をボンドに見破られて逮捕されておしまい。
最初の作品からボンドガールってこういう扱いだったのね。
いやまぁ、007映画では女性以外でも登場人物たちの扱いは似たようなものですが。
ドクター・ノオに命じられてボンドを毒蜘蛛で殺そうとするデント教授(そんなめんどくさくて不確実な方法じゃなくて、最初から銃で殺せばよかったのに)を演じているアンソニー・ドーソンは、『ロシアより愛をこめて』では首から下しか映らないスペクターの首領ブロフェルドを演じてました。『サンダーボール作戦』でもやはりブロフェルド役を務めたのだそうで。
「初代ボンドガール」として有名な“ハニー・ライダー”(ウルスラ・アンドレス)がなかなか出てこないので戸惑う。映画終わっちゃうよ~っと^_^;
彼女が出てきたのは、後半になって、ボンドがクウォレルととにもようやくクラブ・キーにたどり着いてから。
「マンゴーの木の下で」の歌を唄いながら水着姿で海から現われるのが、当時の観客にとっては衝撃的だったんでしょうか。
演じるウルスラ・アンドレスはスイス出身なので、台詞を別人に吹き替えられていたようですが(『ロシアより~』のボンドガール、ダニエラ・ビアンキも同様)。
貝を採りにきてアメリカで高く売ろうとしていた女性で、別にプロの捜査官とかではないので、ボンドにくっついてきて敵に捕まってるだけのアクセサリーみたいな役柄なんだけど。
ある時期まではボンドガールというのはそういう役目だったからねぇ。
MI6の上司“M”の秘書マネーペニー(ロイス・マクスウェル)が1作目からボンドとイチャつき合いながらも、けっして彼とは男女の関係にはならないキャラクターであることがわかる。
この二人、姉とヤンチャな弟みたいなんだよね。
Mもマネーペニーも、初登場にもかかわらずいちいち彼らについての細かい説明はなくて、これ以前からもボンドと一緒に仕事をしてきた仲であることが想像できるような描き方。スマートですね(^o^)
栄えある第1作目ではその後の作品みたいなガジェットの披露や派手なカーチェイスはなくて(デスモンド・リュウェリンが“Q”を演じたのも次作から)、アクションらしいアクションもほとんどなくわりと地味な展開が続くんだけど、それはわかってたし、なんか観ていてなごみました。
007映画のフォーマットはだいたいこの1作目で出来上がっている。
悪役のドクター・ノオが出てくるのが思ってたよりもはるかに遅くて、ほとんど終盤。
名前だけ台詞の中に出てきたり、手下のデント教授の前にも姿を現わさずに不気味な声だけで命令を下すところなんか、いかにも悪の親玉っぽくてよかったですが。
悪の組織「スペクター」についても、ドクター・ノオの口から説明される。その本格的な登場は2作目から。
ドクター・ノオは、ブルース・リーの『燃えよドラゴン』(感想はこちら)でそのキャラクターが拝借されていたり、ボンド同様にその後のさまざまな作品に影響を与えているように、最初は「殺せ」と命じていたのに気が変わったのか味方に引き入れようとして捕らえたボンドを生かしたままにしておいたものだから、案の定逃げられて原子炉の装置をいじられて、ラスボスなのに自分からボンドに直接闘いを挑んだ挙げ句、原子炉のプールに没して死ぬ。めっちゃあっけない最期。
僕がぼんやり観ていたせいなんでしょうが、アメリカのロケットの打ち上げを妨害しようとしていた施設になんで原子炉があったのかよくわからなかったんですが。
ドクター・ノオは中国系だし、そこで働いていた者たちもやはり中国系、もしくはアジア系だったのにはどんな意味が込められていたのだろう。
イアン・フレミングの原作は読んだことがないのでわかりませんが、第3作目の『ゴールドフィンガー』でも悪役ゴールドフィンガーの手下は中国系っぽい人たちだった。5作目の『007は二度死ぬ』は舞台が日本だったし。
火を吐くドラゴン装甲車とか、あれは付近の島民たちを怯えさせるため以外にどんな意味があったのかとか、そういうことは考えちゃいけないんだろうな。
たまたまキューバ危機の時期と映画の公開が重なったために時事ネタっぽい雰囲気が出たりもしたようだけど、作り手はあまり深く考えて映画を作ってるわけじゃないだろうことがうかがえる。
このシリーズ第1作目は日本ではそんなに人気が高くはなかったそうだけど、でも作品が後世に与えた影響は大きかったですよね。さまざまな漫画だとかアニメなんかが007/ジェームズ・ボンドのキャラクターや作品が持つ雰囲気などからアイディアのヒントをいただいた。そのまんまな真似っこ映画も作られたし、数多くのパロディにもなってる。
そういう意味でも、そしてその後、長大なシリーズに成長していくその第一弾として偉大な1本だったと思います。
関連記事
『007 ゴールドフィンガー』