映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

もう一つのブログとともに主に映画の感想を書いています。

『ローマの休日』

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「午前十時の映画祭10」でウィリアム・ワイラー監督、オードリー・ヘプバーングレゴリー・ペックエディ・アルバート、パオロ・カルリーニ、ハートリー・パワー、ハーコート・ウィリアムズほか出演の『ローマの休日』を鑑賞。1953年(日本公開1954年)作品。

第26回アカデミー賞主演女優賞、衣裳デザイン賞、原案賞受賞。

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ヨーロッパのとある国の王女アン(オードリー・ヘプバーン)は、各国を訪問してローマに滞在していたが、ある夜、部屋を抜け出してローマの街を出歩く。翌日に王女の会見を取材することになっていた新聞記者のジョー(グレゴリー・ペック)はベンチで居眠りしていたアンと鉢合わせするが、彼女が王女だとは気づかずに仕方なく自分のアパートに泊める。

ネタバレがありますよ。 

 

オードリー・ヘプバーンの代表作で彼女がスターになるきっかけとなった作品ですが、恥ずかしながら僕は観るのは今回が初めて(昔、BSかどこかで観たことがあるかもしれないけど覚えていない)。

オードリー・ヘプバーンの特徴的な顔立ちは誰も代わりが務まらない個性があって好きなんですが、彼女が出た映画をちゃんと観たことがほとんどないんですよね。

オードリーの遺作となったスピルバーグの『オールウェイズ』(1989)の存在は劇場公開時に知っていたけど、それも映画館では観ていない。

で、「午前十時の映画祭」も今年で最後だし、有名な作品をクリアな映像で観るせっかくの機会だから劇場へ。

…いやぁ、オードリーの魅力爆発でしたね。本当にキュートでした。「銀幕の妖精」とはよく言ったもので。

まるで本物のお姫様のようなオードリーにうっとりして、その彼女が内緒でローマの街に繰り出すのをハラハラしながら見守ることに。

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ウィリアム・ワイラー監督と。


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撮影風景


オードリー・ヘプバーンって、映画の中ではいつもお相手がおじさま、という勝手なイメージがあるんだけど、この『ローマの休日』での共演のグレゴリー・ペックはそんなおじさんではないし、誠実そうな彼がオードリー演じる無垢で天真爛漫なアン王女を優しくエスコートするところに嫌味がないのがいい。

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とはいえ、ペック演じる新聞記者のジョーは堅物ではなくて遅刻を咎める編集長にも飄々とした態度で受け答えするなかなかのお調子者で、ひょんなことから自分が取材するはずだったアン王女とそうとは知らずに出会って、翌日彼のベッドで眠っている娘の顔が新聞に載っていた王女の顔写真とそっくりなことに驚く。彼女は正真正銘、姿を消した王女だった。

王女のスクープを独占できる!と内心小躍りするジョーは、友人のカメラマンのアーヴィング(エディ・アルバート)を呼んで密かにアンのお忍びローマ散策の写真を撮らせようとする。

でも、聡明な王女の魅力と疑いを知らない彼女の純真さにいつしか…という、おとぎ話。

この映画がきっかけでみんな真似するようになったというスペイン広場の階段で舐めるジェラート(現在はあの階段に座るのは禁止されているのだそうな)、トレヴィの泉グレゴリー・ペックのアドリブをオードリーには内緒で行なったというジョーの腕が抜けなくなってしまう「真実の口」など、大いに観光気分が味わえるけれど、一方で「祈りの壁」の場面ではアンは神妙な表情をしていて、第二次世界大戦終了からわずか8年という時代をかすかに意識させる。

ニュー・シネマ・パラダイス』(感想はこちら)の舞台になったのも、この時代でした。あの映画で主人公のサルヴァトーレは兵役でローマに行っていた。こうして映画の記憶が繋がる。

「祈りの壁」の場面でアンは、それまで逃げていた自分の役割、「責任」を自覚する。あれはとても重要なシーンなんですね。

このことについては映画評論家の町山智浩さんが解説されています。

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この映画は、赤狩り時代の「ハリウッド・テン」の1人、ダルトン・トランボが脚本を執筆したのだということを『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』で語られていたので(『オールウェイズ』は彼が脚本を書いた43年の『ジョーという名の男』のリメイク)、その点でも興味があった。

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この『ローマの休日』は先日感想を投稿した原爆の悲惨さを描いて反核を訴えた日本映画『ひろしま』(感想はこちら)と同じ年に作られた映画で、二本の映画のあまりの違いに眩暈がしそうになりますが、実はとても同時代的なものを描いてもいるんですよね。

共産党員だったトランボは「赤狩り」で公聴会に呼び出されて収監されたり映画業界から干されたが、アメリカ軍によって占領されていた戦後まもなくの日本でも「共産主義的」とされた活動は「反米思想」として取り締まられた。

この映画の中のローマは華やかで明るいけれど、当時は冷戦下でまだ先の戦争も記憶に新しかったし、アン王女の仕事も戦後の世界の平和にかかわることだったんですね。 

オードリー・ヘプバーンは自身、ナチスの脅威に晒され続けた戦時中の記憶が生々しいため、戦争を描いた映画のオファーを断わり続けたという。あの笑顔の奥には思い出したくないものがたくさん隠されていたんですね。

こういうことを知ったうえであらためて映画を観ると、そこに込められたものをより深く感じ取ることができる。

アンはローマの街で入った美容室で髪を切るんだけど、思ってた以上に短くバッサリといってたのでちょっと驚きました。

でも、あぁ、あのヘアスタイル、そしてアンのあの長めのスカート姿など、当時の記録映像などを見ると日本の女性たちもああいう髪やファッションしてる人大勢いたよなぁ。そっか、みんなこの映画のオードリー・ヘプバーンの真似をしていたんだな、と実感。

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ジェラートを舐め終わったあと、王女はコーンをポイ捨て。


オードリーがニッコリ笑って見せた口の中の歯並びがそんなによくなかったことに親近感が湧いたんだけど、ご本人はそれを気にしていたのをあとで知ったのでした。
ジョーに呼ばれて彼に協力することになるアーヴィングは劇中で何度もジョーに転ばされたりヒドい目に遭いながら笑わせてくれるんだけど、演じるエディ・アルバートはなんだか現在の最新の映画に登場しても違和感がないような顔つき、外見の人で、あまり時代を感じさせないのが面白い。彼が使うライター型カメラ“エコー8”が日本製なのは有名な話。

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アーヴィングが最後に会見の場でアン王女に渡す写真は、新聞のスクープ記事ではなく、彼女のローマでの想い出の記念写真になる(僕はちょっとフランス映画『プロヴァンス物語 マルセルの夏』→感想はこちら のラストの写真のエピソードを思い出したんですが)。 

オードリー・ヘプバーンが最後に映画に出演してから30年、亡くなって26年経ちますが、彼女はまだ「過去の人」になっていない。多分、この先もずっとならないでしょう。

だって、今でもこんな鮮明な映像で彼女の姿を観られるのだから。そして今もなお彼女に惹かれ、憧れる人々を生み出しているのだから。 

それまでグラマーな体型の女性が主流だった映画界やファッション界を、オードリー・ヘプバーンは変えてしまった。 その影響力は計り知れない。

そして、『ローマの休日』で見せたキュートで芯の強さを感じさせる演技とその笑顔は永遠にスクリーンの中に刻まれることになった。

僕たちはこれからも、映画館で彼女と逢えるのだ。 

 

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