映★画太郎の MOVIE CRADLE 2

※2019年の“はてなダイアリー”終了に伴い、2018年9月にブログを移行しました。

『海月姫』


川村泰祐監督、能年玲奈菅田将暉長谷川博己池脇千鶴太田莉菜篠原ともえ馬場園梓平泉成片瀬那奈速水もこみち出演の『海月姫』。2014年作品。

原作は東村アキコによる同名漫画。

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女性ばかりが住むアパート「天水館(あまみずかん)」の住人・月海(能年玲奈)は、クラゲをこよなく愛するヲタク女子。同じく男っ気のない住人たちと「尼~ず」を名乗っている。そんな彼女と知り合った政治家の息子で女装男子の蔵之介(菅田将暉)は、イケてない月海にお洒落をさせたところ兄で政治秘書の修(長谷川博己)が一目惚れ、結果的に3人で一緒に水族館でクラゲを見ることに。ところが美人に変身した月海と兄が抱き合っている姿を見て、蔵之介の中で嫉妬が芽生えて…。


原作は読んでいません。漫画を読む習慣自体すでになくなって久しい。

現在NHKで再放送中の朝の連続テレビ小説あまちゃん」でお馴染み能年玲奈の主演映画、また現在劇場公開中の園子温監督の最新作『ラブ&ピース』(感想はこちら)に主演している長谷川博己が出ていることにちなんで借りてみました。


まずお断わりを。

この映画、ならびに原作漫画、そして主演の能年玲奈のファンの人はお読みにならない方がよろしいかと。映画のことはまったく褒めていません

いいですか?お断わりしましたよ?しましたからね!

…もうこのワンパターンな言い回し飽きてきたし、別に僕は映画の悪口言うためにブログに感想書いているわけではないんですが、とにかくしょっぱなからサムい展開が続くんで観続けるのしんどくて。

できれば僕だってこの映画を楽しみたかったし当然そのつもりで借りてきたので、最初から批判めいたことを書く気なんてなかった。でもお世辞にも「面白かった」などとは言えないのだ。だから正直に書く。

男子禁制の女人ばかりが住むアパートに男が闖入して騒ぎになる、みたいな話なんだけど、もうこのヲタク女子たちがリアリティがゼロなものだから、男とか“お洒落女子”におののく描写が全部ウソ臭いのだ。

漫画が原作だしすでに数年前にアニメ化もされているようで、2次元の世界だったらこれで通用するのかもしれないし、それだけだったら僕にはなんのかかわりもないのでいちいちケチつけたりしませんが、実写映画として観ちゃったんだからしょうがない。

女装男子とか、見るに堪えなかった。

女装が趣味の男子を描いているからイヤなんじゃなくて、こいつのキャラがイラついて堪らなくて。


まずさぁ、自分が同性愛者ではないことを断わるのに「俺、“ノーマル”だから」って言い方はおかしいでしょう。現実にもそういう表現する奴いるけどさ。じゃあ、同性愛だったらアブノーマル(異常)なのかよ。*1

こういうデリカシーのない台詞をなんの気なしに使ってる時点で、俺はちょっとこれムリだなぁ、と。何かといえば「処女?」とか「童貞?」とかしつけぇし。

コイツに女装癖がある物語上の必然性も感じられないし。

「女装」という行為をことさら奇異なものとして描いたりして、映画全体を通して何かひどく旧態然とした価値観に基づく女や男についてのたわ言を聞かされてる感じで非常に不快だった。

この男は腐った女子たちの中に紛れ込んで彼女たちを引っ掻き回す役割なんだけど、ヒロインへのつきまとい方があまりに不自然でウザ過ぎるんで、僕は観ていて「腐女子たちはいちいち“石化”してないで、とっととコイツを撲殺しろよ」と思った。

しかもコイツんちが絵に描いたような大金持ちの豪邸で、金に困っていないという設定。女装の王子様というわけだ。

で、ヒロインとの間で兄も交えた三角関係みたいな感じになって、という展開。

…あぁ、なんだろう、この疲労感。

この映画がどこまで原作に忠実なのか知りませんが…面白いですか?これ。

平泉成が「あまちゃん」の時とほとんど同じような政治家のおっさんの役を演じてるけど、それがどうした。

あと、実写なのに「…ったく(まったく、の意)」という台詞がある映画はすべてク○映画です。世の中にほんとに「…ったく」て言う奴どんだけいる?マンガやアニメに多いこの呟き、死ぬほど嫌いです。ったく。

もうこれは今回、海女から「尼〜ず」の一員になった能年玲奈を愛でる映画ですね。それ以外の見方は俺にはできない。

ありえない設定、デフォルメされまくった登場人物たちの演技。

どれもが僕が苦手な部類のものだった。

いや、作品によっては別にそういうの大丈夫なんですけどね。

たとえば、中島哲也監督の『下妻物語』(感想はこちら)なんかも完璧に漫画チックな誇張された世界観だけど、僕は好きだもの、あの映画。

いっそのこと、この『海月姫』も中島監督が撮ればよかったのに。

ちなみに能年ファンの人たちはご存知でしょうが、中島哲也監督の『告白』(感想はこちら)ではヒロイン役の橋本愛のクラスメイト役で彼女も出てたりする。

3年後の「あまちゃん」では立場がガラッと変わったわけですな。面白いなぁ、芸能界って。

もちろん、『告白』の公開当時は「あまちゃん」はまだ作られていなかったから、僕はアイドル出身の能年玲奈という10代の女優さんの存在をまったく知らなかったのだけれど。

能年玲奈って、「あまちゃん」の大ヒットを受けてほんとなら今頃映画やTVドラマに出まくっているはずなのに、事務所とのゴタゴタもあって貴重な期間を棒に振っちゃってるのがとても気の毒です。

もっともっといい映画に出られたはずなのに。

マンガの映画化もいいですが*2、ストーリーや役者の演技が極端に単純化された深夜のつまんないTVドラマみたいなのじゃなくて、彼女にはもっとちゃんとした演技のし甲斐がある作品を用意してあげてほしい。

能年さんの見開くとまるでビー玉みたいな瞳や必死に喋ると小鳥みたいに尖がる口元は見ていて面白いけど、それだけじゃなくてシリアスで現実味のある芝居だってできるのだから。

見世物みたいにかぶり物させて愛でるだけじゃなくて、女優として育ててあげなければ。

なんで誰も手を差し伸べないんだろう。

毎朝「あまちゃん」を観ながら、これだけカリスマ性を感じさせる若手女優の現在の境遇にいつもひどく理不尽なものを感じています。

「私は仕事がしたいです」「演技がしたい」という彼女の願いが良い方に叶えばいいですね。


しかし、これはあれだな。原作まったく読んだことないくせに断言するけど、女装男や月海に恋をするその童貞兄貴というのは、原作者の理想の男子像なんだろうね、きっと。おまけに運転手もモッコリもこみちだし。

イケてない女子が変身して可愛くなってイケメンたちと恋愛ごっこしたい、という女性たちの願望を叶えてくれる映画。

女装男の蔵之介が月海や天水館の尼~ずたちに対してやたらと強引なのも、こういうふうにイケメン男子に迫られたい、というひと頃の“壁ドン”とか“肩ズン”とか“床ダン”とか“ケツ筋”とかに(後半ウソ)憧れてた人たち向けの妄想、ってことだろう。そんだけの話。

だから誰がどう見たって野郎以外の何ものでもない蔵之介が劇中では女の子としてまかり通っちゃったり、メイクして綺麗な服を着た月海にはあんなにウットリしていた修が、普段の彼女の格好を見て同一人物だと気づかないとか、ありえないことを「お約束」として臆面もなくやるのね。「お約束」を楽しめ、と。

手と手が触れ合ってドキドキ、とか。

本当は女なのに男として育てられた、と偽るとか(なんか高橋留美子の漫画みたいだな)。何が「蔵子」だ。

片瀬那奈演じる「あーっはっは」という高笑い系のやり手女性の役作りなんかも、いつの時代のTVドラマだよ、と。

よーするに、俺みたいに「リアリティがない」とかぶつくさ文句垂れるような輩は最初からお呼びではないのだ。借りるDVD間違えてしまった。

いやまぁ、能年玲奈がクラゲ好きの眼鏡女子を演じているとか、顔のほとんどがアフロに埋もれてる池脇千鶴や素顔を出してるにもかかわらず言われなきゃ誰なのかわからないババシャツ姿のシノラー、実写版「パトレイバー」でクールな女性隊員役を演じている太田莉菜が貞子ばりに髪で目が隠れてジャージ着た動きがキモい女子*3を演じてたりするのは単純に面白いし、だからそういう「コント」だと思って観ましたけれども。

一人ひとりのキャラクターはいいと思うんですよ。彼女たちが映画の中で面白いことを繰り広げてくれるならリアリティがどーのこーのなんて関係ないし、そういう荒唐無稽を楽しむ作品だって当然あるわけで。


だけど、ほとんど笑えないんだよね。何がキツいって、それが一番キツいんですが。

なんかなぁ、今年はコメディ氷河期だな個人的に。「コメディ」の体裁で撮られた映画、全部沈没してる。*4

それにしても、長谷川博己はTVドラマ「デート〜恋とはどんなものかしら〜」といい、なんで童貞の役ばっかやってるんだろ。童貞にはまったく見えませんが。


可愛かったですよ、能年さんもクラゲも。

あと、女装した菅田将暉よりも長谷川博己の方がよっぽど可愛かったッス。ウホッ。

だけどなぁ、もうちょっと、ほんのもうちょっとだけでも現実寄りの作りにしてくれたら、ああいう「ユニークな人たち」の生態を楽しめたり、その不器用な生き方に共感を覚えられたかもしれないのに。

キャラもお話もあまりにウソ臭いとやっぱりただの茶番に見えてしまうのだ。

たとえばヒロインの月海は「今度生まれ変わるなら、こんな苦しい思いをする人間はイヤ。ただ海の中をユラユラたゆたうクラゲになりたい」と心の中で呟くが、そのツラい原因ってのが会ったばかりの修が女性と一緒に傘さして歩いてたから、というだけのもの。

なんでそれで彼女がツラい思いをしなきゃならないのか。おかしいでしょう。

なんかもっといろいろあった末に傷ついたとかいうのならともかく、たった一度デートしただけなのに。

映画観てても、この子が一体何に一所懸命になって何に苦しんでるのかまったくわからないのだ。クラゲ見て喜んでるだけじゃん。

それにクラゲだってお気楽に海や水槽の中を漂ってるんじゃなくて、必死に生きてるわけでしょ?クラゲなめんな、と。

ただ逃避の手段であったクラゲが、最後にヒロインの甘さを打ち砕いて現実に向かって自分に自信が持てなかった彼女の背中を押してくれる、そういう結末に至ってこそこれは「物語」として成立するはずなんだけど、そして確かにクラゲは彼女が躍進する決定的なきっかけになってくれるのだが、でも、結局彼女を救ってくれるのは一人の「男」なんだよね。

相手とほとんど接点がないのに勝手に一目惚れして勝手に落ち込んで泣いたり、女装男に励まされてあっさり立ち直るヒロインとか、演じているのが能年玲奈で相手がイケメンたちだから観客は話の整合性や現実味とかそんなことどーでもよくて、ただ綺麗な男女がくっついたり離れたり、泣いたり笑ったりおどけたりするのを眺めていたいだけなんだな、きっと。

でなきゃ、よくこんな空疎な代物に堪えられると思う。

太田莉菜が演じるキモ女子“まやや”が実はスパモ系の美人だったとか、女装男の過去とか、傷ついた人たちが劣等感や痛みを個性として活かしていく様子なんかは興味を惹かれる部分もあったんだけど、やはり全体的に冗長で集中して観ていられない。この内容で126分は長過ぎる。

ってゆーかさぁ、女装男、でしゃばり過ぎでしょう。観てるうちに誰がヒロインなのかもわかんなくなってくる。

なんでいつもコイツが音頭をとって何もかも仕切ってるの?

もうコイツのがなり声聴いてるだけでムカついて仕方なかった。女装しててもエレガントさがない。大声でがなってるだけ。

後半、どんどん「イイ話」にもっていこうとしてるんだけど、その押しつけがましさにさらにイライラが募ってくる。

天水館の女性たちは、この男にずっと振り回されてるだけじゃないか。

彼女たちが自分たちの意思で何かを始める、というのがまったく描かれない。

どうも原作のあらすじ読むとほとんど映画と同じなんで、これは原作に忠実に映画化したのかもしれませんが、だったら登場キャラの使い方を間違えてると思う。

天水館の女子たちはみんなそれぞれ何かのヲタクで云わば一芸に秀でているのだから、だったら彼女たち一人ひとりが自分の得意分野でその能力を発揮して何かをやり遂げる、という展開になるはずでしょう。アベンジャーズみたいに。

アジアンの馬場園梓が演じる千絵子の母親はアパートの管理人でイ・ビョンホンのファンだったり、まややは三国志ヲタク、ばんばさん(池脇千鶴)は鉄子、ジジ( 篠原ともえ)は枯れ専といったそれぞれ特徴があるのに、まったく物語に活かされない。

一緒にクラゲのドレス作ってるだけ(まややだけはモデルに開眼するが)。

童貞兄貴もなんだか霞んじゃってるし。結婚を前提に付き合いたい云々の話はどうなったんだよ。

月海は月海で童貞兄貴が女の人と傘さして歩いてただけで落ち込んでたのに、その後自分のためにいろいろ手を尽くしてくれる蔵之介にコロッとイッてしまう。

…お前には主体性がないのか!!

この作品の原作者は女性だけど、そんなにカワイイ女装男子に引っぱってってもらいたいわけ?

「どんくせぇなお前、いくぞ」ってな具合にな。かぁ~ペッ(痰を吐く音)!

映画の後半ではコイツの女装ファッションを延々見せつけられる。拷問か。

主役は能年さんでしょ!?なんでコイツはこんなに全面的に出てくんの?

僕は蔵之介を演じる菅田将暉という俳優さんのことはよく知らないけど、単に役柄を演じているに過ぎないとはいえ、ちょっと彼のことが本気で嫌いになりそうです。それぐらいうっとうしいキャラだった(女の子のこと気安く「お前」って呼ぶ男とか、ほんと死ねばいいのに)。

で、取り壊されることになったアパートに悪徳政治家の支持者が押しかけてクラゲをフィーチャーしたファッション・ショーは大成功、アパートも無事守られましたとさ、という夢物語でおしまい。

アパートん中どんだけ広いんだよ、って話だし。あんな大掛かりなステージどうやって彼女たちだけで作ったの?とか。

おとぎ話が悪いんじゃない。

でもイケメン男子に引っぱってってほしい、という願望をただ垂れ流すだけのこの物語には心底ヘドが出ます。

えぇえぇ、モテない男のヒガみですよ。

でもイケメン男子と美人が恋する話はすべて受けつけないというわけじゃないからね、俺は。ディズニーの『シンデレラ』(感想はこちら)よかったし。

だからやっぱり映画の出来の問題だと思う。

こういうペラッペラな映画にぶち当たると、ほんとヘコむんですよね。期待やお金や時間を物凄く無駄にした気分になるし、「日本映画」の今後に本気で不安を感じてしまう。

映画ではない、これは。映画のフリをした得体の知れない気持ち悪い何かだ。

劇場公開時に映画館で観なかったことだけがせめてもの救い。

これ、もしも映画館で観ていたら、ぶっちぎりで年内ワーストワンだったよ。危なかった。

軽く笑えて萌えられる映画を想像していたんだけど、まぁ、とにかくストーリーが致命的なまでにつまらなくて演出もグダグダなので、もう最後まで観続けるのは苦行だった。大後悔。正真正銘○ソ映画でした。*5

以上。


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*1:僕はゲイではないけれど、マイノリティとして彼らが軽々しく扱われることには抵抗を感じる。それは女性に対する差別も同様。

*2:漫画の実写映画化が全部ダメだと言ってるわけではないです。『海街diary』(感想はこちら)みたいな作品だってあるし。

*3:ちなみに、太田莉菜は「あまちゃん」のミズタクこと松田龍平の妻だったりする。

*4:エイプリルフールズ』(感想はこちら)や『龍三と七人の子分たち』(感想はこちら)とか。

*5:この監督さんのフィルモグラフィ確認すると、実写版『こち亀』『ひみつのアッコちゃん』…。納得。