映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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「澪つくし」と「おちょやん」 その3

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3月になって、NHK朝の連続テレビ小説澪つくし」も佳境に入っていますね。放送は今月末か4月の頭頃まででしょうか。「おちょやん」の方は5月15日まで(本篇は14日まで)の放送で、物語も後半にさしかかっています。

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すでに放送済みのエピソードについてのネタバレがありますので、まだご覧になっていないかたはご注意ください。


まずは「澪つくし」から。

恋愛のトラブルから水橋(寺泉憲)と河原畑(石丸謙二郎)を同時に失い、一人生還した律子(桜田淳子)は、かつて、かをる(沢口靖子)の縁談がらみで律子に協力したために久兵衛津川雅彦)に追い出されたあと軍人になっていた元従業員の小浜(村田雄浩)と再会する。

小浜の求婚を一度はすげなく断わる律子だったが、その後再び東京で彼に会うと態度を一変させて、久兵衛の許しがないまま結婚する。

一方、外川では惣吉(川野太郎)が海で遭難して行方不明となる。惣吉の遺体があがらないまま葬儀が執り行われるが、惣吉の遭難をかをるのせいとする一部の漁師たちと入兆の者たちとの間に諍いが起こり、心労からかをるは身ごもっていた子どもを流産。かをるの身を案じた久兵衛とるい(加賀まりこ)によって、彼女は入兆に連れ戻される。

2年の歳月が経ち、久兵衛の説得もあってかをるは番頭の梅木(柴田恭兵)と再婚して入兆を継いでいくことにする。双子の男の子も生まれて新たな生活にも慣れてきた頃、東京で律子が死んだはずの惣吉を見かける。

彼は記憶を失い、アメリカの船に救助されてフィリピンに渡っていたが、やがて日本人であることが判明して帰還したのだった。

4年ぶりにかをると再会してかつてのように一緒に舟に乗り、彼女に言われるままに櫓を漕いだところ、惣吉の記憶は蘇る。

しかし、かをるとの間の一粒種の子は流産で亡くなり、また妻であったはずのかをるは別の男性と再婚していることを知った惣吉は、彼にも再婚を勧める周囲の声に耳を貸そうとはしない。

そんなある日、外川の漁師たちがかをるを無理やりさらって吉武の家へ連れていってしまう。

それは惣吉とかをるを再び一緒にさせたい、という思いからの行動だったが、惣吉やとね(草笛光子)、漁労長織本順吉)らのまったくあずかり知らぬことで、惣吉は寄り合いで不在だった。

とねの指示で入兆に丁重に帰されたかをるだったが、今度は入兆の広敷の若い衆たちが仕返しに惣吉の弟・善吉(安藤一夫)の婚礼の席に大挙して押しかけて大暴れして、怪我人まで出してしまう。

かをるは自ら吉武家に赴いて詫びを入れ、両家が顔を揃えて手打ちとなるが、かをると梅木の間には惣吉をめぐって埋めがたい溝ができてしまう。


──怒涛の展開の中、ところどころかなり無理くりな筋運びがあるんですが、まぁ、もともと「和製ロミオとジュリエット」を狙って作られたメロドラマなので、そこんとこは「そんなぁ~」とか言いながら楽しめばいいかと(^o^) 

でも、たとえばずっと前から律子に横恋慕していた小浜がこういう形で再登場するとは思わなかったし、彼に「軍人に向いている」と半ば嘲笑気味に勧めた言葉が律子自身に返ってくるような展開はやはり見事だと思うんですよね。

小浜は思い込んだら突っ走るような、「一途」を通り越した狂気をはらんだ男で、今や天皇を崇拝し、意に沿わぬ政治家たちを粛清して軍部による国作りを目指すまでになっていた。それはやがて日本を戦争に駆り立てていく者たちの姿そのものだった。

リベラルで軍部が国政に口を出すことを快く思わない律子は、よりによってそんな男と結婚して、小浜とかつてはお嬢様と従業員という関係だったのが、その立場が逆転する。

僕は以前の感想で、律子という登場人物は、やがてこの国から奪われていく自由の精神そのものなのではないか、というようなことを書いたんですが、まさしくそんな展開になってますね。 

それにしても、入兆にしろ外川にしろ、このドラマに出てくる「その他大勢の男たち」は揃いも揃ってクズばかりですね。これは最初から一貫して変わらない。

明石家さんま演じる弥太郎も大概な男だったけど、お気に入りだった女性・早苗(速川明子)の年季奉公が明けると彼女を追いかけていってそのまま退場しました。…早苗ちゃん、いい迷惑だよなぁ。

脚本のジェームス三木氏は弥太郎をコメディリリーフのつもりで登場させ続けたんだろうけど、TwitterのTLでは僕も含めて彼をウザがる呟きばかりで完全な嫌われキャラだった。

セクハラ三昧の弥太郎に限らず、ジェームス三木の「男たち」を見る目は限りなく甘かった。ただ、彼が描く男たちは惣吉のように理想化されていない分、皮肉にもそのクズっぷりが実にリアルだった。

主人公のかをるに関しては相変わらず優等生的で(梅木からもそのことを指摘される)、終盤に差し掛かりつつあってもなお父・久兵衛や母・るいたち周囲の意見に振り回されていて、正直動かぬ自分というものがあまり感じられないんですが、再婚相手で我が子の父親でもある梅木と生還した元夫・惣吉との間でこれからどのような決断をしていくのでしょうか。

そして、主題歌「恋のあらすじ」が再び唄われる日は来るのでしょうかw

今後も観逃せません♪


「おちょやん」の方はというと──

京都の撮影所で大部屋女優として頑張っていた千代(杉咲花)は一平(成田凌)と再会。彼は「天海一座」を解散して、芝居の台本の勉強のために撮影所にやってきていた。

ようやく映画女優の仕事が軌道に乗りかけてきたところで、千代は鶴亀株式会社の大山鶴蔵社長(4代目中村鴈治郎)から一平を座長とする大阪の劇団への配置転換を命じられる。

こうして大阪は道頓堀に戻った千代は岡安の人々とも再会して、かつての天海一座の面々や新たに加わった座員たち、そして以前、天海一座を抜けて姿を消していた千之助(星田英利)にも頼み込んで皆で「鶴亀家庭劇」の芝居作りを始めるが、一平の書く台本はイマイチ面白味に欠けていて、また個性の強い座員たちとの共同作業も難航。 

それでも座員一人ひとりのこれまでの人生を盛り込み、彼らの想いを込めた台本を仕上げて芝居は好評を得る。

そんな折、13年前に生き別れになったまま千代が捜し続け、生きる希望にもなっていた弟のヨシヲ(倉悠貴)が彼女の前に姿を現わす。 

今では凛々しい若者に成長したヨシヲと一緒に暮らすことを望む千代だったが、ヨシヲはカタギの人間ではなかった。 

「また一人になってしもた」と泣く千代を一平が抱きしめ、「一人やあれへん。俺と一緒になれへんか」と言う。 

大山社長から亡き父・天海天海(茂山宗彦)の名を受け継ぐよう命じられた一平だったが、かつて母を捨てた恨みから父を憎んできた一平は固辞する。

千代は今は京都に住む一平の母親に逢わせるために一平に同行する。 

しかし、一平の母・夕(ゆう)(板谷由夏)は一平の父に捨てられたのではなく、彼女自身の意思で夫と息子を捨てたのだった。

真実を知り、役者を辞めようとする一平を千代は抱きしめる。「一人やあれへん」と。 

一平の「2代目・天海天海」の襲名の場で、一平は高らかに千代との結婚の報告を行なう。その傍らでは千代がともに微笑んでいた。 

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ちょうど放送期間の半分を少し越えたところで第一幕終了、といった感じで、これまでは日本髪を結っていた千代も次週からは洋風の大人の髪になって、予告篇にはチャップリンの名前も(チャップリンが初来日したのは1932年)。


主人公・千代のモデルである浪花千栄子さんは映画にも出演されていて、ドラマの中でも京都の撮影所でのエピソードが描かれていますが、それ以上に彼女は演劇の世界の人なんですよね。

なので、ドラマでもそこに焦点を当てています。

このドラマではしばしば千代が早口でまくしたてる場面があるんですが(普段から千代は比較的早口)、関西出身ではない杉咲花さんにとって関西弁での早口って結構難易度が高いだろうに、でも浪花千栄子さんご本人の喋り方の特徴をとてもよく捉えていて巧いなぁって思います。音感が優れたかたなんでしょうね。 

ところで、「おちょやん」ってこれまで時代背景が物語にかかわってくることってほとんどなくて、それどころか同時代に世の中ではどんなことが起こっていたのかさえまったくと言っていいほど説明されることがありませんでした。

それは「昭和」という時代の初めから物語が開始した「澪つくし」で、しばしば社会の出来事がナレーションで述べられて、それらが微妙にストーリーや登場人物たちの言動に絡んでもいたのとは見事に対照的で、その点で僕は「おちょやん」に対して少々物足りなさを感じていたんですが、千代と一平が結婚したのは1929 (昭和4)年、世界大恐慌の年。

今後は「家庭劇」も時代とは無縁ではいられないでしょう。 

もしも、これからの戦争の時代における演劇人たちの葛藤や闘いを描くためにあえてこれまで物語の舞台を「家族」や「親子」という最小の単位に限定していたのだとしたら、そこまで計算したうえでの作劇ならば、恐るべきドラマですが。 

「家族」や「親子」がバラバラにされたり、映画や演劇などの表現活動から「表現の自由」が奪われていくのが戦争なのだから。

さてさて、これから「鶴亀家庭劇」はどうなっていくのでしょうか。 


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