映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『007 ゴールドフィンガー』


ガイ・ハミルトン監督、ショーン・コネリー主演の『007 ゴールドフィンガー』。1964年作品。日本公開1965年。

007シリーズ第3作目。

第37回アカデミー賞音響効果賞受賞。

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「今夜のゲストはこのかたで~す」
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英国諜報部MI6のスパイ、007ことジェームズ・ボンドショーン・コネリー)は、CIAのフェリックス・ライターから富豪オーリック・ゴールドフィンガーゲルト・フレーベ)の話を聞く。上司のM(バーナード・リー)からゴールドフィンガーの金の密輸について調査するよう命じられたボンドは彼に近づくが、ゴールドフィンガーは「グランド・スラム計画」なる大掛かりな犯罪をくわだてていた。


ダニエル・クレイグ主演の最新作『スカイフォール』が公開されて僕も観に行く予定ですが、その前に以前TBSラジオ「たまむすび」で映画評論家の町山智浩さんが「最新作『スカイフォール』には『ゴールドフィンガー』を観ていないと意味不明な箇所がある」といっていたのでDVD借りてきました。

初代ボンドのショーン・コネリーが主演したシリーズは何年か前にDVDでぜんぶ(番外編の『ネバーセイ・ネバーアゲイン』も)観たんだけど、もうどの作品がどういう話だったかゴッチャになっててよくおぼえていないのであらためて観てみようと。

いまさらネタバレもなにもないけど、一応おことわりを。


ひさしぶりに観てまず思い浮かんだのが「ゴルゴ13」、そして「ルパン三世」。

じっさいどちらの作品もこの007シリーズの影響を強くうけているわけだけど、登場するキャラクターたちのアダルトな雰囲気がじつによく似ている。

ブリーフ一丁になったときのゴルゴは、ショーン・コネリーの肉体をイメージしていたんだろうと思う。

あと『燃えよドラゴン』なんかも、出てくるキャラクターたちはまんま007の世界の住人だったりする(『ゴールドフィンガー』には敵の中国人の手下たちが大勢登場するし)。

俳優の顔つきとか女性のメイクや衣裳に髪型、舞台装置、乗り物、そして女性のお尻をおもいっきりガン見するボンド、ショーン・コネリーのニカッとした笑顔とあの声。

リアルタイムであの時代は知らないけど、僕が子どもの頃に感じた「おとなの世界」がそこにあった。

またヤラしいんだよな、ショーン・コネリーの笑顔が。

コネリーさんはあの当時からヅラ着用だったという話だが。


僕がこの映画で唯一おぼえてたのは全身に金粉を塗られた女性の死体がベッドに横たわっているシーンでしたが、ちなみにボンドがMに「皮膚呼吸ができなくて死んだ」みたいな説明をしてるけど、人間は肺で呼吸できてれば全身を塗りたくられたって死なないそうです(もしそんなんで死んじゃうならお笑い芸人とか速攻アウトでしょ)。

僕は小さい頃観ていたヒーロー物の影響からか、いまだに「世界征服」をたくらむ悪人が出てくるような幼稚な話が好きで、特に初期の007シリーズの敵スペクターのペルシャ猫を抱いたツルッパゲの悪の首領やら片手が義手の博士とか、そういう仮面ライダーの怪人ちっくな敵を見るとワクワクする。

この『ゴールドフィンガー』の敵は実業家だが、彼の手下のシルクハットの親分さん、じゃなくて山高帽をブーメランのように飛ばして攻撃してくるオッドジョブ(よろず屋)とよばれる東洋人なんかも、じつにバカバカしくていい。

このオッドジョブを演じるハロルド坂田はいつもちょっと微笑んでて、なんだか色黒の鶴瓶さんみたいで愛嬌がある。

いい年した大人がああいう荒唐無稽なことを余裕綽々とやってるの見るのはじつに愉快。

それと、もはやこのシリーズの恒例でもある「ユニークすぎる名前のキャラクター」が出てくるのもお楽しみのひとつ。

今回も悪役ゴールドフィンガーやオッドジョブ、そしてプッシー・ガロアなんてふざけた名前のボンドガールも出てくるし。

これらの要素はマイク・マイヤーズが「オースティン・パワーズ」シリーズでパロってたし、マシュー・ヴォーンが『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(感想はこちら)であの時代のボンド映画の雰囲気を再現していた。

冒頭に本筋とは直接関係ないエピソードがあるというスタイルも、のちに「インディ・ジョーンズ」シリーズで踏襲されている。

それぐらい魅力があるってことですよね。


で、内容の方はというと、前作『ロシアより愛をこめて』とともにシリーズの代表作とよばれる作品にしてはずいぶんとのどかな展開だなぁ、と思いながら観ていた。

ボンドは敵のゴールドフィンガーとのん気にゴルフする。鳥がピーチク鳴いてたりして、オッドジョブはズボンからこっそりゴルフボールを出して主人のズルを助けたりしてる。ボンドはいたずらしてゴールドフィンガーをからかう。

なんだこのユルいコメディは(;^_^A

ゴールドフィンガーの屋敷にあつまるアメリカじゅうのギャングたちが、『ゴッドファーザー』(感想はこちら)に出てくるような帽子とスーツの出で立ちだったりして、あの当時はまだああいうスタイルのギャングたちがいたんだろうか、なんて思った。

この映画が作られた1964年といえば、昭和39年だもんな。『ALWAYS 三丁目の夕日』の3作目(感想はこちら)の頃だ(『ゴールドフィンガー』は日本では65年に公開されたので、そこではじめて登場したボンドカーのアストンマーチンをこの時点で鈴木オートのドラ息子が知ってるわけがない、とどなたかが指摘していた)。

まぁ最近のスピーディなアクション映画に慣れちゃってると、あの時代のアクション物はどれもゆったりと見えてしまうんだろうけど。

あの当時はこれでもじゅうぶんスピーディだったのかもしれないけど、ただ思うのは、みんな単にすばやいストーリー展開を追ってただけではなくて、あのアダルトな雰囲気を楽しんでたんだろうなぁということ。

またこの映画の公開当時は007シリーズは観光映画でもあって、映画館で知らない国々をめぐるような楽しさもあったんでしょう。

誰もボンド映画をそんなに真剣には観てなかったのかもしれない。

映画館でちょっとエキゾティックな気分を味わう、そんな感覚だったのかな。


だってもう、物語を真面目に追ってると頭痛くなってきちゃうもの。

まず頭の上に鳥の模型をつけたボンドが港にあがってくるところから可笑しい。

こういう漫画っぽい作風だから帽子を武器にする敵なんかが出てきても許せるんで、おなじことをいまダニエル・クレイグがやったら映画がぶち壊しになる。


ピアース・ブロスナン版までQを演じつづけたデズモンド・リュウェリンが秘密兵器のかずかずを披露して、ボンドの愛車アストンマーチンも初登場。

助手席に座った敵がボタンひとつで車外に飛ばされる。


いつだったか、ボンド映画における女性キャラクターのあつかいについてジェンダー的な見地から書かれた文章を読んだ記憶があるんだけど、つまりボンド映画というのは「男のファンタジー」であって、女性たちはつねに男に都合のいいように描かれている、といったようなことだったと思う。

この映画でもボンドの前にあらわれた女性はすぐさま彼とイイ雰囲気になる。

この映画にはボンドガールが4人出てくるんだけど、そのうち1人は本筋がはじまる前の登場、そしてあと2人は前半であっさり死んじゃう。

なんかもう、とりあえず出しといたみたいなあつかい。

悪役の手伝いをしていた女性や彼女を殺されて復讐に燃えるその妹など、物語に深くかかわってきそうな登場人物なのにどちらもまるっきりストーリーにからまないまま、ボンドとちょっとやりとりがあっただけであっけなくお払い箱になる。

また、ゴールドフィンガーの手下プッシー・ガロア(それにしてもスゴい名前)は最初言い寄るボンドに「私は男には燃えないの」といって突き放すが、強引に抱きすくめられてジュードーで投げ合って寝技にもちこまれてあっちゃり寝返る(ツンデレですな)。


こういうのにみんなあこがれたんだろうなぁ。

ボンド映画での女性の描かれ方についてはこれまでにもいろんなところで指摘されてきたようだけど、たしかにプレイボーイのボンドには「抱いては捨てる」女性蔑視の気がおおいにある。

先日、ダニエル・クレイグ主演の『カジノ・ロワイヤル』をTVで観たけど、男性上位的な描き方は避けつつも(ボンドとヒロインの会話には現代的なエスプリが効いていた)女性に人気が高いダニエル・クレイグだけにその肉体美もあらわに、あいかわらずセックスアピールに余念のないジェームズ・ボンドであった。

ショーン・コネリーの頃からジェームズ・ボンドはどう変わり、あるいは変わってないのか最新作でたしかめたい。


で、『ゴールドフィンガー』だが、悪の大富豪ゴールドフィンガーアメリカのフォート・ノックスに保管されている大量の金塊を核兵器放射線で汚染させて、自分が保有する金の価値をあげようとしていた。


フィクションの世界ではこれまでいく度も使われてきた核兵器だが、当たり前だけど現実にはいままでに犯罪組織や個人によって核が使用されたことは一度もない。

にもかかわらず、この長きにわたってあいもかわらずアクション物なんかでは通常兵器並みのあつかいで使われつづけているのはじつに奇妙な現象だと思うが、現実に存在する脅威として便利なんでしょうなぁ。


ゴールドフィンガーは余裕カマしてボンドを捕らえてもすぐには殺さず、自分の計画をぜんぶベラベラとしゃべる。さすが悪役。

そのためプッシー嬢を介してそれらはすべて軍に筒抜けに。

「すべての妨害を考慮に入れて15年間かけて計画した」と豪語するわりにはあまりに詰めの甘い男である。

このフォート・ノックスのくだり、僕は飛行機が建物に飛び込んでいくシーンがあったと思ってたんだけどなかった。

どうやらそれは別の作品だったようで。

核爆発のカウントダウンの解除のしかたがわからず、迷いに迷ってついに配線を切ろうとしたボンドを押しとどめて味方が横にあったスイッチをオフにすると装置が止まる場面には笑った。

裸の銃を持つ男』か!(^▽^;)


なんだか昔を懐かしむ感覚で楽しめたけど、きびしい観方をすれば、ファンの人たちが褒めるほどの名作だとは思いませんでした。

さっき書いたように、キャラクターたちの描き方は書き割りみたいだし、クライマックスの軍隊とゴールドフィンガーの手下たちの戦いなんかも、なんというか、とにかくまぁユルい。

神経ガスを散布されて兵隊たちが次々と倒れるところはまるでギャグみたいだったし、まだ暴力描写に規制があった頃なのか、みんな銃で撃たれても血がまったく出ない。

そういうユルさをこそ楽しむべきなんだろうけど。

おおらかな時代だったんだな、と勝手に思うことにした。

でもその後の多くのアクション映画のネタ元であるということでは、偉大な作品なんでしょうね。


ショーン・コネリークリント・イーストウッドと同い年で現在82歳だが、「脇役の年寄りを演じるのは嫌だ」と2006年に俳優引退宣言をしている。

引き際も“銀幕のスター”らしいですな。

さて、『スカイフォール』には『ゴールドフィンガー』のどんなネタが出てくるのだろうか。


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