映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

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「澪つくし」と「おちょやん」 その2

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以前記事を書いてから、年が明けて引き続き朝ドラの「澪つくし」と「おちょやん」を毎朝観ています。

ei-gataro.hatenablog.jp


アンコール放送の「澪つくし」は9月21日からの放送だから半年放送分の半分以上が過ぎたわけですが、「おちょやん」は11月30日が初日なので、まだ始まってからひと月半ほどなんですよね。

コロナ禍の影響を受けて前作「エール」の放送終了が延びて、その次の「おちょやん」は現時点ではまだ全放送話数が公表されていませんし終了日がいつになるのかもわからない状態ですが、もしもこれまで通りに3月末か4月の頭に終わってしまうのであれば残りはあとわずか2ヵ月ちょっとになってしまうんですよ。

この前始まったばかりだと思ってたらもう終わり?って感じで、それはあまりに悲しいので放送開始が遅れた分の2ヵ月はぜひ延ばしてほしいです。*1

さて、「澪つくし」からですが、主人公のかをるは無事漁師の網元・吉武家に嫁入りして親方である夫・惣吉(川野太郎)を支えてまわりとの関係も良好だったが、高神村村長である叔父の名取(内藤武敏)が税金の横領を疑われ、それがもとで漁師たちによる打ち壊しへと発展してしまう。

漁師たちを扇動したとして惣吉は捕らえられるが、やがて釈放され帰宅。一方、叔父は疑いが晴れないまま村長を辞職することになる。

かをるの父・久兵衛津川雅彦)が妾でかをるの実母・るい(加賀まりこ)を正式に後妻に迎えることとなり、婚礼も催されるが、叔父の名取が出席する手前、かをるは惣吉とともに出席を控えることに。

母がこれまでの住処を引き払って「入兆」を営む坂東家へ移り住む一方で、東京へ行っていたかをるの異母姉である律子(桜田淳子)は銚子に戻ってきて、男女関係のもつれから事件に巻き込まれてしまう。

…と、以上がこれまでのあらすじなんですが、もうなんというかヒロインのかをるを含めて父も姉も恋愛や結婚など男女がらみで右往左往という(笑)、血は争えないということか。

以前の感想でも述べたように、主人公のかをるは自分であちこち激しく動き回るようなキャラクターではないため、代わりに父・久兵衛や姉・律子(あとは夫の惣吉)たちが物語を推し進めていく役割を担っているんだけど、ここで気になるのは、やはりこの父と姉の立ち位置、それぞれの主張や価値観の対比。

まさに家父長制の下で、ことあるごとに自らが受け継いだ醤油屋の老舗「入兆」の280年の歴史を口にする久兵衛の旧弊な価値観に対して律子は反発し、それが政治活動家である水橋(寺泉憲)との恋愛や彼の思想に感化された末の社会への批判的な言動となっていたが、水橋が特別高等警察に捕まり拷問の末、仲間の名前を吐いたと知ると彼に幻滅して、かねてより言い寄ってきていた河原畑(石丸謙二郎)と東京で同棲し始める。

水橋もたいがい口だけ達者な男として冷ややかに描かれているんだけど(ちょっと「おしん」の浩太を思わせるんですが…)、律子の方も彼の逮捕後はとっとと政治から興味を失って、今では河原畑と一緒に芸術の世界に逃避している。

一貫した強い柱のようなもの、意志がないんですよね、律子には。

かをると違って思ったことをズバズバ口にしたりどんな相手にも物怖じしない気の強い性格は小気味よくもあって、「もうひとりのヒロイン」として僕は彼女に信頼感のようなものを覚えていたから、それこそここんとこフラフラと男に振り回されている彼女にガッカリしたのでした。

このへんの律子の扱いに関しては、「物言う女」に対する脚本のジェームス三木の昭和のオヤジ的な偏見に基づく仕打ちに思えてならないんですが。

明らかに作者は彼女よりも久兵衛の方に肩入れしてるのが伝わるから。

僕は今後の展開については知らないので、痴情のもつれで河原畑とともに崖の上から転落した彼女が今後無事生還するのか、それともこのままドラマから退場してしまうのかもわからないままこの文章を書いてますが、穿った見方をすれば、「律子」という登場人物は大正デモクラシーで盛り上がった日本の民主主義の機運、その理想がやがて潰えていく歴史そのものを象徴しているんではないか。

男女平等も貧富の差の是正も実現されないまま、日本はやがて戦争の時代に突入していく。

律子の甘さや弱さは、当時の日本という国がそもそも抱えていた甘さや弱さではないのか。

おしん」の浩太(渡瀬恒彦)がそうだったように、律子も、それから大学で彼女と知り合い恋人となった水橋だって本当の労働者ではなかったし貧しい家の出でもなかった。生活に困窮しているような、真に助けを必要としている人たちは政治的な運動をする余裕なんかなかったんだよね。

日本の労働運動にはそういう頭でっかちなところが常にあったし、それは60年代の学生運動とも重なる。脚本を書いたジェームス三木はそのへんも意識していたんじゃないだろうか。

かをるがニュートラルというか、一見政治だとか古い価値観への異議みたいなものを持ち合わせない女性として描かれているのは、古い世代の久兵衛とも、また新しくあろうとして挫折する律子とも違う視点からこのドラマを見つめる必要があったからなのかもしれない(かをるの属している吉武家が特権を有する網元制度そのものが前近代的な制度なのだが*2)。

──なんだかちょっと難しいこと考え過ぎて頭から煙が出そうなので…^_^;


お次は「おちょやん」。

Twitterでも呟いたんですが、このドラマは主演の杉咲花さんが劇中でたびたび着替えるその衣裳を大いに楽しむ作品ではないか、と(^o^)


もちろんそれだけじゃないですが、これほどヒロインがしょっちゅう衣裳替えする朝ドラ番組ってそんなにないんじゃないでしょうか。すごく力が入ってるな、と思って。

主人公の千代南河内の貧しい家から口減らしのために大阪の芝居茶屋「岡安」に奉公に出されるが、父・テルヲの借金の形で身売りさせられそうになって、岡安の人々の協力もありなんとか逃げ延びて京都へ向かう。そこでカフェー(現在のキャバレー)「キネマ」の女給として働き始めるが、やがて女性だけの劇団「山村千鳥一座」で座長の山村千鳥の付き人のような仕事をするうちに、子ども向けのお芝居「正チャンの冒険」で団員の代わりに主役を務めてこれが好評を得て、千鳥の紹介で鶴亀撮影所に所属する映画女優の道を歩み始める。


ひと月半でこれだけの進展が。

1週間ごとに1エピソードの形をしっかり保っていて、だからもうお話がさくさく進んでいく。

それが良い意味で最近の朝ドラっぽくもあって、まさしく「連続テレビ小説」になっているんですね。まったく澱みなく、まるでゲームかなんかのように千代は一つずつレヴェルアップしていく。

たとえば「スカーレット」のように出演者の細かい顔の表情まで観察しながらじっくりとその芝居を見る、というのとはお話のテンポは違うのだけれど、でも俳優さんたちの演技は丁寧でけっして出来損ないの「コントもどき」にはなっていない。ちゃんと泣かせたり笑わせたり「芝居」を見せるべきところはしっかりと見せるんですね。そのうえで、展開のスピードは緩めない。

ひょんなことから「正チャンの冒険」で主人公を演じることになった千代だったが、なんとか一夜漬けのような特訓を経て本番を迎えるものの、大切な小道具である「短剣」を置き忘れたまま舞台に出てしまう。

クライマックスの一番の見せ場で短剣がないことに気づいた千代は、本当は短剣で敵を脅すところを、相手に同情して「仲良くなろう」ととっさのアドリブで台詞を変えてなんとか切り抜ける。

この場面が史実に基づくのか、それともドラマ用のフィクションなのかは知らないですが、僕にはこれがこのドラマの作り手からの視聴者や子どもたちに向けてのメッセージのように思えたんですね。

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つらいこともあるけれど、大丈夫。だんない。

だんない、とは「大丈夫」「大事無い」という意味なんだそうですが、これは千代の父親のテルヲ(トータス松本)が彼女に言っていた言葉でもあるんですね。

テルヲは、直接暴力を振るうことはないんだけど、自分の娘にやってる仕打ちは朝ドラ史上でもなかなか上位にくるほどの「人でなし」ぶりで、だから普通に考えればとんでもない父親なわけですが、その酷い父がかけた言葉を娘の千代がこうやって大事な場面で反復するということは、おそらく彼が単なる憎まれ役で終わることはないだろうことを示唆してもいる。

千代が演じる正チャンが敵を倒すのではなくて「仲直り」して仲間になったように、このドラマ自体が一方的に悪役や憎まれ役を作らない、というポリシーを守ろうとしている。

最初はおっかなくて暴力的にさえ思えた千鳥(若村麻由美)が、千代との別れのシーンでは笑顔を見せたように、これからも千代はいろんな人と出会っては、その人の素晴らしさや彼らが心の中に押し込めていた哀しみに気づいていくのでしょう。

そういう物語が今こそ必要なんだ、とこのドラマの作り手は言ってるんじゃないかな。

そう思ったら、赤い正チャン帽をかぶった千代の笑顔と「だんない」の言葉にふと涙がこぼれそうになったのです。あぁ、素敵なドラマだなぁ、って思った。

杉咲花さん主演の「正チャンの冒険」をフルで観たくなりました(^o^)

来週には「天海一座」の座長になった一平(成田凌)との再会もありそうだし、千代はついに映画の世界でも主演できるかな?楽しみです。


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*1:その後、放送は5月15日(土)までと決まった模様。

*2:その問題点については、惣吉の弟・善吉(安藤一夫)と“網子”の家の娘アミ(高師美雪)との恋路のくだりで触れられていた。